オレ、Jokerになります。[凍結中] 作:fateplanet
「オレは………」
さて、どうしたものか。一体全体どこまで話していいものか悩むところではあるが、少なくともジョーカーについては話さなければならないだろう。なぜオレも女性化するのかはさっぱりではあるが。
あとはそれに付随している事柄として転生した存在であることを話すべきか、どうするか……。
そうやって悩んでいるオレは視線を動かし、興味津々な総二と愛香ちゃん、そして不安そうな様子のトゥアールさんを見て、思った。
そういえば、彼女は1人でこの世界に来たのであろう。自身が異世界からの異邦人であることを理解してはいるが、不安が大きいのであろう。当然だ。完璧に見ず知らずの場所に自身の意思で来たとは言え、女性1人での来訪なんだ。不安になっていて当然だろう。そんな中味方になってくれそうな連中の中に自身でさえ把握できていない奴がいて不安に感じないわけがないではないか。
この時、オレの腹は決まった。彼女の不安を少しでも取り除けるのなら、明かしてもいいのではないかって。
オレが持ってるこの力の元の持ち主だって優しい男だったんだ。そのせいでハーフボイルドだなんて呼ばれていたけれど、優しさを無くしてまで自身の秘密を守ろうだなんてことは考えるはずがない。勿論オレは彼とは違う。それでもその背中に憧れを抱いていたのは事実だ。
だったら、オレの出自を話してでも同類がいることは安心感が生まれる、はずだ。
それにこんな事態だ。いつまでも秘密にしていられるとは思えない。
なら、話すだけだ!
「オレもな、実は異邦人なんだよ、トゥアールさん」
「異邦人ですか……?」
「いや、兄さん、生まれも育ちもここじゃないか」
「お姉ちゃんが赤ちゃんの一樹さん、見たって言ってたし、ねぇ」
まぁ、2人の反応は正しいんだろうな。
「まぁ、生まれも育ちもここだよ、肉体はな」
そうして、オレは覚悟を決めて言葉にする。
「オレは俗にいう前世を知ってる人間なんだ。しかも別世界の」
「「「……えぇぇええええっ!?」」」
「兄さん、とうとう母さんのがうつったのか!?」
「一樹さん、気をしっかり持ってください!まだ間に合いますから!」
「ぜ、前世とは科学的では……いえ、属性力があるのだから、魂という存在があっても不思議では……」
オレを揺さぶり出す総二と愛香ちゃん。オレは正気だからな、だから……
「ガクガク揺さぶるのを止めんかい!」
《ゴスゴス!》
「いってえっ!」
「いたっ!」
とりあえず、脳天に拳骨を落としてやった。
「話は最後まで聞けっての。全く」
「「はい……」」
「それじゃあ続けるぞ。オレの前世もここと似た世界であったんだけどな、前世の記憶の中にあるモノとこの世界のモノが微妙に違うことがそう思った原因だ」
「違うところって?」
「ほら、オレがよく日曜日にヒーローもの見てるだろ」
「あー、兄さん好きだもんな、あーゆーの」
そうなのである。オレはヒーローものが大好物でこの世界でも見続けているのである。
「で、それでな。ヒーローもので前世にあって、現世にないものがあってな。それの名称は、『仮面ライダー』なんだ」
「仮面ライダー?」
この世界では仮面ライダーが放映されず、初めからメタルヒーローが放送されているのである。
この時点で大きな違いであることが分かったのである。
「そう。仮面を被り、人間の自由と尊厳を守る戦士達の総称だ。それが前世から好きだったオレはその事実が信じられなくてなぁ……めちゃくちゃ凹んだんだよ」
あの時はマジ泣きしちまったからなぁ。しかも理由なんて言えるわけがないから母さんに心配かけてしまったし。
「えーと、お義兄様が前世の記憶持ちだというのは、信じがたいことですが、わかりました。実際に属性力やエレメリアンといった存在がいるのですから、そういった概念がある可能性は十分にあり得ますから。しかし、それとアレとどのような関係があるのですか?」
まあ、本来なら関係ないわな。あれがどういう経緯で手にし、どういったものなのかがトゥアールさんは知りたいんだし。
「まぁ、これはトゥアールさんに似たような奴がいるってことを話しておきたかっただけだ。関係ないわけではないんだけどな」
そう言ったら意味が分かったのだろう。びっくりした後に微笑んでくれた。
「ありがとうございます。お義兄様」
「どういたしまして、レディ」
あんまり理解できたないであろう、弟と幼馴染み殿は放置である。
「で、アレはなんなんだよ。兄さんが前世持ちなのはわかったからさ」
お前、ホントはわかってないだろ。目が母さんに向けてるソレとそっくりだぞ。それはさておき
「まぁ、さっきのことから続くんだけどな。あの変身アイテムは気付いたら部屋にあったんだよ」
「はぁ!?いつからだよ!?」
「んーと、確か4歳ぐらいの頃か。当時ライダーがないのにそれの変身アイテムがあってびっくりしたもんだ」
それ以来肌身離さず持ってたんだから10年以上の付き合いなのかぁ。
「って、ちょっと待ってください。今ライダーのって言いました?」
「おう。オレが使ったのはライダーの変身アイテムなんだ」
「つまり、仮面ライダーって、女性化するヒーロー……?」
ま、そういう風に解釈するわな、知らなかったら。
「いや、本来なら男性が強化スーツとかを纏う仕様なんだ。女性化なんてしないし、顔も仮面で隠れてるんだよ」
「……では、なぜお義兄様は女性化したのでしょうか?」
「問題はそこなんだよなぁ」
はぁ、とため息をつき項垂れるオレ。
「どうしたんだよ?」
「いや、あの時まで変身を試したことがなくてな。なんで女性化すんのかはさっぱりなんだよ」
「「「えぇぇえええっ!?」」」
「じゃ、じゃああの時変身できるのかも分からずに付けて走って行ったんですか!?」
「よくそれで突っ込んでこれたな、兄さん!」
「一度も試したことないものを使ったんですか!?」
おぉう、皆そこまでか?
「「「そこまでだよ(です)!」」」
「そ、そうか……。でもいける気はしたんだよ。メモリがそう言ってくれたような気がして」
「メモリ、ですか?」
「そう、メモリ……って、変身した後の姿の事とか、説明してなかったな」
あんまりにもびっくりされたから続きを話すことを忘れていたな。
懐からジョーカーメモリとロストドライバーを取り出す。
「まず、このUSBメモリが『ジョーカーメモリ』。これはガイアメモリと呼ばれていて地球の記憶を内包しているんだ」
「地球の記憶?」
「そう。地球に記憶されている膨大な記憶、それを抽出、物質化したもので、いろんな記憶があるが、オレが持つこのジョーカーメモリが内包するのは『切り札』の記憶。使用した時の効果は格闘能力と運動能力の向上だ」
「切り札なのにそれなのかよ?」
「切り札はいつも自分自身ってことなんだろうよ。またメモリは単独で使用すると体に害がある。それを除去するのが、これ『ロストドライバー』なんだ」
「この2つ1セットで変身する仮面ライダーの名は『仮面ライダージョーカー』。黒1色のシンプルな姿の仮面ライダー、だったんだけど……」
「実際に変身してみれば、少女だった、というわけでしたか」
「ホントになぜなのか、オレにも分からないんだよ。なんでオレのところにこの2つがあったのか、そして変身したら女性化するのかは不明なんだ」
ホントに不明だからな。神様にあったとかでもなく、気付いたらこの世界で生を受けていたから原因が分からずじまいなんだよな……。
この時オレが知る由もないことであるが、オレを転生させたのは神であり、その理由も「俺ツイの二次創作少ないなぁ。だったら自分で作ればいんじゃないか!」だったなんて、オレは知らなかったし、知ることもできなかった……。
本日2話目の投稿