もし、俺が提督だったら   作:単品っすね

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記憶がすっ飛んだ

 

 

 

で、会議をしてる時、提督は執務室で待機命令が下った。提督なのに命令されたとか細かいことは置いといて、とにかく今は待機中である。すると、ガチャッと扉が開いた。

 

「やりました」

 

「えーっと…か、加賀さん、でしたっけ?」

 

「あなたの記憶が戻るようにお手伝いさせていただきます」

 

言われてぱぁっと顔を明るくする提督。

 

「本当ですか!一人じゃ少し不安だったのでとても助かります!よろしくお願いします加賀さん!」

 

思わずきゅんと顔が赤くなる加賀。が、すぐに咳払いをして言った。

 

「え、えぇ。それでは仕事をしましょう。やってる内に少しくらい思い出すかもしれませんから」

 

「分かりました!でも、その…」

 

すると提督が言いずらそうに目を逸らす。

 

「どうしました?」

 

「僕、記憶がないので…その、教えていただけると…助かります」

 

「はぅっ」

 

「? どうしました?」

 

「いえ、なんでもないわ。では仕事を始めましょう」

 

で、加賀に教えてもらいながらも仕事を始めて数分。

 

「あっ」

 

飲んでたお茶を提督が零してしまった。

 

「大丈夫?」

 

「だ、大丈夫です」

 

「染みになるわ。拭いてあげるから動かないで」

 

「すいません…」

 

「いいのよ」

 

役得だしね、と心の中で付け加えながら提督の服を拭いてあげる加賀。突然、クスッと笑う提督。

 

「なに?」

 

「なんか、加賀さん新妻みたいですね」

 

「ぶふぉっ!な、なにを言ってるの!?」

 

「い、いえ…素直にそう思ったので」

 

「ば、バカなこと言わないで!もう拭き終わったから自分の部屋で着替えて来なさい!」

 

「? わ、わかりました…」

 

そのまま自室へ入る提督。まだドキドキしてる胸を抑えながら加賀は気持ちを落ち着けた。

 

(机も拭かないと…)

 

濡れてしまった書類を摘まむ。これはもう提出出来ないと判断したものはクシャクシャに丸めた。ゴミ箱は少し離れた位置。

 

「…………」

 

なにを思ったか、加賀はメモ帳を千切ってそこに「榛名、比叡、北上、木曾、加賀、赤城」と書く。その横に深海棲艦の名前も六つ。

 

「…………」

 

ひゅっと投げた。が、弾かれてその辺に転がるゴミ。すると、榛名の名前に「小破」と書く。

 

「………」

 

もう一回、外して今度は掠りもしなかった。

 

「……………」

 

比叡の横に中破と書く。て具合に繰り返す。結果、戦術的敗北。

 

「……………」

 

少しイラッと来たのでリトライ。なんか、こう…無駄な緊張感を持って夢中になっていた。30分後、鳳翔の前に正座している加賀。

 

「どうするんですか!濡れてない書類まで捨てちゃって!これ怒られるの提督なんですよ!?」

 

「ごめんなさい…つい夢中になっちゃって…」

 

「あの、鳳翔さん。それくらいで…」

 

「提督も!甘過ぎます!加賀さんは今日の晩御飯のお代わり禁止です!」

 

「そ、そんな!」

 

そのまま鳳翔さんは出て行ってしまった。あからさまにガッカリする加賀の頭を撫でるのは提督。

 

「ほえ?」

 

「大丈夫ですよ加賀さん。僕の分を少しあげますから」

 

「て、ていとく…ありがとうございます」

 

そこで、はっと気がつく加賀さん。

 

「そ、それより早く記憶を戻しますよ!鎮守府内を見て回りましょう!」

 

「は、はい!」

 

[まったく…提督のくせに……)

 

そう思いつつも今だ撫でられてドキドキしてる胸を抑える加賀だった。

 

 

 

 

 

 

 


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