オレ、Jokerになります。[凍結中]   作:fateplanet

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新たなる変態達とバレたオレ達

「この摩天楼を闊歩する、巨乳のツインテールはおらんかー!!」

 

「違う!私達は正しい貧乳のツインテールを求めなければならぬのだ!!」

 

前回はこの言葉でしめくられてしまったが、改めて考えるとヒドイセリフであることが分かる。いや、改めて考えなくてもヒドイのだが……。

まぁ、そんなセリフだったからのか、レッドとブルーはそれはもう軽快に滑って行った、お笑いのコントの如く。

 

「何よ……なんなのよ!最近のこいつらは!乳ばっかにこだわってんのよ!!」

 

「ブルー、そりゃきっとこいつらが乳に関するエレメリアンだからだろうに」

 

「そんなことは言われなくても分かってます!どうしてそんなのが来てるのかっていうのが嫌なんです!!」

 

「そんなことを言われても、なぁ、レッド」

 

「まぁ、確かに俺達だって分からないしなぁ」

 

どういった基準で選ばれているのかなんてオレ達が知るわけないじゃないか。

 

「乳が一番大事なのかぁぁぁぁぁあああああっ!!」

 

相当あらぶっているなぁ。やっぱり巨乳ブレス使えなかったの堪えてたのか……。

そんな、ブルーの慟哭が聞こえたのだろう。2体のエレメリアンはこちらに気付いたのだった。

 

「「現れたな!ツインテイルズ!……はもるでない!」」

 

なかなかに愉快なやつらのようであった。しかし、今回は場所が場所だな。まさかヒーローショーをやるようなステージのある屋内だなんて……。

しかも見世物のように周囲には逃げてない人が大勢いる状態では、存分に戦うことなんて出来そうにないぞ?

 

「こんだけ人が密集しているところで幹部クラスと戦うのはまずいぞ……」

 

「言われなくても分かってる……っ!」

 

前回のドラグギルディは周囲に何もない、といっても中継のカメラはあったが、広い採石場だった。それでもそこは目も当てられないほどに荒廃してしまっていたのだ。それをここで再現するわけにはいかないのである。

 

そんな風にオレとレッドがどうすべきか悩んでいる間にも、海竜型のエレメリアンがオレ達を見るのだった。

 

「ほう、これがテイルレッドとテイルジョーカーか。テイルレッドはまさに三千世界に轟く究極のツインテールであるな。そして属性力はあまり高くないが、テイルジョーカーのツインテールも見事なモノよ!惜しむらくは胸が大きければなお良かったものを!」

 

あ、コイツ完全に巨乳属性だわ。間違いない。ブルー、ここにお前の敵がいらっしゃるぞー。

そんな風にオレ達を評価する声に反するように、イカ型のエレメリアンも声を発する。

 

「何をいう!テイルレッドの美しさはもうすでに完成しているではないか!テイルジョーカーのように育った醜い果実など何が良いというのだ!!」

 

……なんだろう、ある意味でニセ乳だけど、こうやって(けな)されると、こうイラッとくるものがあるな。

 

「それに、最後のツインテイ、ル、ず………」

 

そうしてイカ型エレメリアンが最後の1人、ブルーに視線を向けると、急に黙り込んでしまったのだ。

どうしたんだ?

 

「はいはい、テイルレッド、テイルジョーカー、もう慣れたっての。アンタらがイチャイチャしてる間にもこっちは……」

 

そう言っている間に、いきなりイカ型はブルーの目の前にまで瞬間移動したかのように現れたのだ!

 

「ブルーッ!!」

 

「―――ッ!!」

 

どう足掻いても間に合わねぇ!!

そう、オレ達が肝を冷やした瞬間、そいつは予想外の行動に出たのだった。

なんとそれは騎士が己の剣を主に掲げるように、恭しく(かしず)いたのだ。

 

「美しい……」

 

それは正しく賞賛の言葉だった。イカ型は感無量というように喜びを露わにしていた。

 

「へ?」

 

まさしく緊張した場面であったのに、その瞬間から空気が変わったことが分かったのだが、なにが変わったのかまでは理解できなかった。

 

「美しい。まさか敵である貴女がそうであったとは!ああ!運命よ!なぜここまで運命とは残酷なのですか!」

 

ソイツは芝居がかった様子で声を上げていた。

 

「いや、あんた、突然何を言って……?」

 

「あぁ、私の名はクラーケギルディ。我が剣を貴女に捧げたい、我が心の姫よ」

 

……白鳥だったら、あだ名はジークで決定だったのになぁ、コイツ。

そんな事を思ってしまったオレはきっと悪くないと思うんだ。だって、怪人に姫呼ばわりされるとか、それしか思い浮かばないだろう!!

 

「あ、あんた、気は確かなの!?」

 

「貴女の美しさに魅せられたのです!幾多の世界を越えても、このような気持ちになったのは初めての事!ああ!これこそが恋なのですね!どうか、どうか私の愛を受け取ってください姫よ!」

 

「えええええ……」

 

「むぅ、とうとう出たか、奴の悪癖が……!ああなったら止まらんからな。テイルジョーカー!貴様に尋常の勝負を望む!アイツの方ばかりに気を取られていては叶わんからな!」

 

そんでもって、こっちはこっちでやる気満々だし!?

 

「いいけど、こっちはあっちの方も気になって仕方ないんだけどなぁ。これでも保護者代行だし」

 

一応、最年長だし、2人を守らないといけないしさぁ。

 

「ふん!だからこそよ!中心はテイルレッドであるが、影のリーダーは貴様であろう?残りの2人は貴様の指示に割と忠実だからな。現場での頭と言ったところであろう!ならば貴様から倒せばよいだろう?」

 

「……一応、理には適ってるんだなぁ、流石幹部クラスだ。アンタ、名前は?」

 

なんだかんだで2人ともオレの指示には従ってくれてるからなぁ。

 

「ふ、名乗らないのは武人の恥だな。我が名はリヴァイアギルディ!巨乳属性(ラージバスト)を信奉する戦士なり!」

 

「テイルジョーカー、ハードボイルドに決めるぜ?」

 

さぁ、戦いの始まりだ!

そう思っていた時期が私にもありました。

こんな声が聞こえてくる前までは。

 

「最高の貧乳を持つ、麗しき姫よ!!」

 

「………………………‥‥は?」

 

愛香ちゃんに求婚してたやつの方からなんか変な言葉が聞こえてきたんだが……。

 

「……戦う前に確認、いいか?リヴァイアギルディ」

 

「なんだ?」

 

「あの、クラーケギルディってのが持つ属性力は?」

 

「奴が持つ属性力は貧乳属性(スモールバスト)だ。故に、俺とは決して相容れぬ存在なのだ!」

 

あぁ、そうなんだ。だから、愛香ちゃん、巨乳ブレスに反応しなかったんだ……。

オレはモノ悲しい気分になってしまい、ついつい明後日の方角を見てしまった……。

 

「さて、疑問には応えたぞ……行くぞ、テイルジョーカー!」

 

ッ!

気付いた時にはもう遅かった。奴もその巨体からは想像できないスピードでこちらに接敵し思い切り腕を振りぬかれ、直撃してしまった!

 

「―――――ぐぅ!!」

 

どうにか後ろには誰もいなかったから良かったものの、もしも誰かいたならば、それは………。その想像で(きも)が一気に冷えた。

コイツ相手に他の事に気を配っている余裕はない!!

 

オレは瓦礫の中から一気に飛び出し、リヴァイアギルディに右ストレートを打ち込んでやる!

 

「ぬぅ!貴様も中々にやるようだな!!」

 

それでも大したダメージにはならなかったようだ。やっぱり火力不足か!

だったら!

 

1,2、右ストレート、右回し蹴りからの回転殴り!そして右裏拳!それらを一気に叩き込んでやる!

 

「ぐっ!ほお、やはり貴様、思い切りがいいようだな!だが、これだけでは、俺は倒れんぞ!!」

 

「んなのは先刻承知だ!」

 

幹部クラスがこの程度でやられる訳がないじゃないか!

 

「がんばれー!お姉さまー!」

 

「がんばってくださいまし―!」

 

なんか色んな声が聞こえてるけど、今は無視だ!というよりも!

 

「皆、危険だから、逃げてくれー!!」

 

避難してほしいんだけどなぁ!!

 

そして、リヴァイアギルディが再び構えを作った時、耳をつんざく、悲鳴が聞こえてきたのだった!

 

「い、いやぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!!」

 

視線をリヴァイアギルディと共に向けるとそれはブルーが発したものだった。

そのブルーの視線の先ではクラーケギルディがその身に着いた触手をウネウネと動かしていたのだった。

 

………そういえば、愛香ちゃん、ウネウネしたもの苦手だったなぁ。

 

そこからは、ブルーが半狂乱となり、またクラーケギルディもそのことにショックを受けてしまい、戦闘どころではなくなってしまった。あのウネウネ、求愛の儀だったのか……。

 

「ちっ!興がそがれた。この勝負、またに預けるぞ!テイルジョーカー!!今はそこの情けない仲間を慰めてやるのだな!!」

 

「……アンタに言われなくてもそのつもりだよ」

 

「ふん。この次はこうはいかんぞ。次こそは貴様の属性力、貰い受ける」

 

「できるものなら、やって見やがれ……」

 

そうして、リヴァイアギルディはクラーケギルディを引きずりながらワープしていった。

とりあえず、ここが主戦場にならずに済んでよかったと思っておこう。

それにしてもリヴァイアギルディ……やはり幹部クラスだ。その強さは恐ろしいものだった。それレベルがもう1体いるのだから、なんの冗談なのだろうか。

 

そんな風に考えていることも出来ない事態が起き始めていた。なんと、ブルーが光に包まれてしまっていたのだ!マズイ!

 

「レッド!」

 

「了解!!」

 

すぐさま近くにいたレッドに指示を出し、オーラピラーを使ってブルー、オレを回収して人気のない路地に隠れたのだ。

 

そこに隠れた時にはブルーの変身は解除され、そこには愛香ちゃんの状態であった。

 

『意識を失えば、強制解除してしまうのは問題ですね。早急にそれ対策用のプログラムを用意しておきます』

 

そのことを問題視したトゥアールちゃんから通信機越しに対策がなされることが告げられた。

まぁ、オレには関係ないことなのであるが。

 

レッドもそのことを問題視したのだろう。軽く受け答えして、オレ達は変身を解除して……

 

『いけません!2人とも今は変身を解除しては!!』

 

それはあまりにも遅すぎた警告だった。

オレ達が変身を解除したその時、背後から人の気配を感じたのだ。

そこにいたのは………

 

「観束くんが……テイルジョーカー……」

 

オレの友達で、クラスメイトで、生徒会長の、神堂慧理那だった―――――――!!

 

 


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