オレ、Jokerになります。[凍結中] 作:fateplanet
「テイルレッドよ。我が神速の斬撃、これほどまで早く見切ったのはお前が初めてぞ!!」
「見くびるなよ、どんなに速くても心の形をなぞられたら見えるに決まっているぜ俺はいつだってツインテールを心に
「敵ながら天晴れ!」
……………なんで敵も味方も変態ばっかりなんだろう、オレの周りって……なんだよ、心の形って。そして何でお前は心に映してるんだよ、ツインテールを。いつもそうだから愛香ちゃんのアピールやらトゥアールさんの色仕掛けにも
この時通信機から母さんの楽しそうな声が聞こえはしたが、聞かなかったことにしたオレであった。
「ならば、とくと味わってみるか!極めに極めた我が刃の冴えを!!」
そう告げた瞬間だった。地は踏み込んだ衝撃で罅が走り一瞬の時の中でレッドに向かって振り下ろされる神速の刃!それはまさしく神速の2連撃、確かに総二の言うようにその剣線はツインテールを描くかのごときものだった!
しかしレッドも負けてはいない。それらの全てを受け流しているとは言い切れないが、受け止め、致命打を受けないようにしている。それはさながら2人が舞踏を踊っているかのようであり、また下手に介入が出来ないことを示していた――――!
「下手に介入したらレッドを傷つけることになりそうだ……」
「だからって、放置も出来ないでしょう!!」
「わかってる、けど……」
実際、隙なんてものは微塵も感じられないのだ。そんな格上相手に生半可な攻撃なんてしても効果は薄すぎる!
そうこうして、手をこまねいてる間にもレッドは剣劇を力任せに打ち破り、バックステップで距離をとることに成功していた。
そして、オレ達はすぐさま、レッドの許に集まる。
「大丈夫か、レッド?」
「大丈夫なの?」
「ああ、なんとか……でも強いぞ、アイツ」
それは言われなくとも分かっている。
そうしてオレ達が距離をとって窺っていると、奴は突然大きな声で笑い出したのだ。
「うわ――――――っはっはっはっはっ!!」
奴の持つ、のこぎりのような大剣を肩に担ぎ豪快に笑ったのである。
「何がおかしい……?」
「見事だ!見事なツインテールだ!本当に敵として遭ったのが実に口惜しい!!」
「………」
「なぁ、ブルー、なんでこう、変態系ばっかなのかな?」
「知りませんよ!あたしに言われても!!」
そうしてオレとブルーが世界の不条理さを嘆いている間にも話は進んでいく。
どうやら、奴の強さの秘密はそのツインテール属性にあるようであった。
確かに、トゥアールさん曰くツインテール属性は世界最強らしいが、確かに、敵にその属性がないということはあり得ないことであろう。
つまり、奴は現時点での最強の敵であり、レッドにとってはある意味同志とも取れる存在であるらしかった。
しかも幼女好きというおまけまでついてきていた。はっきり言って厄介極まりない属性であるということであるが、それをまるで誇らしいことのように叫ぶ奴は、やっぱり変態達の隊長であるらしかった。
そうして高らかに述べていた奴は急にブルーを見て得心が言ったように話し出した。
「な、なによ?」
「初めて映像を見た時から何かが引っかかっておったが……青の戦士よ、お主の姿を間近で見て確信したぞ。やはりあの世界の戦士の差し金であったか」
「え……!?どういうことよ!?」
「まさか……」
コイツは以前トゥアールさんの世界を侵略した奴だってのかよ!!
「ほぅ、どうやら知らなかったようだが、黒の戦士は気付いたようであるな。我らがかつて最も追い詰められた戦いがあったのだ。その時たった1人で我らに戦いを挑んできた少女がいたが……青の戦士、お前と全く同じものを纏っていたのだ。あの戦士とお前とでは胸に差がありすぎるからな、結びつかなかったのだ」
「同じものだと!!」
「やっぱりか……」
これで完全に繋がってしまった。それに総二と愛香ちゃんが纏うそれらはトゥアールさんが復讐のために作ったものだと思っていた。もちろんオレだってそうだ。しかし、実際に蓋を開けてみれば、彼女も今のオレ達と同じことをしていたのだから。つまり、彼女は1度大きな挫折を味わったことになる。そして、これからの作戦だって知っているに違いない!
「だが皮肉なものよな。同じ衣を纏うがゆえに結末も同じになろう」
「どういう、ことだよ?」
「………………」
これまでの事がずべて敵の作戦だとするのなら……
オレ達の報道。
増えてきたツインテール。
無敵の戦士。
TV放送。
世界規模。
これらのキーワードから推察される結果は………!
「まさか、そうか。そういうことなのか…!」
「ジョーカー、どうしたんだ?」
「多分だが、オレ達が戦うこと、それこそがお前たちの目的だったんだろう?」
「ほう?」
「戦うことが目的って、どういうことなんだよ?」
「今から説明してやるよ、ドラグギルディ、お前もそれを話そうとしているんだろう?」
「ふむ、どうやら黒の戦士、お主は頭がキレるようだな……!」
だが、オレが説明をする間は黙っていてくれるようである。ありがたいことだ。
「多分だが、オレ達という偶像を作り出すことが奴らの真の目的だったんだろう」
「偶像の作成?」
「オレ達という戦うツインテールという偶像を作り出すことで世界全てにツインテールを普及させていくことが目的だったんだ。だからこそ、敵の強さが強くなかった。そうだろう?」
「ふん。我も一介の将だからな。いくら可愛い部下といえど、効率的なものがあるのなら、上からの命令に従うしかないのだ」
「ちょ、ちょっと待ってください!なんでツインテールを普及させる必要があるんですか?!」
当然の疑問だろう。
「簡単なことだ。オレ達という守護者が敗れた時、人は簡単に絶望してしまう。そうなったとき立ち上がる力は出てこないもんなんだ」
だからこそ、オレ達が戦う時、テレビ局がすぐにやってくるわけだ。リークしていたのは奴ら自身だったのだから。
「そして、その世界の戦士はツインテールが根付いた先に負けたんだろう、テイルギアを以てしても、な。そうだろう?」
「その通りである!だからこそ同胞を捨て駒のように扱わなければならなかったのだ。しかし、この世界でも十分にツインテールは育ったと言える!今こそが狩り時であることに違いない!!」
「なによ、それ……つまりあたし達は担がれたってことなの!?アイツ同じ目に合わせようとしてたってことじゃない‥‥…」
そういったブルーの声は失意と諦めに彩られていた。まさか以前考えていたことがドンピシャだったとは…。
しかし確かに結果的には担がれたようなものだろう。しかし彼女はオレ達を信じているのだ。だからこそ彼女は総二や愛香ちゃんに託したのだから。
なによりも、ヒーローは絶望しても倒れちゃいけないのだ!
倒れても立ち上がらなければならないのだ!
彼女は自身の世界が崩壊するまで立ち上がれなかった。しかし今彼女は立ち上がり、オレ達の世界に戦う術を与えてくれたのだから………!
オレが憧れた背中は、どんな困難だろうと越えてきたんだ!
「ブルー、悲観することなんかない」
「そうだ!ここで悲観しているだけじゃだめだ!それに……これで何の憂いもなくなった!」
オレ以外にも気力が充実している奴がいたようだ。
「ほう…?」
「なにいってるのよ、2人とも、もう意味ないのよ?」
「いいや、無駄なんかじゃない。ここでアイツを倒せば問題なくツインテールが浸透した世界を守れるんだ!」
「それにまだ負けたとは決まってない。オレ達は3人、いや4人なんだ。たった1人で戦った前の世界の戦士と条件が違うじゃないか」
だからこそ、勝ちの眼だってあるんだから。
「はぁ……2人してなんなのよ、絶望なんてしてられないじゃない!」
そうして元気が出たように構えをとるブルー……よかった。
「テイルレッド……そして、ここまでの絶望を推理した上で戦おうとするテイルジョーカーよ。我は今心底感心しておる。世界の終末を前にしてもその気概、真に美しいものは目を背けたくなるものなのであろうな」
「世界の終末?そんなのが何時来るよ?」
「そうだ!それに、世界だなんだとかは知らねぇ!俺は俺の愛するものを守るだけだ!」
「むぅ…あくまで勝つ気でいるということか!!」
「「当然だ!それが―――――」」
「はーはっはっはっはっはっは!!そこまでです!ドラグギルディ!!」
「誰だよ―――――――!!!?」
急に聞こえた笑い声の方にはなんか変な仮面を被ったトゥアールさんがいた。
いきなり何してんだよ、トゥアールさん!!