俺は今、別の鎮守府に来ている。それは、上司に呼び出された日のことだった。
「と、いうわけで君には一週間、○○鎮守府に行ってもらう」
「分かりました。失礼します」
「いやいやいや待ちたまえ君。理由とか聞かないの?」
「いや別に興味ないんで…」
「でも理由聞いてくれないと……読んでくれてる人への配慮とかさ……」
「わーりましたよ聞けばいいんでしょ。はいはいなんでそうなるのー?」
「お前クビにされてーのか」
で、解説に入る上司。
「実はこの鎮守府なんだけど、一番最初に来た提督が酷過ぎて、艦娘がかなり荒れちゃってるんだよね。それで何回か矯正のために提督を派遣してるんだけど、全員砲撃で追い出されちゃって…」
「一番最初の提督はどうしたんすか?」
「セクハラが酷かったから処刑した」
「処刑!?」
「だから頼むよ」
「いや最初に了解したじゃないっすか」
「頼むわ」
「へいへい」
てなわけだ。ちなみに鳳翔さんと妹には言っといた。残りは面倒だから言ってない。
「絶対に無理なさらないで下さいね提督」
「わーってますよ。じゃ、いってきますね。妹、指揮頼むよ」
「あーい」
俺は出発した。
さて、荒れてるってどんな感じなんだろ。喧嘩腰かなーだったら楽しみ(ウキウキ。
猿か俺は。
とりあえず入らないとな…。鎮守府に足を踏み入れた瞬間だった。砲弾が一発飛んできた。
「うおっ」
それを俺はキャッチ。 そのまま後ろの海にぶん投げた。ドッボーンと後ろで水飛沫をあげる音がしたが、それを気にせず鎮守府に歩く俺、マジ主人公っぽくてかっこいい。
鎮守府の中になると、なんかもうベトナム戦争みたいな罠がメチャクチャ仕掛けてあった。ゲリラか。それに心底ビビりつつも、執務室へ到着。ふぅ…で、なんで誰もいないの?と、思いながら執務室の扉を開くと艦娘が数人いた。
「な、なぜここまで!?」
「貴様、何者じゃ!」
「て、提督ですけど」
なんだあの格好…明らかにパンツ履いてねぇだろ。
「えーっと、と、とりあえず…艦娘集めてくれるかな…」
「隙ありよ!」
後ろからなんだっけ…吹雪型の……まぁとりあえず駆逐艦が槍を突き掛かって来た。が、その穂先を俺は掴んで握り潰す。
「なっ……!?」
「あっごめん。壊れるとは…」
てかなんでこんな攻撃してくんの?あぁ、そういや上司が言ってたな。最初の提督のせいか。で、その後5分間くらい色んなやつに攻撃されたが全部回避する。すると、全員揃ったようで動きが止まる。
「えーっと、これで全員、ですか?」
悔しそうに全員が睨んで来る。こ、怖い……。
「あ、あの…一週間だけここにいますから…一週間だけ我慢してください。じゃあ自己紹介よろ」
「大和」
「武蔵」
「利根」
「叢雲」
「雲龍」
「大鯨」
「秋雲」
以上か。
「で、提督さん。さっさと私達を解体するなりなんなりしてください。あれだけ粗相したんだからそういう処罰なんでしょう?」
なんだっけ、大和?大和が言った。
「いやこれしか戦力いないし…解体は、しないけど…」
「解体はってことは他に何か?」
「いやそういうことじゃなくて……」
どうしよう…困った。いや本当に。話を聞く気がまったくないらしい。でも俺のすることは場所が変わっても変えない。
「とりあえずルールだけ。出撃の際には中破撤退。いいっすか?」
言うと、全員が目をパチクリさせる。が、すぐに俺の胸ぐらを掴む利根。
「な、なにを言っている!甘過ぎるぞ!前の提督など、我々が轟沈しようとなんだろうと…」
「利根!」
武蔵が声を上げ、利根の肩は震える。
「や、その…だってお前らだって生きてるし…」
「だから!貴様は甘い!我々は兵器だ!命を大事にされるなど…」
「いや、俺が嫌われてお前らが助かるならそれでいいかなって」
「…………」
全員が唖然とする。え、なにこれ。俺今変なこと言った?
「と、とにかく我輩は認めんぞ!」
そのまま利根は出て行ってしまった。
「あー今日は出撃しないからみんな休んでてください!」
返事もされずに全員出て行ってしまった。
艦娘達。
「どう思う?あの提督」
雲龍が切り出すと、利根がすぐに反応する。
「どうもなにも甘過ぎじゃ!あいつは!」
「しかし今までの提督の中では一番根性があるのは確かだ」
腕組みした武蔵が言った。
「それでも私達のこと舐め過ぎだよねぇ。中破で撤退なんて」
絵を描きながら秋雲も言う。
「だったら、証明するしかないんじゃないですか?私達の強さ」
大和が言うと、大鯨以外の六人が立ち上がった。
「ではみなさん、いってらっしゃい」
今日は出撃なしと言われたのに誰一人反論しない辺りが流石である。
六人は出撃し、まだクリアしてないところに挑んだ。
「我が索敵から逃げられると思ったか!」
利根の索敵で開戦。今日は六人とも調子が良く、ボスルート手前まで来た。が、利根が大破している。
「さて、では行くぞ!」
「でも大丈夫なの利根さん?大破してるけど…」
「問題ない!ゆくぞ!」
提督にあぁまで言った矢先、撤退するわけには行かない。
敵は姫。が、甘かった。燃料、弾薬共に尽きかけている上に、利根の大破に叢雲の中破。明らかにギリギリだ。
「クッソ!利根、退避しろ!ここは私と大和が食い止める!」
「私もお手伝いします!」
武蔵と雲龍が言う。叢雲と秋雲が利根を護衛する形に入ったが、利根は飛び出した。
「なっ!」
「利根さん!?」
「我輩が全部片付けて…!」
だが、そこに姫の砲弾が飛んできた。
「!?」
「利根!」
そこに降りてきた影。そいつは利根を右腕で抱き抱え、左手でその砲撃を弾いた。
「お前らさぁ…俺の言ったこと片っ端から無視してんじゃねぇーよ」
提督が海の上に浮いていた。全員、唖然。
「お前ら下がってて。利根連れて。敵見つけたらシカトして全力で逃げろ。無視したら今度は解体。いい?」
それにおとなしく従う六人。そこから提督はにやりと笑った。
「久々におもしろい喧嘩が出来そうだ」
数分後。六人に遅れて俺は帰宅。全員が気まずげな顔をしていた。
「利根はちゃんと入渠してますか?」
近くにいた大和に聞いたら黙って頷く大和。
「そっか…良かっ……」
「提督っ!」
その瞬間、抱き付いてくるのは…利根?
「お前入渠してたんじゃ…」
「バケツぶっかけたわ!それよりも貴様!あんな無茶して一体どういうつもりじゃ!」
いや無茶ってほどじゃ…ていうか勝手にバケツ使うなよ。
「平気だっつの。ていうかだから言ったろうが。中破撤退って…」
「すまん…我輩のせいで……腕が……」
「へ?腕?」
俺は自分の右腕を見た。いやあるよ。左腕も見……、
「腕がぁぁぁぁっっ‼︎‼︎」
『今更!?』
おいマジかよ!聞いてないよこれ!あ、でもどこぞの赤髪みたいでかっこいいかも…。
「すまん…すまんの…提督……」
「いやいやいや!なんでないの!?なんでないの!?聞いてないよこれ!ちょっ…病院!病院!」
その瞬間、血が足らなくて俺はぶっ倒れた。