火拳は眠らない   作:生まれ変わった人

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死からの復活

永い……夢を見ていた……

 

いや、本当に歩んできた自分の人生を夢だというのはおかしい。

 

しかし、今となっては夢と言っていいほど簡単に頭の中で反芻している。

 

ロジャーの息子というだけで世界から耐え難い差別を受けてきた。

 

しかし、そんなおれに手を差し伸べてきてくれた奴もいた。

 

サボ…ルフィ…ダダン…ジジィ…おれを育ててくれた奴…

 

それに……オヤジや白ひげ海賊団の皆も…おれを家族として迎えてくれた…

 

そんな皆がおれのために助けに来てくれた時は嬉しかった…

 

ありがとう…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あらん? まだ諦めるのは早いわよん♪」

 

……何だ……何か聞こえる…

 

「それにしても奇なることよ。何ゆえこの者が…」

 

何の……話を……

 

「多分……これから行く世界が彼を必要としてるのよん」

 

……連れていくなら早く連れて行けよ…

 

地獄にでも何でも…どこにでも……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う……あぁ……」

 

おれは暖かみを感じ、目を開ける。

 

しかし、久しぶりの光をおれの目は受け付けず、また閉じてしまう。

 

しばらく目を閉ざし、慣れるのを待つ。

 

それから頃合いになったと思った時、おれは目を開けてみる。

 

ゆっくりゆっくりと開けてみると、そこは豊かな森の中だった。

 

木はざわめき、木の葉の隙間から太陽の光が差し込んで来る。

 

そんな豊かな森の中でエースは倒れていた。

 

背中からは土の暖かみと柔らかさが伝わってくる。

 

(ここは………どこだ……?)

 

さっきまで自分がいたところには少なくとも土は無かった。

 

それなのに、今いる場所には火薬の匂いと死臭が全くしない。

 

そこまで頭が現状を把握してきた時、エースはハッとした。

 

(おれは生きてる!? そんな…だって…!)

 

エースは体を反射的に起こし、胸に手を当ててみる。

 

(!…どうなってんだ!?)

 

エースは重大かつ有り得ないことが自身に起こっていることに気付いた。

 

何故なら……

 

(傷が……赤犬に空けられた穴が…)

 

消えていた。

 

胸に空いていた穴…死を免れられない穴が…『そこ』には無かった。

 

体中からは痛みが湧きあがってくるというのに一番大きかった穴は無かった。

 

これは一体…どうなってやがる…

 

まさか……今までのことは夢だったのか…

 

(まさか! そんなことあるわけがねえ!)

 

あってたまるか!!

 

エースはあまりにもかけ離れた『現実』に混乱する。

 

頭を抱えながら今の自分が陥っている事態の重さ、非常識さと闘う。

 

いくら(偉大なる航路)グランドラインでも死んだ人が生き返るなど聞いたことが無い。

 

たとえあったとしても、それが自分に降りかかったことだとは到底信じられなかった。

 

「何が……どうなってんだよ……」

 

エースが頭を抑えてうずくまっていた時…

 

ガサ

 

草を踏み分ける音が聞こえた。

 

「誰だ!」

「…!!」

 

エースは痛む体を我慢して警戒しながら怒鳴る。

 

すると、一人の気の弱そうな少女がエースの視線の先で立っていた。

 

エースは臨戦態勢に入るが、少女はいきなりのことでどうしたらいいか分からないようで、目に見えて動揺していた。

 

そんな様子の少女を見てエースはオロオロしている少女を疑問視する。

 

(……こんな奴…戦場にいたか?)

 

それどころか手に持っている物もおかしかった。

 

少女の手にはカゴ。

 

そのカゴからは緑、赤、黄色といった物が見え、形だけ見ればすぐに分かった。

 

あの少女が持っていた物…それは、色とりどりの野菜だった。

 

「………野菜か…?…それ…」

「え!…あの…はい……」

 

消え入りそうな声で返事する少女を見て、エースは殺気を出すことが馬鹿馬鹿しくなって警戒を解いた。

 

「悪いな。少しビックリしちまってな」

「は……はぁ…」

 

さっきとは別人のように柔らかい口調のエースに少女は未だ驚愕しているといったところだった。

 

(……悲観するよりもまずは…)

 

エースは少女を見る。

 

(情報収集だな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side 程普

 

ビックリしたぁ…

 

だって山で食べられそうな木の実とか山菜をいつも通り摘んで帰る最中にいつもとは違うことが起きた。

 

だって…帰ろうとしていた所で突然男の人が私に怒鳴ってきた。

 

その人は上半身裸で数珠みたいな赤い首飾りを付けていた。

 

一言でいえば珍しい格好の人だった。

 

しかし、男の人が構えを見せた瞬間、私の中の何かが警報を鳴った。

 

それは私との力の差を簡単に示した。

 

(この人…強い…)

 

この時、私の武器は自宅に置いていたことを思い出した。

 

(そんな……こんな時に…)

 

この時、私はアタフタしていたのだろう。

 

目をキョロキョロして慌てていると、男の人の殺気が薄れていくのを感じた。

 

「………野菜か…?…それ…」

 

え? 聞く所そこなの?

 

とりあえず私はその質問に答えた。

 

すると、男の人の警戒が消えたことを肌で感じ取れた。

 

「悪いな。少しビックリしちまってな」

 

本当に悪いと思っているのかさっきとは別人みたいにくだけて話す目の前の人に脱力してしまった。

 

この人、お腹すいてるのかなぁ?

 

そんな事を考えていると、男の人が話しかけてきた。

 

「あのよぉ…ちょっと聞きたいことがあんだけどよ」

「あ…はい。いいですけど…」

「へへ…サンキュ。じゃあな…聞きてえんだけど…ここはどこだか教えてくれねえか?」

「……へ?」

 

えっと…この人は何を言ってるのでしょうか…?

 

ここは江東の……袁術さまの領内なんですが……

 

「いや、変な質問だとはおれも思ってるけどよ、何も聞かずどうか答えてくんねえか!? この通り!」

 

そう言って男の人は両手を合わせて頭を下げてきた。

 

ここまで頼まれるなら教えてあげよう…

 

「ここは江東の袁術さまの領内なのですが……」

 

私がそう教えると、男の人は下げてた頭を上げた。

 

だけど、何やら首をかしげています。

 

わ…私は何かおかしなことを言ったのでしょうか?

 

「こ…こうとう…? えんじゅつ?………じゃあ質問変えていいか?」

「ええ、構いませんけど…」

「じゃあな…この島は新世界にあるのか?」

 

…………はい?

 

「あの……えっと……新世界って……何ですか?」

 

困惑しながら私がそう言うと、男の人は口をアングリ空けて驚愕していた。

 

「……じゃあ……この島はグランドラインの島なのか?」

「ぐらうんど……らいん…?」

「……な…なら……イーストブルー……ノースブルー……サウスブルー……ウェストブルー………この中のどこか…なのか?」

「え?……え?……」

 

いーす……どこですか……そこ……

 

「すいません……いーすなんとかって何ですか?」

「……………冗談だろ?」

「あの……至って真面目なんですけど…」

 

なんでしょう…男の人の目から光が消えていっている気が……

 

「じゃ……じゃあ…白ひげは?……海賊王に最も近い男ってのは…………知ってる……よな?」

 

し…白……おひげ?

 

ひげって男性の鼻の下にできる毛……ですか?

 

それに海賊……?

 

最近までは河賊という義賊ならいたのですが……

 

「すいません……仰ってる意味がよく分からないのですが……」

 

とりあえず正直に言ってみると、男の人の顔が老けちゃいました。

 

え……!? これ……私のせい……なんですか?

 

それとも私の応対に不都合なところでも…!?

 

必死に頭の中でこの状況を打破する方法を考えていたその時…

 

 

 

 

 

 

ぐぎゅううううぅぅ~…

 

 

 

 

 

 

「「………」」

 

なんだろう…おっきな音が男の人から聞こえた気が…

 

しかもこの音……

 

「………とりあえず家に来ます?」

「……」

 

男の人は未だ老けた顔でゆっくりと頷く。

 

どうしよう……こんなしわしわになって…

 

とりあえず野菜とか食べたら元に戻るだろうか?

 

それに家に着くまでこのままなら襲われる心配も無いし、家の武器も持って来れるだろう…

 

とりあえず、私が先行して歩くと男の人も後をついて来た。

 

(このまま死ぬと思うんだけど…)

 

一抹の不安を抱きながら私は家に向かった。


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