もし、俺が提督だったら   作:単品っすね

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きょうふ

 

 

 

 

急いで鎮守府に入ると長月が抱き着いてきた。

 

「司令官!助けて!文月がヤバイ!」

 

「それ以前にこの子がヤバイ!後で話聞くから待って!」

 

「うわあっ!血だらけだ!」

 

「いや、血が出てるのは腹だけだ。最初に言うけど俺がやったわけじゃないからね?」

 

俺は医務室へ持って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後、その子が目を覚ます。

 

「………ん」

 

「…………」

 

やべぇなんて声掛けよう。

「よう」…いや初対面の人にこんな馴れ馴れしくすんのもなぁ…。

「やぁ」…爽やかな挨拶ですねぇ、うふふふ。

「こんにちは!」…幼稚園みたいな挨拶で逆にバカにしてると思われそうだ。

………なんて言ってもD敗北はまぬがれそうにないな…。ていうことは喋らなければいいんだよね!いやそれはそれで不気味じゃね?

 

「あの…」

 

「は、はい!」

 

逆に声を掛けられてしまった…。俺みたいな奴はデートとか行った日に振られるんだろうなぁ…。あ、まずそのデートに必要な女の子を確保出来ない。よし、問題ない。

 

「あなたは…?」

 

「え、えと…提督です!」

 

「へ?アロハシャツにグラサン着けてるのに?」

 

「あ、はい…」

 

土御門のコスプレとは言えない…ていうか土御門でガララワニとかシュール過ぎる。

 

「えっと…しおいです」

 

「提督です」

 

「それで、どうして私は、ここに…?確かドロップして仲間になるのをずっと待っていたら脇腹を鮫に噛まれて…」

 

「へ?そうなの?」

 

んだよ、どっかのアホ提督にコキ使われてあぁなってたんじゃないのかよ。もしそうなら久々に大暴れ出来ると思ってたのによ…。ていうかドロップするのに艦娘って鮫に襲われたりするんだ。

 

「えっと…なんか浮いてたから、拾っただけです…」

 

「え?自分で言うのもなんだけど…私、結構後の方の海域でドロップするんだよ?どうやって拾って…」

 

「いやその…暇潰しにバロン諸島でも探そうと思って船漕いでたら見付けたから拾って…」

 

「そうですか…実はドロップする前に襲われて轟沈する艦娘って少なくないんだよ。だからありがとうございます」

 

おい、それっていいのか?ていうか深海棲艦の発生の原因ってそれじゃね?

 

「まぁ、せっかくだからここの艦娘になってくれると助かるんだけど…」

 

「はい!よろしくお願いします!」

 

で、新しい仲間が増えた。と、思ったら背中を誰かに引っ張られる。長月だ。

 

「司令官!助けてくれ!」

 

「どうしたんだよ。確かふりかけがどうとか…」

 

「私はごま塩が好きかな…って違ぁう!文月が怖いんだよ!」

 

「怖いって…ていうか喧嘩でもしたのか?」

 

「その話するなら…ちょっと待ってて。司令官は執務室にいてくれ!」

 

とててと医務室を出て行く長月。言われるがまま俺は執務室へ。しばらくして加賀さんを連れてきた……なんで?

 

「どうしたの長月」

 

「加賀さん!今ある艦載機を全部飛ばして文月がこの辺りにいないか確かめて下さい!」

 

「なんでですか…」

 

「いいから早く!」

 

長月に怒られて渋々確認する加賀さん。

 

「いませんよ」

 

するとホッとする長月。

 

「なんだよ一体…」

 

「実はね司令官…」

 

内容は至って簡単な話、長月のプリンを勝手に食べられ、それを「そんなんだからお前は私よりガキなんだ!」と言ったら文月から大人の嫌がらせをされるようになったらしい。

 

「ていうか大人の嫌がらせってなに?」

 

加賀さんが聞くと長月は答える。

 

「最近では携帯に無言電話掛けてきたり、視線を感じると思ったらドアの隙間から覗いていたり、私の布団の中に司令官のパンツ入れたり」

 

「おいちょっと待て。最近俺のパンツ減ってると思ったら文月の仕業か。ていうか誰に教わったんだそんなこと!」

 

「この前、足柄さんと文月が話してるのを見掛けた」

 

「加賀さん」

 

「お任せください」

 

そのまま加賀さんは執務室を出て行った。

 

「でも文月にそんなことされても怖くなくない?」

 

「そんなことはない!文月だから怖いんだ!司令官には分かるま…」

 

そこで鳴り響く電話。長月のだ。画面には「☆ふみつき☆」と出ている。仲良いですね君タチ。流れる沈黙。俺は長月から携帯を取って出た。

 

「もしもし文つ…」

 

『エロイムエッサイムエロイムエッサイムエロイムエッサイムエロイムエッサイムエロイムエッイムエロイムエッサイムエロイムエッサイムエロイムエッサイムエロイムエッサイム………』

 

「ぎゃあああぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁッッッッ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

思わず携帯を床に叩き付けてしまった。床を突き抜ける携帯。

 

「なんで呪文唱えてんだよ!どこで覚えたんだこんなもん!」

 

「だから言ったろう!怖いと…」

 

そこでピタッと俺達の動きが止まる。耳を澄ませば聞こえる。

 

エロイムエッサイムエロイムエッサイムエロイムエッサイム……、

 

バッと振り返ると執務室の扉の隙間から文月が覗いていた。

 

「ぎゃあああぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁッッッッ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

扉に向かって空軍シュート。吹っ飛ぶ扉とは裏腹に文月はいなくなっていた。代わりに置いてあったのは俺のパンツ。

……………重症だ。

 

「長月」

 

「な、なんだ?」

 

「加賀さん、榛名、鳳翔さん、足柄を呼べ。緊急会議だ」

 

 

 

 

 


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