オレ、Jokerになります。[凍結中] 作:fateplanet
神堂に正体がばれてしまったオレ達は、事実に気絶した神堂とショックで気絶した愛香ちゃんを連れて、そして、神堂についていた桜川さんを伴って、アドレンシェンツァに向かい、既に事情をトゥアールちゃん経由で聞かされていた母さんに迎えられる形で秘密基地へと戻ってきた。
途中、6時前に閉めていたからか、
「………やっぱり夢じゃなかったのですわね」
「残念ながら現実だよ、神堂」
「観束くん……」
総二は口裏を合わせて夢にした方が良かったんじゃないのか、という考えが浮かんでいたようであるが、オレと桜川さんの反対によりその案は却下された。もしも夢であると誤魔化せていたとしても、神堂はそのことを確認しようとするだろうし、何よりもオレが神堂に嘘をついていたくなったからなのだ。
なんだかんだで高校入ってから1番付き合いのあるのは神堂であったし、何よりもばれてしまった以上、隠していたくないと、どこかで思ってしまったからなのだ。
オレの独白の間にも神堂にはトゥアールちゃんからの説明を受けており大体の事情は分かったようであった。
「まさか、ずっと皆さんだけで戦っていただなんて……」
「特撮でも、少数精鋭だろ?それと同じなだけさ」
「しかし、現実と特撮は違いますわよ、観束くん?」
「事実は小説よりも奇なりっていうだろう」
「……それは、そうですが…‥」
「それにしても学園きっての問題女子2人が揃って関係者とは……世間は狭いものだな」
「いや、この場合は逆ですから。関係者が学園に集まってるだけですから」
ちょっとずれてるんだよなぁ、言ってることが。
「それもそうか。片方は後々転校してきたのだったしな」
しかし、トゥアールちゃんと愛香ちゃんは落ち込んだように項垂れていた。
「ごめん、皆。あたしのせいで……」
「いえ、私も慧理那さんの存在に気付くのが遅すぎました。正体バレしたのは私の責任でもあります」
どうやら、2人して、自分たちのせいだと思っているようであった。
そんなことはないし、これじゃあ神堂にも気が悪い。そのことを注意しようとオレが動く前に、当事者でもある神堂が言葉を発した。
「どなたのせいでもありませんわ。第一、わたくし、皆さんがツインテイルズの関係者だと思っていましたから」
その言葉に今度はオレが冷や汗を流し始めていた……。ヤバい、このことに関してはオレに心当たりがありすぎる!
何度か、神堂に怪訝な顔をさせてしまっていたことがあるのだから当然の事だろう。
「なんだって!?」
総二は驚いているようだが、オレにはそんな余裕は全くない。まさかオレのダメ対応が原因だったなんて……。
「じゃ、じゃあ、会長にはこのブレスがやっぱり見えてるのか?」
そう言って総二は自身のテイルブレスを掲げて神堂に見せた。
「えぇ。はっきりと」
「そうか……認識攪乱装置が働かなかったのは、会長が俺達のことをおぼろげながらも疑っていたからなんだな」
すまん。その疑いのもとはオレでした。
「でも、それなら、どこで気付いたんですか、会長?」
愛香ちゃぁぁぁぁぁああん!!
「実は、観束くんと話している時なのですわ。何度か、観束くんがジョーカーのように思えた時があったので」
その言葉に全員が一斉にオレの方を凝視する。………とりあえず
「すんませんしたーーーーーーっ!!」
華麗に土下座としゃれ込もうじゃないか!
「ま、まぁ兄さんも人間なんだし、そんなこともあるさ」
「そ、そうね。ねぇトゥアール!」
「え、ええ。だ、第一いくら怪しいからって早々に繋がりませんし、ねぇ!」
やめて!皆そんな感じにオレを慰めないで!!
「ドンマイね、一ちゃん♪」
そして楽しそうですねぇ、ご母堂様!!
「ま、まぁ、観束くんも悪気があったわけではないでしょうし……」
神堂までもか!?
こ、ここは、これ以上のものを受ける前に続けよう、そうしよう!
「ま、まぁ、これ以上皆に慰めれるのは終わりにして……。神堂、ごめんな。やっぱり女の子になって戦ってます、だなんてそうそう言えるモノじゃなくて……」
「わかっていますわ。ヒーローは正体を隠すものと相場が決まってますもの」
「神堂……やっぱりそう思うんだ」
「えぇ。そう思いますわ」
そうして、オレ達は笑いあってしまう。やっぱりバレたところで、神堂とそうそうどうにかなるわけじゃなかったみたいだ。
「なんか、あの2人いい雰囲気ね」
「ですね。やっぱり仲いいのでしょうか?」
「いや、どう見ても仲いいだろ?」
で、お前さんたちは何を隅っこで話しているんだい?
で、母さんはなに、よだれ垂らして嬉しそうな顔をしていらっしゃるのでしょうか?
そんな仲間たちの不思議な反応に首を傾げながらも大事なことを神堂に言っておかなければならない。
「ところで、神堂。オレ達の正体についてなんだけど」
「わかっていますわ。秘密にすれば良いのでしょう?ヒーローのお約束ですものね」
やっぱりわかっていたか。まぁ、この手の正体隠してるヒーローは基本的にそうだからなぁ。
なんてオレと神堂が今後について話していると、離れていた総二がやってきて、とんでもないことを言い放った!
「兄さん、トゥアール。このテイルブレス、会長に託してもいいかな?」
そう言った総二の手の中には、この間の通称巨乳ブレスが握られていた。
「総二、お前意味わかって言ってんのか?」
だがしかし、そのことをオレが簡単に了承するとコイツは思っていたのだろうか?
いや、真剣な目をしているところを見るに、覚悟していたようだ。
「お前はこの戦いに神堂を、更に人を巻き込むって言ってるようなものなんだぞ?」
「わかってる。だからこそ、戦闘に積極的に参加してほしいと思っているわけじゃないんだ。まぁ、それ以前にこれはトゥアールのだから、トゥアールがうんと言わなかったらダメなんだけど」
「……総二様、なぜ、戦闘に参加をさせないのにブレスを?」
「……会長はこれまで何度も襲われてきたんだ。だったら自衛する意味も込めて、戦う手段を持っていた方がいいに決まっている」
「ならば、私が貰い受けるわけにはいかないのか?私だってツインテールだぞ?」
「それは無理ですね。今までエレメリアンに狙われなかったところを見るに桜川先生にはツインテール属性が芽生えていない可能性が高いのです。必然的に高いツインテール属性を必要とするテイルギアは扱えません。お兄様のドライバーならば、どうなのですか?」
「このメモリとドライバーは1つしかないし、メモリとの相性もあるから一概に使えるわけじゃないんだ」
こればっかりは渡せるものじゃないし、渡す気もない。確かに女性化という厄介なものが付属してはいるが、やっぱり愛着だって湧いているのだ。今更手放す気なんてない。
「と、いうことらしいです。今、ここで適格者という意味では慧理那さんだけでしょうね」
「……そうだとしてもオレは反対だ。自衛手段としても過ぎた力なのは目に見えているだろうが」
「でも、会長なら、大丈夫だ。ツインテールを見れば分かる。悪いようには使わないさ」
なんで、このタイミングでもツインテール中心なんだよ?
「そりゃ、オレだって神堂の人となりは知ってるさ。だからこそ、だな……」
そうしてオレが続けようとしたとき、神堂の手によって遮られた。
「観束くん。わたくしは大丈夫です。だから……」
「観束総二君、トゥアールさん。そのブレスをわたくしに託していただけませんか?」
そう静かに、しかし決意を込めて言ったのだった。