オレ、Jokerになります。[凍結中]   作:fateplanet

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異世界の痴女と転生者なオレ―4

「お義兄様の事情は分かりました。しかしながらあまり褒められた行為ではありませんでしたね。いくら何でも安全性や確実性の薄いものを使ってエレメリアンに立ち向かおうとするなんて」

 

「まぁ、確かになぁ。やっぱり危険な事には変わりないしなぁ」

 

トゥアールさんに指摘された通り、いくら何でも軽率すぎた行為であることには違いなかったか。

 

「でもそのおかげで俺は助かったんだから、結果オーライだろ?兄さん」

 

「いや、トゥアールはそういうことを言ってたんじゃないと思うわよ?」

 

総二はいまいち理解出来ていないようであるが、愛香ちゃんはわかったようであった。

 

「総二様は、使えたからよかったと考えてられるようですが、もしも使えなかったら、それは生身で突っ込んでしまうことを意味しているんですよ?エレメリアン相手に生身で立ち向かうなんて自殺行為に等しいんですよ」

 

実際人知を超えた怪物であることには違いないのであるのだから、トゥアールさんが危惧していることはもっともである。

 

「でも体が動いちまってたんだよなぁ。それに弟……妹?がヤバかったんだし」

 

「兄さん、言いなおさないでくれよ……」

 

「ぷっ」

 

「愛香も笑うなよ!」

 

「とにかく、問題がなかったからこそよかったですが、今後はあのような軽率な真似はやめてくださいね?もう変身できるという確証がありますから、問題はありませんが」

 

「うん。そうする。でも動いちまったもんは仕方ないからなぁ」

 

そうしていると総二が思いついたようにトゥアールさんに尋ねた。

 

「そういえば、テイルギアって他に使える人っているのか?」

 

「量産はできませんが、もう1つだけあります。しかし適格者も判明してはいます。いますが……」

 

いますが?

 

「総二様やお義兄様のような心正しい人、いえ、蛮族でありました。暴力に染まり切った心を持たない非情な存在でした。確かに高いツインテール属性ではありますが、そのようなモノに大事なテイルギアは託せません」

 

そう苦々しい顔で話すトゥアールさん。

やっぱり適格者は人間である故にそのようなことがあったとしても不思議ではないだろう。ただ、視線が若干愛香ちゃんに向いていたことが気にはなったが気のせいであろう。うん。

 

「そうなのか。ツインテール好きなのに悪党だなんて、悲しいな」

 

そして総二、お前の判断基準はやっぱりツインテールなのか、おい。

 

「属性力を持ってるってのに心を持たないだなんて変な話もあるものね」

 

「えぇ、私も実物を見るまで信じられませんでした。マジで信じられませんでした」

 

となると、当分はオレと総二の2人で戦わなければならないが……1つ問題があるんだよな。

ぶっちゃけ、ジョーカーだけだと火力不足感が否めない。

もともと2つのメモリを用いて戦う存在であったのだから、格闘能力と運動能力の向上しか出来ないジョーカーメモリでは十分に戦いきれない可能性が現れてしまう。

今回の戦いだって、防御の際は総二――テイルレッドの剣と炎に任せきりになってしまっていた。

オレ1人では避けることしか出来ず、被害も大きくなっていたことだろう。

避けきれる自信はあるが、それだって十分とは言い切れないかもしれない。

そう考えると……

 

「ジョーカーって結構難易度高いんだなぁ……」

 

なんて、オレが悩んでる間にも、愛香ちゃんとトゥアールさんのコントが行われていた。どうやら今度は何か薬を混入したようだ。

野生の感が凄まじい愛香ちゃん相手にそんなものが通用するはずもないのであるが……。

 

「ところで、だ。テイルギアの詳しい使い方とか今後の事を話し合うのはいいんだけどな。そろそろ時間も遅いし詳しいことは明日にしないか?」

 

帰ってきたのが夕方だったせいで、長々と話していたこともあり、どっぷりと日が沈んでしまっているのである。

 

「それもそうだな。でもトゥアールはどうするんだ?」

 

「そうですね。今後サポートしていかなければならないですから、なるべく総二様とともに生活したいと思っているのですが……。それに基地の建設だって必要不可欠なんですよ」

 

「基地!」

 

なんだその素敵な場所は!

 

「あの、総二様、愛香さん、なんだかお義兄様がとても喜んでいらっしゃるのですが……」

 

「あー、兄さんはほっといてくれ」

 

「一樹さん、所々子供っぽいところがあるから」

 

基地とか最高すぎるぜぃ!(かなりテンションが上がっています)

 

「でも、生活を、か……。うちは母さんと兄さんと俺の3人家族だし、多分部屋も余ってるとは思うけど……愛香の家の方がいいんじゃないのか?女の子同士なんだし」

 

「男の子、女の子もいいものですが、ここでは自重しておきます。なによりも真面目な話、近くでいた方がサポート効率の意味でも効率的ですし、アルティメギルの刺客はまだまだやってきますから」

 

「う~ん、だけどなぁ」

 

「まず、母さんにどうやって説明するかが問題なんだよな」

 

母さんのことである。面白がって冷やかすし、絶対に賛成はするのだろう。しかし、母さんまで巻き込んでしまっていいものなのであろうか……。

なるべくなら母さんには関わってほしくないと思うのは、いけないことなんだろうか。

 

そうシリアスにオレが悩んでいたのに、そう悩んでいたのに……!

 

「話は聞かせてもらったわ!!」

 

なんで思いっきり扉を開けて満面の笑みを浮かべてらっしゃるのですか、ご母堂様。

 

「なんで聞いてたんだよ、ていうか息子のプライバシーの侵害だろ!」

 

「あら、私はお菓子を持ってきてあげただけなのよ?そしたらなんだか凄いことや知らない女の子の声が聞こえてくるじゃない。これはタイミングを計る必要があると感じたのよ。聞こえてきたのだって一部よ?」

 

「………どっから聞いてたんだ?」

 

「えーと……『兄さん、カップは3つなのか?』からかしら」

 

「はじめっからじゃねぇかよ!!?」

 

「おばさん、ホントにプライバシーの侵害ですよ!」

 

「母さん、マジで自重しようよ、な?」

 

「しかし、一ちゃんもお母さんと同じ中二病だったのね!」

 

「違うからな!オレのはマジな話だからな!」

 

あぁ!あの眼は同類を見つけた時の眼だ!!

 

「でも母さんの夢が叶ったわ!いえ、お父さんも末期の中二病だったから、お父さんの夢も合わさってるのかしら!」

 

「こんな風に中二病な展開を母さん、待ち望んてたのよ!」

 

「どっかその辺に捨てておいてくれなかったかなぁ、その夢!」

 

……どうしよう、オレも望んでた節があるから強く言えねぇ…。

 

「そうそう、今だから明かすけど、ホントなら2人には命天男(メテオ)とか有帝滅人(アルティメット)とかつけようとしたんだけど、おじいちゃんたちに怒られちゃってね。一ちゃんはおじいちゃんが名付けて、総ちゃんは私たちの好きな数字の2を入れたのよ」

 

「「墓場まで持って行ってもらえなかったんですかね、その秘密!!」」

 

じーちゃん、ばーちゃん、ありがとう!さすがにそんな名前はいやすぎる!!

 

「さて、トゥアールちゃん。話は全部理解しているわ。ここに住んでもいいわ」

 

「ありがとうございます。それからここの地下に秘密基地を作ってもいいでしょうか?」

 

「勿論よ。ヒーローに秘密基地は付き物。じゃんじゃん作っちゃいなさい。ただ、私にも見せてね?」

 

「もちろんです」

 

「うぉいっ!」

 

あぁ、さっきまでのオレのシリアスが消えてなくなってしまう……なぜだ!

 

「それとお義母様、今から『困ったわね。予備の蒲団がないのよ、そうだ!総二のベットで一緒に寝るといいわ!』と言ってもらう算段をつけたいのですが」

 

「本人前にして何言ってんの!?」

 

……積極的だなぁ。お兄さん、びっくりだよ。

 

「……トゥアールちゃん、あなた、いいわ!あなたのような人が異世界からやってきたなんて、とってもいいわ!!ここを自分の家だと思って暮らしてね!……でも困ったわね。予備の蒲団がないのよ、そうだ!総二のベットで一緒に寝るといいわ!」

 

さっきトゥアールさんがいった言葉を寸分違わず言いのける母さん。いくら何でもそれはないであろうよ。

 

「というわけで、トゥアールちゃんはうちに住んでもらって全然かまわないから。総ちゃんの部屋含めて自分の家だと思ってね」

 

「ありがとうございます、お義母様。主に総二様の部屋を自分の家だと思って生活します」

 

さらっと総二のプライバシーが侵害されている気がしないでもないやり取りに、総二は泣きそうであったが、オレにはどうすることも出来ない……何故なら、なんか面白いことになってきたからな!!下手に干渉すべきではないだろう!

 

「…ふふ、その代わり総ちゃんをいつか男にしてあげてね?」

 

「いやですわ、お義母様。いつかと言わずになぜ今晩にでもとおっしゃってくれないのですか」

 

おぉっと!総二の貞操のピーンチッ!

 

「トゥアールちゃん!!」

 

「お義母様!!」

 

何か通じ合うものがあったのか抱き合う2人だが、それも長くは続かなかった。

 

「ちょっと!未春おばさん、こっち来てください!」

 

何故なら焦った様子の愛香ちゃんに引っ張られていったからである。

 

「あらあら、おばさん大人気」

 

「それから、あんた、勝手に2人に『義』を付けてんじゃなわよ!すりつぶすわよ!」

 

「なぜわかって、何をすりつぶすんですか!?」

 

この光景を見て、本気で泣きそうな総二を見て、オレは……

 

「総二、ざまぁみろ」

 

「励ましてくれるんじゃないのかよ!!?」

 

こうして、初変身と侵略者との初の戦いをした夜はふけっていった。

基地を作る音がかなりうるさく、朝方なんだかドタバタしてたけど、何もなかったんだ。うん、何もなかったと思っておく。

何でも首突っ込んでいたら疲れるしな!それは総二1人で十分だろう。

 

ヒドイ兄貴かな、オレって?


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