オレ、Jokerになります。[凍結中] 作:fateplanet
あぁ、また石を投げられそうだ……(ガクブル
「ブレスをお返しします、観束くん」
神堂の初陣から翌日、部室に現れた神堂は覇気なくそんなことを言い出したのだった。
そうして、神堂は己の手首からテイルブレスを外そうとしているところをとりあえず止めることには成功した。
「神堂、それはツインテイルズをやめるってことか?」
「そうとっていただいても構いませんわ。わたくし痛感いたしましたの。わたくしには観束くん達と共に戦う資格なんて……」
確かに、神堂の性格を考えれば、そのように責任を感じてしまうのは無理もないだろう。
事実、テレビを付けてみれば、それはもう散々な言いようでイエローの事を酷評していたのだから。この時はブルーのそれ以上であったのだから、きっとネットの方でも大荒れだったのだろう。さすがにネットまでは確認はしてはいないが。
「……いえ、約束通りこれは津辺さんにお渡しするのでしたわね」
「ちょ、ちょっとまってよ。いくらなんでも、今の会長から奪うような真似なんて出来ないわよ!」
愛香ちゃんの言う通りである。流石に憔悴しきった様子の神堂からもらうなんてことは血の通った人間であるなら出来そうもないことである。
「俺達は、小さいころから一応武術を習っているんだ。だから戦いにも直ぐに適応できたのかもしれない。会長はまだ、緊張して上手く力を発揮できないでいるだけなんだよ」
そうやって総二も慰めるが、神堂は力なく頭を振るばかり……。仕方ない。
「皆、悪い。ちょっとオレと神堂の2人にしてくれないかな?」
そういって皆の方を真剣に向いて頭を下げて頼んだ。
総二と愛香ちゃんは慌てて頭を上げるように言ってきていたが、トゥアールちゃんと桜川さん、いや桜川先生は頷くようにこっちを見てくれていた。その2人に連れられて行く形で総二と愛香ちゃんも部室を後にし、残ったのはオレと神堂の2人だけになった。
「さて、神堂。今はオレとお前の2人だけだ。お前の中に溜まってるモン、ぶちまけてもいいぞ?」
「観束くん……」
そう言ってからしばらく時間が経った後に、神堂はその重い口を開いたのだった。
「テイルギアは、ツインテール属性という、ツインテールを愛する力で稼働する……そうでしたわね」
「そうらしいな。オレはまたシステムが違うから、そうじゃないんだが」
「正直わたくし、変身は失敗するんじゃないかと思ってましたの」
「どうしてだ?総二曰く相当のツインテール度らしいのに」
「そんなの決まってますわ。わたくし、ツインテールが、この髪型が大嫌いですもの」
「へぇ……」
ここで総二なら何だって!?とでも驚くのだろうがオレはそうではない。だって、そのことをオレは知っているんだから。
「以前、観束くんには言いましたわよね。この髪型はお母様にさせれているのだと。しかも家訓であるとまで言われて、と……」
「確かに聞いたな。その時に嫌だってのも確かに聞いたな」
「えぇ、わたくしの見た目でこの髪型ですと、子供っぽいと感じてしまいましたから……」
確かに神堂のその小学生のような見た目で、ツインテールにしているのではただでさえ子供に見られがちだというのに、それ以上に子供に見られてしまう。だから嫌だと言っていたのを確かにオレは聞いていた。
「そのうちにわたくしはこの髪型を憎むようにさえなりました……」
「…………」
神堂の口から直接そのような言葉が出るのは驚いたが、コンプレックスに思っているのなら、その気持ちも当然なのかもしれない。
「『ツインテールを愛する限り』」
そして神堂から聞こえてきた言葉はよく総二が、レッドが言っている決め台詞であった。
「とても、不安でした。自分に嘘をついてまで貴方たちを追いかけて!いつ、見抜かれるのではないかと、わたくしが言葉ばかりの偽りで、ツインテールへの気持ちを塗り固めているのではないかと……!」
神堂はそうして泣きそうな声で独白を続けた。だからこそ、オレは神堂にも言うべきことなのかもしれない。
「なぁ、神堂。オレの言葉も聞いてくれないか?」
「え‥‥?」
「1つ。オレは神堂がツインテールの事を嫌っているのにそのことをすっかりと忘れてしまっていた」
「観束くん?」
「2つ。そのことを忘れてしまった挙句、神堂が仲間になることを喜んだ」
「何を言って……?」
「3つ。そのせいで神堂を泣かせてしまった……。オレはオレの罪を数えたぞ、神堂」
「え……」
ここで、言うべき言葉じゃないのかもしれない。それでも神堂は変身できたのだ。だったら、その心にツインテールを愛することがウソのはずがないんだ。だからこそ、オレはこの言葉を神堂に投げかける。己のソレと向き合い、前に進むための力とするために!
「さぁ、お前の罪を数えろ……!」
「……たしかに罪なのかもしれませんね。自身の本心を隠してまで「違う」貴方たち……え?」
「確かに神堂はツインテールが嫌いだったのかもしれない。でもそれと同じくらい好きだったんじゃないのか?」
「そんな、好きだなんて、そんなこと……!」
「神堂は前に言ってたよな?確かにツインテールが嫌いだって。でも……大好きなお母様と一緒の髪型だって、言ってたじゃないか」
「あ……でも、わたくしは……」
どうやら、もう少し、押していかないとダメらしい。これ以上となると少し恥ずかしいんだけど、仕方ないか。
「え、えぇ!観束くん!?」
オレは神堂を優しく抱きしめていた。………やっぱり少し恥ずかしいな、コレ。
「その程度だっていいんだよ。好きなモノのレベルなんて人それぞれなんだから」
「それでも、その程度では……それにわたくしの力では、世界を守れませんわ……」
「馬鹿だなぁ、神堂は」
「ば、馬鹿ってなんですの!?」
「最初から強い奴なんていねぇよ。言ってたろ?オレや総二、愛香ちゃんは元々武術を学んでいたって。それがなけりゃいくら力が強くなっていようとも戦えないよ」
「ですが……」
「ヒーローだって最初から強かったわけじゃない。戦いを通して成長していったんだから、神堂だって、
「あ……」
そうして気付けば慧理那は声を殺して泣いていた。それをオレは静かに受け止めてやることくらいしか出来ないが、それでだって十分なんじゃないかと、オレは思う。
人ってのは不安を感じて当たり前なのだ。その不安をいかに解消していくのかが大事なのだから。だからこそ、人は手を繋ぐことも出来るのではないかとオレは思っている。
不安だからこそ、人は人に共感して、その解消に向けていけるのではないかと……あーやめやめ、こんなキャラじゃオレはねーし。
今は慧理那の不安を解消してやりゃいいだけだ。
オレは慧理那が泣き止むまで頭を撫でてやっていた。勿論皆が帰ってきた際には離れていたけども。