比企谷 八幡の異世界漂流記(沈黙)   作:Lチキ

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次回バトル編!!

ただし、過度な期待はスンナよこのヤロウ!!


IS インフィニット・ストラトス 14

一夏とセシリアの試合が終わり10分足らずして次に戦う2人はすでにアリーナ上空にその姿を現した

まずセシリアのほうは、前の試合と同じイギリスの第3世代型 遠距離射撃タイプのIS『ブルー・ティアーズ』その名前にふさわしく澄んだ青色のカラーリングで、操縦士のセシリアの白人特有の白い肌に長い金髪が合わさりモデルと言われてもなんら違和感のない美しい出で立ちだ

 

一夏に破壊されたビット4機はあらかじめ本国から取り寄せていた予備と交換を終え、機体事態のダメージもIS学園最先端のリカバリーを受け、なんら問題はない

 

流石に全てが元通りという訳ではないが先ほどの試合と同等の起動ができるので、ダメージの蓄積による敗北と言う可能性は限りなく0と言えるだろう

 

さらに、それに加えセシリア本人の顔つきも明らかに違う。一夏との試合で見せた相手を侮る見下した目も、自分が負ける事は万が一にもないという余裕の表情もそこに存在していない

 

彼女の今までの性格を考えれば試合に勝ち今以上に男より遥かに自分は優れていると増長しそうなものだが、どういった心境の変化か現在彼女にはそんな考えはありはしない

 

その目は真っ直ぐに己の敵を見定め、その表情は学生と言うにはあまりにも鮮麗された戦士の物、その姿に一切の油断はなくこれから始まる試合のため精神を集中させている

 

そんな彼女を見て多くの生徒は違和感を感じ戸惑っている。主に1組の面々だが

 

初め一組の女生徒たちはセシリアに対していい感情を持っていなかった。あんな日本を侮辱する演説をしたのだし当たり前であるが、その考えもものの数分で消えてなくなった

 

それは、言わずもながらだが口喧嘩に負けた彼女が泣き出してしまったことが原因であり、またセシリア以上の物言いをして尚且つ女性を泣かし平然としている女性の敵ともいえる存在が現れたからだ

 

人というのは可笑しなもので、どんなに第一印象が最悪な相手でもそこに、自分たちの共通する敵が現れるといきなり一致団結するもので、さらに言うならセシリアは専用機を持ったイギリスの代表候補生、性格がどうあれ自分たちの目指す道の先達者といってもいい存在だ

 

そんな彼女を一組の女生徒たちはこぞって応援していた。話してみると彼女のいささか難儀な性格も分かってきて、基本的にいい奴という事もあり今では一組女生徒のマスコット的な存在だ

 

同じマスコット的な、名前も雰囲気ものほほんとしている女生徒と一緒にいる事が多く、見ている分には実に和む光景で始めの印象などなんのそのすっかりクラスの人気者だ

 

そんな彼女達の目から見ても今のセシリア・オルコットは普段の彼女からかけ離れた姿をしている。もちろんい意味でだ

 

彼女にいったい何があったのかと言うと、それは試合が終わってすぐまで時間を戻す必要がある

 

 

 

 

~~~~~~回想~~~~~~~~

 

試合が終わり、わたくしは破損したブルー・ティアーズの整備と修理を整備科の皆さんに任せ心を落ち着かせる意味と試合で汗をかいてしまったのでシャワーを浴びるために更衣室に来ている

 

靴を脱ぎ、ISスーツを脱ぎシャワー室に向かう

ISスーツは体にぴったりと張り付くようになっているのでただでさえ脱ぎにくい物なのに汗で湿ってしまったスーツは普段よりも断然脱ぎにくい

 

ふと、脱ぎ終わったスーツを見ると相乗以上に自分が汗をかいていたことに驚きました

普段これ以上に訓練をしているが、ここまでなったことは早々ない事で、自分がどれだけ今の試合で冷静さを失っていたか改めて思い知らされる

 

正直な話をするとこの試合は自分の圧勝で終わるという確固たる自信があった。まだ実験機の段階ですが、イギリスの誇る第3世代型ISに国内でもっともBT兵器の適性が高く、代表候補制に至るまでに並々ならぬ努力をしてきた自分が

 

ただただISを動かせる事が出来たというだけの物珍しさしか取り柄のない男に負けるなんてありえない、そう思っていたのだ

 

しかし、いざ蓋を開けてみれば勝ったといっても理由は知らないが相手側の自滅で拾った勝利に数多くの武装を用いたわたくしをブレード一つで肉迫していた彼、織斑 一夏の奮闘

 

それに加え、自分は始めの威勢など終盤につれなくなり、隠し玉のティアーズ(実弾ミサイル)を持ちいても勝負を決める事が出来なかった‥‥

 

そして、最後のあのブレード‥‥

あれが何なのかは知りませんが、わたくしの直感が言っています。あれが当たっていれば勝者と敗者は真逆になっていたとことだろうと

 

これが散々相手を否定し、侮っていた自分の戦いかと思うと落ち込まずにはいられない

今も本国でオルコット家を支えてくれてる幼馴染に死んでしまった両親になんといい訳をすればいいのか、わたくしにはその言葉が見つかりません

 

そして何より、そんな自負の念に駆られているさなかにも頭の中で思い浮かべているのはあの男の‥‥彼の姿だというからもはやどうすることもできない

 

今まで見てきた男という存在とはまるで違う、死せる前まで母の寄生虫と周囲に穢されいつも周りの顔色をうかがっていた情けないあの人とも

 

両親が死んですぐに言い寄るようにやってきた、オルコットの保有する財を狙ったあのやから達とも

 

彼の、そんなわたくしの中の男という存在とはかけ離れた凛々しい姿。どんなになっても諦めず立ち向かう不屈の闘志

 

 

「‥‥‥織斑 一夏」

 

 

流れ出るシャワーの音にかき消され周囲には聞こえないくらいの声でそう呼べば途端に頬が熱くなる。一糸纏わぬ胸に手を当てれば自分の中に響いてくる。

 

何とも騒がしく普段では感じられないほどに高鳴る鼓動

 

しかし、決して嫌な物ではない。むしろ心地いい、生まれてきて今まで感じた事のない高揚感

 

 

ああ‥‥なんとも素晴らしい‥‥ああ‥‥何とも幸せだ‥‥

 

 

濡れた体を乾いたタオルで拭き、雫のすべてをはらいのけ

予備用の真新しいISスーツに足を通し、腹に胸に肩にと上へ上へと着ていく

 

化粧台の鏡に映る自分の顔、頬は赤く口元にも締まりがない。これが誰の顔かと一瞬分からないくらいには締まりがない

 

これではいけないと両の頬を軽くたたき意識を覚醒させる

 

まだわたくしの戦いは終わっていない。これ以上無様な姿を曝すわけにはいかない祖国の為に家を守る彼女たちの為に死んでしまった家族の為に‥‥そして、彼のためにも、これからの試合は自分の全霊をかけて挑む

 

もう、男だからと侮りはしない。慢心も捨てる。

 

相手はあまり似てるとは思えないが彼の兄なのだ

浮ついた心根ではまさしく負けてしまうだろう

 

目をつむり、深呼吸を一回

 

整備の方々から受け取った自分の愛機を一撫でし、次の瞬間には全身を青い機体が包み込む

 

動作に異状なし、エネルギーの充電もよし、破壊された武装も新しくどこにも問題はない

静かにアリーナの空に飛び立ち、彼敵が現れるのを静かに待つ

 

これからがこのわたくしイギリスが誇る代表候補生セシリア・オルコットの本当の戦いだ

 

無様は曝さない、誰に恥じることなく挑み勝利をつかみ取る

 

頭は常に冷静に、でも闘志は決して絶やさない

 

 

空高く静かにたたずむ青い機体、それに乗る日の光を浴びきれいに輝く金髪の少女、その顔には一切余分な物はなくこれからの戦いに挑む面持ちはまさに遠き昔、彼国を守るため戦った騎士のようであった

 

 

 

~~~~回想終了~~~~~

 

 

そんな感じで今に至る

 

 

一方、それに対するもう一人の男性操縦士も彼女と同様にアリーナの空に飛びだった

 

その姿はまさに黒

セシリアや一夏の機体より随分と武骨で重々しく、一際目立つ砲身が何より特徴的だ

 

黒を主体に赤いラインがところどころに入り、アジア系の人種に見られる黒髪に黄色人種特有の肌、その奥から覗く暗く濁った二つの瞳

 

真夜中や廃墟で見れば間違いなくホラーな絵面である。その異様ともいえる不気味な姿に周囲はこぞって息をのんだ

 

さらに管制室では、モニターによりアップでその姿を見た山田先生が泡を吐いて気絶したりと、先ほどまでの試合で熱していた会場は見る見るうちに冷めあがる

 

その中でも今だ平然を貫く人物はたったの3人だけだった

 

一人は言わずもながら世界最強のIS乗りであり2人の弟の姉、織斑 千冬

八幡の姿を見ても驚きもせず平然とコーヒーに口をつける。一瞬、床に倒れてる後輩を見て軽くため息を吐くがすぐに視線はアリーナに向けられる

 

というか、保健室にでも運んでやれよ

 

二人目は、世界最強を姉に持つ一番下の末っ子であり彼の弟、織斑 一夏

八幡の専用機を初めて見たので興味津々といった感じで空中ディスプレーを見ている。男の子なら機能性とか関係なくゴテゴテのメカメカしてるロボ系に心が引かれるのは必然と言える

文句があるわけではないが、いや、ブレード一本とかいささか不満ではあるが・・・自分の乗る白式は機動力を重視したタイプで線もシャープな作りになっているので、八幡の機体のようなタイプにも憧れがある

 

隣りで見ている幼馴染の少女が、初め女の子らしい悲鳴を上げた所

 

「箒でもそんな可愛い声上げるんだな」

 

と、色んな意味で失言をしてしまい物理的に痛い目を見たこと以外は問題なく観戦を続けている

 

三人目は、意外な事にもっとも至近距離からその姿を目視してる対戦相手 セシリア・オルコット

普段の彼女ならドン引きしたり悲鳴を上げたりするのだろうが、今現在彼女の集中力は非常に高くこの程度の些事で取り乱したりはしない

目をそらすことなく目前の敵を見つめる姿は、多くの者が見とれる凛としたものだ

 

 

 

八幡の用意した専用機『シュヴァルツェア・レーゲン』

 

黒を主体としたカラーリングに右肩に装備された大口径レールカノン。6本のワイヤーブレードと両手に付くプラズマ手刀を装備したドイツの第3世代型、近距離から遠距離射撃までこなす万能型である

 

 

両者が同じ制空権にたどり着いたとき、初めに話しかけたのはやはりセシリア・オルコットだった。

 

 

「意外ですわね。てっきり日本製のISを使用すると思ってましたが、まさかドイツの第3世代とは」

 

 

「なにぶん世界に2人の実験動物なんでな。一声かければ大抵の国がうちのを使えって言ってくる。別にどこの何を使っても問題はないだろ?」

 

 

「ええ、無論ですわ。貴方がどこの国のどのようなものを使っていても、わたくしのやることは変わりませんから」

 

 

そう宣言するセシリアは、一見今まで道理の傲慢で男を馬鹿にし、どこからくるのか分からない自信を誇張する精神年齢小学生のようだがその顔を見ればそれが誤りだとすぐに分かる

 

先ほどの試合の影響だろうか、男(俺)に対する見下したような視線を感じない。あくまで相手と自分を同等に、驕りを消し去り相手を観察するそんな視線を感じる

 

 

 

これはまた、めんどくさい

 

そんなセシリア・オルコット(改)をまじかで見る八幡の感想だ。正直な話、オルコットのこのような変化を想像していなかった。

俺の立てた目論見じゃ、散々自分を馬鹿にした一夏(実際は八幡)に対し相当な報復があるというのは想像していた。

 

例えば、素人同然の相手をすぐに倒さずじわじわと嬲り倒すとか、自分の持てる戦術、武装、経験の差などを惜しみなく発揮し有無を言わなさに勝利を収めるとか

 

そんな感じで次の対戦なんて関係なく全力を出すという事は分かってた、というかそういう風に誘導した。

で、俺はそんなオルコットを観察して不測の事態が起きないように万全を期すつもりだったのだ。

前情報にない武装、画像やデータだけでは分からない相手の動きのリズムや癖、その他もろもろを見極める。

 

一夏は、犠牲になるが最終的に俺がオルコットを倒すためにはなくてはならない、かと言われると実はそうでもない、いわば無くても困らないけどあったほうが便利みたいな感じで、必要と言えば必要な犠牲になったのだ‥‥‥今ではなったはずだったと過去形になるがな

 

途中までは俺の思惑道理の展開になった。ビットを使用中は自身は、他の攻撃動作をとれない事、ビーム兵器以外の実弾ミサイル等、あいつの武装もこれ以上の隠し玉はないだろう。一夏は自身の役割を全うして後は、華々しくオルコットに敗れ、その勝利でオルコットはさらに慢心し、隙を見せるだろう。

 

しかし、残念ながらそうそううまくは行かなかったようだ。一夏は予想以上に善戦し、最後に至ってはほとんど勝利していたと言えるほどの活躍を見せた。

 

その結果、オルコットは慢心するどころかある種の危機感を覚えさらに、彼女の中にある男と言う存在の根本を変えてしまった。

 

慢心どころか今の彼女は一夏の時とは違い、初めから勝負を仕掛けてくる。自身が絶対に勝つと驕らず勝つために全力を尽くす。そういう感じのやからは極めてめんどくさい

 

 

「それじゃあ、いっちょ胸を借りるつもりで行かせてもらいますか。できれば手加減を期待してるんだが・・・」

 

 

「残念ながらそれには答えかねます。わたくしも手心を加えて貴方に勝てるほどの実力を持っているわけではありませんので、全力で行かせてもらいます!!」

 

 

機械的なアナウンスによりカウントダウンが始まる。両者の距離はおよそ10m弱、一方は手に握るもっとも使い慣れたライフル銃をもう一方は、右手のプラズマ手刀と大口径レールカノンを構え、試合開始のゴングを静かに待ち続ける

 

 


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