比企谷 八幡の異世界漂流記(沈黙)   作:Lチキ

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少しの間、一夏視点で話が進んでいきますね~

それでは、報われない鈴ちゃんと可愛そうな一夏の物語をお楽しみに~


IS 転校生は幼馴染 3

八兄と鈴がじゃれ合う事数十秒、扉はしまったまま開けられる気配がない。

諦めたのかと思ったが、一呼吸おいて扉の外から鈴の声が聞こえてる

 

 

『・・・ああもう!頭きた――――!!いい加減にあけないと扉ぶち破るわよッ!』

 

 

どうやら諦める気は全くないようだ

 

鈴は昔から、八兄が絡むと我を忘れる癖があったな。そのおかげで学校の窓ガラスやら俺の筆箱やら割れたり投げられたりしてたっけな

 

その後大抵、俺や弾に取り押さえられて3人で先生に怒られたっけ。懐かし思い出だ

 

もっとも俺と弾は全くのとばっちりでなぜか叱られ、当事者の八兄はいつの間にか姿が消えてたりして。懐かしいがどちらかと言うといい思い出ではないけどな

 

それでもその後、俺達に加え数馬なんかも巻き込んで鈴の愚痴につき合わされたりしたっけか。カラオケとかバッティングセンターとかで憂さ晴らしに付き合った思い出は割かし楽しかった

 

 

鈴は何回叱られても次の日にはまた同じことをするもんで先生も最終的には泣きながら暴れないでくれと頼みこむ始末だったけど

 

あれかな、今で思うとこれが俗に言う恋は盲目というやつなのだろうか?

 

八兄の事がきになりすぎて周りが見えなくなってしまった的な感じか。そう考えればなかなか微笑ましい光景だ

 

 

『いい!5秒数える間に開けないとほんとにぶち破るからね!!』

 

 

鈴は5から順番に4,3と数えていく

 

微笑ましくあれど、流石にこれは止めなくてはいけない。あいつのことだから本当に扉を壊してでも入ってくるだろう。中学の時ならいつも道理の光景でまたかと、楽観的に見ていられるが

 

中学の時とは状況が違う!

 

何せこの学校の先生、それもうちのクラスの先生となれば最悪の場合‥‥‥鈴が死んでしまう!?

 

席を立ち急いで扉の前までかけてく

鈴と八兄の初見では、意味不明に思えるやり取りに唖然としていたクラスメイトも俺の様子に気が付いたのか驚いた表情をしている

 

 

『2、1!・・・・・・いいわよ、そっちがその気なら本気でぶっ壊すからね!!!』

 

 

「ま、待て鈴!」

 

 

制止の声をかけるも一足遅く、扉の外から景気のいい掛け声がする

 

 

『そりゃあああああ―――――った、痛い~ッ』

 

 

が、その掛け声も途中で途切れる。するとゴツンという鈍い音と小さな悲鳴が聞こえた

いったい外で何があったのか?

 

 

『何すんのッ・・・うわぁ!?ち、千冬さん!』

 

 

『もうショートホームルームの時間だというのに・・・何をしている?』

 

 

『え、えっと・・・それは・・・』

 

 

『なんだその振り上げられた腕は?』

 

 

『こ、これは違くてそ、その、これは体操を――!』

 

 

『お前は体操でISを部分展開するのか?』

 

 

『あぅ・・・』

 

 

『学園の規則事項はもちろん知っているな』

 

 

『え?えっと・・・』

 

 

『知・っ・て・い・る・な!』

 

 

『はいー!もちろんです』

 

 

『では、ISを許可された場所以外で展開する事も私的利用することも禁止されてる事もしっているはずだな?』

 

 

『うぅぅ~・・・はぃ・・・』

 

 

 

話声が聞こえなくなり一瞬の静寂

 

 

教室の中にいる俺達でも、外から聞こえた千冬姉の声には怒りの色があることがたやすく分かる。教室の中も外もあまりの緊張感から誰一人喋らず黙ってしまう

 

話声どころか、教室の中では動くことも出来ずに棒立ち状態

 

だが、そんな中でも八兄は平然と扉の前から自分の席までゆっくり歩いて戻っていく

我が兄ながらどんだけ肝が据わっているんだ・・・

 

俺なんてうっかり息を吸う事も忘れてしまっていたというのに

 

 

『ぎにゃあああああああぁぁ‥‥‥‥ぁ・・・ッ‥‥』

 

 

静寂の中、聞こえてきたのは鈴の断末魔

 

しかもその断末魔も徐々に小さくなり最後には何も聞こえなくなる

 

声が完全に聞こえなくなると扉は開かれ千冬姉が教室に入る

 

 

「全員席につけ。ホームルームを始める」

 

 

千冬姉の一言に、先ほどまで身動き一つできなかったクラスメイト達は一斉に自分の席に戻り黙って座った

 

普段は、いくら注意してもなかなか静かにならない1組にしては本当に珍しくその日のホームルームは静かだった。

 

皆あきらかに恐怖している

 

それは先ほど聞こえた断末魔に対してかそれとも普段通りに振る舞っている千冬姉の頬と、清潔感溢れ首元から覗く純白のシャツについてる真っ赤な水しぶきに対してか・・・

 

 

ただ一つ俺にできる事は、2年ぶりに再会?した幼馴染に対して黙祷を捧げる事だけだった

 

 

「安らかに眠れ鈴・・・」

 

 

「授業中は私語を慎め」

 

 

「フガッ!」

 

 

後頭部に強い衝撃を受け俺の意識はそこで途切れた・・・

 

 

ていうか、これもとばっちりじゃね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

いつのまにか時間がたち、俺が目覚めたのはちょうど昼食どきだった。

 

不思議な事に寝る前までの記憶がない。なんかとても懐かしい感じがしたような気がしたけど覚えていない

 

それに、なぜか今日は授業中に寝ていたのに千冬姉からの制裁がなかった。いや、後頭部がなんかヒリヒリするしもしかしたらげんこつとかされたのかもしれないな・・・

 

でも、ちっとも起きない俺に愛想をつかし放置していたという事なのかな?

 

だとしたら千冬姉には悪い事をしたな・・・今度謝りついでにマッサージでもしてあげよう

 

 

 

 

 

IS学園の生徒は皆女の子という事もあり自炊する生徒も多いがやはり学食で食べる人がほとんどと言える

 

 

様々な国から留学生を呼んでいるここの学食は、留学生たちの口にも合うようにと各国のより取り見取りな料理の品々が用意されている。中には名前も知らないようなマニアックな料理も取りそろえられており留学生に留まらず日本人の学生達にも好評だ

 

俺もそれなりに料理はするが、ここの料理の味はまさにプロのものであり食べてるだけで勉強になる。

 

表に出てるまさに学食のおばさんみたいな人たちは勿論のこと、裏側で料理を作ってるシェフたちの腕は凄まじく噂ではミシュランとかで星をもらった一流の料理人を雇っているだとか

 

流石は天下に名だたるIS学園だけの事はあるぜ!

 

 

意気揚々と食堂の扉をくぐり、今日はA定食でも食べようかな~などと思っていると後ろから懐かしい声が聞こえた

 

 

「いーちーかー!!」

 

 

「え?・・・鈴!?」

 

 

その声の正体は、2年前に転校してしまった俺の幼馴染凰 鈴音(ファン・リンイン)通称 鈴だった。

 

鈴はこちらに向かい全力で走ってくるとそのまま勢いに乗り飛び上がり入射角45度の見事なとび蹴りを放った

 

 

「うを!?あぶねー!」

 

 

「よけるなバカ一夏!!」

 

 

久しぶりに再会した幼馴染が出会いがしらに全力の飛び蹴りをしてきたら流石に避けるだろ普通

 

 

「避けるわ!なんでいきなり飛び蹴り・・・ていうかお前その包帯どうしたんだ?」

 

 

なぜかいきなり好戦的な幼馴染の体を見ると体中にガーゼや包帯をつけている。

道理で2年前と比べると動きにキレがないと思ったら怪我をしているのか・・・いやいや、怪我をしているのならとび蹴りなんてするなよ!

 

 

「そんな事より!なんで私を置いていこうとしてるのよッ」

 

 

「え・・・?いや、だって一緒に食べる約束とかしてないし。ていうか連絡くれればよかったのに」

 

 

むしろ、今初めてお前がここにいる事を知ったのだけれども・・・あれ?でもなんだろう頭の隅になんかもやもやする物がある

 

 

「そんなことしたら劇的な再開が台無しになっちゃうでしょが!」

 

 

確かに出会いがしらの飛び蹴りは劇的だった。でもなぜだろう全然うれしくないぞ、その再開

 

 

「それに約束してなくても幼馴染なら誘うなり待ってたりするもんでしょうが、この薄情者!」

 

 

いや、だからお前がここにいる事今の今まで知らなかったんだけど・・・

 

 

 


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