今回2万文字を超えましたが、どこで区切ればいいかわからなかったので前後編に分けません。特盛です。
今回も日常編・説明回ですが、堪能していただけたら幸いです。
昔々、ある男がいた。
その男は、海に隠された扉を開いてしまった。
その扉の向こうからは何百何千の魔物がなだれ込んできて海を荒らしまわった。
その様子を見かねた太陽神は魔物を退治するための力を年頃の娘に与えた。太陽神より力を賜った少女達は海を征き、魔物達を討伐した。
古代の人々は神に推された少女達を畏れ敬いこのように呼んだ。
「皇国神話」皇歴2302年版より抜粋。
◇◇
横須賀鎮守府に、遠征に出ていた艦隊が帰還した。
タンカー護衛部隊旗艦の長良型軽巡四番艦の由良は、海面から上がりやすいように階段になっているところから埠頭に上って伸びをした。
「んぅー。4日ぶりの横須賀ね」
由良の後に続いて4人の駆逐艦娘も桟橋に上がる。
「んー、早く休みたい…」
「秋雲、だらしないですよー」
「あらあら。巻雲さんはまだ元気そうね」
「ふぅ、私はちょっと疲れました…」
第10駆逐隊に所属する秋雲、夕雲、巻雲。そして第61駆逐隊の秋月だ。現在秋月型は一番艦の彼女しか発見されていないため、遠征に出る時は6駆か10駆のどちらかと共に編成されることが多い。また、対空能力に優れた彼女は空母機動部隊と同じ艦隊に編入されて出撃することもある。
「おっ、由良達じゃねえか。ご苦労さん」
由良達と入れ替わりで遠征に出る天龍と第6駆逐隊が完全装備で埠頭にきた。
由良は天龍に聞いた。
「私達がいない間何かありました?」
「ん。あぁ、あったぜ。まぁその辺は提督辺りから聞いてくれ。それじゃあな」
「はい。いってらっしゃい」
由良にそう言うと天龍は電や暁達を連れて桟橋の方に向かった。
天龍達を見送ると、秋月が由良に聞いた。
「これからどうされますか?」
「とりあえず解散、皆は間宮の前で待ってて。私は提督に報告してくるわ」
間宮という単語を聞いて、巻雲が目を輝かせて袖の中に隠れてる腕を振りながら言った。
「巻雲はアイス食べたいです~」
「あー、巻雲はお子ちゃまだねぇ」
からかってくる秋雲に巻雲はむくれながら両腕を上げて言う。
「むぅ、そんなこと言うなら秋雲の分はありません」
「別に食べないとは言ってないしぃ~」
「はいはい。2人ともそこまでにしなさい」
駆逐艦達と別れて由良は提督執務室に出向き、江李に帰還と任務成功を報告した。
「由良以下駆逐艦四名、タンカー護衛任務より帰還いたしました。任務は成功、タンカーは無事目的地に着きました」
「ご苦労様。報告書は明日までに出すように。あとはゆっくり休んで」
「はい。…ところで、この書類の山は…?」
由良は江李の机の上に高く積まれている紙の山を指さしながら聞いた。
江李は書類の山と格闘しながら由良に答える。
「貴女たちがいない間に新しく艦娘が着任したの。これは、まぁその書類ね…」
「そうなんですか!?…もしかして、もう歓迎会も」
「ごめんね」
自分たちが遠征中にそんなことが起こっていたとは。巡り合わせの運の無さに由良は肩を落とした。
「それにしても…こんなに必要なんですか?」
由良が記憶している限り、自分の時はここまで書類が必要ではなかった。
「まぁ新しく来た子はちょっと特殊な事情があるから、その分色々根回しが必要なのよ。あと、新しく来た娘はたぶん演習室にいると思うから、もしこれから時間があったら行ってみなさい」
「わかりました。では失礼します」
江李に敬礼して由良は提督執務室を退出した。
「特殊な事情か…。何だろう」
江李が忙しそうだったためつい聞きそびれてしまったが、山ほど積み上げられた書類の束を必要とするほどその艦娘は特殊な事情であるらしい。
艦娘になった少女は、皆等しく特殊な事情を持っているようなものだ。だが新任の艦娘は、書類を山ほど用意しなければならないほど特殊な事情があるらしい。
由良が間宮に行くと、駆逐艦達はアイスを食べていた。
「おいひいです~」
巻雲が幸せそうな表情でソフトクリームを口に運び、その様子を微笑まし気に夕雲が見ていた。
「お待たせ」
「いえ、全然待ってませんよ~」
そう言う巻雲の口の周りにクリームの白い跡がついている。あらあら、と夕雲がハンカチで巻雲の口の周りを拭った。
由良は夕雲達の食べているアイスやソフトクリームが殆ど残っていないのを確認すると口を開いた。
「皆。私たちがいない間に新任の艦娘が来たみたいだから、挨拶に行こっか」
「新任ですか?ひょっとして照月ですか?それとも涼月ですか?」
秋月が興奮気味にまだ発見されていない妹達の名前を挙げた。
「あー、ごめんなさい。名前を聞いてなかったわ。でも演習室にいるみたいだから行ってみましょう」
ちょうど間宮は演習室からほど近い場所にある。
「神通達も訓練中かな?」
境界線を抜ければそこは仮想の海が広がっていた。暗く陰気な場所から明るい場所に変わって、目が眩んでしまうが、艦娘達はいつもの事だと割り切っていた。
埠頭の所に川内型の艦娘がいた。その艦娘は振り向いて由良達に微笑む。
「あら、由良さん。それに第10駆逐隊の皆と秋月さんも。おかえりなさい」
「ただいま、神通」
挨拶もそこそこに、由良は神通に質問した。
「ねぇ、神通。提督さんから新しく着任した
「ああ、平沼さんのことですね」
「平沼?」
神通から新任の艦名を聞いて、随分変わった名前だと由良達は思った。
一般的に艦娘の名前は旧国名や山岳、河川、天象や気象に因んでつけられるが、平沼という名前はその基準から外れているように思える。
それに由良の記憶では平沼という艦名の艦娘は、転移時には存在しなかったような。
色々疑問はあるが、由良はそれらを全部脇に置いて神通に聞く。
「で、その平沼ってどんな娘なの?」
「新しい娘かー。私も気になるなー」
「えー、新しい仲間って言ってもどうせ水上艦でしょ。ゴーヤ達には関係ないでち」
いきなり足元から聞こえてきた会話に、由良と神通は下を向いた。
そこには2人の潜水艦娘が肩から上を海面から出して浮かんでいた。
「お、イムヤとゴーヤじゃん。ちぃーっす」
「お2人とも帰ってらしたのね」
秋雲と夕雲が神通たちの脇から覗き込んで言った。
伊168と伊58。横須賀鎮守府に所属する潜水艦娘だ。
その任務の過酷さと潜水艦娘になるために必要な資質が求められていることから数が少ない潜水艦娘のうちの2人だ。主に敵地深くまで潜り込んで深海棲艦の動向の調査などを担当しているため、あまり鎮守府に帰って来られない。
「まぁ明日にはまた出撃するんだけどね…」
「出稼ぎ労働者よりも過酷でち…」
2人はため息でも吐きたい表情を暗くして言った。
しかしそれが潜水艦娘の任務であるし、海軍にとっても重要だから艦娘達は黙って愚痴を聞いていた。
「まぁ出る前に新任の艦娘には挨拶していったら?」
「そうですね。次いつ帰ってくるかわからないんですから」
「夕雲姉さんの言う通りだと思います」
「巻雲さ、今さらっと私のこと流したよね?」
ジトっと秋雲は巻雲を見るが、巻雲はそっぽを向いた。
「気のせいですよ、秋雲」
「本当に~?」
「本当です~」
10駆の2人のせいで話が迷走しだしたのを由良が戻す。
「それでどんな人なの?」
「うーん…。実は私もまだ挨拶してないので、平沼さんのことはよく知らないんです」
ただ、と神通は前置きしてさらに言う。
「平沼さんは記憶喪失、らしいです」
「えっ?」
「提督のお話では、装備や自分の艦名以外覚えてないとのことです」
由良達は思わず顔を見合わせた。もしかして江李が言っていた特殊な事情とはそのことだろうか、と由良は考える。
その時、遠くから小さな爆発音が聞こえてきた。
由良達が沖の方を見ると、艦載機同士がぶつかり合っているのか空中に黒い雲がいくつも開花している。
「あれって…」
「一航戦と五航戦が実戦形式の演習中です」
一航戦と五航戦。共に横須賀に所属する日本海軍の主力だ。
師弟関係ではないが、先輩後輩の関係である彼女達はよく実戦形式の演習を行っていた。
どちらが勝っているのかここからでは状況がよくわからないということで、艦娘達は監視室へと移動した。ゴーヤたちはゆっくり海に浸かっていたいとのことで、そのまま埠頭で別れる。
「あ、愛宕さん」
「あら、由良ちゃんに皆。おかえりなさい」
今日の監視役は愛宕だ。遠征から帰ってきた水雷戦隊を愛宕はにこやかに迎えた。
演習の状況を伝える鏡には一航戦と五航戦、それぞれの航空戦隊の護衛に就いた駆逐隊の姿が映し出されている。
優勢なのは一航戦だ。五航戦だって練度も性能も高いが、やはり経験の差で一歩及ばない。
五航戦の右翼を担当する陽炎が流星改からの雷撃を受けて落伍した。陽炎の穴を埋めようと前衛の霞、後衛の不知火が移動するが、やはり1人抜けた隙間は大きい。
たった今翔鶴に彗星の急降下爆撃が降り注ぎ、爆弾が二発命中した。被弾した翔鶴から黒煙が立ち昇る。
その様子を見ていた神通がポツリと呟いた。
「やはり信じられませんね…」
「何が?」
「昨日天龍さんからお聞きしたんですが、噂では平沼さんはたった1人で赤城さんと加賀さんの艦載機74機を撃墜したそうです」
「えぇっ!?それって、どうやったんですか!?」
珍しく秋月が非常に興奮した様子で神通に聞いた。単独で74機撃墜など防空駆逐艦である秋月でもできないような芸当だ。
由良達も信じられないという表情を浮かべている。
「私はそれを見てないので、彼女がどうやったかは…」
「……それって、冗談よね?」
珍しく引きつった笑みで由良が神通に聞いた。
「うーん、噂だと思いたいんですけど…。やけに数字が具体的なので否定しづらいんですよね…」
「一体何をどうしたらそんなことができるのやら…」
「特殊兵装実験艦ということらしいですので、もしかしたら何か新装備でも使ったのではないかと思います」
「高雄も似たようなこと言ってたわね。たった1門の12.7cm単装砲で金剛さんを中破させたらしいわよ~」
傍らで話を聞いていた愛宕が口をはさんだ。
えぇ!?と、遠征からの帰還組が一様に驚きの声をあげた。
瑞鶴に流星改の雷撃が命中し、一航戦の勝利で演習は終わった。
愛宕により夢弾モードが解除され、ボロボロになった艤装などが元通りに戻った艦娘達が埠頭に戻ってくる。
「で、その娘は今どこにいるの?会いたいんだけど」
「それが…まだ御休み中だそうです」
「え?」
由良は思わず壁に掛かっている時計を見た。時計の長針は、もうすぐ11時を過ぎようとしていた。
◇◇
他の艦娘が訓練に勤しんだり周辺海域の警戒に出ている頃、社殿の仮住まいの部屋ではぐろはまだ寝ていた。
もう十分日は昇り、あと1時間ぐらい時間が経てば半日を寝て過ごすことになってしまう。
ようやくピクリとはぐろの瞼が動いた。
「うっ…うーん…」
頭がぼんやりとする。目を開けたまま、しばらくはぐろは横になっていた。
ようやく頭がはっきりしてきた時、はぐろは時計を見てハッとなった。
「えっ…?11時半……。やばっ、寝過ごしたッ!」
昨夜江李に訓練を行う許可をもらったのに寝坊するなんて、と不覚を嘆きながら布団から飛び起きて身支度を整える。はぐろは慌てて部屋を飛び出て司令部の大淀の下に向かう。社殿の外に出ると、まだ夏の色を残した
慌てていたため、はぐろは途中で何度か転んでしまった。2号館から距離は離れてはいないが1号館に着いた頃には埃と土に塗れていた。
「はぁっ…はっ…」
「ちょっ、大丈夫ですか?平沼さん?」
そろそろはぐろを起こしに行こうと、ちょうどその時玄関に出てきた大淀は、体中埃と土だらけで息も絶え絶えのはぐろを見て慌てて駆け寄った。
「すいません…。寝過ごしました……」
「はぁ…。そんなに慌てなくても。というか服どうしたんですか」
大淀が割と強めに叩いた。砂埃が舞い、玄関前の地面にパラパラと落ちる。
「朝ご飯もまだでしょう。ひとまず食堂に行きましょう」
書類を片付けた大淀がはぐろにそう言った。
食堂には伊勢型姉妹と鳳翔、飛鷹型姉妹がいた。まだ少し昼食には早いからか彼女たちの他に艦娘はいなく、食堂は閑散としている。
「おっ平沼じゃん。ずいぶん遅いお目覚めだね」
「すいません。寝過ごしました…」
「昨日の歓迎会で疲れが出たのかもしれませんね」
鳳翔が気を利かせて麦茶を2人分出した。はぐろと大淀は礼を言って受け取る。
「私は酒が出なかったから、ちょっとねぇ」
「何言ってるのよ、こっそり自前の奴持ち込んでた癖に」
「あ、バレてた?」
飛鷹に指摘されて隼鷹はカラカラと笑った。だがこの場には彼女がいた。
「これはいいことを聞きましたね」
「お、大淀…?」
なぜか眼鏡が光を放っている大淀は、殺気に似たオーラを放ちながら隼鷹に詰め寄る。
「道理で昨夜少し顔が赤いと思ったら」
「の、飲んでないよ…。素面だったよ…」
「隼鷹さん…?」
修羅場になった2人を横目に、はぐろは気になっていたことを質問した。
「そういえば、伊勢さん達はどうして航空戦艦になったんですか?元は戦艦なんですよね?」
「あれ、よく知ってるね。実は私たちがこの世界に転移した時は艦娘のほとんどが離れ離れになってね…。で、私達は比較的早く合流出来たんだけど、その時は赤城くらいしか正規空母がいなくいし軽空母も少なくて。で、他の正規空母と合流するまでの急場凌ぎってことで改造されたのさ。艦載機は千歳達の瑞雲を流用してね」
「あの頃は大変でしたね…」
「あぁ。今ではだいぶ楽になったが、あの頃は本当に大変だった」
伊勢や日向、鳳翔が思い出すように遠くを見た。
平常運転に戻った大淀が伊勢達に話しかけた。大淀の後ろでは隼鷹が生気を失った表情で口から出たらいけないものを出している。飛鷹がなんとか戻そうと必死になっていた。
「ところで、皆さんはお昼過ぎから訓練でしたよね?」
「うむ、そうだが。私と伊勢と七航戦とな」
「もしよろしかったら平沼さんもご一緒させることはできませんか?」
大淀が伊勢達に聞いた。お目付け役が必要だ。航空戦艦である伊勢と日向がいればそうそうトラブルも起きはしないだろう。
「平沼は何をするのだ?私達は午後から対潜攻撃の訓練をやろうと思ってるんだが」
「対潜戦闘ですか…」
海上自衛隊のお家芸ともいうべき対潜水艦能力。その能力の高さは世界第二位と謳われるほど。世界最高水準にある機雷の掃海能力と並び世界に誇れる海自の能力だ。
イージス艦とはいえ、護衛艦である以上はぐろも十分に対潜攻撃能力は持っている。
対潜戦闘訓練にも興味はあるが、いい加減にしないとCIWSが拗ねてしまうのではぐろは伊勢達に言った。
「うーん、私は対空戦闘の訓練をしようと考えています」
「ほう、噂に聞く神業を見せてくれるのか」
「別に神業というほどでは」
はぐろからしてみればあの程度イージスシステムをフルに使って撃墜したに過ぎない。
だが艦娘には1人として単独で全機撃墜できる者がいないのもまた事実だ。
「謙遜するな。少なくともあのような真似をできるのはお前ぐらいだろう。胸を張ればいい」
「で、どうやったらあんなことできるの?…ん?」
伊勢が詳しく聞こうとしたところ、にわかに食堂の出入り口が賑やかになる。
演習室での訓練を終えた艦娘達が昼食を取ろうとやって来る。
「お腹空きましたー」
「巻雲はいっぱい食べないと、色々と小さいままだからねー」
「むぅ!なんで秋雲はいつもそうなんですか!」
「はいはい、2人とも。食事前なんですからあまり騒がないように」
第10駆逐隊を先頭に、秋月、由良、神通、一航戦、五航戦、7駆、18駆、愛宕の順で食堂に入ってくる。
「そろそろ昼食の時間ですからね。では私は厨房のお手伝いの方に行きます」
そう言って鳳翔は立ち去っていく。
「鳳翔さんは訓練とかはしないんですか?」
「あー、鳳翔さんはね。最初期に空母艦載機の運用、開発なんかをして今の空母の雛形を作ったすごい人なんだけど、そのせいか今の戦闘にはついていけそうにないって言ってあんまり戦闘には出ないんだよ。惜しいとは思うんだけどね」
「そうなんですか」
はぐろ達がそう話している脇を艦娘達が通り抜けていく。加賀や赤城などは軽く目礼したり挨拶をして食事を受け取りに行くが、遠征に出ていた面々は見知らぬ顔を見て誰だろうと首をかしげる。
秋月がおずおずとはぐろに聞いた。
「あのー、ひょっとして平沼さんですか?」
「ん?そうだけど」
「やっぱり!私は秋月と申します!平沼さんに会えて光栄です!」
「は、はぁ…。どうも…」
初めて会った艦娘にキラキラ輝く眼差しを向けられ、困惑しながらはぐろは記憶を巡らせた。
秋月は確か防空駆逐艦として建造された秋月型駆逐艦の一番艦、と記憶している。恐らくその駆逐艦と艦名や装備などはほぼ同じだろうと、はぐろは今までに会った艦娘から推測した。
しかし何故秋月がこれほどまでに好意を向けてくるのかはぐろにはわからない。答えは秋月から出された。
「あのっ!一航戦の方々の攻撃隊をお一人で全滅させたというのは本当ですかっ!?」
その一言で食堂の空気が変わった。加賀の片眉が一瞬跳ねる。瑞鶴はさらに不機嫌になる。食事前の和やかで賑やかな雰囲気は消え失せ、あちこちから聞き耳を立てている雰囲気が伝わってくる。
「あー、えっと…」
はぐろはチラリと大淀の様子を伺う。大淀はため息をつきそうな表情で仕方なさそうに頷いた。
「うん、そうだけど…」
顔を綻ばせる。心なしか秋月が輝いてるかのような気もした。
「一体どうしたらそんなことができるようになるのですかっ!?」
「え、えっと…」
はぐろが秋月の勢いに圧倒されていると、横から上品な口調と声で誰かが秋月を静止した。
「秋月さん、お食事前ですよ。落ち着いてください」
「あっ…。す、すみません!」
夕雲に注意された秋月は赤面して縮こまった。
「初めまして平沼さん。私、夕雲と申します。先日は遠征中でご挨拶できず申し訳ありません」
「いえいえ。そんな。こちらこそよろしくお願いします」
ずいぶん丁寧な挨拶をされて、つられてはぐろも丁寧に頭を下げて挨拶をする。
夕雲と同じ制服を着た少女達がはぐろに挨拶をする。
だが眼鏡を掛けている少女は夕雲やもう1人と違って背丈がとても低く、袖の長さが合わないのか手が服の中に隠れてしまっている。
「巻雲は巻雲っていいます~」
「駆逐艦秋雲っていうんだ。よっろしくぅ!」
巻雲に続いてやや軽そうな艦娘の自己紹介にはぐろがピクンと反応した。
あきぐも型護衛艦。かつて25DDと呼ばれた、はまかぜ型護衛艦の次級だ。年々予算が減らされる中、あぶくま型の次級である
しかし横須賀鎮守府には本当に聞き覚えのある艦娘が多いとはぐろは改めて実感した。
食堂のあちらこちらから空腹感を覚えさせ、食欲を刺激する匂いが漂ってくる。
巻雲が涎をたらしそうな表情で言った。
「そっか。今日は金曜日だったわね。私たちも取りに行きましょう」
伊勢に続いてはぐろや他の艦娘達も食事を受け取りに行く。
漫画ならぽわぽわとハートマークが漂っている表現
「今日のお昼ご飯は、カレーライスなんですね~」
「カレーライス、ですか。好きなんですか?」
「はい!とってもおいしいです!」
袖をパタパタと振りながら巻雲ははぐろに言った。そしてカレーがどんなものかをはぐろに説明する。
はぐろは相槌を打って巻雲の説明を聞くが、カレーライスがどんなものかは既に知っている。
何故なら海上自衛隊は金曜日にカレーを食べると相場が決まっているからだ。長い航海で曜日間隔が狂わないようにするためだ。元は英国海軍から旧帝国海軍に伝わってきたのだが、その伝統は海上自衛隊に受け継がれた。
また護衛艦カレーも有名であり、レシピが公開されている他、イベントが行われることがある。
第2回目の
2回目のGCグランプリにはきりしまも参加する予定だったが急遽キャンセルされたため、自分も参加したかったと残念そうだったのもはぐろは覚えている。
カレーに関する記憶を思い出しながらはぐろは鳳翔からカレーを受け取る。
そして10駆や秋月、航空戦艦と軽空母姉妹達と共に席に着く。
いただきますの挨拶を皆でして、スプーンでルーとライスを掬って1口。
「ん、おいしいですね」
「でしょー」
フフフとはぐろと伊勢達は顔を見合わせて笑いあった。
「あれが平沼って娘?」
一方由良は、はぐろ達が和気あいあいと楽しく昼食を食べているのを神通と共に遠くから眺めていた。
「なんていうか…普通だね」
「由良さんもそう思いますか?」
金剛との一騎打ち、一航戦を打ち破る程の戦闘力を誇る艦娘。一体どんな艦娘かと思えば至って普通。
普通どころか駆逐艦と同じくらい華奢で弱く感じられる。
だが由良達は少し険しさがある表情ではぐろを観察する。由良も最初は秋月達と一緒に挨拶しようと思ったが、駆逐隊を率いた長年の経験がはぐろから何かを感じ取って由良に躊躇させた。
「でもなんか、あれだね。上手く言えないし失礼なんだけど……。正体がわからないってのは怖いね」
「……」
提督や大淀が受け入れていることから大丈夫なのだろう。だが見た目と実験艦の種別に合わない戦闘能力。その事は水雷戦隊を率いて深海棲艦と近距離で戦う軽巡洋艦に少しばかりの警戒感を抱かせた。
◇◇
お昼を食べ終え、場所も変わって演習室。
神通たちも同じく訓練らしい。先ほど陽炎達を引き連れてはぐろ達とは別の海域に向かっていった。
「平沼さんの対空戦闘訓練…。一体どんな風なんだろう」
秋月が呟いた。秋月としては一航戦の攻撃隊を殲滅したとされるはぐろの対空戦闘を直に見てみたかった。
遠征に出ていた艦娘は1日ほど休養を与えられるが、どう過ごすかは自由なので、実験艦の訓練風景というものを見物に来たらしい。第10駆逐隊は、夕雲が訓練に関係ない者があまり大勢いては迷惑だと言って監視室から見学中だが。
「その前に私たちの対潜攻撃訓練が先だけどねー」
伊勢が秋月に言った。
「平沼には一応説明するけど、潜水している仮想標的があの海域にいるの。といっても、沈んでるだけの的なんだけどね」
「そういえば、皆さんはどうやって対潜攻撃を?」
「決まってるじゃーん。この子達だよ」
隼鷹が言うと、伊勢と日向が左腕に持っていた飛行甲板を構え、隼鷹と飛鷹は巻物を広げ飛行甲板を展開した。
「航空機、発艦始め!」
伊勢と日向が構えた飛行甲板のカタパルトから水上爆撃機瑞雲が射出された。飛鷹と隼鷹が広げた巻物から切紙が浮きあがり、その形を変える。切紙は艦上爆撃機彗星や艦上攻撃機天山に変わって飛んでいった。
はぐろは初めて見るレシプロ機や水上機を見て口を丸くした。
瑞雲と彗星、天山はそれぞれ編隊を組み、訓練海域に進出して潜水艦がいると想定している海域に爆雷や爆弾を落としていく。
「おぉー…」
ずいぶん大雑把な攻撃方法だとはぐろは思った。それに潜水艦がいると想定してとのことだが本当に攻撃するだけの訓練なのかと少し呆れてしまう。
そんなはぐろの雰囲気を感じ取ったのか伊勢が弁解するように言った。
「まぁ潜水艦退治は私たちよりも駆逐艦達の仕事なんだけど、いざってこともあるしね。やれるに越したことはないし」
確かにその通りかもしれないが、あれで潜水艦を沈められるのだろうか。自分が搭載する対潜兵装と比べて見劣りする装備に、はぐろは不安を抱かずにはいられない。
そんな事をはぐろが考えていると、伊勢達の艦載機が戻ってきた。彗星や天山は隼鷹達の飛行甲板に着艦すると元の切紙に戻るが、瑞雲は着水してクレーンで伊勢達に回収される。
それを見ていたはぐろはふと気になって質問した。
「そう言えば皆さんは艦載機をどうやって動かしているのですか?」
はぐろがそう質問すると、その場にいた全員がはぐろにポカンとした表情を向けた。
何かまずいことでも聞いてしまったかとはぐろが内心焦っていると、隼鷹が心配そうに聞いてきた。
「何、そんなことも忘れちゃったの?この子達には妖精達が憑いてるんじゃん」
「え?…あ、あぁ。そうでしたね」
〝ようせい〟……。要請?養成?いや、まさか…〝妖精〟?
愛想笑いを浮かべながらはぐろは脳内変換していくが、思い浮かぶのはどれも会話の流れに合わない気がする。
とりあえず、艦娘の艦載機には〝ようせい〟というものが憑いているらしい。
ならば自分の艦載機はどうだろうかと、はぐろはチラリと背部の格納庫を見た。
そこで翼を休めているのはSH-60K対潜哨戒ヘリコプターだ。
SH-60Jの改良型で、対潜能力の向上やJ型と違ってK型は短魚雷の他に小型の対艦ミサイルや対潜爆弾も装備でき、自動着艦装置まで備えてあるなどJ型と比較して性能はかなり向上している。
その航空機が使用できるなら、はぐろの対水上戦闘能力や対潜戦闘能力が大幅に上がるだろう。
「なぁに、どうしたのー?」
「あ、いえ、その。私も航空機を載せてるんですけど…今まで航空機を扱ったことがないので」
嘘ではない。SH-60Kは対潜だけではなく対水上戦闘にも役立つが、はぐろは一昨日の演習で使用していない。何より飛ばし方を知らない。
ミサイルや主砲などは隊員たちがどう動かすか、どう使うのかを実際にはぐろが見ていたため扱い方を知っている。しかしSH-60K哨戒ヘリは性能などは知識として知っているものの、パイロットがどのようにヘリを飛ばしているのかは知らない。なので今まではぐろはSH-60Kの使用を躊躇っていた。
日向が頷いてしみじみと呟いた。
「確かに初めては不安だろうな。私も航空戦艦になって水偵ではなく瑞雲の運用を命じられた時は困ってしまった」
「なぁ、どんな奴載せてるんだ?」
隼鷹が興味津々で聞いた。日向も聞き耳を立てている。
「えっと、対潜哨戒機です」
兵器の歴史に詳しくないため、はぐろは敢えて固定翼機と回転翼機のどちらにでも取れる言い方をする。
実際には太平洋戦争の頃に大日本帝国陸軍でもオートジャイロが作られているように、アメリカやドイツなどでもヘリコプターの開発が行われ、特に米国ではシコルスキーが開発した量産ヘリ、R-4が太平洋戦争に実戦参加したことがある。
とはいえヘリコプターの歴史を知らないはぐろは自分が怪しまれないようにするためで精一杯だった。
「なんだよ、そんなのあるなら使ってみたらどうだい?」
「うむ、苦手を克服するというのは大切なことだ」
「とか言って、本当は見たいだけでしょ」
日向が伊勢をキッと睨んだ。やや耳の辺りが赤くなっている。
伊勢型姉妹の事は放っておいて、はぐろはどうするか考える。
やはりヘリを使えないのと使えるのとでは、万が一はぐろが戦闘に参加する事態が起こった時に選択肢がだいぶ変わる。
今後においてヘリが使用できるかできないかの違いは明暗を分けることになるかもしれない。
「では対空戦闘の前に、これより艦載機の運用訓練を始めます」
はぐろは艦載ヘリの発艦準備を行おうとする。だがそこで再び何故自分が艦載ヘリを使わなかったかを思い出す。
(あれ、どうやって艦載機発進させるんだろう?)
別の事を考えていたせいか、それとも危うくボロを出しそうになって動揺しているのか、はぐろは艦載ヘリの飛ばし方も発艦の仕方も知らないのもついうっかり忘れていた。
ヘリコプターの飛行は伊勢達の水上機とも隼鷹達の艦載機とも違う。だから参考にはできない。
それに今のはぐろの状態では、背中にある格納庫をはぐろはいじることもできない。
伊勢達のように手元に格納庫があれば何かしらできたかもしれないが、たぶんあまり状況は変わらないかもしれない。
半ば自棄になってはぐろはCICの訓練で要員が伝達する命令を口にする。
「航空機発艦準備、準備でき次第発艦」
はぐろが命令した直後、はぐろの背部の機関部と一体化した格納庫のシャッターがガラガラと開いて行き、中からSH-60Kが飛行甲板にゆっくりと移動していく。
その様子は格納庫天井部分に設置されているらしい艦内カメラを通じてバイザーに表示される。
これでいいのかと不安になり始めるはぐろを置いてけぼりにSH-60Kは着々と発艦準備を進める。
SH-60Kはメインローターを展開し、暖機運転を開始。甲高いエンジン音が響く。メインローターがゆっくりと回転し始めた。徐々に回転数をあげていく。
各種機器、全て正常。問題なし。はぐろのバイザーのSH-60Kの項目に発艦準備完了の文字が表示される。
はぐろは生唾を飲んだ。緊張しているのを自覚する。一旦落ち着けるため、深く息を吸った。
「ベアトラップ解放、航空機発艦!」
〝 ―――――。―――〟
「え?」
はぐろの呟きを無視して拘束器具から解放されたSH-60Kはふわりと飛び上がり、ある程度の高度まで上昇すると艦隊周辺を旋回し始める。
「ほぉ…」
「あれが…新型の艦載機?」
艦娘達は皆興味深げにSH-60Kを見ていた。
南方鎮守府に所属する揚陸艦はカ号観測機というオートジャイロを装備しているが、それでも飛ぶためにはある程度の長さの飛行甲板が必要だ。
さらにはぐろには水上機を射出するためのカタパルトもない。
伊勢達ははぐろがどのように航空機を飛ばすのか疑問に思っていたが、まさか垂直に飛び立つとは想像していなかった。
一方、はぐろは戸惑っていた。何かを聞いた。声ではない。ただ言えるとしたら歓喜の叫び。
飛び立つ時に、
気のせいかと思いはぐろが上を見上げれば、SH-60Kは速度を上げて東の方へと飛んで行った。
バイザーに幾つか新たな情報が浮かんでいる。考え事をしている場合ではないとはぐろは考え直し、状況を確認する。
「……データリンク良好。問題なし」
SH-60Kから送られてくるデータを見ながらはぐろは呟いた。これなら十分運用できる。はぐろが満足そうに頷いていると、SH-60Kの対水上レーダーが何かを捉えた。
「ん?」
反応の数からして別の区域で訓練中の艦娘ではなさそうだ。そもそも場所も違う。
はぐろが何だろうと思っていると、SH-60Kのカメラを通してバイザーの右半分に映像が表示される。
そこにはセーラー服に水着を着ているらしい少女達の姿があった。
「ん?何でちか、あれ」
「あれ?」
ゴーヤとイムヤは海面でぷかぷか浮かんでいた。浮き輪の穴の部分に座るように漂っていると、どこかからプロペラの音が聞こえてくる。
先ほども伊勢達の艦載機と思われる航空隊が対潜攻撃訓練を行っていた。
今度は何が来るのかと思っていれば、たった1機のオートジャイロだ。
妙な艦載機だ。オートジャイロというものを一度だけ目にしたことがあるが、あれは異質なものだと感じていた。
まるで獲物を見つけたかのようにオートジャイロは空中に静止してゴーヤ達を眺めている。
「……なんか怖いでちね」
「……うん」
もうすっかりずぶ濡れだが、2人は冷や汗を掻きだしたのを自覚した。
空を飛んでいるものの正体など2人は知らない。だが直感的にあれは自分たちの天敵だと感じ取っていた。同時に遠くから殺気のようなものが向けられているのも感じていてビクビク震えていた。
一方その頃。SH-60Kが送ってきた映像を見ていたはぐろは、どういうわけか
「
はぐろの言葉に『ウミツバメ』のコールサインで呼ばれたSH-60Kはホバリングを止めて旋回する。そして元来た道を帰って行った。
それを見た潜水艦娘はホッと息を吐いた。
一方、はぐろも艦娘からSH-60Kが距離を取ったのをレーダーで確認してホッと息をつく。艦娘らしき少女達を見て感じた敵意のような感覚は何だったのだろうとはぐろが考えていると誰かが肩を叩いた。
伊勢が心配そうに覗きこんでいる。
「どうかした?なんか様子が変だったけど?」
「い、いえ。なんでもないですよ」
何故か無性に対潜ロケットを撃ち込みたくなったなどと口が裂けても言えない。絶対におかしな物を見る眼で見られるとはぐろは危機管理能力が少しだけ向上していた。
そうしていると羽ばたく音が戻ってきた。小さな白い機体が肉眼でも見えてくる。
「あ、帰ってきた」
イージス護衛艦の優秀な対空レーダーで既に察知していたが、いつの間にかはぐろの口から言葉が出ていた。
艦隊の上空を2周した後、遊覧飛行を終えたSH-60Kははぐろにアプローチする。
「航空機、着艦用意」
SH-60Kはゆっくりとエンジンの出力を落としながら飛行甲板に接近。甲板の少し上で滞空して、慎重にタッチダウン。プローブがベアトラップに挿し入れられ、拘束具に両側から挟まれることでSH-60Kの着艦シークエンスは無事完了する。
エンジンカットし、ローターの回転が止まる。ローターを収納したSH-60Kはそのまま格納庫へと移される。
「お帰り…」
はぐろは我知らず安堵のため息をついた。そして予想していたよりもSH-60Kの運用で負担がないことに少し驚いていた。
はぐろはラジコンのように常に自分が操縦し続けていなければならないのかと思っていた。
だが違った。まるでCIWSが自律自動で対艦ミサイルを迎撃をするように航空機は飛んでいく。
航路や速度、そういったものを一々決めずとも自動で巡航速度を維持し、はぐろに探知した目標のことを伝達してきた。
そういった風に行動するようになってるのかもしれないが、目標の捜索から脅威度の判定、目標の捕捉、攻撃指令まで自動で行うことができるイージスシステムのようなシステムは積んでいない。
何らかの意思、とまではいかないがそれに似たもの(ようせいというものだろうか?)が今のSH-60Kに搭載されているのかもしれないと改めてはぐろは思った。
はぐろが考え込んでいると日向が声をかけてきた。
「平沼、あれは何と言う航空機なのだ?」
「あれは…えーと……。ロクマルという機体です」
形式番号のSH-60Kも愛称のシーホークも日本的(陽ノ下皇国的?)な名前ではないので、自衛隊内で通っている愛称をはぐろは言った。
だが日向は首をひねってさらに質問した。
「?…随分と早くないか?確か私達がこちらに転移したのは皇歴2304年…。あれから15年経ったとしても2319年で
「え…?(…選択間違えたーー!?)」
予想外の指摘に内心大慌てでどう誤魔化そうかはぐろは考える。
だが言い訳が思い浮かぶ前に伊勢が日向に言った。
「まぁまぁ日向。平沼は記憶喪失なんだから、変なこと聞いて困らせたらだめでしょ」
「む、そうであったな。すまん平沼」
「い、いえ。そんな…」
はぐろは愛想笑いを浮かべながら、なんだか申し訳ない気分でいっぱいだった。もう少しはったりやでまかせなどを磨く必要があるかもしれないとはぐろは痛感した。
とりあえず航空機を運用できることがわかったので、明日はSH-60Kに短魚雷を積んで対潜戦闘の訓練をすることにして、はぐろは対空戦闘の訓練に移る。
伊勢達も噂の対空能力がどれほどのものなのか、と興味津々だ。
「で、どんな風にやるんだ?」
「標的機がないので実弾は使わず想定だけで済ませようかと」
お昼ご飯の後はぐろはどう訓練するか考えていたが、対空用の標的をどうすればいいのか思いつかなかったためCIWS以外は想定だけで済ませる事にした。
だがその回答に艦娘達、特に隼鷹と秋月は不満をあげる。
「えー。新装備見せてくんないの?」
「私も見たいです」
「と言われましても標的機はいませんし、司令からは演習を禁じられていますし」
困った様子ではぐろは隼鷹達に答えるが、秋月は納得していない様子。
そしてどうしても見たいのか隼鷹がはぐろに言った。
「標的機がなくてできないならあたしらが標的機を操ってあげるよ。なあ飛鷹」
「え?…まぁそれなら演習ということにはならないわね」
「どういうことですか?」
疑問符を浮かべるはぐろを余所に隼鷹が飛行甲板を展開する。切紙の一枚がふわりと浮かんだ。
「ほいっと」
切紙がドロンと煙に包まれた。それは先ほどの彗星や天山ではない黒い翼の機体だ。どことなく深海棲艦の艦載機を思わせるが機銃がついていないなど微妙に差異がある。
黒い翼の機体は飛行甲板の上を滑空し、上空へと舞い上がる。
「これをあたしらが動かして平沼が落とす。わかりやすくていいでしょ?あくまでこれは標的機であたしらは訓練のお手伝いをしてるわけだから」
ニシシと隼鷹は笑った。
「はぁ…。い、いいのかな?」
「別にいいんじゃないかしら。怒られるとしても責任は全部隼鷹が取ってくれるでしょうし」
「おい、飛鷹!」
さらっと責任を押し付ける飛鷹に隼鷹はガーッと吠え掛かるが、飛鷹は言い出しっぺは隼鷹だろうと全く取り合わない。
というわけではぐろの訓練は隼鷹達の協力で実戦に近い形式で行われることになった。
はぐろは伊勢と日向、秋月と共に艦隊を組み、襲来する敵航空隊を撃墜するという内容だ。
仮想敵を担うのは飛鷹と隼鷹の2人。ちなみに第七航空戦隊を構成する飛鷹型姉妹は軽空母の中でも搭載量が多いため、大規模な作戦の時は横須賀や佐世保の正規空母で構成された航空戦隊の他に佐世保の第二戦隊や呉の第一戦隊と共に行動することもある。
今回の対空戦闘訓練も夢弾で行うこととなった。実弾を使う事の重要さをはぐろも理解しているが、対空ミサイルは補充ができるかどうかわからない。江李は何か考えているらしいが、現時点で対空ミサイルや各種弾薬の補給はない。
監視役を愛宕と交代した鳥海に連絡して夢弾状態になったのを確認してから訓練は始まった。
訓練を準備する段階ではぐろ達と距離を取っていた隼鷹と飛鷹は、予め知っていたはぐろ達のいる方向に標的機を飛ばす。
「対空電探に感。本艦隊に近づく目標群1。機数12。本艦隊直上通過予想時間は20分後」
ほぉ、と日向が声を漏らした。まだ肉眼でも小さすぎて確認できない距離だというのにもう探知して正確に数や速度を報告できるのかと感心した様子。
「面舵一杯。第2戦速。対空戦闘用意。SM-2、発射用意」
はぐろを先頭に単縦陣で航行し、伊勢達ははぐろが披露する対空戦闘がどんなものかワクワクしながらはぐろの背中を見る。
「スタンダード発射始め、サルボー」
号令一下、次々にはぐろのVLSから煙と共に対空ミサイルが発射される。その数は5発。白い尾を残して空の向こうに消えていく。
いきなりはぐろが煙に包まれて、その後にはぐろから何かが次々に飛んでいくのを見て伊勢達は目を見開く。
「噴進弾、か?だが一体どこにあんなものを」
一応艦娘の対空装備にも噴進弾はあるが、それは蜂の巣の断面みたいに穴がたくさん開いた噴進砲に詰め込まれている。だが噴進砲らしき装備は実験艦のどこにも見当たらなかった。
それに噴進弾は強力な対空兵装だが、それでもまだ標的機が米粒ぐらいにしか見えない距離でどうやったら落とせるのか。
日向がそう思っているとほぼ同時に黒い雲ができる。その中から小さく見える破片が海面に落下していくのが見えた。遅れて小さく爆発の残響が伊勢達に届いた。
伊勢と日向はあんぐりと開いてしまった口を閉じず、呆然となっている。
「うへぇ。何だいありゃあ」
離れた場所にいた七航戦の2人もその光景が見えていた。ほぼ同時に5機を撃墜したのを見て流石の隼鷹も冷や汗を流す。
「…あれでもまだ本気じゃないんでしょうね」
噂では74機。たかだか5機同時撃墜など簡単なことだろう。
だがその一端を垣間見ただけで飛鷹は心臓が凍りそうだった。
「目標群1、5機撃墜。スタンダード攻撃中止」
まだSAM防衛ラインが抜かれたわけではないが、はぐろは対空ミサイルによる攻撃を中止する。亜音速にすら届かない目標がたったの7機。その程度なら対空ミサイルだけであっという間に殲滅できるが、他の対空兵装の具合も確かめなければならない。
残る敵機は7機。武装もないただの案山子にはぐろは主砲の照準を合わせる。
「右対空戦闘、主砲撃ちぃ方ぁ始め」
はぐろは主砲による迎撃を開始。3秒ごとに発射される主砲弾は的確に標的機隊を捉え、黒い花を青い空に次々咲かせる。
これも5機を撃墜してあとはCIWS用に残しておく。
主砲防衛ラインを突破した2機の標的機は分かれてはぐろを挟むように接近する。
はぐろは標的機に対し2門のCIWSを指向する。
「CIWS、AAWオート!」
重い唸り声と共に艦を護る最終防衛ラインが火箭を迸らせる。あまりにも連射速度と初速が速いため弾丸が全く視認できない。伊勢達には煙が噴射されているようにしか見えなかった。
だが弾丸が視認できなくともCIWSが発砲したのは確かだ。煙が噴射していたほんの数秒間で2機の標的機はバラバラになったのだ。
おぉ、と伊勢型の2人が感嘆の声を上げた。秋月は感服しきった様子で口を大きく開けてはぐろを見る。
一方はぐろは淡々と訓練終了を報告する。
「対空目標、全機撃墜を確認。周辺空域に脅威なし。対空戦闘用具納め」
「すごい…」
秋月の目の前で今まさに見せつけられた新装備の数々。それらを駆使して戦う姿を見れば噂は事実だと疑いようがない。
「すごいです平沼さん!」
胸の前で2つの握りこぶしを作った秋月ははぐろに言う。
「ぜひお師匠と呼ばせてください!」
「へ?」
いきなり変なことを言い出した秋月にどう答えればいいかわからずはぐろは口ごもる。そんなはぐろに日向が助言した。
「え、えっとぉ…」
「ふっ、良いのではないか?尊敬する相手を呼び習わす感じなのだろうし」
「そうそう。どっかの誰かさんも師匠って呼ばれるしね」
伊勢が茶化した風に言った。
後ろで唐突に勃発した姉妹同士の
だが秋月の純粋な眼差しに見つめられると断るのもできず、はぐろは言った。
「あー。えっと、…貴女に何も教えることとかできないけどそれでいいのなら」
「構いません!!」
秋月に即答され、はぐろは思わずたじろいだ。
この日、護衛艦を師匠と呼ぶ駆逐艦が誕生した。
◇◇
日が暮れて暗くなった空で星達が瞬く頃、訓練や出撃してきた艦娘達で飯時の食堂は賑わっていた。
一部の艦娘達で話題を占めているのは例の特殊兵装実験艦だ。
航空戦艦と軽空母。共に艦隊の主力となる艦娘達は昼間見た新装備とそれを保有する艦娘のことを話していた。
お酒ではなく鳳翔が作った麦茶を片手に隼鷹はいつものおちゃらけた口調で飛鷹や伊勢達に話す。
「それにしても、実験艦っていうのはあんな装備持てるんだね。あたしゃ軽空母だけど、少しばかり羨ましく感じたよ」
飛鷹が難しい表情を作りながら呟いた。
「にしても、たった15年の時を経ただけであんな装備を作れるのかしら」
「どういうことだ?」
日向が訝しそうに飛鷹に質問した。
「ほら、寓話であるじゃないですか。海の底にあるとされる竜宮に行って帰ってきたら300年…」
「ちょっとちょっと。そういうのは冗談でも止めて……」
伊勢が慌てて話を遮った。飛鷹も失言だったと遅れて気づいて口を閉じる。
姉妹艦の失態に苦笑しながら隼鷹は飄々と話す。
「まぁ何にせよ、あれほどの能力を持った艦娘がいるっていうのは心強いね~」
「だが、彼女は実験艦だろう?あまり戦闘には出ないだろうな」
「それは勿体ないなー」
腕を組みながら日向が話を締めくくり、伊勢が残念そうな顔で呟いた。
航空戦艦と軽空母組で粗方話が終わった一方、駆逐艦達ははぐろの装備の話で盛り上がっていた。
「師匠の対空戦闘、すごかったですねー」
昼間の事を思い出しながら秋月は言った。彼女のような装備を使ってみたいと思った。
監視室から訓練を見ていた夕雲達も秋月に同意するように言った。
「確かにあれはすごかったわね」
「あたしもあんな装備ほしいな」
高角砲や機銃など目ではない。あれさえあれば、深海棲艦がどんな艦載機を繰り出して来ても恐れることはないと秋月は思った。
高評価をする艦娘がいるが、反対にあまり興味を示さない艦娘もいる。
「うーん、でもさ。対空装備なんでしょ?ならあたしは別にいいかな」
「不知火も同感です。個人的には強力な魚雷の方が魅力的に感じます」
陽炎型のネームシップと2番艦はそう言った。
神通とよく出撃することもあり、川内ほどではないが夜戦好きである。何より駆逐艦の能力が最も高く発揮できるのが夜戦だ。だが夜間はごく一部を除いて深海棲艦も艦娘も艦載機を飛ばすことができない。
だから対空装備よりもむしろ主砲や魚雷など攻撃的な装備の方が気になる。
不知火が秋月に聞いた。
「噂の主砲はどんな感じだったのですか?」
陽炎や不知火達は先日まで特殊兵装実験艦にまつわる噂について全部一笑に付していたが、秋月や伊勢など朧達の他にはぐろの装備を噂しているのを聞いて、事実なのかもと思い始めていた。
そして噂にあった駆逐艦の主砲と同じ口径でありながら戦艦の主砲と同程度の射程を持つといわれるはぐろの主砲。
威力はともかく、射程が長ければより早く敵に攻撃をしかけることができるし、中口径・大口径の主砲を持つ敵から一方的に攻撃されることもない。その主砲の能力が真実で、駆逐艦達に配備されたらどれだけ心強いか。
不知火の質問に秋月は答える。
「えっと。数秒間隔で標的機に発砲して、一発も外してませんでしたね。あっという間に主砲だけで5機落としてました」
「…それはまた、見事な射撃能力ですね」
対水上・対空と見事にこなすその性能。そしてそれらを使いこなす実験艦の能力。
秋月の話を聞いて、不知火はふむと考え込む。〝あの女〟がすごいと言っていたがやはり実際にこの目で見たい。不知火がそう考えていると陽炎が不審に思ったのか不知火に声をかけた。
「不知火?」
「…やはり一度彼女と演習を」
「ダメだって言われてるでしょうが」
ピシャリと叱りつけるように陽炎が言った。
むぅ、と残念そうな顔をする不知火を見て、この娘って戦闘狂だったっけ?と陽炎は考え込んだ。
◇◇
はぐろは大淀に夕食前に呼び出されて秘書艦執務室にいた。
何事か大淀は非常に疲れた様子。書類の中から必要な物を手に取ろうとして書類の山が雪崩で大惨事。それも1つではなく連鎖的に次々と部屋全体に広がっていった。
はぐろも手伝おうとするが、機密が書かれているものもばら撒かれてしまったようで先ほどから大淀1人で片づけをしている。
はぐろはその間椅子に座って手持ち無沙汰な様子で待機していた。
秘書艦執務室は事務処理が主で来客などをあまり想定していないのか、ソファーのようなものはない。その代わりに持ち運びできる簡素な形状の丸椅子にはぐろは腰かけていたが、先ほどから体の内側から何かを欲する衝動がはぐろの中に沸き起こっていて辛抱ならなかった。艦魂であったためか、はぐろはいまいち食欲や空腹感など人の生理現象にまだ理解が及んでいなかった。
この感覚は一体何なのだろうかと腹部を撫でながら思っていると、はぐろは訓練中に知った事を大淀に質問した。
「そういえば〝ようせい〟って何ですか?隼鷹さんが言ってたんですけど」
「え、妖精ですか?……あぁ、そういえばまだ説明していませんでしたね。妖精というのはですね艤装や装備に憑いて、私たちが装備の運用を円滑にするための霊的存在ですね。艦載機の場合は1機ずつに妖精が憑いていて操縦し、艦娘はそれに指示を出すくらいですね」
テキパキ部屋を片付けながら大淀ははぐろの質問に答えた。
やはり昼間のSH-60Kが殆ど独立して動いていたのは妖精というもののおかげだったかとはぐろは大淀の説明を聞いて納得した。だが次にはあの声成らぬ声が妖精のものだったのだろうかとはぐろは新しい疑問が湧き上がってくる。
大淀が書類を机でトントンと揃えながら妖精についてはぐろに説明する。
妖精とは今から150年くらい前に海を隔てた遥か西の大陸に存在するエイセプロン共和国から伝わってきた人間に使役される精霊の総称だ。例えば剣に土の精霊を宿して頑丈にしたり、石柱に水の精霊を宿して暑い時期をできる限り快適に過ごすための冷房にしたりする。とはいっても、人間に使役される程度の精霊の力は大したものではない。
遥か西にある大陸には
またセロイプン共和国は陽ノ下皇国よりも工業や技術が発達しており、350年前に皇国に火縄銃を伝えたのも船と共に漂着した、当時はまだ王国だったエイセプロンの人間だった。
そして皇歴2151年にエイセプロンから使節が送られ、陽ノ下皇国とエイセプロン共和国、2つの国の間に国交が結ばれた。
その時に火縄銃よりもずっと優れたライフルや大砲と共に精霊を使役する方法が伝えられた。
ライフルは扱いやすいものの威力に欠ける。大砲は威力は十分だが大きすぎて扱いづらい。
何より弾薬をどうするのかということで試行錯誤を重ねた結果、大砲並みの威力で少女が持てる大きさの装備を作り出せないかということになった。理由は不明だがエイセプロン共和国の使節の到来と前後して深海棲艦の装甲が硬くなり、また大きな銃らしきもので攻撃してくる深海棲艦が現れ始めた。
エイセプロンでも剣など武器に妖精を宿して武器の威力の増大などを行ったりするらしいが、陽ノ下皇国はより妖精の術式を複雑に編んで、火砲の内部構造も妖精の術式同様複雑化させて人が持てる、あるいは背負うことができる大きさの火砲で高い威力を発揮できる艤装を作り上げた。これが現在までに至る艦娘の艤装の始まりである。
その内部機構はもちろん機密であり、詳細は艦娘にしか伝えられない。当初はエイセプロン共和国にも明かされていなかったが、最近(といっても転移以前のことなので17年以上前)ではエイセプロンからやってきた少女が艦娘に就役したりしている。
「昔は陰陽師が使役する式神が艦娘のサポート役だったらしいですよ。でも式神は艦娘には扱えませんし、自我がないから命令にはきちんと従うけどそれ以外のことは行わない、式神を宿らせることができるものが限られているなど汎用性に欠けたそうです。妖精はある程度自我があることや艤装や装備に直接宿る事ができる、何より艦娘にも扱えるということで採用されたそうです」
「はぁ…。なんというか、…ファンタジーな世界なんですね、大淀さん達がいた世界って」
「?」
はぐろの感想を聞いた大淀は、〝ふぁんたじい〟が何かよくわかっていない表情を浮かべた。
ようやく部屋の片付けが終わり、大淀ははぐろに1枚の書類を提示した。
その書類には履歴書のようにはぐろの偽名である平沼という名前と所属などがつらつらと書かれていた。
「さて平沼さん。本日1630、貴女は日本海軍籍の艦娘、平沼型特殊兵装実験艦平沼として登録されました。これにより貴女は正式に我が軍の指揮下に入り、日本政府と防衛軍、並びに在日米軍へ貴女の存在を伝えられました。…ですが、貴女はしばらくの間鎮守府で待機していただきます。わかっていただけますね?」
「はい、わかっています」
真剣な目で聞いてきた大淀にはぐろは頷き返した。
己が異端な存在であることをはぐろは忘れていない。この時代からおよそ60年以上先の兵器を搭載する護衛艦だ。そんな存在であるはぐろが無事でいられるのは、たまたま保護してくれる存在が近くにいたからだ。
太平洋戦争真っ只中にタイムスリップしたイージス護衛艦よりよっぽど恵まれているだろう。望まぬ戦いを強いられるわけでもない。燃料が心細くなって明日の事を憂う必要もない。
だが、この恵まれた状況が一か月後も続いているとは限らない。日本政府や米政府に正体がばれたらどうなるか。
少なくとも横須賀鎮守府の人々ははぐろという存在を尊重して保護してくれている。彼女達にあまり迷惑をかけるべきではない。はぐろの正体に繋がる行動は慎まなければならない。
しかし執務室の窓の向こうを見ながらはぐろは呟いた。
「…本当の海に出られるのはしばらく先ですか」
「…」
少しだけ寂しそうな雰囲気を漂わせるはぐろに、大淀は少し同情する視線を向けた。
◇◇
海は形がない。形はないが海はある。
魂に形がない。形は無いが魂はある。
形が無い故に、海には魂が潜む。
魂は海から還る。魂は海に迷い出る。魂は海を彷徨う。
そして長い時を経て摩耗した魂はやがて器を手に入れる。どうしようもないほど黒く染まってしまった虚ろの器を。
海はどこかに繋がっている。海はどこかから通じている。
海は繋がっている―――――。
はぐろさんに弟子ができました。まぁ尊称のようなものですが。
本作の艦娘は神様から力を授けられた異能力者みたいな感じです。日本神話を基にした陽ノ下皇国神話も色々と話に絡みます。
今回ちょっと設定も日常風景もてんこ盛り過ぎて、作者自身書き漏れがないか少し不安があります。
お気付きの点がありましたらご指摘していただけるとありがたいです。
ここからは解説。
2015夏イベで照月が実装されましたが、本文で語られている通りで羽黒と同様発見されていない艦娘に分類されます。ご了承ください。
はぐろがイムヤとゴーヤに対潜ロケット撃とうとしたのはあくまで本能的であって本人の意図したところではありません。
ちなみにこの世界観では同じ艦魂でも護衛艦と潜水艦の艦魂は親しくないです。わかりやすく言えば、ドラマなどで同じ警察同士でも縄張り争いする感じです。
多分潜水艦は公安警察で護衛艦は所轄の刑事かもしれません。
とはいえ護衛艦と潜水艦の艦魂は実際は武器を向けあうほど仲が悪くはありません。タブンネ。
あと以前はぐろの搭載している対潜兵装でVL-ASROCにしましたが、てるづきから07式垂直発射魚雷投射ロケットが配備された事を知ったので、そちらに設定し直します。
あと8200トン型イージス・システム搭載護衛艦が計画されたようですが、今更大きく変えるのもアレなのであまり使っていなかった対潜兵装以外は従来のあたご型をベースにした設定のままで進めます。
エイセプロン共和国はイギリスとドイツを足して3で割ってどっかからご都合主義をぶちこんだ国です。半分だけファンタジーな世界です。
ちなみに金剛はエイセプロン共和国で生まれた陽ノ下皇国人とエイセプロン共和国人の女性の間のハーフだったりと裏話は考えてあります。
他にも色々解説したい点はありますが、あまり長々と説明しても仕方ないので感想などで受け付ける予定です。
そして次回ですが、最初は時間を10日ほど飛ばして遠征編をお届けしようと思ってましたが、設定を考えているうちに加賀さんが艦娘として就役する直前のお話が思いついたので、番外編として遠征編の前にそちらをお送りします。
次回予告!
「御身はこれより加賀型戦艦加賀となる」
一族の長から加賀という名を贈られた少女は、己が今まで培ってきた物を捨てることになる。
「お見事です、姉さん!」
「私は弓しか能がない人間よ」
加賀と違い、明るく利発な加賀の妹『土佐』。
「要は花見よね。こんな行事に参加する意味があるのかしら?」
「桜が咲いた時私は姉さんと出会いました。だから姉さんと一緒に見る桜は好きですよ。もちろん、姉さんの事も」
春の行事、
「天城型巡洋戦艦天城です」
「妹の赤城と申します」
後に加賀の相方となる艦娘との出会い。
そして、……別れ。
「姉さん……笑って…」
「土佐ぁっ!」
次回「空母加賀誕生話(仮)」
お楽しみに!