なんかもう一つの投稿の方で、迷走入りしてしまって考えがまとまりません
皆から生暖かい激励の言葉待ってます~
こっちに対しての感想も随時募集していますよ~
「これは一体どういうつもりですの・・・」
今現在、わたくしは身動き一つとれないように拘束されている。拘束といっても端から見ればただ空に浮かんでいるだけにしか見えないでしょうが・・・
開始直前に言葉をかけられ、そのまま捕まってしまった・・・自分でいうのもなんですが、随分とマヌケですわね
「どういうつもりも何も、開始直前に気をそらして開始直後に攻撃。そんなどこにでもあるような先制攻撃だろ。それとも自分が動けない理由でも知りたいのか?」
「…結構です。イギリス代表候補生として同じヨーロッパ圏の機体の事はある程度知っています」
あの黒い機体はドイツが開発中の物で確か名前をシュヴァルツェア・レーゲンと言いましたか・・・万能性に優れた機体で、AICという認識した物体の動きを止める第3世代兵装を搭載しているという話でした
今のこの状況は、そのAICのせいなのでしょう
というよりわたくしが聞きたいのはそういう事ではありません!
セシリアは眼を吊り上げ、動かない体で必死に目の前にいる男を睨みつけ問いただす
「わたくしが聞きたいのは、なぜこのような不意打ちのような真似をしたかという事です!!」
一応言っておくが、不意打ちとは、倫理的な問題を除けば特に問題があるわけではない。
今回の場合だって停止結界を使用したのは試合開始直後だし、停止結界自体も別に禁止されているわけではない
織田信長の桶狭間の戦いしかり
明智光秀の本能寺の変しかり
関ヶ原の戦いの小早川秀秋しかり
歴史を見ても奇襲、不意打ちは常套手段の一つであり、れっきとした戦術と言える
なので、八幡の使った不意打ちは戦いという枠組みでは別段問題なく、国際ルール上でも問題ないので反則にはならない
しかし、それはあくまで戦いという枠組みの中での話である
「お互いが全力で戦おうと誓った矢先にこのような真似をして・・・貴方には恥と言う物がありませんのっ!」
アラスカ条約が作られてからISを軍事目的で運用することは禁止されており、それからの流れでISは国際的な競技として現代社会に根付いている
競技・・・つまりはスポーツである。
姿かたちは異なれど彼女たちは自国の威信を肩にのせ、将来は国の代表として世界大会に挑むという高い志を持ったアスリートなのだ
スポーツとは正々堂々を心情とし、アスリートとは周りに恥じぬ振る舞いで競技に対し紳士としてふるまうもので
八幡の行った今回のような真似はそういった物に触れ、IS競技に携わる者にとっては恥ずべき行いといえる
スポーツと言う枠組みのISでは、正々堂々が当たり前、清く正しく華やかに行われるのである。
八幡の行いを他の競技で言うと
野球で例えるなら、自分の苦手な打者に対しわざとデッドボールを連発し
サッカーで言うなら、危険なスライディングで多くの選手に怪我をさせ
ボクシングだったら、世界王者決定戦で反則技の応酬をする
そんな、やる人間、見る人間、運営する人間誰に対しても不愉快極まりない暴挙なのである
仮に今回と同じことをモンドグロッソでやろうものなら、各国政府及びに各国操縦士さらには各国のISファンから苦情が殺到し
メディアから叩かれ、ネットの住民からはおもしろおかしくネタにされることだろう
つまり世界規模のボッチになりかねないのである
なので真っ当な国家代表選手は勿論、代表の座を求めて数多くのライバルと凌ぎを削り専用機を文字道理、自分の力で手に入れた代表候補生、そんな華々しい彼女たちに憧れを抱くIS学園の生徒達ではこのような戦い方はまずしない
というよりスポンサーや政府の受けが悪すぎるので、したくてもできないという方が正しいけれど・・・
もっとも誇りをもってISに乗っている彼女たちには、端からそんな考えがあるかどうかは疑問であるが
セシリア・オルコットの怒気を含む問いかけは、一人のIS操縦者とし至極真っ当な物であり
握手までしてお互い頑張ろうと鼓舞し合っていた者として、聞く権利がある質問だ
「恥・・・?なんでそんなもん感じなきゃいけねーんだよ」
「な・・・ッ!」
見るからに激情しているオルコットに対し、八幡はいたって冷静に表情一つ変えずにいいきった。
流石のオルコットもこれには絶句
激怒する自分に対し、謝罪するでもなく、開き直るのでもなく、無視するのでもなく、逆に怒るのでもなく
そもそもなぜ自分が怒こられているのかすら理解をしていない。そんな返答だ
ただ一応言っておくが、八幡と言う男は高校時代からやたらと鋭い感性を持っており、そん所そこらのラノベ主人公とちがい自分に対する好意も悪意も理解しており
場の空気を読むことに関しても極めて優秀だ
なのでオルコットがなぜ怒っているのかも正しく理解している
つまりはこの反応もただの演技なのだ
なぜ、そんな事をするのか?・・・ただの嫌がらせじゃない事を祈ろう
「別にルール違反をしたわけでもない。それに、こっちはあらかじめ正々堂々は保証しないといっただろ」
確かにそれは言っていた・・・開始とほぼ同時で停止結界を発動する1秒前ほどにだが
「こっちの攻撃がうまく決まったからって癇癪を起すな。そんな事で一々文句言ってる暇があったら少しは自分を磨きやがれ」
「言わしておけばッ!わたくしはそのような事で起こっているのでは、ありません!!」
「じゃあなんだ、カルシウム不足か?小魚か牛乳でも飲んで寝てろよボケ」
「毎日規則正しい生活を送っています!そもそも余計なお世話ですわッ」
と、言い合っているが微動だにせず止まっている状況なので周りからすればいささかシュールである
すっかり頭に血が上っているセシリアだが、このやり取りで逆にいつもの調子を取り戻した。
以前として頬を赤らめ八幡を射殺さんとばかりに睨みつけているが、思考はむしろクリアになり、この後の事を冷静に分析していた。
(この拘束は、彼本体のシールドエネルギーを消費しながら発動していたはず。なら、そう長い時間は使う事はできないはずです・・・が)
どう考えても自身のシールドエネルギーが尽きる前に攻撃するのは目に見えている。
現に会話をしているこの時にも、右肩にあるレールカノンからわずかな機械音が聞こえてくる。
(最大火力での一撃・・・あの見た目がただの飾りでないのでしたら、大ダメージは免れませんわね)
動けないから回避もできず、防御態勢をとる事すら許されない。そんな無防備な状態なうえ、この至近距離からの砲撃と言うのは、絶対防御という安全があっても恐怖心を覚えても不思議はない
どんなに訓練しようとも、人が本来持ち合わせる恐怖心を完全に消し去る事なんてできはしない
それはあの織斑 千冬も例外ではない。
どんなに取り繕うとも彼女は20代の女性だ。戦闘において恐怖を感じない事などないし、モンドグロッソ2連覇した世界最強の肩書を持っていようともそれは変わらない
普通の人でも
ただの動物でも
聖人君子でも
歴戦の軍人でも
百戦錬磨の戦士でも
魔王を倒す勇者でも
歴史に名を残す英雄でも
傲慢な王様でも
狡猾な悪魔でも
各地に祀られる神様でも
知性ありし者ならば、人も動物も魑魅魍魎も関係なく誰しもが何かしらの事を、あるいは物を恐れて生きている
ただそんな中でも勇者や英雄という一握りの者達は、多くの者が足踏みをして恐怖という激流に屈する中
一歩一歩と前に進むことができる
別に、怖くない訳じゃない
怖いながらも勇敢に勇猛に挑戦することができるのだ
そして、それはここにいる誇り高い戦士も例外ではない
絶体絶命のピンチの中でも、細められた蒼い瞳には敗北の色はなく
纏う雰囲気は依然として健在で、感じられる覇気はなおも上昇している
セシリア・オルコットはまだ、諦めていない!
(この一撃はどうあがいても受けるほかありません。なら―――耐えて見せましょうッ)
現存する兵器の中でもISは最強と言って間違いない。
そんな最強兵器であるISを一撃で行動不能にするレベルの兵器はそうはない
一夏の、零落白夜とかの例外を除けばミサイルだろうがビームだろうが核兵器だろうが万全上体のISを一撃で屠る事などできはしない
大なり小なりダメージはあるけれど、逆を言えばどんな状況どんな武器を使用しても一撃は必ず耐えられるの
それにACIはとても強力だが、別に無敵と言うわけではない
(第3世代型兵器全般に言える弱点・・・攻撃時、または攻撃された時に意識がわずかでもそれてしまう事。それと資料で見たACIは、動きを封じるにあたりかなり精密な認識をする必要があったはずです)
一度発動すれば、相手は動けなくなるがそれは自分側も同じ
装備で攻撃するには問題ないが、発動中はその場で足を止める必要があり
自分が移動する場合は、一度解除する必要がある。
なら、威力の高い攻撃を受ければその反動で、動きを封じられた自分は後方へと飛ばされる。その時は、ACIは強制的に解除されてしまうのだ
(機体のダメージは、恐らく酷いものでしょう。万全に動くことはできず下手をするとスラスターが使えなくなる場合もあります)
そうすると空に逃げる事ができず、嫌が負うにも地上戦になる。飛ぶ相手に対し圧倒的に不利であり、下手をするとまた捕まる可能性が高い
そうすれば今度こそ本当に終わりだろう
(それでも・・・一機だけでもブルーティアーズを飛ばせればどうとでもなります!)
攻撃されると発動できないACIに対し、ブルーティアーズのような複数の場所から変則攻撃ができる武装は有効であり
不利な地上戦でも、自身の戦闘スタイルは元々遠、中距離からの射撃
一夏のように接近戦しかできないというならいざ知らず、例え飛べなくてもやりようは幾らでもある
故にセシリア・オルコットはあきらめない
自分にはまだ、抗うだけの力が残されている
どんな逆境でも座して敗北を待つなどありえはしない
今必要なのは、覚悟を決めこれから来るであろう攻撃に耐え、いち早く行動をすること
全意識集中させ、ブルーティアーズの脱出、自身の離脱を最優先にする
大ダメージを受けるこちらに対し、相手は万全の状態
これから逆転などくら代表候補生と言えど、無茶であり無謀と言えるだろう
だが―――――――――
「来るなら来なさいまし」
彼女は決して諦めない
「このイギリスが誇る代表候補生セシリア・オルコットこれしきの事で敗北するなどありえませんわッ!」
その瞳は透き通る雫のよう、だがその内側に燃え盛る炎が今なお気高く輝いている
だが――――――
対する男の瞳は、もはや雫程度ではどうすることもできないほどに濁っているのであった。