戦姫絶唱シンフォギア feat.ワイルドアームズ   作:ルシエド

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お気に入りが1000超えたようです。皆さんありがとうございます!
クリス/マリア+調+切歌の純情な感情でやった一部の話の時系列がやっと追いついたデス
↑の二章末話のタイトルなんですが、『さんぶんのいちの純情な感情』と読みます。今更!


3

 調はゼファーに、初めて英雄を演じさせた者。

 切歌はゼファーに、初めて英雄の仮面を被りながらの戦いを迎えさせた者。

 マリアはゼファーに、初めてまっとうな親子の愛を見せた者。

 

 三人はゼファーに、ほんの少しの嘘を混ぜて現状を説明。

 今はもう、あの組織も研究所もないと嘘をつく。

 実はまだあるのだが、その内真実になるんだからいいじゃん、という理屈だ。

 他の子供達も、セレナ以外は皆生きていて元気にやっていると言う。

 今のゼファーは他人の嘘も見抜けないようで、彼女らが伝えてくれた優しい事実を受け入れ、心底嬉しそうな笑みを見せる。

 

「よかった……本当に、よかった……」

 

 頑張った甲斐はあったのだと、彼の努力が数年越しに報われる。

 ゼファーがネフィリムと戦ったあの日から、もう四年近くの時間が経っていた。

 切歌も、マリアも、ゼファーも、見かけはずいぶん成長している。

 彼の心奥にあった傷の一つが、癒やされていく。

 

 生きて帰って来いという、彼と彼女らが遠い昔に交わした約束。

 ゼファーが来て、彼女らが迎えて、年単位の遅刻という形でその約束は果たされた。

 だから、ゼファーは久しぶりに、ほんの少しだけ幸せな気持ちになれたのだ。

 

 ゼファーは二課やナイトブレイザー関連のことを隠し通そうとし。

 マリア達は彼の事情のほぼ全てを承知した上で、全て知っているということを隠し通しながら、自分達の事情の全てを隠し通そうとする。

 愛に溢れた、とても優しい、思いやりに満ちた白々しさがそこにあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第二十四話:たった一つの冴えた贖罪 3

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 積もる話もある。

 二人きりでないと話せないこともある。

 ということで、ゼファーは三人それぞれと個別に話す時間を設けられた。

 観光地らしいこの島は人と過ごすにはいい雰囲気で、旅行シーズンであっても水曜日であるからか人もそこまで多くなく、実に居心地がいい。

 青い空と青い海が見える海沿いの道を、ゼファーと切歌は歩いていた。

 

「今更だけど、キリカなんというか、オシャレな服着てるな」

 

「えへへ、自分で選んで買えるようになったんデスよ。どうデス?」

 

「似合ってると可愛いのどっち言って欲しい?」

 

「もう言ってるじゃないデスかー」

 

 防波堤の上で両手を左右に広げながら歩く切歌の後に続いて、ゼファーも歩道を歩くことなく、防波堤の上を行く。

 

「このワンピ、実にナウいでしょ?」

 

「な、ナウい? まあ、ナウいんじゃないか」

 

「デスよね!」

 

 ナウい(死語)ワンピの切歌はとても可愛らしく、ヤシの木シャツ&青ジーパン+包帯と松葉杖な今のゼファーとは比ぶべくもないビジュアルである。

 そんな死に体なファッションなゼファーにも、彼女の死語に突っ込むことをしないだけの優しさはあった。

 

「服は服として、中身はどーデス?

 レセプターチルドレンの子に告白されることもあるこの切歌さんのビボーは!」

 

「そうなのか。結婚式には呼んでくれよ」

 

「話飛びすぎじゃないデスか!?」

 

 13歳の少女に何言ってんだこいつ、とツッコむ者はここには居ない。

 ゼファーは切歌をじっと見て、頭のてっぺんから足の先まで記憶の中の切歌と見比べた。

 

「脂肪が付いたな」

 

「セクハラな褒め言葉と悪口を同時に言うなデスッ!」

 

 切歌はびっくりするくらい性欲とは無縁の視線を向けてくるゼファーの視線から、同年代と比べてもよく発育している胸、ぷにったお腹を腕で隠す。

 最近ちょっとお菓子食べ過ぎたかなーとは彼女も思っていたのだ。

 しかし数年ぶりに再開した友人に腹を見られながら言われると、流石の切歌もダメージが大きいい様子だ。ダイエットせねばならない。脂肪を切り刻まねば。

 切歌はそう決意した。

 同年代の少女の大半と比べれば暁切歌のそれは、比較するのもおこがましいくらいに良いスタイルなのだろうが、少女に妥協は許されないのである。

 

「ま、冗談は置いといて女の子らしくなったと思う。子供から女の子になったな、みたいな」

 

「ふっふっふ、なんせ同年代ではあたし一番デスからね!」

 

 切歌は褒められるとすぐに調子に乗る。

 

「何が一番なんだ?」

 

「……またセクハラデスッ!」

 

「おい待て今度はわざとじゃないぞ!?」

 

 そして調子に乗って、墓穴を掘る。

 何年経っても変わらない。そこにゼファーは、どこか安心している自分を感じていた。

 元気な彼女に、元気を貰っていた。

 

「第一、でかくなった云々で言うならゼファーとかとんでもないでしょうが!

 それいったい何cmあるんデスか!? 並んでると、なんか、見上げる首が……!」

 

「179.5cm」

 

「予想以上にでかかったデス!」

 

 マリアの身長が169cm、調の身長が148cm、そして切歌が151cm。

 切歌とゼファーが最後に会った時の身長が160弱だったことを考えても、昔はここまで極端に身長差はなかったはずだと、切歌はぐぬぬと言いつつ思う。

 

 切歌は昔、ゼファーを自分と同じ枠で見ていた。

 年長組のような大人に近い子供でもなく、年少組のような面倒を見てあげないといけない小さな子供でもなく、自分と、調と、ゼファーで三人。

 同じ高さの目線、同じくらいの年頃だと思っていた。

 なのに今では、彼と目を合わせるためには見上げなければならない。

 キスしやすい身長差は12cm。恋人の理想の身長差は15cm。性関係にちょうどいい身長差は22cm。抱き締めるのに最適な身長差は32cm、と言われている。

 目線の高低の差は、並んで歩くと強く意識することになる、ということだ。

 切歌が目線を横に向けると、ゼファーの胸部しか見えないくらいの身長差があった。

 ついでに言えば、昔よりずっとよくなったガタイがあった。

 

 ただ、彼女の目に見える彼が"大きく"見えるのは、体格が大きくなったからだけではない。

 きっと、身体だけでなく心も成長していたからだ。

 だからだろう。

 切歌の目にゼファーは、マリアと同じように『大人』になった、そんな友達に見えていた。

 

 それがちょっとだけ寂しくて、ちょっとだけ嬉しい。

 

 ほんのちょっとだけ、切歌にはゼファーが昔よりも立派な男の人に見えた。

 

「あ、かき氷デス」

 

「熱いし食べるか。俺が奢るよ」

 

「おおう、ちょっとお腹がへりんこファイヤーなあたしがほめてつかわすデスよ。ありがとっ!」

 

 ブルーハワイのゼファーに、メロンの切歌。

 二人が手にしたスプーン兼ストローがシャカシャカと、小気味いい二重奏を奏でた。

 その時ふと、切歌の視線がゼファーの手で止まる。

 

 切歌が誕生日の日に死の運命を背負わされ、涙した時。

 彼女は「助けて」と言った。

 彼は「助ける」と言った。

 ゼファーがその時重ねてくれた手を、切歌は今でも鮮明に思い出すことができる。

 

 彼の手はあれほどボロボロだっただろうかと、切歌は思う。

 指に力が入らないのかかき氷を持つ手は震え、昔より傷だらけで、醜く焼けただれている。

 ……切歌は自分を庇い、ネフィリムに溶断されたゼファーの腕の断面と、その時の彼の苦しくて痛そうな表情を思い出す。

 笑顔が途切れそうになる。

 それを誤魔化そうとして、彼女はかき氷を食べて頭が痛くなったようなふりをした。

 

「あたたたた」

 

「おい大丈夫か? ええっと、おでこに冷たいもの当てれば止まるんだっけ……」

 

 ゼファーの心配そうな顔と気遣いにちょっと申し訳ないと思いつつ、内心で「冷たくて気持ちいいデース」と、額に当てられたかき氷の気持ち良さを堪能する切歌。

 そんな彼女を見て、ゼファーは彼女らと別れた当時、聞けずじまいだったことを思い出した。

 

「あのさ。あの頃、聞こうと思ってて結局聞けずじまいだったことなんだけど」

 

「なんデスか?」

 

「あの時、俺に輸血してくれたのって、切歌だったりするか?」

 

 ゼファーは切歌の誕生日に、ブドウノイズロボと戦った。

 あれも一つの転換点だったのだろう。

 切歌は生き、希望は残り、大人も子供も変わる余地が生まれ、ゼファーは勝った。

 だがその代価として、当時"生命力が多少活性化していた"程度の回復力しか持たなかったゼファーは、失血死寸前まで追い込まれてしまう。

 だから、輸血してくれた誰かが居たはずなのだ。

 

 切歌はバレたか、とでも言いたげな悪戯っぽい笑みを浮かべる。

 

「正解デース! 誰かから聞いてたんデスか?」

 

 当時のゼファーがこれを聞いていたならば、切歌に対する申し訳無さなどでしょんぼりした顔をしていただろうが、今のゼファーはそうでもない。

 心の成長と年月の経過が、隠しておいた方がいい事実を、明かしてもいい事実に変えていた。

 これもまた、二人の間に流れた時間が変えたもの。

 

「いや、後々聞いたんだけどさ。俺の血液型、当時Oだったらしいんだよな」

 

 ゼファーは今や、血液型の概念すら存在しない不気味な生命だ。

 そんな彼が当時、その結論に至った結論を切歌に述べる。

 

「輸血してなきゃあの時死んでたと思うんだ、勘だけど。

 シラベがA型。マリアさんがAB型。マリエルがB型。セレナがA型。

 俺に輸血してくれそうなくらい仲いいメンツで、って考えるとさ」

 

「……ああー」

 

「輸血パックの可能性もある。だけど切歌は、俺と同じO型だったろ?」

 

 特殊な例外もあるが、基本的にO型はO型からしか輸血できない。

 そういう意味で、この二人はあの施設における、一種の運命共同体だった。

 ゼファーは切歌を命がけで助けた。切歌はそれで死にかけたゼファーを助けた。

 善意と友情は、巡りて巡る。

 

「だからなんとなく、そう思ってたんだ。

 確かめてから礼を言おうと思ってたんだけど、なんとなく言いそびれてて……」

 

 そんな日々の中で、ネフィリムが暴走してしまった。

 

「……ああ、違う、そうじゃない。

 言いそびれてたって言うより……その内いつでも言えるって、驕ってたんだ。俺は」

 

 "幸せを感じる日常"が酷く脆く壊れやすいものなのだと、当時のゼファーは忘れていた。

 セレナと……皆と一緒に過ごす日々が、ずっと続くと信じてしまっていたのだ。

 

「キリカの笑顔もずっと見れると思ってたんだ。

 そこから、何度でも元気を貰えるって信じてたんだ。何の保証もなく」

 

 だから結局、礼も言えないままに別れてしまった。

 その礼を言う機がやって来たこと、彼女の笑顔をまた見られたことが、彼はとても嬉しいのだ。

 

「今日会って、キリカの笑顔が変わってなくて、良かった。素敵なままだったから」

 

「そ、そーデスか?」

 

「ああ」

 

――――

 

「なにしろ誰かにあげても減らないのに、貰うとちゃんと増えるんデス!

 自分の元気を誰かにおすそ分けするのは、誰にでも使える素敵な魔法なんデスよっ」

 

――――

 

 彼女の笑顔は変わらない。彼女の元気は変わらない。

 太陽のような、見る者の心を照らす笑み。

 変わったものもあれど、変わらないものもある。

 彼があの言葉を貰った時の輝きは、まだ彼女の中で絢爛に輝いていた。

 

「元気は貰うと増える。でも、あげても減らない」

 

 ゼファーは己の胸に、拳を叩きつける。

 

「キリカに貰った元気が、まだここにあるって、思い出せたんだ。

 そんでもって今日、切歌に新しい元気を貰った。だから、少しだけ元気になれた」

 

 いつの間にか、自然に笑えている自分が居た。

 

「ありがとな、キリカ」

 

 彼女の笑顔に元気を貰ったことに。

 かつて、命を繋いで貰ったことに。

 ゼファーはそうして、笑顔で礼を言う。

 切歌もまた、彼の礼の言葉に笑顔で応えた。

 

「お礼なんて、あたしの方が言っても言っても言い足りないくらいデスよ」

 

 ゼファーが切歌の言葉を忘れずに、胸の熱に変えたように。

 切歌もまた、ゼファーの言葉を覚えていて、胸の奥にそっと大切にしまっていた。

 

――――

 

「任せろ。9歳の誕生日も、10歳の誕生日も、もっと先の誕生日達も。

 必ずやって来る。だから普通に楽しみにしてればいい。恐れることなんて、何もないんだ」

 

――――

 

あの子(キリカ)の明日を、ほんの少しでも幸せにしてやりたいんだッ!」

 

――――

 

 切歌の誕生日は、あの後もずっと来た。

 9歳の誕生日も、10歳の誕生日も、もっと先の誕生日も。今では彼女も13歳。

 その度に彼女は友達に祝われ、幸せな気持ちになれた。

 それもこれも、あの誕生日の日にゼファーが戦ってくれたから。

 

 あの瞬間、ゼファーは確かに切歌のヒーローだった。

 

(あの言葉が本当になった今が、この奇跡が、あたしはとっても嬉しい)

 

 ゼファーは切歌から、元気を貰った。

 切歌はゼファーから、未来を貰った。

 だから二人は、今もこうして笑い合える。

 

(……ゼファーには、ずっと、こうして、心から笑っていて欲しいけど……)

 

 難しいかな、と切歌は思う。

 彼女は今のゼファーが置かれている状況、彼の国の状況をちゃんと理解している。

 それに、嫌な記憶を想起させられていた。

 

 切歌は昔、死神と周囲に罵倒されていた。

 自分の側に居た人間が次々と死ぬという、巡り合わせが悪かっただけの不幸がその原因だった。

 誰もが、子供達の死を彼女のせいにした。

 何も悪くない彼女を責め、彼女を孤独に追いやった。

 

 その時、切歌は学んだのだ。

 

 人が死ぬことより。人が殺されてしまうことより。

 時に、"人の死を理由に生者を責める生者"の方が、怖いということはあるのだと。

 人は死を理由にすれば、その死に悲しみを感じていなくとも、人を責めることができるのだと。

 そして、罵倒したことに罪悪感すら感じないのだと。

 数年も経てば、非難したことそのものを忘れてしまうのだと。

 

 それを、切歌は学んだ。

 無責任に、周囲に流され、下地に意志が無い憎悪を向けてくる人々の目を、今でも覚えている。

 それでも彼女は笑っている。

 屈託のない笑顔で、周りの友達を笑顔にし続ける。

 

「あいも変わらず、お気楽なあたしデスが!」

 

 だから、きっと。

 今日この時、彼女が"切歌の元気"をゼファーに分け与えてくれたことには、きっと意味がある。

 他の誰でもない、暁切歌の元気だから。

 辛い時にこそ笑おうとする彼女の元気だからこそ、意味がある。

 

 調と、マリアと、セレナと、ナスターシャと出会い、ゼファーが来てからの日々を最後の一押しとして『その記憶』を乗り越えた彼女だからこそ、意味がある。

 

「あたしの……あたしの元気が、ゼファーを笑顔にしてくれたら、嬉しいデス!」

 

 暁切歌は心に定める。

 いざという時は、自分がこの手で助けに行くんだと、言葉にせず決意する。

 

「キリカとまた会えて、本当に良かった」

 

 切歌から貰ったもの。脈打つ血、巡る命、胸に注がれた元気。

 精神的なものだけでなく、物理的に貰ったものも、彼の中に息づいている。

 再開を喜ぶゼファーは、もう二度と記憶の中で薄れさせないよう、彼女の笑顔をじっと見る。

 

 彼女の笑顔は、夏の太陽にも負けないくらいに、眩しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゼファーとマリアは微妙な関係だ。

 昔は微妙に仲が良くなかった。今は微妙な仲。

 互いを信用していないのかといえばそんなこともなく、互いを嫌っているのかといえばそんなこともなく、かといって友達というわけでもなく。

 互いに言葉を向けて影響を与え合い、互いに顔を合わせると微妙な空気が広がって行く。

 ゼファーにとっての切歌と調は親友。

 マリアにとっての切歌と調は妹のように思う家族。

 友達の友達は皆友達……というわけにもいかないもので。

 

「……」

 

「……」

 

 マリアは優雅にコーヒーを飲む。

 ゼファーは無造作にコーヒーを飲む。

 海が見えるカフェで向かい合っている二人は、とことん口を開かない。

 マリアは彼が口を開くのを待っている。

 ゼファーは何を言うべきか分かっているのに、迷いに迷って口を開けない。

 周囲の客には、この二人がどう見えているのだろう。

 関係が冷えきった結果敵意すら生まれ、別れ話まで秒読み状態のカップルだろうか。

 その実、この二人に恋人が居た経験など皆無に等しいのだが。

 

「その」

 

 しばらくの沈黙の後に、ゼファーは口を開いた。

 

「マリアさん」

 

 マリア・カデンツァヴナ・イヴと相対して、ゼファーがその話題を避けることなど、出来るわけがない。

 ゼファーは『彼女』の唯一無二の親友で、マリアは『彼女』の唯一無二の実姉だったのだから。

 

「俺は、セレナを守れ――」

 

「黙りなさい」

 

 ゼファーはセレナを守れなかったことを、マリアに謝ろうとした。

 だがそれを、マリアが止める。

 その言葉は、ボタンをかけ違えば"何かが違えば、もう少し頑張れば、自分はセレナを助けられた"という思い上がりに、傲慢に、繋がりかねないものだったから。

 

「あなたに何が出来たの? あの時あなたにどんな力があったの?」

 

「―――っ」

 

「私にも、あなたにも。セレナは守れなかったのよ」

 

 マリアが突き付けるのは現実。

 そして、ゼファーが自分を責める余地の否定だ。

 

「心も、力も、弱かったから。

 それは仮に戦う力を得たって、すぐに変えられるものじゃない」

 

 歌を歌い、強く断じた言葉を発すれば、誰よりも多くの心を震わせるのがマリアだ。

 それはゼファーに対しても例外ではない。

 かつてセレナが、ゼファーに対してそうだったように。

 周囲の人々に対し、ゼファーがそうであったように。

 マリアの言葉は、ゼファーに罪悪感という逃げ道すら与えない。自責という逃げ道も与えない。無力感という逃げ道も与えない。

 

「『セレナが死んだのはあなたのせいじゃない』。

 私があなたに渡すこの言葉は、他の誰にも否定させないわ。

 だって、あの子の血の繋がった家族で今も生きているのは私だけなのよ?

 他人にあの子の死の罪を持って行かせなんてしない。あの子の許しを、否定なんかさせない」

 

 他の誰でもなく。

 他の何でもなく。

 "セレナが死んだこと"を理由に他人を責める権利を、誰よりも持っているマリアが、「ゼファーは悪くない」と彼を許した。

 それにゼファーは目を見開き、唇を震わせて、心臓を跳ねさせる。

 

 マリア以外の誰かがセレナの死をゼファーのせいだと叫んでも、そう叫んだのがゼファー自身だったとしても、マリアは絶対にそれを否定する。

 ただただ優しいマリアは、もうこれ以上、セレナが原因で彼が傷付くことを許さない。

 

「あの子はあなたを許しているし、そもそも責めていないし、幸せになって欲しいと思ってるわ」

 

 強く、断言する口調で、マリアは言い切る。

 それはこの世でただ一人、セレナという少女を生まれた瞬間からずっと見守ってきた、マリアという女性にのみ許された権利。

 

「だから、今日で終わりにしなさい。

 セレナのことで、自分を責めるのは」

 

 セレナの死にゼファーが感じていた己の罪を否定し、許す権利だった。

 

「―――」

 

 ゼファーはマリアの許しに、そんなわけないと否定の言葉を返そうとした。

 だが、開いた口は声にならなかった息を吐く。

 震える唇は真っ当に声が出せるかも怪しくて、大泣きした人がそうなるのと同じように、喉の奥にきゅうっと苦しくなった感覚が生まれる。

 ゼファーの中の罪悪感、自責の念は、マリアの言葉に真っ向から砕かれた。

 

 ゼファーは、セレナの中での一番はマリアだったと思っている。

 それが悔しかったのだから、忘れられるわけがない。

 血の繋がった家族として、セレナが生まれたその時から見守ってきた姉。

 そんなマリアからの言葉だ。

 

 "セレナはそう思ってないかもしれない"だなんて、言えるわけがなかった。

 セレナ・カデンツァヴナ・イヴはとても優しくて、とても温和で、皆の幸せを願うような。

 そんな、素敵な少女だったから。

 

「そうだったら、いいな」

 

 ただ一言、彼はそう言って。

 

「そうよ」

 

 ただ一言、彼女はそう返した。

 

「それなら、セレナはマリアさんにもそう思ってるでしょうね」

 

「……そうかしら?」

 

「はい。家族には、及びませんけど……俺も親友でしたから」

 

 そしてゼファーは、絞り出した声でマリアに対し偽りのない本音をぶつける。

 死人に口なし。今は、セレナは生者と言葉を交わすことができない。

 マリアがセレナの家族として語るなら、ゼファーはセレナの親友として口を開く。

 妹の死に何も出来なかったことを今日まで引きずっている、姉に向かって。

 

「セレナは、マリアさんのことが大好きでしたから。あなたに笑っていて欲しいはずです」

 

 マリアは、セレナの中での一番はゼファーだったと思っている。

 それが悔しかったのだから、忘れられるわけがない。

 端から見ても"セレナの運命の人"に見えた、これ以上なく相互に理解し合っていた少年。

 そんなゼファーからの言葉だ。

 

 "セレナはそう思ってないかもしれない"だなんて、言えるわけがなかった。

 セレナ・カデンツァヴナ・イヴはとても優しくて、とても温和で、皆の幸せを願うような。

 そんな、素敵な少女だったから。

 

「そうだったら、いいわね」

 

 マリアは微笑む。

 落ちるところまで落ちていたゼファーほど分かりやすくはないが、それでも見るものが見れば分かるくらいには明白に、肩から重い荷が降りたような、そんな楽になった様子の笑顔だった。

 

「そうですよ」

 

 マリアはコーヒーをスプーンで意味もなくかき混ぜ、数秒の間を取る。

 先ほどまでの痛い沈黙とは違う、ゆったりとした、心地良い沈黙だった。

 セレナが誰よりも大切だった少年、セレナが誰よりも大切だった女性。セレナの死にどうしようもなく傷付いた二人、ある一点において互いが互いの最大の理解者である二人。

 沈黙は、静かに二人の間に流れる。

 

「レセプターチルドレン達は、私が……私達が、守ってる」

 

 そして沈黙の終わりに、マリアはゼファーに紙片を差し出した。

 

「今更、一人や二人増えても問題にならないわよ」

 

 彼がそれを受け取ると、そこには数字の羅列と謎のアドレスが記されていた。

 

「これは……?」

 

「そこに連絡を入れれば、私達の下にあなたが来れるように手配してあるわ」

 

「!」

 

 マリアがフィーネに頼み、"それも一手"と認めたものがこれ。

 

「辛い時、悲しい時、苦しい時は思い出しなさい。

 あなたには逃げ道もある。迎えてくれる場所もある。迎えてくれる人が居る」

 

 今まで強者によって理不尽に『リセット』を強制させられてきたゼファーが、初めて己の意志で押すことを許されたリセットボタン。

 

「これは、私があなたに渡す、『全てを投げ出す権利』」

 

 今自分が生きている現実を全て捨て、いつでも新たな居場所を得ることが出来る権利。

 

「忘れないで。この権利を使うことは、決して弱さではないことを」

 

 いつでもいい、いつだって喜んで受け容れると、マリアは笑みを見せる。

 

「マリアさん……」

 

「キリカやシラベも、他の子達も、喜ぶだろうから」

 

 レセプターチルドレン達にとって、ゼファーは身近なヒーローだ。

 それは今も変わらない。ネフィリムの一件で、実状以上に持ち上げている子すら居る。

 だが、今ゼファーを苦しませているような、他人による仮面の上からの英雄扱いとは違う。

 レセプターチルドレンは皆家族だ。

 ゼファーも同じく、彼らの家族。

 必然的に、子供達が向ける目線は『誇らしい兄』『誇らしい弟』といったものに近くなる。

 今よりかは、ずっとマシになるはずだ。

 

「考えておいて。急かす気はないから、後悔だけはしないように」

 

 できれば来て欲しい、とマリアは考える。

 けれど来ない可能性の方が高い、ともマリアは考える。

 それでもできれば、自分の目の届くところで確かな幸せを掴み取って欲しかった。

 

 調も、切歌も、マリアも。

 フィーネの指示で人知れずオーバーナイトブレイザーと戦い、ほんの少しの時間稼ぎとほんの少しのダメージのみで、あの黄金の騎士を逃してしまったことを。

 それがゼファーの大切な人を死なせてしまったことを。

 少なからず、後ろめたく思っていたから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 街を歩く調は、自分の少し斜め前、車道側を歩いているゼファーの手を見る。

 彼女は次に会った時に、彼に子供達用の絵を描いて貰おうと思っていた。

 あの絵心のない絵を、小さな子供達にせがまれている絵を、才能の欠片もない絵を。

 多くの子供が遊びでやる、コミュニケーションツールとしての絵を。

 けれど、彼女は口を開かない。仏頂面も崩さない。

 もう二度と絵なんて書けなさそうな彼の手を見て、ピンチの時に側に居ないと誰も守れないんだということを再認識して、自身への煮え滾る怒りで調は表情を歪める。

 ゼファーに対し「守りたい」と言った回数や思った回数において、切歌よりも、マリアよりも、調のそれは圧倒的に多かったから。

 

 切歌は怒ってもそんなに怖くはない。

 マリアは怒ると顔つきだけやたらと怖くなる時がある。

 が、今の調が怒っている様子は上記二人よりやたらと怖い。

 二人にはない威圧感や攻撃力が、雰囲気からにじみ出てくるのだ。

 向かいから歩いて来る通行人がそんな調にビビって身を引くと、何か感づいたゼファーが振り向いて、調が表情を元に戻す。

 

「どうしたの?」

 

「いや、今通行人が……気のせいか。

 しっかし、調の顔つきというか、表情はあんま変わらないな。あの頃に戻ったみたいだ」

 

「そう言うゼファーは、ずいぶん変わったよ。こんなにおっきくなかったもの」

 

 調は自分の頭のてっぺんに手を当て、それを水平にゼファーの方へと動かす。

 その手は彼の胸辺りに当たって、なおさら如実に彼と彼女の身長差を証明していた。

 

 調が閉じていくコンテナの中で、片腕の欠けたゼファーの背中に向かって手を伸ばした時より。

 調がネフィリムとの戦いで、ゼファーを抱えるセレナに背を向けて離脱した時より。

 調が戦いを学ぶため、ノイズロボと血みどろになって戦うゼファーの姿を見ていた時より。

 彼はずっとずっと大きく頑丈になったように、調には見えた。

 

真面目兎(クニークルス)って呼ばれてた、あの頃と同じだ。ちょっと安心したな」

 

「……身長とか色々、私はもっと変わって欲しかったけどね」

 

「待つよ。身長が伸びたら、助けてくれるんだろ?」

 

 ゼファーは昔、何度か調が"助ける"と言ってくれていたことを思い出していた。

 今より背も伸びる、今より強くなる、助けられるようになる、だから待ってて、と。

 調はずっと昔に言った自分の言葉を覚えてくれていたことに嬉しさを感じつつ、自分の育ちの悪い身体を見て、物凄く複雑そうな顔をした。

 細い手先が己の頭に触れる。胸に触れる。彼女は自分の身体にぺたぺた触れていく。

 

「いっつもそう。みんなそう。

 身長エトセトラがないと、いつまでも周りの皆が頼ってくれない。

 小さい子だからだ、って。マリアくらい……なんて贅沢は言わないけど、人並みは欲しい」

 

 切歌が同年代の子達と比べても恵体であるのと対照的に、調はとことん小さく、細く、ちみっこかった。華奢で儚く色白で、体格に恵まれなかった。

 容姿的に言えば、"未成熟の絶世の美女"とでも言うべき調の容姿は優れた部類に入るし、抱きしめれば折れてしまいそうな体格も、ある種魅力の内に入るだろう。

 が、調からすれば現段階では忌々しい育ちの悪さとしてしか認識されない。

 巨乳に貧乳の苦悩は分からないし、貧乳に巨乳の苦悩は分からない。

 誰もが配られたカードで勝負するしかなく、配られなかったカードを羨むしかないのだ。

 

「まだ調も12だろ? そんなに焦らなくてもいいんじゃないか?」

 

「16歳で180cmな友達が目の前に居て、負けるのも置いてかれるのもやだなって思うのは変?」

 

「……あー、逆の立場なら、俺もちょっとは思うかもなあ……」

 

 ゼファーがちょっと納得したように頷き、F.I.S.の研究所に居た頃だったら絶対に見れなかったであろう"俗っぽい"、言い換えれば『普通』な反応に、ちょっとおかしくて調は笑ってしまう。

 クスリと、小さな笑い。

 それがあまりにも自然な笑顔だったので、ゼファーは面食らってしまった。

 

「……どうかした? 何か私の顔に付いてる?」

 

「あ、ああ、いやそういうのじゃないんだが。

 ……自然に……じゃないな。よく笑うようになったんだな、って思ったんだ」

 

「……」

 

 調はそっぽを向き、耳にかかる髪を直すふりをして、顔を彼の視線から隠す。

 いつもの無愛想な無表情だが、ほんのちょっとばかり照れくさそうだ。

 

「きりちゃんが、また出会う日に備えて、笑顔の練習しておこうって。それに付き合わされて」

 

「いいことだろ。切歌が友達多いのも、いつも笑顔だからだろうしさ。

 あの頃も面倒見が良くて真面目な調を誤解してる奴が居たのは、俺もちょっと嫌だったんだ」

 

「……」

 

 調の笑顔をもう一度見ようと、ゼファーは彼女の顔の正面に回り込む。

 調は顔を逸らして、髪で顔を隠す。ゼファーが彼女の顔の正面に回り込む。

 調は顔を逸らして、髪で顔を隠す。ゼファーが彼女の顔の正面に回り込む。

 調は顔を逸らして、髪で顔を隠す。ゼファーが彼女の顔の正面に回り込む。

 調は顔を逸らして、髪で顔を隠す。ゼファーが彼女の顔の正面に回り込む。

 調は顔を逸らして、髪で顔を隠す。ゼファーが彼女の顔の正面に回り込む。

 調の人差し指で頬を押され、無理やり顔ごと横を向かされたタイミングで、ゼファーは本日二度目の調の笑顔を見ることをようやく諦めた。

 

「本屋行こ」

 

「何か欲しいものがあるのか?」

 

「欲しいものはないかな。買いたいものはあるけど」

 

 はてな、と首をかしげるゼファーは、今度は調と肩を並べて本屋へと向かう。

 まずは調が迷いなく選んだ本のタイトルに驚いた。

 次に、調が一万円の図書カードでそれを買ったのに驚いた。

 最後に、本屋から出た途端、その本をプレゼントとして渡されたことに驚いた。

 

「はい」

 

「え、俺に?」

 

「ん」

 

 調が彼に手渡したのは、『星の王子さま』の絵本。

 彼にとっても、彼女にとっても、思い出深い一冊だ。

 二人は近場の公園に移動しながら、言葉をいくらか交わし始める。

 

「嬉しいけどさ……なんで今、このチョイス?」

 

「『大切なものは目に見えない』。私達が仲良くなれた、きっかけだから」

 

「!」

 

「……大切な人の死を、頑張っても防げないことはあるよ」

 

 レセプターチルドレンは、家族のように繋がる皆との死別と無縁では居られない。

 有用な才能を僅かなりとも持っていたからこそ、生き残ってきた調もそれ相応に、大切な人との別れを経験してきた。

 だから、その言葉は、奏と死別したばかりのゼファーの胸へと刺さる。

 

「でも、どこかで私達を見守ってくれてるかもしれない。

 空の星かもしれないし、その辺りにふよふよ浮いているかもしれない。

 ……きりちゃんは、意外とこういう考え方好きじゃないけど。

 でも、何も救いがない考え方より、こう考えた方が救いがある気がしない?」

 

 いつしか、ゼファーは人気のない公園のベンチに座っていて。

 調はその向かい側に立っていて。

 二人は向き合っていた。

 

「その人が死んでしまった後も、その人との間に何かが残ってくれるなら……

 それはきっと、目には見えない大切なもので。

 私やゼファーを、目には見えない大切な人が見守ってくれてるのと、同じなんじゃないかな」

 

「―――」

 

 天羽奏が死んで、何もかもが失われてしまったのだろうか。

 いや、違う。

 

 ゼファーと奏が過ごした日々は無くならない。

 奏とゼファーが交わした言葉は無くならない。

 ゼファーと奏が通わせた想いは無くならない。

 奏とゼファーが繋げた繋がりは無くならない。

 二人が共に過ごした時間は、無かったことになどなりはしない。

 

 全て終わったと思った。全て壊れたと思った。全て失われたと思った。

 だが、調の言葉でゼファーの世界はガラリと変わる。

 目に見えるものではなく、目には見えない大切なもの、天羽奏が残してくれた大切なものが、彼の目には見えるようになっていた。

 死してなお、ゼファーが奏へと向ける、その想いも。

 

「私も、私達も、ずっとゼファーを想ってる。

 だって、友達だから。

 どんなに遠く離れていても、いつでも、どんな時でも、無事でいますようにって祈ってる」

 

 友がずっとくれていた、その想いも。

 

「―――っ」

 

 それが、きっとトドメだった。

 

「……あー、もう。キリカの時も、マリアさんの時も、我慢してたのに……」

 

 目頭が熱くなる。

 壊れた涙の蓋は機能せず、流れるようにこぼれ落ちていく。

 調の言葉が、彼の涙の堰を決壊させる。

 

「お前ってやつは、本当に……!」

 

 ゼファーは、袖でぐしぐしと目をこすり始める。

 そんな彼の手を、調が掴んで止める。

 そして、彼の頭を抱きしめた。

 

「よしよし」

 

 調は年長の姉が年少の弟にそうするように、抱きしめたまま彼の頭を撫でる。

 

「シラベ……?」

 

「泣き虫さんが泣き止むまで、こうしててあげる」

 

 調の中には、一つの決意がある。

 

(友達が苦しんでいるのなら……私が、助けてあげるんだ)

 

 始まりは、ゼファーに助けられたあの日。

 調がお人形のような自分をやめ、その決意を後押しするように戦いに挑んだゼファーの姿。

 あの日あの時あの場所が、彼女の内より吹き出すこの覚悟の原点。

 

「これからも頑張りたいってあなたが言うなら、応援する。でも」

 

 あの瞬間、ゼファーは確かに切歌の王子様だった。

 けれども、調はいつまでも助けられるだけのお姫様に甘んじているようなおしとやかな少女ではない。助けられたのなら、彼女はその人を助け続けることで恩返しとするタイプ。

 

「ホントのホントにダメそうだったら、首根っこ掴んででも助け(さらい)に行くから」

 

 月読調は心に定める。

 いざという時は、自分がこの手で助けに行くんだと、言葉にして決意する。

 

 月は静かに、寄り添うように、綺麗にほのかに、彼を照らしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 別れの時は来る。

 電話番号やメアドを交換して、また会おうと、ゼファーは言った。

 色々と事情があって、こっちに来てくれないとそれは難しいと、彼女らは言った。

 少し寂しそうな表情を互いに浮かべて、彼らは別れる。

 

 船上にて、名残惜しそうに何度も何度も、ゼファーは島を振り返る。

 切歌と、調と、マリアと交わした会話。

 それがゼファーの脳裏に、一つの言葉を想起させていた。

 

―――だから、笑って。あなたは私の希望なの

 

「なんで忘れてたんだろうな。セレナが最後に、残してくれた言葉を」

 

 ゼファーはややぎこちないながらも笑顔を浮かべ、その場にしっかりと立つ。

 目には力、眼光には希望の光が戻って来ている。

 傷だらけで、傷が治るメドは全く立っておらず、それでも進み続けようとする姿勢。

 今や彼の外見は、彼の心の有り様をそのまま映し出しているかのようだ。

 

 まだ、ゼファー・ウィンチェスターは折れないままに踏ん張れる。

 

 信じ合って繋がる心の強さが。

 誰かを守るための心の強さが。

 時に信念を悪と呼ばれようとも、信じた正しさのためにそれを貫く強さが。

 

 この日確かに、彼の胸に宿されていた。

 

 

 




装者はヒーロー

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