鎮守府を案内している。秋月を。まぁ、アレだな。会話がない……。辛い。おいこの廊下。食堂までなんで窓しかねぇんだよ。ふざけんなよ空気重いだろうが。
このままじゃ秋月につまらない人間だと思われて嫌われる…なんとかしなければ……いや、それはフラグだ。中学の頃、女子と二人きりになって頑張って話そうと思った結果、「ちょっと黙って」ってゴミを見る目で言われたのを思い出せ。ここは必要最低限のことを話す程度でいい。
っと、到着した。
「ここが、あれ…食堂だ」
「へぇ〜美味しいですか?」
「俺は数える程しか使ってないから分からん」
「へ?ならどこで食べてるんですか?」
「外」
「ダメですよ!外食ばかりしてちゃ。体に悪いし艦娘とのコミュニケーションも取らないと!」
「は、はい……」
怒られてると、後ろから声をかけられた。
「提督!」
振り返ると、魔法少女になったレーベが立っていた。しかも頭食われたヒト。
「て、ティロフィナーレ!」
「お前がフィナーレ」
「提督、この人は?」
「あぁ、Zガンダムだ。中にカミーユがいる」
もしくはルー。
「い、いないよ!ていうか妊娠してるみたいな言い方やめてくれないかな!?ガンダムでもないし!」
で、自己紹介。
「僕の名前はレーベレヒト・マース。レーベでいいよ、うん」
「私は秋月。それで、どうしてそんな変な格好してるの?」
「えっ!?」
その言葉にガーンッとした顔になるレーベ。
「へ、変、かな……夕張さんのところに、女の子っぽくなるにはってことで、行ったら、これがいいって、言われたんだけど…」
あれ?熊野のところじゃなかったの?チラッと伺うようにこっちを見るレーベ。
「てか女装癖も大概にしろよレーベ」
「だ、だから男じゃないよ僕!うわあぁーん!」
そのままダダダダッ!と走って逃げるレーベ。
「よし、次行こっか」
「はい!」
そんな感じで全部回った。
秋月と別れて執務室に戻ると、鳳翔さんが待っていた。
「お疲れ様です。提督」
「うぃっす」
すると、なんかチケットみたいな紙切れを渡された。
「秋月さんと行って来てください」
遊園地のチケットのようだ。どうやら、わざわざ俺のために用意してくれたらしい。
「あなたと秋月さんのために用意したんですよ」
鳳翔さんが少し悲しそうな顔で言う。え、なにその顔…なんか俺が悪いことした気分だわ。とにかく、俺のためと言うならありがたく受け取ろう。でも、なんか…言いづらいな…。
「あの、俺あれやっぱやめた」
「あれ、とはなんですか?」
鳳翔さんに聞かれる。
「いや秋月、確かに可愛いとは思ったけどさ、なんつーの?加賀さん気質で……少し厳しくて怖かったんですよね。だから別に好きっていうのはlikeっていうか…」
その言葉にピクッとする鳳翔さん。
「つまり、なにが言いたいの?」
あれ?普段の敬語はどこ行ったんですか?
「だから、そのチケットは鳳翔さんが行きたい人と使ってください」
言った瞬間、バタンッ!と執務室のドアが開き、加賀さんと榛名が立っていた。
「へ?なに?てか聞いてたの今の?」
聞くがなにも言わない。三人は肩をぷるぷると震わす。
「あ、あの…みなさん?」
グスッとしゃくりあげるような音。え?泣いてんの?
「あたまに、きました……ほんっとに、あたまにきました……」
「え、なんで怒って…」
「勝手は、許さないって……言ってるのに……」
え、え〜そんなにこの遊園地のチケット高かったの?
「え、ちょっと待て。なんで泣いてんの?また俺がなんかした?」
「「「超しました」」」
「なに、絹旗?」
「だから、提督は私達の言うこと聞いてもらいます」
鳳翔さんが言う。なんだよ…マジでなにされんの?てかなんで怒られて……。
「提督は、私と遊園地に行かなければならないんです」
「へ?鳳翔さんって遊園地行くような歳には…」
「どういう意味ですか?」
「い、いえ…」
「とにかく、明日行きますから。いいですね?」
あぁ…どうしてこうなるんだ……。