執務室。一航戦二人、榛名、鳳翔、夕張、それと一応明石も呼んで会議の予定なのだが提督が来ない。
「なにをしてるのかしらあの提督は……」
イライラしながら加賀が言った。
「もう、加賀さん。そんなにイライラしないでください」
「赤城さん。あの男が私達を集めたんですよ?それなのに遅刻なんて何様なのかしら…」
「早く会いたいからって、もう…」
「ち、違いますよ!」
「では、私が少し様子を見て来ますね」
「榛名もご一緒します」
で、鳳翔と榛名は提督室へ。ガチャッと扉を開けると、早い話が殺風景になっていた。なにもない、壁も天井も床もない。そして、空中に提督と提督(女)が浮かんでいた。
榛名も鳳翔は唖然としている。そんなのを気にせず、提督二人は殴り掛かった。
「10連……」
「スーパー…」
で、拳と拳がぶつかり合う。
「ネイルガンッ!」
「すごいパァーンチッ!」
ゴガッ!とそこを中心に爆発が起こり、衝撃波が海の水を噴水の如く舞い上がらせる。
((じ、人類最強決定戦!?))
殴り合う中、鳳翔と榛名は急いで加賀を呼びに行った。数秒後、加賀の静かな怒鳴り声で二人は落ち着いた。
「で、なにか言い訳は?」
「「あ、ありません……」」
鳳翔さんの前で俺と俺(女)は正座させられてる。
「あなた達は自分が下手したら世界を滅ぼせるかもしれない力がある自覚がありますか?下手したら深海棲艦よりも恐ろしい存在なんですよ?」
「はい…」
「ごめんなさい…」
「次、また同じことしたらただじゃ起きませんからね」
あぁ…すごく怒られてしまった……。
「それで、どちらが提督なんですか?」
「そりゃ俺ですよ!」
「それはあたしですよ!」
「「はぁ?」」
「いい加減になさい?」
「「ごめんなさい……」」
つまり、話をようやくすると分裂したのだ。男と女で。正直な話、提督がどっちなんてどうでもいいが、提督の座を取られると、この鎮守府から追い出される可能性もある。だって俺なら追い出すもん。元々、同じ人間だったってことはおそらく考えてることは同じだろう。すると鳳翔さんがクスッと笑いながら言った。
「なんか、双子ちゃんみたいですね」
「「それはありません!」」
いや、否定はしたもののそうかもしれない。元々は同じ人間だったんだから双子と呼ばれてもおかしくない。
「もし、仮に俺達が双子だとしても兄貴は俺ですよね?」
「はぁ?あたしが姉に決まってんじゃん」
「元々は俺一人だったんだから俺が兄に決まってるじゃん」
「女の子の方が精神年齢は上なのよ!」
「通常はね?俺とお前だったら俺のが上でしょ」
「なに言ってるわけ?ぶっ飛ばされたいの?」
「はぁ?最高に愉快なオブジェにしてやろうか?」
「そっちこそ粉々に解体してあげよっか?」
「二人とも?」
鳳翔さんの声で俺達はビクッとする。そこに加賀さんが来た。
「とにかく、あなた達どちらか、あるいは両方が提督の仕事をしてもらいます。もしどちらかならもう片方は自分の私室とこの前ぶっ飛んだ女子トイレを直しなさい」
「「俺(あたし)が仕事する!」」
で、またメンチを切り合うと加賀さんに拳骨された。
「まったく…こんな面倒な人が増えるなんて…」
「いいじゃないですか、また賑やかになりますよ」
ホントだよ。賑やか過ぎてイライラしてくるレベルだわ。