それでは皆さんまた次回お会いしましょう
クラス代表が決まった翌日、今日は朝からISの操縦授業なので1組の面々はグラウンドに集合している。
この広大な広場をグラウンドと呼ぶには少し抵抗があるが・・・
月並みで言うなら東京ドームと同じくらいの広さぐらいあるんじゃないだろうか
東京ドームなんて数えるほどしか行ったことがないから正確な広さは知らんけど
そのたっだぴろい所に一クラス30人ほどが整列している様は、なかなかにシュールだろう。
しかもそいつらの服装はスクール水着のような形状にふとももくらいまであるニーソ、のように見えるISスーツなのだからさらにアレだな、なんというか・・・相当マニアックな光景だと思う
「では、これよりISの基本的な飛行操縦を実戦してもらう」
先頭に立つ千冬は、真っ白いジャージを身にまとい30人全員に聞こえる声量で授業内容の説明をする。
ちなみに隣にいる山田先生は、青と緑の中間のような色のジャージを着ている。
山田先生はあれだな、着やせするタイプだな
本来であるなら1組・・・いや、この学園で最大の大きさを誇るはずの胸部がそのなりをひそめてやがる
別にそれがどうしたという話だが、なんとなく気になっただけで特に他意はない
正直あの胸は、思春期男子の前に晒す物としては不謹慎と言ってもいいだろう
もし、この学園に来たのが一夏(朴念仁)と俺(理性の怪物)でなくて普通の思春期男子なら色々と厄介な事になるんじゃないだろうか?
主に、男の大半が一度は通る若い激情のリビドー的な下半身事情により座ったままか中腰の状態のまま授業を受けなくてはいけない
ただでさえ男という注目を集める存在がそのような痴態を晒せば即刻学園中に話が広まり不登校コース待ったなし!
草食系だとか言われる昨今でも、男という性の探究者達の本質は変わっておらず、その中でも思春期というモビルスーツを身にまとう彼らの頭の中は基本的にエロがエキサイティングしている
だが、別にそれは悪い事ではない。なぜならそれは生理現象の一つであり、
女子と会話するだけで心臓はドキドキと高鳴り、ふとした拍子に重なる手の感覚に赤面する。そんな甘い青春の一コマと本質的には同じものだ
だから世の中の女子たちにお願いだ。もし、近くに前かがみ気味の男がいてもそっと目線をそらし何食わぬ顔で見なかった事にしてほしい
間違っても仲のいい女子とかで「うわぁ、マジキモイ」とか言わないでくれ
どMな奴を除くと本当に心がえぐられるから。男の子は皆ガラスハートなんだよ!
「織斑 八幡、聞いているのか!」
おっと、ついついボッチが誇るべき深き思考を繰り広げ現実の声をシャットアウトしてしまっていた。
見るとクラスの視線は俺に向けられ、先ほどまで先頭に立っていた千冬が俺の目の前にいた。
どうやら俺が聞いていない間に授業が進んでいたらしく、恐らく俺は質問でもされたのだろう。
なのにその答えが返ってこなかったから千冬は、「私の授業でうわの空とはいい度胸だな、あん?」とでも言いたそうな表情で俺を見ている
ここで、聞いていませんでしたと正直に言えばどこからともなく凶器(出席簿)が飛んでくることだろう
来たとしても避けられるので被害はないが、避ける際にめちゃくちゃ疲れるので進んでやりたいとは思わない
「聞いてますよ。あれでしょ、新ドラになってから旧ドラの設定を色々無視してるのはいただけませんよね。やっぱりあのだみ声が一番ですわ」
「誰が猫型ロボットの話をしている!」
ちなみに俺はドラ○モンズが一番好きだ。・・・もう彼らをスクリーンで見る事ができないと思うと切なくなるぜ
「ええい!今は授業中だ、ちゃんと話を聞け!!」
「すいません」
「まったく・・・専用機持ちは前で手本だ。早く行け」
眉間に皺を寄せながら、顎を突出す千冬につられその方向を見ると一夏とオルコットがすでに前に移動している
正直めんどくさいが、これ以上千冬を怒らせるのも忍びないので黙って従う事にした
「3人とも試に飛んでみろ」
「わかりましたわ・・・」
千冬の言葉に反応しオルコットは素早くISを展開させまばゆい光に包まれた。光がやむとブルーティアーズを身にまとう彼女がいた
専用機持ちは、普段からISを身に着け寝食を共にする。そうすることで同調率だがシンクロ率が高まるらしい
ただ、自身の肉体より重量のあるISを身に着ける事などできるはずもないしずっとISを装着したまま生活できるわけもない
なので、原理がよくわからない技術によりISをアクセサリーなどの待機状態に変えて身に着けている
オルコットはピアスの形状にしているようで、ISの展開速度も申し分ない
テンションが非常に低い事と、軽く目が虚ろな事を除けば模範的な展開を披露した
一方
「ええっと・・・あれ・・・?」
我が弟一夏はというと、待機状態の白式を見て右往左往していた
「早くしろ、熟練したIS操縦者は展開までに1秒もかからないぞ」
「…集中、集中‥‥こい、白式!」
右腕を掲げ、高らかに名を呼び、白い光に包まれ白式を展開する
「よし、できた!」
安心したように白式を身にまとう自身の姿を見つめる一夏
あれだな、初めて自転車を補助なしで乗れた時の反応に似ているな
不安ながらも、ペダルをこぐ足に力を入れ進んでいくと転ばずに走れた。小学生くらいのやつならこの興奮を分かってもらえるだろう
大人になるにつれそういう感激は薄れていくものなので大切にしなければいけない
自動車の免許をとっても喜びよりもこれで教習所に通わなくて済むという安堵が勝るソースは俺
そんな感じで、飛行に慣れてない一夏が地面にクレーターを作ったり、オルコットは終始消沈していたりしながら授業は過ぎっていった
俺は、当たり障りなく飛んで止まってその後もダラダラと授業を受けた。サボろうとしたら鬼の形相をした担任にキレられて結局、リアル鬼ごっこをするはめとなるが、いつもの事である
その日の夕方
IS学園の門の前に一人の少女が立っていた
小柄な体格に特徴的なツインテールをした少女は夕日に照らされる学園のエンブレムを見ながら不敵にほくそ笑む
「ここがIS学園‥‥待ってなさいよ一夏、それに覚悟しなさい‥‥八幡!!」
新学期が始まり数日、IS学園に一人の転校生がやってきた。