オレ、Jokerになります。[凍結中] 作:fateplanet
「観束総二君、トゥアールさん。そのブレスをわたくしに託していただけませんか?」
そう静かに、しかし決意を込めて言ったのだった。
「神堂、お前、まさかと思うけど」
「その、まさかですわ。わたくしだってヒーローに憧れ続けていたんですから、悪と戦うことに何の恐れもありません」
「そうだとしてもだな」
「それに、それを言えば皆さんにも同じことが言えますわよ?皆さんだって、たまたま力を手にできたから戦ってるのですから」
「むぅ……」
それを言われてしまったら、どうしようもないなぁ。
実際、オレもそうだし、総二や愛香ちゃんだって、戦う力がなければ戦っていたとは到底思えないし………いや
「で、でもちょっと待ってください、会長!アイツらはただの悪党じゃなくて変態なんですよ!?会長が望んでるようなカッコいい戦いなんて……」
「彼らが常軌を逸した存在であることは、今まで襲われてきたわたくしが一番よく知っていますわ。だからこそわたくしも戦いたいのです。わたくしのように恐怖を感じてしまう前に助けたいのです!」
そう言った神堂の眼はとても輝いていて、心底そう思っていることが分かる眼だった。
こりゃ、ダメだ。何かを決意した奴の眼をされてしまっては、どんな言葉を並べようが、諦めないといった感じしかしない。
そのことが愛香ちゃんにも伝わったのだろう。トゥアールちゃんの方を見て、そして、トゥアールちゃんが頷いたのを見て、諦めたようだった。
「それじゃあ、会長、受け取って」
総二はブレスを差し出しながら神堂に言うが、神堂は首を振り。
「それは観束くんに、ハメてほしいですわ。折角なんですし、先輩戦士から受け取りたいですから」
おいおい、神堂、言葉には気を付けよう。そうじゃないと……
「アー―――――これやべ―――――!!これはやべ――――ですよ――――――!!!」
変態という火に油を注ぐだけだから。
神堂はオレと同級生ということであるから忘れてしまいそうになるが、その容姿は小学生で通じるほどに幼い見た目をしている。そのため自他ともに認めるロリコンのトゥアールちゃんの琴線にダイレクトアタックしたのだろう。
そんなトゥアールちゃんはいつも通りに
「まぁ、そのことは分かったよ。嵌めればいいんだな?」
ホントは巻き込みたくないけど決断されて以上は野暮だしなぁ……。
なんて思いながら、総二から受け取ったブレスを神堂の手を取り、嵌めてやった。
「うふふ、
「それだと大分ゴツイ指輪だな」
まぁ、軽口を叩ける程度にはいつも通りなようであったので、気にしすぎているだけなのかもしれないが……巻き込みたくなかったなぁ……。
この時、どうして巻き込みたくなかったのか、もっとしっかりと勘を信じていれば、胃痛の原因が増えることはなかったのだろうと、後からオレは思ったのだったが、まぁ後の祭りであることは確定的に明らかであることは、諸兄には分かっていることだろう。
……諸兄って誰だ?
その後、ブレスに愛おしそうに頬ずりをしたり見つめたり、トゥアールちゃんに感謝して、トゥアールちゃんが愛香ちゃんにされた仕打ちを匿名で言ってみたり、それを聞いた神堂が成敗すると張り切ったり、それを受けて立とうとする愛香ちゃんに総二がツッコんだりと、いつも通りにカオスな感じに場が温まってきたところで今まで会話に参加してきてなかった母さんが急に声を発したのだった。
「ねぇ、トゥアールちゃん。慧理那ちゃんの武器は何になるのかしら?」
その様は興味津々といった感じで、わくわくしている幼稚園児と一緒だった。
「それは、事前には分からないんです。形成される武器は本人の意思によるところが大きいですから」
「ふぅん……ね、それなら銃なんてどうかしら、慧理那ちゃん?」
「銃、ですの?」
なんで銃なんだ?
「総ちゃんも愛香ちゃんも一ちゃんも剣や槍、肉体でしょう、武器が。ほら、こうしてみると全員近接よりしかいないじゃない。だったら1人くらい中距離でより多くの敵と戦えるように後方支援の火力タイプがいいと思うのよ」
「よく見ていらっしゃるなぁ!この母上様は――――――!!」
ホントにね!何平然とした顔でオレ達の戦力分析をなされているのかなぁ!!しかも言ってることは適格だしよぉ!
「でも、総ちゃん、授業中ふと『自分は接近戦が得意だけど、遠距離攻撃が得意な敵と戦う時のために、飛び道具を持っておかないと』って考えたりするでしょう?」
「考えるかあぁぁぁぁぁあああ!!!」
………すんません。オレ、たまーに考えてます。
べ、別に頭の中で妄想するくらいいいじゃないか!外に出さなければ、大なり小なり皆何かしら考えてるんだよ!!
「母さん、いつもそんなことを考えていてね?そしたら父さんと目が合って、はにかみながらお互い同じことを考えていたんだなぁ、ってわかったものよ」
でも、母さん、そのエピソードは必要なかった気がするんだ!父さんと母さんのそんな馴れ初め子供は聞きたくなかったよ!!
でも神堂的にはそうじゃなかったようだ。
「素敵な青春時代でしたのね!わたくしも、できれば、ヒーローについて熱く語れる旦那様だといいのですが……!」
「あら?その夢案外叶うかもしれないわよ?」
そう言ってこっちに視線を向けないでくれよ、母さん。実際今までそういう風に特撮の事で関わってきてたから、意識していしまうじゃないかよ……!
まぁ、神堂がそのことに気付いてないみたいだったから、良かったんだけど……。もし神堂も気付きてたら、オレは恥ずか死ぬ自信があるぞ!
「それじゃ、早速変身しようぜ!」
総二が早く見てみたいといった風に神堂を急かすのだが……残念、タイムオーバーだ。
「ん、ふぁ……」
なぜなら、神堂がそれはそれは可愛らしい
まぁ、そんなことより、実は神堂、夜9時までしか起きてられないのだ。
「む、いかんな、もう8時か」
「神堂、無理せず帰った方がいいぞ?オレ達だって今日は色々と疲れたから、そろそろ休みたいし、細かい説明は学校の、ツインテール部でもできるからな」
「ですが……」
「そうは言ってももうすぐ門限だろう?外まで送っていくから」
じゃないと、後ろでなんか危険な空気を出しているご母堂様とトゥアールちゃんに何されるかわかったもんじゃないので。
そのことに気付いた桜川さんも神堂をおぶって、エレベーターの方にオレと共に向かっていった。
「まぁ、そういうことなんで、神堂もきっちり休んで、また明日のお楽しみとっておけよ?」
「ふふ、わかりましたぁ……」
「……そうとう眠そうっすね」
「まぁ、今日はいろいろとあったからな。お嬢様も色々と負担だったのだろう。もちろん私も負担を感じているぞ。だからこそ、観束、私の夫として支えては」
「はーい、お帰りはあちらですからねー」
「……段々と、私の扱いが雑になってきてはいないか?」
「そんなことはありませんよー?」
そろそろ相手すんのはしんどいと思っている程度ですよ。
「まぁ、いい。とりあえずはまた明日ということだ」
「観束くぅん、また明日、ですのー……」
「はいはい、神堂もまた明日。それじゃ、気を付けて帰ってくださいね?」
「あぁ、無論だ」
そうして彼女たちはまさしく風の如きスピードで帰っていった。ありゃ、車は必要ないよなぁ……。
こうして、異常に疲れた1日が幕を閉じたのだった……。
帰りになんか、ぷんぷんと怒っている愛香ちゃんとすれ違ったが、何仕出かしたんだろうか、総二の奴は?