比企谷 八幡の異世界漂流記(沈黙)   作:Lチキ

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予想以上に長くなり、途中で切ったためあの人が登場できなかった!?

次こそは登場させるので少しお待ちください





IS 転校生は幼馴染 11

「あーッ、もう!なんなのよこいつ、馬鹿強いじゃない!」

 

 

「武装だけではなく操縦士もかなりの腕のようですね。隙どころか気を抜けばこちらが落とされてしまいそうな勢いです」

 

 

異形のISとの戦闘は、熾烈をきわめている

 

特大のレーザー攻撃を躱したら、次に待っているのは無数に展開されるレーザーの雨

始めのものより格段に威力は下がるが、数が多く避けるのがやっとの状態、さらには真正面から拳を出してきて近接戦闘を仕掛けてくる

 

2人はそれぞれ距離を保ち空を縦横無尽に駆け巡ってそれを躱していくが、決定打に欠ける

 

鈴の持つ第3世代武装である衝撃砲も牽制以上の効力を持てずにあぐねっている

 

 

「何より、あの腕が厄介ですね・・・ただ殴りかかってくるのか、ビームが出るのか予測が付きませんし」

 

 

「腕がこっちを向いたら射程からそれる必要があるし、そのせいで攻めきれないのよね・・・」

 

 

「あの機体には所々ビームの発射講があります。ですが、アリーナを破ったのは十中八九あの腕のレーザーでしょうね」

 

 

「・・・あんた妙に冷静よね。こんな状況で」

 

 

「焦っても仕方がありません。短気は損気、常に平常心を心がければ世に起きる全ては小事となるでしょう」

 

 

なぜか説法まがいの教えを説いてくる一夏に対し妙に頭痛がするが、どうにか戦意を保ち敵ISを見る鈴

 

正常道理には、到底思えない一夏の平常心と反比例するように一夏の違和感が強まり苛立ちが増す鈴

 

さらに、強敵から送られる物言わぬプレッシャーが重なり元々本調子ではない鈴の精神は著しく消耗していった。

 

今の所彼女の受けているダメージの半分以上は一夏のせいによるものだ

 

 

「一夏、あたしが援護するから突っ込みなさいよ。武器それしかないんでしょ」

 

 

鈴のいうそれは概ね正しいだろう。衝撃砲がある自分とブレード一本の一夏がタッグを組めば一夏が前衛、鈴が後衛となる。もしくは2人して突っ込むかのどちらかしか戦闘を選べない

 

相手は強力なうえ小回りも効く。なら、まだエネルギーが残されてる今の内に少しでもダメージを与えられれば勝率は遥かに上がるだろう

 

何より一夏の零落白夜が決まればそれだけで勝つことができるのだし

 

 

「いえ、それは止しましょう」

 

 

が、一夏はさも当然とその提案を袖にする

 

 

「なんでよ!まさかあんた怖いとでもいうんじゃないでしょうね!!」

 

 

今まで、一夏の違和感もありなるべく一夏の態度に触れないようにしてきたが、流石にこれには鈴も激怒する

 

この状況下で鈴の選択は勝つために必要な最善策とも言っていい。

 

ただでさえこちらは、不調と異状の即席コンビなわけだし先ほどまでの戦闘でシールドエネルギーも半分以下だ

 

こんな場合で戦闘を長引かせればジリ貧になることは目に見えている。なので多少の危険を犯しても速攻するほかないのだ

 

確かに、自分が立てた作戦の癖に危ない事は相手に任すという事には後ろめたさも感じるが、そこは甲龍と白式の都合状しょうがない

 

甲龍は他のISと比べれば近接、中距離での総合力は高い部類だが確実に攻撃を重ねる事を目的とした燃費と安定性を重視したISで、一撃必殺には向かないのだ

 

逆に白式は真逆に燃費が悪い短期決戦型ISで、武装上の問題もあり長期戦闘はできない機体である。

 

それを考慮した上での作戦提案だったのだが、一夏はそれを却下した

 

 

「もちろん恐怖も感じていますが、一番の理由は相手の武装です。今まで見てきた武装はレーザーだけしかありません。しかし、通常ISの武装は数種類あるものです。なら、敵はまだこちらの知らない武器を隠してる可能性があります」

 

 

「そ、それはそうかもだけど・・・あんたみたいにあれしかないかもしれないじゃない」

 

 

「その可能性もあるでしょうが、私が戦った両名はどちらも隠し玉を持っていました。私はそれにことごとく被弾してます」

 

 

セシリアのブルーティアーズのミサイル、鈴の甲龍の衝撃砲と2人の代表候補生との戦闘で一夏はしっかりと学習してるのだ

 

本来ISは2~3、多ければ数十種類の武装を持っているものであり、警戒するべきは見えているだけの武装ではない

 

むしろ、隠してる武装はより厄介である可能性が高い

 

 

「ただでさえ、アリーナのシールドを破壊するレベルのあのISが持つ隠し玉・・・最悪絶対防御とか貫通しそうですしね」

 

 

その一言に鈴は、唯でさえ青い顔をより青くさした。

 

一夏の言うのはあくまで可能性の話だが、よくよく考えれば信憑性がかなり高い。目的不明、所属不明、搭乗者不明、あの機体も見たことがない

 

そんな奴が学園襲撃なんて事態を起こしたのだ。

 

隠し玉の一つや二つ持っていてむしろ当たり前とさえ思えてしまう

 

 

そして、幸か不幸か織斑 一夏という男はそういう物にめっぽう弱く、今までの2つは全て被弾している

 

ミサイルの時は運よくファーストシフトして助かり、衝撃砲の場合はそもそも威力が弱めだったので致命傷になっていなかっただけでまともにくらえば即退場となっていてもおかしくない

 

 

「2度あることは3度ある。世の物事は繰り返し起こり失敗を重ねないためには用心が必要です。何より、仮に私が被弾して戦えなくなれば鈴さん1人でアレの相手をしなければなりません」

 

 

一夏は、敵ISに向ける視線を鈴にうつしいつくしむような微笑みを向ける

 

 

「大切な幼馴染にそんな危険な真似をさせる訳にはいけませんしね」

 

 

「・・・一夏」

 

 

その一夏の笑顔を見た時、鈴は思う。

 

態度や喋り方は違えどやはりこの男は、織斑 一夏なのだと

 

転校したてで学校になじめずイジメられていた私を助けてくれた男の子

鈍感で朴念仁で、とてもとても優しい頼りになる男の子

怖い姉と嫌な兄がいて、そんな兄弟の事が大好きな男の子

家計を助けるために毎日頑張っていたけなげな男の子

 

そして・・・初めて好きになった大好きな男の子

 

彼は何処まで行ってもどう変わろうと織斑 一夏なのだ

 

そんな当たり前の事を改めて認識した純粋無垢な少女は、こんな極限状態の中で優しい笑みがもれる

 

いままでの不調が嘘のように体は軽く

 

彼に感じていた違和感も今はどうでもいい

 

あのISから感じる恐怖なんてなんのその

 

 

「・・・まったく、あたしも現金な奴よね!」

 

 

今はただ、隣に好きな男の子がいる。その事実があれば彼女はいくらだって戦える

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「もしもし織斑君!織斑君!鈴さんも聞いてますか!」

 

 

そのころ管制室では、二人の教師が突然の襲撃者に対し事態の収集に動いている。

山田先生は、一夏と鈴に向け撤退の趣旨を告げるが一般生徒の非難が完了してない事からそれを却下され、そのまま通信が切られてしまい、必死の呼びかけも虚しく応答がない

 

 

「山田先生、2人の状況は?」

 

 

「・・・2人とも戦闘を続行中ですが、さっきまでの試合の影響でエネルギーが100を切ってます。それに鈴さんは試合前から体調がすぐれていなかったようですし、織斑君は‥‥」

 

 

一夏(賢者モード)の事はすでに学年のほとんどが知っており、もちろん教師である2人の耳にもその事は入っている。

 

むしろ、2人して面談をしたり脳をスキャンして異状がないか調べて、終いには精神科医にまで見せているほど一夏の事は熟知していた。

 

医者の話では、日常生活に問題なく突発性の精神異状の一種なので時間がたてば治るとのことだが、それでも今の一夏はとても正常な状態とは言えない

 

何ならこのクラス代表戦だって辞退することを本気で考えていたほどだ

本人の

 

 

「私一人の事で、大会に穴をあける事はできません。それは運営する学校、楽しみにしていた他のクラス、何より1組の皆や先生達の顔に泥を塗ってしまいます。・・・ここは私を信じて任せてもらえませんか?」

 

 

と、言う弁で承諾したのだ

 

不安はあったが、他の者にかかる迷惑と自分を信じろという頼み方では教師としては承諾しない訳にはいかなかった

 

体に異常があるならどんなに言われようと無理矢理止めるが、生徒と共にあろうと誓う心優しき教師である彼女たちには生徒の事を信じ、導くという使命がある

 

ここでそれを無下にすることは生徒の心を踏みにじる行為だ。そんな事彼女たちにはできなかった。

 

 

「・・・ここは本人達に任せてみるしかないでしょう」

 

 

「織斑先生!そんなのっ」

 

 

「もとよりここから何を言っても聞く耳を持たんよあいつらは。なら私達は2人を信じ、不詳の事態が起こった時の為に次の策を練る。それが私達にできる最善ではないかね、山田先生」

 

 

「それは・・・そうかもですが・・・あの、織斑先生」

 

 

そういい千冬はすぐそばにある、コーヒーに手をかける。その時、コーヒーの真横にある塩と砂糖と書かれた箱からスプーン一杯分の塩を入れ

 

 

「それ塩ですよ」

 

 

「‥‥‥」

 

 

そう指摘され頬を赤らめる千冬

 

彼女はもとより病気レベルのブラコン、そんなブラコンが大切な弟をそれも普通ではない状態の弟を戦地に送り出し平常でいられる訳がないのだ

 

内心では、焦りや最悪の事態を想像した緊張感などでハルマゲドンが起きている

 

立場上や人の目を気にして表に出してないだけで本当は今すぐにブレード一本担いであのISを一刀両断にしたとさえ考えているほどだ

 

 

千冬は今だ赤らめた頬をしてるも一つ咳払いをして話を切り替える

 

 

「山田先生、織斑 八幡・・・と、ほかの専用機持ちに連絡は取れますか」

 

 

一人だけ、具体的な名前が出たが山田先生は気にせず学園内の専用機持ちにコールをかける

 

 

「!・・・近くにいる専用機持ちの生徒にコールがつながりました」

 

 

千冬は内心でその報告を聞き安堵する。

あのISの所属は不明だが、目的は十中八九男性操縦者だろう。なら一夏以外にも八幡の方にも敵の間の手がさし迫っている可能性が高い

 

一夏は、本調子ではないと言え代表候補生1人と共闘しているため戦力としては幾らか信用できる

 

しかし八幡がもし一人の場合、というより絶対に一人でいるであろうけど、そんな状況であのレベルの相手をするとなれば相当危険だ

 

だから、気休めとはいえ無事が確認されたら随分安心できるのだが・・・

 

 

「でも、織斑さんにだけコールが繋がりません!!」

 

 

その時、千冬の持つカップには大きなひびが割れた

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに山田先生は一夏を織斑君、八幡を織斑さん、千冬を織斑先生と呼んでいる

 

 

 


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