「準備はいいか?」
「はい…」
「覚悟よし……行くぞ!」
「!!」
朝、日もまだ出ていない早朝にエースは董卓を背負って屋敷から勢いよく跳び出す。
少女は固く目を瞑って必死にエースにしがみつく。
なぜこうなっているのかは、昨晩のエースが晩飯に誘われた時にまで遡る。
「いや~…食った食った♪」
「はい。お粗末様です」
少女の小屋にお邪魔してもらい、彼女の夕飯を綺麗に平らげたエースは満足そうに腹をさする。
それを見て嬉しそうに微笑む少女はさり気なくお茶も出してくれる。
それを受け取ってエースは一口すすってから気になっていたことを聞いてみる。
「ここには董卓以外にはだれもいねえのか?」
「はい。ここには私だけが住んでいます」
「そうか……友達とかは?」
「大好きな友達なら洛陽にいます。けど…」
「けど?」
董卓の表情が暗くなったことが気になっていると、董卓はエースと自分の食器を集めて台所に向かいながら話す。
「私……ここからあまり離れられないからもう長い間会えてないんです」
「そうか……って…じゃあお前は食材とかどうしてんだ?」
話を聞いててエースは気になった。董卓は洛陽に入れないということは話から推測はできた。
それなら小屋の食材や調理家具などの生活必需品はどうやって調達しているのかと。それには董卓が食器を洗いながら答える。
「私は一応、お城の関係者なのでお城の人が時々やってきて必要な物を持ってきてくれるんです」
「ふーん……お前って結構偉いんだな」
「そんなことないですよ……今だってここで色んな人達に守られているだけなんです…」
「……」
少女の表情からして色んな感情が表れている。無理に笑っていると思わせる表情を見て、エースは少し考えてみる。
「なぁ…」
「はい。何でしょう?」
「お前ってここから離れたことが無いんだっけ?」
「はい。森には猛獣や盗賊がいるから行くなって……」
「……森に行きたいって思ったことはあるか?」
エースの質問に少し考えて小さく頷く。
それを確認したエースは腰かけている椅子から勢いよく立ち上がる。
「だったら、おれが連れて行ってやる!」
「え!?」
突然の宣言に董卓は目を丸くして驚く。
しかし、エースはそれに構うこと無く続ける。
「そんな危険って言われている所でも護衛さえいれば問題ねえだろ?」
「え…いいですよ! そんなことしなくても、私は今の生活で充分ですから!」
「でも、行ってみてえんだろ?」
「それは……そうですが、そうしたらエースさんが危険に…」
董卓は手を振って頑なに拒み続ける。
しかし、そんな手もエースに握られて止められる。
「おれはそんな危険な森を通ってきたんだ。あんな森は危険の内には入らねえよ」
「で…でも…そんな…私のわがままに付き合ってもらうなんて悪いです…」
「いいよ。おれの命を助けてもらったことと飯を食わせてもらったことの礼だ。気にすんな」
「そんなつもりでご馳走したんじゃないんですけど…」
カラカラ笑うエースに董卓は遠慮がちに言うのだが、エースは今度は手を会わせて董卓に頼みこむ。
「頼む!! 借りはきっちり返さないと男が廃る!! ここはどうかおれの顔を立ててやってくれ!」
「へぅ……」
エースの必死な頼み込みに董卓追い詰められた様な境遇になるが、本人の意地を持ち込まれたら反論できなくなる。そして折れた。
「……分かりました」
「お?」
「私を…連れ出してくれませんか?」
「あぁ! そうこなくっちゃな!」
指をパチンと鳴らして喜びを表現する。
そんなエースを尻目に董卓は折れてしまったことに若干の罪悪感を感じてしまっていた。
そんな董卓の気持ちも知らずにエースは既に算段を立てていた。
「それじゃあ森へは…朝早い方がいいな」
「え…あぁ、そうですね。日の出前には出ないと兵士さんがいますから」
「そうか……だったら董卓はもう寝とけ。明日は早いからな」
「あの…いいんでしょうか? こんなことを会って間もない人に頼むなんて……」
やっぱり、エースに迷惑をかけると思って尻込みしてしまう。
「んなこと別にいいよ。ホラ、早く寝ろって」
「あの…ひゃ…!」
董卓はエースに背中を押されて寝室と思われる部屋の前まで運ばれる。
「じゃあおれはもう行くけど、また明日の朝に出直してくるさ」
「話だけでも聞いてくださ~い!」
エースの申し出が素直にありがたいので、董卓は強く言えずにいた。
もう諦めたほうがいいのかな……
董卓がそう思っていると、エースは出口の方へと歩いていたのに気付いた。
「あの、どこに行こうとしてるんですか?」
「どこって……今晩は野宿しようと思ってな」
「そんな……夜は冷えますから…」
「大丈夫。慣れてるから」
エースはそう言って外に出ようとするも、董卓が回り込んで阻止する。
「だめですよ。外で寝る方が危険なんです」
「いや、でも慣れて…」
「それに、お外で寝るよりもこの中で寝てた方が森に行く時の準備もすぐですから」
少し早口で説得する董卓の意見を聞いて、それも一理ありと思い、エースは歩みを止めて中へと戻っていく。
董卓はホッとして胸をなで下ろす。
「にしても、寝床まで世話になっちまうとはな……また借りができちまったな」
「へぅ…気にしなくて大丈夫ですよ…」
純粋な笑顔を向けられた董卓は顔を赤くさせて照れる。
こういった訳でエースは一晩だけ居候することになり、床の上で毛布をかけてもらって一夜を過ごした。
そして、逃避行決行の朝を迎えた。
「ほ~……結構な過保護だな。お前の上司も」
「……」
エースは目の前の巨大な塀を前に、皮肉めいて呟くと、董卓は少し複雑そうな表情に変わる。
国のお偉い連中に吐いた言葉だが、董卓が落ち込んでしまい、内心では焦った。
そこで話を逸らすことにした。
「ま、まぁ、これくらいなら簡単だな。しっかり捕まってな」
「え…なにを…きゃう!!」
董卓がなにかを言う前に、エースが超人的な跳躍で塀を跳び越える。
「……!!」
董卓は目を瞑って跳んだ時と下りる時の衝撃に耐えた。
そして、とてつもなく高い場所からエースは降り立った。
その時の衝撃で董卓の体も揺れる。
「よし、完璧」
そう呟きながら董卓を見てみると、しがみつきながら目を回している董卓が見えた。
「あ~……少しおどかしすぎたか…」
「きゅ~…」
気を紛らわせようとおどかしたのだが、効果バツグンすぎた。
しかし、いつまでも気絶していては面白くない。
「おーい。起きろ~」
「…ふぇ…ふあい…?」
「えーっと、お前の名は?」
「……董卓ですけど…」
「よし、もう大丈夫だな」
エースは簡単に本人が未だに正常かを確かめてから董卓を下ろしてやる。
「よし、これからどうしたい?」
そう言って董卓を見下ろすが、董卓はそっぽを向いていた。
「? どうした?」
エースが董卓と同じ視線にまで屈むと、董卓プーと頬を膨らませてエースを睨む様に見つめてきた。
「怖かったんです…もっと安全に行けたと思うんです」
本人は目一杯怒っているつもりだが、エースにはどうしても小動物にしか見えない。そのギャップに笑いながら撫でる。
「悪かったって。こうすれば手っ取り早いだろ? そうしたらそれだけ自由の時間も増えると思ってな」
「そうかもしれませんが……帰りはもっと静かな方がいいです…」
「はい、かしこまりました。姫」
「へぅ……」
エースは社交辞令の様に頭を下げると、董卓は恥ずかしそうに俯く。そして、機嫌を取り戻した董卓と共に二人は森の散策を開始した。
董卓にとって森には初めてのことだらけだった。
「わぁ…綺麗……」
「その花って蜜が結構美味かったぜ」
森固有の花が咲いていたり……
「うおおおぉぉ! またヘラクレスだ!! 董卓! そっち行ったぞ!! 捕まえるぞ!!」
「あう~…大きくて怖いです~!」
奇妙な虫を見つけては追いかけたり……
「この実食ってみろよ。美味いぜ?」
「これですか? あむ…あ、美味しい…」
「そうだろ? おれも旅の時はよくそれ食ってたぜ。あ~ん……苦ぁっ!!」
「エースさん!?」
「げほっごほっ!! くそ…まだ熟してなかった…」
「あの! すぐにお水お持ちしますね!」
山の幸を堪能したり…
「位置に着いて……ヨ~イ……ドン!」
「うおおおぉぉぉ!!」
―――グオオオォォォ!!
―――ヒヒーーーーーーン!!
「やったぁ!! 一位ゲットーーー!!」
「す…すごいですよ!! 熊と馬よりも速いなんて…!」
―――クゥゥ…
―――ブルル…
「はは…そう落ち込むなよ。お前等も速かったぞ?」
―――ワン!
―――ブヒー!
―――ピーピー!
―――ニャー!
「……動物とお友達になっちゃった…」
動物と触れ合ったりと、董卓は今までにしたこともない体験をたくさんした。
そして、楽しい時間はあっという間に過ぎ去り、あっという間に夕刻間近になっていた。
空はまだ明るいが、若干、光に赤みが差してきた。
そんな空を見ていた董卓は儚く、今にも消え入りそうに思えた。
そんな董卓に構わず、エースは木製の箱を抱えてすぐ近くまでやってきた。
「大変だ董卓!」
「ふぇ!? びっくりした~……どうしたんですか?」
「ああ! 聞いてくれ! やっと……やっとヘラクレスを捕まえたんだ!!」
そう言って箱を開けると中から巨大な虫が姿を現した。
そう言って目を輝かせるエースに董卓は笑ってしまう。自分より大きい男がやけに幼く見える。
しかし、すぐにまた表情が暗くなりそうになるが、董卓は悟られない様に言葉で誤魔化す。
「あの、もうそろそろ検問が閉じてしまいます…その前に帰りましょう」
「あ?…もうそんな時間か…」
どうやら気付いてはいなかったらしい。
エースは空を見上げた後、大体の時間を把握した。
「また今日も検問に入れなかったらエースさんのお仲間も心配しますよ?」
「そうだな……また遅れたらあいつ等怒りそうだな…」
いや、絶対怒るだろう。
それを想像したエースは鳥肌になり、素早く荷物をまとめる。
「そうだな…うん。もう帰るか」
「……はい」
董卓の暗い表情に気付かずにエースは帰り支度を整える。
「どこまで送ってやればいい?」
「だ…大丈夫ですよ。また昨日の川のほとりまで行ければ充分ですから」
「いや、ここまで付き合わせちまったから送ってやる」
エースはどうしても董卓を送ると聞かず、董卓に動かない様に指示して森の奥に入っていく。
しばらくしてエースが戻ってくると、その手には大きい丸太を担いでいた。
董卓が何かと思っていると、エースが川のほとりにまで歩いていく。
途中まで歩き、董卓の方を向くと驚くべきことを言った。
「だったら川の流れで下っていきゃすぐだろ?」
エースの言いたいことは丸太に乗って波乗りのように下るのだという。
「その丸太で下るんですか?」
「ああ、おれ達が乗っても沈まなさそうなのを採ってきた」
「だ…大丈夫でしょうか?」
不安がる董卓だが、エースはそんな董卓の頭をポンポン叩いて撫でる。
「心配すんな。こういうのには慣れてんだ。転びはしねえよ」
「…エースさんがそう言うなら…」
董卓はオズオズとエースにおぶさると、エースはそれに笑みを浮かべる。
その後、丸太を川に浮かべてその上に乗る。
そのまま、緩やかなサーフィンで川を下っていく。
「わぁ……」
董卓は川の上を渡るという初めての感覚に心を奪われていた。彼女にとって、この時間もかけがえのない時間の一つとなった。
心地よかった森のクルージングも終え、しばらく歩いて董卓の小屋が見える所まで董卓を送ってきた。
董卓はその場で立ち止まり、エースに向かい合うとお辞儀をする。
「今日一日ありがとうございました。すっごいドキドキしたけど楽しかったです」
「そうか。それは何よりだ」
ほがらかな笑顔を見せられたエースは笑って答える。そんなエースに再び笑いかけ、小屋に向かう。
しかし、エースは声を張り上げて呼び止める。
「ちょっと待った」
「? なんでしょう?」
「……またあの小屋に帰るのか?」
「はい。それがなにか?」
董卓は当たり前なことを聞かれたので、素直に返す。
しかし、董卓は気付いた。
エースの表情は朝の子供の様な表情ではなく、何かを思案する真面目な表情であったことに。
董卓は初めて見た真剣なエースに緊張していた。
そして、エースからの質問で驚愕した。
「………頼めば親友に会わせてやる」
「!! な…何を…」
体が一瞬震えるのを堪え、普通を装うのだが、完全に隠し切れてはいなかった。
そんな董卓にエースは続ける。
「お前には借りがまだある。お前が望めばそれくらいはしてやる」
「いいえ…私はこれで満足ですから…」
「…それはお前の本心か?」
「え?」
エースの言葉に董卓は虚を突かれた。最も痛いところを急に突かれて質問の意味が分かっていないのだ。
それでもエースは続ける。
「このまま……親友に……お前が好きな奴に会えないで……お前は満足できるのか?」
「……それは…」
「おれはできねえ。したくねえ。そういう我慢は大っ嫌いだからよ……お前もそうなんじゃねえのか?」
「……」
会いたい。
董卓は当然、そう考えていた。
しかし、それができればとっくにやっている。
それができないからこうして“保護”されているのだ。
そのことにはエース自身もよく分かっている。
だからこそ、目の前の儚い少女に感情移入した。
エースも愛する者への想いがどれだけ強く、時として自分を苦しめるかを分かっているからだ。
「今ならどうとでもなる。お前さえよければ…」
「…無理です………」
「おれが何とかしてやる。お前への借りはまだ返せてねえんだ」
「…無理ですよ………」
「無理じゃねえ。あれくらいの護衛の一人や二人どうってこと「無理なんです!! ここから離れたら詠ちゃん達が…!!」…」
エースの言葉を遮って董卓がその小柄な体型から想像できないほどの声を上げる。
その声にも驚きはしたが、黙って聞き受ける。
「駄目なんです…離れられないんです……もし……もし、私が変なことをすれば……お城にいる詠ちゃんが……」
董卓はエースから視線を外す。
その小さな体は震え、顔の辺りから水滴が落ちている。
その間にも少女の本心が明らかになっていく。
「私……お金や権力になんて興味無いのに……皆で街の人の笑顔見て……穏やかに暮らせたらそれで……よかったのに……」
「……」
エースは彼女の独白をただ聞くだけだった。
「……何なんでしょうね………大切な人がこんなにも近くにいるのに……会えないなんて……」
董卓は絶望する。
金と権力にまみれたこの時代に…
なぜこんな目に会わなければならない?
「……すみません…変なこと言って…」
そう言って董卓はエースに目もくれずに小屋へと戻っていった。
「……会いたくても会えない……か…」
エースはそう呟き、その場を後にした。
「董卓殿。お迎えに上がりました」
「……張譲様…」
エースと別れてから幾分か経ち、辺りが漆黒の闇へと包まれていた頃に董卓の小屋に今の洛陽を牛耳る独裁者・張譲が悠然と現れる。
後方に兵を忍ばせて小屋にズカズカと入りこむ。
「……」
「おやおや、お元気が無い様ですが大丈夫ですか?」
「いいえ…問題ありません」
「そうですか…それはなによりです……こんな所で一人で暮らすとなると苦労も絶えないでしょうねぇ」
「……」
董卓は椅子に座らされて囲まれており、張譲の返事にも感情の無い声で返す。
単純に張譲のことが怖いのだ。
人を人とは思わず、役に立たない者は即刻切り捨てる。
民には平気で重税をかけ、民の苦労など認知していない。
董卓はそんな張譲が嫌いだった。
今は離れている仲間もそんな張譲を毛嫌いしていた。
しかし、権力も財力も彼に賛同する兵の数でさえも張譲が全て上をいっていた。
そんな時、ある事件が起こった。
董卓の家臣が次々と暗殺された。
首謀者は隣国の敵勢力と世間では囁かれているが、董卓達は全て知っていた。
穏健派の次期皇帝継承者の董卓を陥れる張譲派の凶行だということに。
穏健派はまだいたのだが、脅迫によって吸収されてしまった。
そして、現在のレジスタンスは賈駆、呂布、張遼、華雄の部隊しか残っていない。
そして、董卓自身には張譲が“提案”という名の“脅迫”が下された。
『しばらくの間、あなたを保護させていただきます』
理由は次期後継者の身の安全などとお偉い建前を並べた物だった。
それの真意には誰もが気付いていた。
要は、邪魔だから消えろということだった。
董卓は何も言わずに従うしかなかった。
「そんな生活とももうお別れですよ。ここを離れて別の場所で保護しますよ」
「……はい」
「大丈夫ですよ。住めば都。すぐに新居に慣れますよ」
「……はい」
董卓は言われるがままに兵士に囲まれたまま外へと出る。
もはや、ここに戻ってくることは叶わないだろう。
董卓は遠くに見える森を見つめる。
出会いは突然だったけど、すぐに良い人だと確信させた。
(そして、私に色んな“初めて”をくれた場所……)
そんな場所とも……思い出とも……もう会うことも叶わない。
「……」
董卓はそんな森から視線を逸らし、周りの兵に連行されていった。
(さようなら……)
誰に言った訳でもない心の声は誰にも知らされずに泡沫となって消えた。
しかし、その場の誰一人として気付いてはいなかった。
その小屋の影から人影が現れたことに……
「……」
何を呟くでもなく、その影はユラリと闇の中に消えていったことには気付いていなかった。
「いよいよやね」
「ええ、今、この時が最初で最後の好機! これを逃せば月も……ボク達も終わりよ」
洛陽の城内では、動きが見られていた。
賈駆は四人を集めて作戦を練っていた。
「まず、呂布と華雄はここに残って敵を殲滅して」
「……(コク)」
「敵を全滅させるんだな? 簡単なことだ」
呂布と華雄と呼ばれた二人の同意を確認して次に進む。
「陳宮は二人の補佐をお願い」
「分かったのです!」
「そして、張遼はボクと一緒に月……董卓の救出を!」
「おっしゃあ!! 任せとき!!」
その他の二人にも命令を下すと、そこに一人の兵が走ってきた。
「報告です!」
「! どうしたの!?」
「はっ! 張譲及び、董卓様が向かわれた場所が明らかに!!」
「そんで!?」
「ここから北西の洞窟……張譲の私有地にございます!!」
「やっぱり……おいそれと国外に出られるものじゃないと思っていたけど…本当にあそこだったなんてね…」
「ここまでは予想通りやな」
張遼と呼ばれた関西弁の女性は表情を変えずに馬にまたがる。
「ええ、そこに董卓の両親もいる可能性が……もうそこしかない」
「さよか……それじゃあ場所も分かったんや。乗り込むで!!」
『『『応っ!!「おー…」』』』
「よっしゃ! この統一感の無い号令!! 絶好調やで!!」
そう笑っていると、城門が味方によって開けられるのを確認した!
それを見た張遼は後ろに賈駆を乗せて駆ける。
「これより我が主、董卓を救出する!! 覚悟の補充は充分か!!」
「何を今更!!」
「その意気や!! 行くで賈駆っち!!」
「お願い!!」
張遼の馬は加速し、城門をくぐる。
そして、張遼は離れていく呂布に叫んだ。
「死んでも勝てぇ!!」
この時、国の歴史が動き出した。
運命の賽はこの時を以て投げられる。