戦姫絶唱シンフォギア feat.ワイルドアームズ 作:ルシエド
先日の一件で米国側の弱みを握っておいてよかった、とフィーネは思う。
「あら、そんな怖い顔しないでくれる?
私はこの件に絡んではいない。無関係で居るつもりもないけれど」
ナイトブレイザーの登場は、世界に激震を与えた。
ノイズとは、人間の天敵と定義される最悪の災厄である。
そのノイズを蹴散らし、戦略兵器を超える破壊力と戦闘能力を見せつけたナイトブレイザーの戦闘映像は、瞬く間に世界中に広がっていったのだ。
それは世界に核兵器の保有国が一気に増える以上の衝撃を叩き込む。
ノイズの対策を考えていた世界中の戦う者達。
黒騎士が聖遺物の力を用いていると理解した研究者達。
軍事バランスを考える軍事と政治の世界の上層の者達。
知識がある者ほど、立場がある者ほど危機感や警戒心を抱き、そうでない者ほど焔の黒騎士という救世主に歓喜した。
シンフォギアの戦闘力を知っていて、あるいはそれ以上の戦闘力を発揮するかもしれない黒騎士の存在を知った、大統領もまたそれを警戒した一人。
「変身者が誰か、は教えてあげましょう。プレジデント。
けれど手出しは許さない。対応はこちらに一任してもらう」
フィーネはそんな大統領に釘を刺す。
彼女の予想以上に、騎士は求心力を発揮してしまっていたからだ。
今やゼファーの変身後の姿は世界中で『英雄』のような扱いをされている。
救世主、神の使い、正義の味方、ヒーロー、ノイズの敵、古代文明のロボット、等々。
かの事件の日から、インターネットは騎士の話題で持ちきりだった。
無論噂話はいいものだけではない。
某国の秘密兵器だの、ノイズの裏切り者だの、ノイズを全滅させれば次は自分達だの、好き勝手に言っている者も多い。だが、目を離せないでいることに変わりはなかった。
誰もが期待し、予感していたのだ。
"これがきっかけで何かが変わるかもしれない"、と。
それは近年出現率が上がり、人々を脅かし恐れさせているノイズという怪物に対応し望まれた、人々を守るためだけの『英雄』に近いものであったから。
誰が言い出したかは分からない。
もしかしたら、皆が一斉に言い出したのかもしれない。
ある者は誰かがそう呼んだ名を気に入り、ある者はその姿を見て自然とそう呼び、本人がそう名乗ったわけでもないのに、変身した後のゼファーはこう呼ばれていた。
騎士を称える者も訝しむ者も、その呼称だけは満場一致で使うのであった。
「私達の共通の目的は?」
フィーネが問いかけ、大統領は苦々しげに応え、彼女は頷く。
「そう、ロードブレイザーの打倒に向けて戦力を集めること」
今はまだ、フィーネはゼファーを排除するつもりはない。
そしてゼファーのために米国と敵対するつもりもさらさらない。
ゆえにか、彼女は米国がナイトブレイザーの戦力・行動原理・危険度を警戒し、彼を排除しようと考えないように、その動きと思考を誘導する必要があった。
一に、ナイトブレイザーのデータを小出しにして渡すこと。
二に、シンフォギアのアップデートと戦力強化を繰り返すこと。
三に、あくまでフィーネ・ルン・ヴァレリアは米国側であることを伝えること。
四に、それは永遠の確約ではないのだということ。
「聖遺物の分野にて日本に置いて行かれたくないのなら、身の振り方を考えなさいな」
まだまだすべきことは多くあるが、今のところ刺す釘はこれで十分だと彼女は考える。
あくまで、米国の軽挙妄動を制しコントロールすることを考えていけばいい。
損得と利害を示し、彼女は更に交渉を続ける。
それをチラつかせる以外に、彼女が大国から譲歩を引き出せる要素は存在しない。
第三章:罪人が英雄に至るまで:エピローグ
守りたい陽だまりがあり、帰りたい日常があり。
ゼファーはそこへと帰って来ることができた。
今まで何度も、居場所と守りたい人を一緒に失ってきた……と当人は思っている、そんな人生を送ってきたゼファー。
彼に不幸に浸る趣味はないが、平和に浸る趣味はある。
リディアンの校門と昇降口の間を掃きながら、ゼファーは守りきった平和な日常に浸りつつ、ほんのりと熱を孕んだ溜め息を吐いた。
「ふぅ」
一日の臨時休校を経て、今日からリディアンの授業も再開される。
ゼファーも気絶後、起きればすぐに出歩こうとしたが奏や翼を始めとする二課の面々に無理やり医務室に押し込められ、丸一日安静にさせられていて、今日ようやく出てきたばかり。
一から十まで人の手で作られたシンフォギアの装者ですら頻繁な精密検査が必須だというのに、よく分からない聖遺物とよく分からない融合をしているらしい、そんな少年が計算外の無茶を重ねているというのだから、二課の医務室勤務の人らは戦々恐々だろう。
そんな人らの心配に気付きながらも、ゼファーは生き方を変える気は全くなく、けれど胸の内でこっそりと謝って、目を閉じる。
昔、同じように心配してくれたことがある大人達の姿を、友達の姿を、思い出しながら。
死人のことを思い出すことも拒絶していた数年前の彼からは、想像も出来ない姿で。
(なあ、見てるか皆)
大人の姿が次々とチラついては、消えていく。
憧れた英雄、嘘つきの悪友、家族の老人。ナスターシャにウェル、カルティケヤやトカ達。
今の自分を見たら、友達はどう思うかと思いを馳せる。
クリスは、セレナは、リルカはどう思うだろうかと。
マリエルは、ベアトリーチェは、他の施設の子供達はどう思うだろうかと。
切歌ならきっと目をキラキラさせて、調はよく分からない仏頂面で、マリアは普通に驚いて。
瞼の裏に夢を見ながら、ゼファーは真一文字に口を結ぶ。
(俺は、俺の大切なものを―――守りきったぞ)
守れなかった人達を想いながら、そう思う彼の心中に駆け巡る思いに、誰が共感できようか。
今回の戦いは、ゼファーにとって一つのゴールだったのかもしれない。
人生というマラソンにゴールはない。ゴールを抜けても、また新しい目標が見えてくる。
されど、一つの到達地点に至ったというのは、紛れもない事実だった。
「お、用務員さんじゃん!」
「よかったー、無事だったんだー」
「死人出なかったって言っても、怪我人居たからねー」
掃除中のゼファーにかかる声。
振り向けば、そこにはこの学校に通う女生徒達が居た。
歳相応に喜色満面、心配、平和ボケといった様々な色を浮かべつつ、彼に話しかけてくる。
「おはよう、皆さん。心配かけてしまったようで申し訳ない」
ゼファーも最近は少し馴染んできたのか、リディアンの学生相手に敬語が取れてきたようだ。
実際高校生である彼女らはゼファーより少々年上くらいではあるが、元から年上にフランクな喋り方のゼファーに、ナスターシャや了子がみっちり仕込んだ敬語が作用し、クリスの荒っぽい話し方や切歌の変な語尾癖が残り、実に微妙な喋り方が成り立っていた。
「あれ見た!? ネットで急上昇ワードの『ナイトブレイザー』!」
「ナイト……? ああ、あの黒い騎士の?」
ゼファーはすっとぼける。
まだ日常でも仮面を被る域にまで"手遅れ"になっていないゼファーは、お世辞にも嘘が得意とは言えないのだが、ノーテンキな女子高生に見破られるレベルにひどいものでもなく。
「やーすごいよねあれ! 現実に魔法とかないと思ってたら、ね!
ノイズに触れば現実だと死ぬと思ってたけど、
炎の魔法とか現実に存在しないよねと思ってたけど、
ビーム撃てる正義の味方とか現実には居ないと思ってたけど、居た!
すごく傷めつけられても死なずに勝つゲームの主人公的っていうか!
そういうの! すっげーっていうか、もーカンゲキーっていうか!」
「……」
ゼファーは無言で、自分が被った仮面を周りの人間がどう見ているのかを理解する。
自分とはかけ離れたその虚像の大きさも、その虚像がどれだけ力のない人々の心の支えになっているのかということも、その希望を損なってしまうとすれば、それは自分なのだということも。
ゼファー・ウィンチェスターは理解する。
理解して、微笑んで、彼は彼女らの話を切って誘導する。
「ほらほら、目立ってるからさっさと教室行きな」
「わっ、マジだ! んじゃねー、ウィンチェスター君!」
「じゃねー」
「じゃねー」
ゼファーに興奮冷めやらぬとばかりに話しかけていたからか、そこが校門と昇降口の間だったからか、話題が噂のナイトブレイザーについてだったからか、彼らは登校途中のリディアン生徒らにかなり注目されていた。
彼に促されるままに、女子らは自分の教室に向かって駆けて行く。
通り過ぎて行く生徒の一人一人に朝の挨拶をして頭を下げながら、誰も居なくなったところで集めたゴミを回収しつつ、ゼファーは独り言ちる。
「現実に居ない、ね」
女子生徒に言われたことを、ゼファーは噛み締める。
知っている。そんなことはよく知っている。ゼファーが知っていないはずがない。
誰も死なせない都合のいいヒーローが居たならば、喪失を繰り返していたあの頃に、それはゼファーの前に現れないはずがないのだから。
それを求めつつ、そんな者は居ないととっくの昔に諦めていたゼファー。その当人が今やそういう正義の味方として扱われているのだから、巡り合わせというのは皮肉なものだ。
が、それも仕方ない。
"居ない"からこそ"ならなければ"と思う人間も、この世には居るのだから。
女子生徒が言ったように、手足をもがれ胸に大穴が空いても死なないような人間は、もうお伽噺の中の住人だ。それを人間と呼ぶことに抵抗がある者も居るだろう。
ゼファーは己の胸を、手足を撫でる。
そこは先日の戦いの中で、ノイズによって欠損させられた部位だった。
了子は彼の異常性を聖遺物との融合体『融合症例』と呼んだが、最近ゼファーはそれを嘘、あるいは了子が本当のことを言ってないのでは、と勘で感じ始めていた。
何か、違う。何かどこかがズレている。
けれどどこがどう変なのか分からないために、了子を問い詰めようとも答えは得られないのだ。
「……もう人間かも怪しいもんだ。
それは一つの完成だった。
ゼファー・ウィンチェスターその人には、何一つ自覚がないままに。
どんなにズタボロになろうとも戦い半ばで力尽きることなく戦い続ける、再生能力。
彼はいつまでも戦い続ける。戦い続けられる。
しぶとく彼を生き残らせ、敗北を遠ざけ、助けを求める声を聞き届ける
彼は全ての悲鳴を聞き、断末魔を聞き、祈りを聞き届け、助けを求める声を聞き逃さない。
人類最強を始めとする人間達から得た戦闘技術、異端戦闘の才。
そして全ての命の味方で在り続ける精神性。
全ての敵を打ち倒すためのアガートラームとネガティブフレア。
彼の全ての戦闘能力は、ナイトブレイザーという一つの形に収束していた。
過ぎ去った日々の中、雪音クリスが気付いていたこと。
ゼファーは悪夢を常のように見ていて、それが直ったとしても眠りはいつも短く浅く、他の誰と比べても眠りを求めない少年だった。
彼には睡眠欲がほとんどない。
過ぎ去った日々の中、セレナ・カデンツァヴナ・イヴが気付いていたこと。
ゼファーは自分が他の誰より嫌いだから、自分以外の皆が好き。
そこに異性へ向ける感情といった、普通の人らしい好意はほとんど見えない。
彼には性欲、転じて恋愛をしようとする欲求がない。
それがセレナの、「そこが変わらなければ……」という最期の言葉に繋がっていく。
過ぎ去った日々の中、二課の誰もが気付いていたこと。
ゼファーは他人の食事にのみ、その味に拘る。
自分が食べる分には全く拘らない。全てが美味しい、凄く美味しいとしか感じないから。
加えて極めて少食で、空腹と飢餓に耐えられない、なんてことは一度もなかった。
それはあってもなくても変わらない、壊れた食欲。
彼には人並みの食欲がない。
それは一つの完成だった。
ゼファー・ウィンチェスターその人には、何一つ自覚がないままに。
英雄の卵は、皆が求める英雄に至る。
三大欲求すら棄て始めた、英雄に求められる力を備えた英雄に。
本気の嘘の仮面は、騎士の仮面へ、そして本物の英雄の仮面へと変わっていく。
やるべきことのために得た力、得た特性。それゆえに彼に後悔はない。
たとえ、いつかの未来にどんな結末に至ったとしても、だ。
『明日は今日よりいい日になるよ』と皆に嘘を吐き続け、それを現実にするためならば。
本気の嘘なら、後悔はしない。
「よう、おはよう」
そんなゼファーに、話しかけてくる声がある。
彼に振り向く間も与えず、その声の主はゼファーの頭をわしっと掴み、ゆさゆさと揺らした。
が、この声の主ならば振り向かなくても誰かは分かる。
「カナデさん?」
「おうよ、あたしだ」
けらけらけらと、奏は笑う。
この上機嫌ぶりから見るに、二課本部に泊まった翼を今朝もからかってきたのだろうか。
あるいは、これからゼファーをからかおうと思っているから上機嫌なのかもしれない。
「一日休んですぐ仕事か。もう少し休んでてもいいんじゃねえの?」
「ノイズにちょっと壊された所と、汚された所直して綺麗にしに来ただけだからさ。
朝から汚い学校の道通るのって気分悪いだろうと思って。昼前には帰るよ」
「気にし過ぎなんだよ。学校は基本ちょっち汚いもんだ」
「そっかな」
頭を掴んでいる奏の手を振りほどき、ゼファーは後頭部を掻く。
彼がここに居る理由は潔癖症だからではなく、あくまで気遣いと"『いつも通り』を守る"という主目的があるがためである。
疲れたから後にしよう、辛いから後にしよう、という発想は彼にはない。
「あたしが言うのも何だがな。肩の力抜いて生きろよ、お前」
「カナデさんみたいに、ほどほどに抜ければいいんだけどさ。中々難しくて」
ゼファーの目から見て、奏はここ一年弱でかなり肩の力を抜けるようになった風に見える。
手負いの獣、狂犬、餓狼。
そう称されていた天羽奏の最近は、どう見ても普通の女子高生のようだった。
時折見せる怨念と憎悪はそのままに、「それはそれ、これはこれ」と無自覚に割り切れるようになっており、日常の中で他人に苛立ちをぶつけるようなこともない。
だが、それも当然だろう。
彼女は生来優しい人間であり、明るさと聡明さを併せ持つ人気者であり、周囲の人間を惹きつける魅力を持ち、心の痛みを知る少女だ。
何も知らないリディアンの生徒達の中に放り込まれて、八つ当たりをしてはいけない一般人の中に放り込まれて、日常と平和と理由のない善意に包まれる日々。
そんな日々の中に居て、人がいつまでも狂犬で居られるわけもなく。
弦十郎達の冀望、及び「ゼファーとは違い彼女なら」という途中から交えられた推測の通りに、学校という環境が奏の更生によく働いたのだろう。
変えようとしない限りは手がかからず、変えようとする限り途方もなく面倒くさいゼファーと比べれば、奏は本当にシンプルかつ明快で、真っ直ぐな少女だった。
ひとたび飛び出せば、真っ直ぐに飛んで行く槍のように。
弦十郎が、翼が、二課の大人達が、この学校の友人達が、ゼファーが、彼女を変えつつあった。
しかしながら、ゼファーが言うような変化に自覚がないのだろうか、奏は少し難しい顔をして彼に問いかける。
「あたしは、そういう風に変わってるか?」
「え? まあ、うん、余裕が出てきた感じかな」
ゼファーと奏は似ている。
性格ではない。その境遇が、だ。
二人は共に災厄とそれに類するものに全てを奪われ、その生涯において初めての憎悪を手にし、復讐という始点に立った者である。
ただ、そこから歩いて行く道だけが違っていた。
「……いや、どうなんだろうな。あたしは……」
奏はゼファーに対し、初めて激怒したあの日を思い出す。
自分とお前は違う、と叫んだあの日。
大切なものを失った後、何かを守るために戦うか、暴虐に報いを与えるために戦うのかの違いを突きつけたかの日。
彼女は知る由もなかったが、かつてのゼファーに似た感情を持っていた奏が、その時のゼファーの感情を全否定したその日、二人は本当の意味で向き合った。
奏は怒り、ゼファーは傷付き、絵倉の仲介があったとはいえ、初めて互いに対して本音をぶつけ合い、奏は拒絶を和らげゼファーは彼女を受け入れた。
――――
「お前なんかと、あたしを一緒にするなッ!
あたしなんかと、お前を一緒にするなッ!
比べたら、ひどくみじめだろうがッ……!」
―――
あの時の言葉を、天羽奏は今でも撤回する気はない。
お前なんかと、という気持ち。あたしなんかと、という気持ち。
それは今でも彼女の中にくすぶっている。
この度の戦いでゼファーは、ノイズを討つためではなく、人を殺させないために戦った。
守るために戦ったのだ。あの日、奏がゼファーに対しそう言った言葉のままに。
ゆえに、ノイズに誰の大切な人を奪わせることもなく、誰の家族を奪わせることもなく、その戦いを終わらせた。
それを知り、奏は……何故か、とても救われた気持ちになっていた。
自分がそう生きるかどうかの問題は、別として。
奏はちらりと、花壇の方を見る。
おそらくはノイズが蹂躙した跡なのだろう。少々荒らされていて、けれど人の手でちゃんと直された跡があった。
ゼファーが言っていた、無理しても直しに来た所の一部がそれなのだろう。
踏み躙られたはずの花々が、そこに咲き誇っている。
「ありがとな」
「?」
「お前がそういう奴で、良かった」
もしも。もしもだが、天羽一家がノイズに襲われた場にこの少年が居たならば。
絶対に守ろうとすると、守ってくれたはずだと、意味もない確信を奏は持っていた。
その仮定は本当に意味のない、後悔と憧憬と尊敬と信頼の入り混じった不思議な想像。
(今のあたしは、ノイズを殺すか、人を守るか。
目の前で天秤にかけられたら、どっちを取るんだろう……)
そしてもし、家族をノイズに殺された直後の天羽奏が、目の前でノイズの大群に襲われていたどこかの家族を見たならば。『助けなかっただろう』という確信も、奏の中にはあった。
助けず守らず、ノイズを殺しに行くだろうという確信があった。
彼女は復讐者。少なくとも、二課に来てすぐの頃はそうだった。
その上で彼女は思いを馳せる。今の自分は、どうなのだろうかと。
(あたしの家族をああいう風にしたノイズを殺すのか……
あたしの家族のようになるかもしれない誰かを守るのか……)
自分のことは自分が一番分かっていない、なんて言った者も居る。
今の奏は、変わりつつある自分のことが自分でもよく分かっていなかった。
それでもたった一つ、分かることがある。
親友の風鳴翼なら。この少年、ゼファー・ウィンチェスターならば。
どんな時でも絶対に、誰かを守る選択を一番に考えるはず、ということだ。
「どうした? カナデさん」
「気にすんな。なんでもねーよ」
皆知らない。奏本人も、奏をこの学校に放り込んだ大人達も。
『倒す』よりも『守る』ことを志す友の姿こそが、天羽奏に特に大きな変化を与えているのだ、ということを。一番最初に奏にゼファーを付けた者達以外は、誰も知らない。
緒川慎次は風鳴弦十郎の腹心である。
それは家系への信頼であり、能力への信頼であり、性格への信頼である。
彼ほど弦十郎に信頼されている者も居ないだろう。
シンフォギアの技術が外部に漏れている可能性がある、内通者が居るかもしれない、という疑惑が浮かび上がっても、この二人は互いを微塵も疑ってはいなかった。
なので今日も、二人は弦十郎の私室でテーブルを挟み額を突き合わせている。
「さて、どうしたもんかな」
「どうしたものでしょうかね」
そして緒川は頭も悪くない。
弦十郎が重要な相談を真っ先にする相手は、だいたいがこの忍者である。
今日の彼らのお悩みは、『ナイトブレイザー』についての件だった。
「諸外国がかの騎士を日本の兵器だ、ともっと糾弾してくるものだと思いましたが」
「俺もそう思ったが……それを証明する証拠はないからな。
せいぜいが騎士と自衛隊が連携しているように見えた、くらいの話だ。
正体不明、ゆえに危険である、と主張するには今の世論の流れは厳しすぎるだろうよ」
「世論、ですか。確かに熱狂的な支持を受けているようですね」
「ゼファーが最初から最後までノイズの打倒ではなく、人命救助を優先していたからな。
それらの行動の全てはカメラに記録されている。
……最初は活動可能時間を余分に使い過ぎている、と言っていた奴も居たがな。
無駄じゃなかった。人の命を最優先に考えて戦ったアイツの頑張りは、無駄じゃなかったんだ」
弦十郎はかの戦闘の中で、人助けに時間を使った結果、ノイズやタラスク相手に使える時間を使い切りそうになっていたゼファーを見て、歯噛みしていた。
けれど、ゼファーがそうして誰も見捨てず戦った結果、人々は正体不明のナイトブレイザーを「誰も見捨てない人の味方」であるとハッキリと認識していた。
情けは人のためならず。
誰も見ていないように見えても、善いことをすれば周りはちゃんと見てくれているのだ。
誰かが見ているから善いことをするのではなく、誰も見ていなくても善いことをし続ける人間はいつかきっと報われる。
それは絶対ではないが、続けていればいつの日か必ず来る必然である。
今の、ゼファーのように。
「だから俺達も頑張らないとな。汚い大人のやりとりまで、子供に任すわけにはいかん」
「はい」
弦十郎を始めとする二課の人員は、ノイズの大規模出現に対応するために非番の人間や仮眠中の人間まで全員引っ張り出してきたというのに、今日に至っても大忙しである。
睡眠不足で倒れる者も出始めているが、なんとか全員意地と根性と気合で乗り越えていた。
何をしているのかといえば、二課の前身・風鳴機関の本業……つまり、諜報活動である。
ナイトブレイザーの出現により、その正体を知りたがる者は雨後の筍のように現れた。
それはこの国の国民であり、諸外国の外交官であり、また国の秘密や責任問題を暴き立てることで生きる糧を得るプロ市民や、政治活動家達であった。
だが、大抵の人間が想像するような真実はそこにはない。
かの騎士を賞賛する人々が思うような、政府機関とは無縁の突如現れた謎のヒーロー、その正体は誰も知らない……なんてことはない。
政府の機関である二課、及び二課から騎士の正体を知らされた一部の人間は、その正体が二課所属のゼファー・ウィンチェスターであることを知っている。
かの騎士を政府の陰謀、秘密裏に作られた新兵器、日本に内通していたノイズの裏切り者、潜んでいた異世界からのスパイだのと、邪推する者達が思うようなこともない。
日本政府は何も知らず、今となっても要人以外は何も知らされていない、突発的に発生した偶然の産物に近いヒーローだったなどと、誰も知るわけがないのだ。
なのに皆日本政府を問い詰める。
二課から実際に味方であることを伝えられつつも、『平和主義』『戦力を保持しない』日本政府としてはそれを公に認めるわけにはいかない。
ナイトブレイザーを迎合する世論もあり、日本政府が示した意思は極めてシンプル。
「その正体は不明であるが、現状は敵であるとは判断できない」である。
感謝状の用意もある、けれど警戒は怠らない、という玉虫色の解答だった。
つまり、ナイトブレイザーに対する日本政府のスタンスは"把握次第行動"ということ。
ナイトブレイザーに対する世論が好評のまま続くなら、『交渉の結果味方についてくれた』と後にマスコミを通じて報道すればいい。
それはかなり平和的な解決で、日本政府の支持率も上昇するだろう。
日本政府の戦力保有と騒ぐ者も少なくないだろうが、そうなれば近年増加傾向の九条改正派、海外への人道的支援推進派も動くだろう。
ナイトブレイザーへの世間の印象が悪くなったならば、『我々の手で排除した』と主張するため一芝居打ち、以後ナイトブレイザーに対し敵対の姿勢を取るだろう。
そうなれば、おそらくゼファーの変身を半永久的に禁止するよう動きもする。
これで色々と知らぬ存ぜぬで外交的には乗り切れる可能性の芽が出て来るはずだ。
後は半分、ゼファー次第。
彼がどれだけ人の信を得られるか、支持を得られるかの話だ。
言い換えれば、彼の生き方が人々に受け入れられるか、という話でもある。
そして残り半分は大人次第。
汚い政治の世界から彼を守れるか、諸外国の干渉から彼を守れるか、という戦いは続く。
かつ、ゼファーの正体という機密も守り続けなければならない。
正体がバレれば、この地球上にゼファーが『英雄』としてではなく『人間』として生きられる場所がなくなってしまう。
"人間として生きる権利"までもを失ってしまえば、彼は最後の一線も越えてしまうだろう。
ゼファーを守るなら、大人達はこの暗闘の世界においても負けるわけにはいかないのだ。
「情報統制は問題はない……が、まだ油断できんな」
「SNSや匿名掲示板を中心にエシュロンに近いシステムを稼働させていますが……
今の情報化社会の進歩は目覚ましいです。
風鳴機関があった頃のように、完璧に情報を操作することは難しいかと」
幸運にも、二課には備えがあった。
もとよりナイトブレイザーの正体を隠すのと同じ理由で、シンフォギア装者の正体を隠すための準備を着々と行ってきたのが、特異災害対策機動部二課という組織だ。
情報操作、世論の誘導、真実を嘘で覆って誤魔化すなどお手の物。
ナイトブレイザーの能力にシンフォギアを助けるものがあったのとは逆に、今度はシンフォギアを助けるための組織のシステムが、ナイトブレイザーを助けているのである。
「実際、一長一短ですからね。シンフォギアも、ナイトブレイザーも」
「長も短もゼファーの方にあるんだがな。尖り過ぎだ」
「ですが、どちらも情報操作をしてまで運用する価値のあるものです」
シンフォギアの問題点。
その一つに装者の顔が晒されてしまう、というものがある。
シンフォギアは口から発せられる歌を介して、聖遺物のエネルギーを増大・操作するFG式回天特機装束である。
で、あるからして、口を覆う装甲など論外、首元――喉元――にはかなりの余裕ができるような設計になっている。
更に言えば、最大の防御機構であるバリアコーティングは肌に沿って展開されるため、装甲の厚みが防御力の差になりにくい。
装甲を増やそうとしても、それを構築する必要エネルギーの増大・重さによる機動力の低下と体力の消耗・歌のための呼吸の邪魔になるなどの問題も発生してしまう。
なのでシンフォギアは肌の露出が多く、装甲が少なく、顔に展開される装甲もせいぜいがヘッドギア程度、といった風になっているのである。
つまり、シンフォギアは顔を隠すことが出来ず、顔を隠す必要のない兵器なのだ。
顔を隠すメリットを得られず、ヘッドショットで死ぬ可能性などのデメリットが存在しない、と言い換えてもいい。
顔を隠せば、それは歌が響き渡る邪魔になるのだから。
もしも顔を一部でも隠すシンフォギアがあったならば、それはシンフォギアの製作者以外が手を加えた、改造品のシンフォギアであることに間違いないだろう。
顔を隠せないシンフォギアは、当然周囲に人やカメラが多すぎれば変身する事もままならない。
それはそれで諜報機関の本領発揮、という話になるのだが、そういう点で考えれば仮面で顔を完全に隠せるナイトブレイザーは、情報操作が幾分楽な部類であった。
本来のシンフォギア運用計画においては、ノイズ出現から避難完了までの時間とシンフォギアが駆けつけるまでの時間がトントンであり、一定の犠牲者は確実に出るとされていた。
しかし、それもまたゼファーが覆す。
直感により得られたノイズの出現が事前に察知できるというアドバンテージは、ここに来てシンフォギアが駆けつけるまでに避難完了が間に合わない、という贅沢な悩みへと転じていたのだ。
それを解決したのがゼファーのナイトブレイザーだというのだから、マッチポンプじみた話ではあるが。
「下世話な話だが、了子君が気にしていた少女装者の月一の問題もあいつにはない」
「本当に下世話な話ですが、無視できないことですからね。男女の問題ですから」
それに加え、下世話なアドバンテージもあるわけで。
「シンフォギア、ナイトブレイザーの正体は隠し通す。
かつ、両者をセットで運用することを前提として考える。
結局僕らの話し合いで至る結論は同じになりましたね、司令」
「ああ。だが、これで方針は固まった。
了子くんがシンフォギアとナイトブレイザーの共闘用のシステムも作ってくれているそうだ。
俺達は俺達にできることをやる。幸い、することもあまり変わっていないようだしな」
ゼファーの正体が公になった場合の問題は、シンフォギア装者の比ではない。
日本の極秘機密を知り、日本の国防の不覚に関わる可能性もあるナイトブレイザーの正体が、日本に正式な国籍も持たない、素性もはっきりしない外国人であると知られたらどうなるか。
『日本人ではない』という問題が、鎌首をもたげてくる可能性すらある。
ゼファーは、どこまで行ってもこの国における"身内"ではないのだから。
されど、大人達はまるで気にする様子を見せていなかった。
子供の正体が公になってその子の一生が歪むなら、その大小に意味は無いと言わんばかりに。
その正体は命を賭してでも隠しきると言わんばかりに。
絶対に子供を守り切るのだと、そう言わんばかりに彼らは笑う。
話に一区切りがついた所で、弦十郎は椅子を立つ。
「時間だ。悪いな、少し出かけてくる」
「行ってらっしゃいませ」
どこに、と聞かないだけの信頼関係が、二人の間にはあった。
ゼファーは道行く中で、老人、父娘、お好み焼きのおばさんを目にしつつも、距離が離れていたからか、特に声もかけずに通り過ぎて行く。
ノイズの残骸の撤去作業を続ける一課、二課の人間を見かけたならば顔を見せて挨拶しつつ、手伝いを申し出た途端「休んでろMVP」と追い出されるのを繰り返す。
二課の人員、一課の指揮官クラスがゼファーの奮闘を知らないわけがないのである。
すごすごと引き下がりながら、またゼファーは歩いて行く。
通りがかった小学校で、校庭で体育の授業中だった様子の未来と響と目が合い、手を振り、ぎょっとされる。そういえば戦闘以来連絡も顔見せもしてなかったと、ゼファーはこの時ようやく自分の片手落ちに気付くのだった。
授業を無視して駆けて来ようとした響、そんな響を抑えつつ明らかに響と一緒に彼に向かって走るべきか、それとも大人しくしているべきか迷っている未来。
そんな二人に手を振って、ゼファーはほんわかしつつその場を去っていった。
小学校を過ぎ、ふと思い立って中学校へと足を向ける。
そこは翼が通っている中学校であったが、別に翼に会おう、と彼が考えていたわけではない。
会えればいいな、程度のもの。
されど翼もさるもので、運がいいのか感が良いのか定かではないが、ゼファーが中学校のそばを通り過ぎたそのタイミングで屋上に居た。
ゼファーが手を振れば、気付いた翼が少し驚いた様子で手を振り返してくる。
日頃の行いがいい少年少女に、運命がくれた幸運だったのだろうか。砂粒のような幸運に感謝しつつ、ゼファーは中学校をも離れていく。
高等部から出発し、街を通って、小学校を通り過ぎ、中学校からも離れながら、彼は公園へ。
その道筋は、まるでこの国の平穏な日常を噛み締めているかのようで。
守られた、取り戻された平和の味を、味わっているかのようで。
「ふぅ」
ゼファーは一人、公園のベンチに座り空を見上げる。
雲一つない、吸い込まれそうな青色。快晴の青空だった。
髪を揺らす西風も心地いい。
そうしていると、まるで自分がこの世界にひとりぼっちになったかのような錯覚が、彼の中に生まれいでて来る。
が、そんなものは所詮錯覚だ。
「わーいっ!」
誰も居ない公園に一人、二人と次々に子供が駆けて来る。
続いて、その子らの親であろう大人達が歩いて来た。
今日は平日だ。小学校にも入っていない幼い子供達と、その保護者である大人の組み合わせ、といったところか。
流石に保育園や幼稚園は、ノイズの襲撃から一日しか置かずに開かれる、といったことはしないのだろうか。あるいは、親がすぐに行かせるのを拒んだか、のどちらかだろう。
(子供か)
人間には、子供のかん高い声に苛つく人種と、不思議な落ち着きを感じる人種が居る。
ゼファーは後者だった。
空を見上げるのをやめて、ゼファーはぼんやりと公園で駆けまわる子供達を見やる。
ここに未来が居れば、「また泣きそうな感じ」と言っていたかもしれない。
子供は無邪気に公園を走り回っている。
ああやって無邪気に生きた過去は、ゼファーの記憶の中には一秒たりともない。
物心つくかつかないかの頃には、銃で人を殺していた。それがゼファーの幼少期だ。
だから、彼にはそれがとても眩しく見える。
子供が無邪気で居られるという価値が、命を脅かされることもなく真っ直ぐに生きて居られるという価値が、幸せで居られるという価値が、彼には痛いほど分かるから。
この国の中に溢れかえっている、この国の住人の多くが認識していない『価値あるもの』。
例えば居場所。例えば子供の未来。例えば無条件に与えられる平和。
ゼファーの目には、それが星空の星のように見えていた。
輝きは絢爛で、数は無数で、手は届かない。
だからこそゼファーは強く、それらを守ろうと思った。
「あれも、お前が守ったものだ」
そうしていると、ゼファーに誰かが話しかけ、隣に座る。
「ゲンさん」
「ほらよ」
彼の隣に座ったのは、風鳴弦十郎その人だった。
公園のベンチの右端にゼファー、左端に弦十郎の形。
弦十郎がベンチに置いたコーヒーを、軽く頭を下げてゼファーは受け取る。
そうして二人同時に缶を開けて、軽く一口味わった。
「何を考えていたんだ?」
「いえ、特には……ただ、平和だなって」
缶を置き、ゼファーは静かに口を開く。
「子供も大人も笑っていて、誰も悲しんでなくて。ここには笑顔だけがある」
ゼファーには夢がある。
それは曖昧で、ゴールはなく、終わりはない。
されど、今この瞬間は間違いなく叶っている夢だった。
これからも叶え続ける夢だった。
「こういうのが見れるのは、嬉しいなって。少しだけ……幸せな気持ちだなって」
「そうか」
それを察せぬ弦十郎ではない。
彼は男の中の男だ。そして当然、かつて少年であった男でもある。
少年から男になろうとしているゼファーの胸中が分からないはずがない。
現代の英雄である彼が、英雄への道を歩み始めた少年の気持ちを理解できないはずがない。
「きっと、あの大人達だって楽な人生だけを生きてきたわけじゃないだろう。
人に歴史ありだ。誰にだって苦労はある。それでも今は笑えてるんだ。
悲しいことだって人は乗り越えて、いつの日か笑える。
そんな当たり前が、日常が、幸せがここにあるとは思わないか?」
たとえ、どんなに凄惨な過去があろうとも。
失敗した過去があろうとも、罪を重ねた過去があろうとも。
大切な人を守ると約束し、その約束を破った罪人であろうとも。
他者の幸せを望むことができる者ならば、いつの日か笑い、幸せになれる時は来る。
弦十郎はそれを知っている。ゼファーより賢いからではない。
彼がゼファーより少しだけ、大人であるからだ。
「それも、お前が守ったものだ」
「俺達が、ですよ」
俺達が、と言うゼファーに向かって弦十郎は首を振る。
その言葉は事実かもしれない。耳に心地いい言葉であるのかもしれない。
されど、ここで肯定していい言葉でもなかった。
「いや、この場合は『お前が』でいい。
仮にお前一人の力では守れなかったという事実があったとしても、だ。
この景色はお前のものさ。だから俺とは違って、お前は幸せな気持ちなんだ」
少なくとも、今、この時は。
この平和な光景を分かち合う必要はないと、弦十郎は考える。
男が一人で酒を飲みたくなる時があるように、男には誰とも分かち合わないものが必要な時もある。それは理屈ではないし、生温い論理に否定されるべきものでもない。
自分達が守った、と自分が守った、には天地ほどの差が存在する。
風鳴弦十郎という男は、ゼファーという少年に今必要なものは後者であるのだと見抜いていた。
力のある者に助けられたから救えたのだ、と思うような余地は残させない。
力を得たゼファーが頑張ったから救えたのだ、と彼に思わせるために。
ゼファーという少年が、過去に後腐れない一つの決着を付けられるようにするために。
(いつか)
気付けば、男二人は誰からともなく笑みを浮かべていた。
ここは一つのゴールであり、スタートライン。一つの区切りでしかない。
戦いは続き、男達は明日からまた駆け回るのだろう。
(誰もが戦わなくても、こんな日々が続いていける世界が来たら、それが一番―――)
それでも、ゼファーは夢の先にある理想の世界に思いを馳せる。
並んで座る二人の男はただ、目の前の光景を、『平和』を見つめ続ける。
そこからはただの一度も口を開かずに、ただの一度も視線を交えずに、ひたすら沈黙を保ち続けながら、人二人分の距離を取って並んで座り続ける。
彼らは守れた者達の日常にこそ、幸せの光景の中にこそ、己が成したものの姿を見た。
カビの生えた古臭い、かつての時代に男達が憧れた、不器用で真っ直ぐなそんな生き方。
それを志す男二人だからこそ、無言で伝わる万感の思いがあった。
きっと、認められた日