「どうして悪戯したんですか?」
「………」
ただいま、榛名にめちゃくちゃ怒られてる提督。
「黙ってたらわかりませんよ?」
「お、怒ってない…?」
「はぅ……」
提督の上目遣いに思わずきゅーんする榛名。それは大井や山城も同じで、普段の提督ならボコボコにしてたものの、あのふてぶてしさと今の幼さのギャップで数倍可愛く感じている。
「はっ。お、怒ってませんよ?」
なんとか正気を保つと、榛名は大丈夫と心の中で言い聞かせる。
「そ、その…遊んで欲しかった、から……」
「はうぅ……っ!」
さらに胸にダメージが行く。提督はもちろん素だ。別に子供っぽく騙そうとかではなく、普段の提督が子供になった時の破壊力の結果だ。もちろん、子供になって多少は子供っぽくなったところもある。
「そ、そうですか。ならあんなことしなくても榛名はいつでも遊んであげますよ」
「ホント……?」
「えぇ」
にこっと笑う榛名。が、少年提督は素直じゃない。ハッキリと向こうから「遊ぼ?」と言われるまで決して遊ぼうとは言わないのだ。だから今、こんなんなってるんだろうなぁ…。ちらちら榛名を見るものの決して遊ぼうとは言わなかった。それを見て心底可愛いと思いつつも榛名は「遊びましょうか」と言った。
「で、なにします?」
「鬼ごっこ。って言いたいけど艦娘は性能とか関係しちゃうからなぁ…。増え鬼ね。人数、最低10人集めて」
「了解しました」
てなわけで集まったのは榛名、金剛、加賀、翔鶴、瑞鶴、島風、皐月、文月、川内、神通の10人。提督合わせて11人だ。
「提督と遊ぶなんて初めてネ!」
「なぜ私まで…」
「ま、まぁまぁ先輩…」
「なにするのー?」
「おーそーいー!早くやろー!」
と、騒ぎながらもジャンケン。負けたのは、加賀さん。
「あたまにきました」
てなわけで全員逃げる。逃げながらも榛名は思った。加賀さんと瑞鶴さんの二人鬼ごっこでおわりそうだなぁ…。
だが、榛名の予想は外れることになった。気が付けば鬼は七人。逃げてるのは提督、島風、皐月の三人だ。
「困ったわね…駆逐艦三人とは…」
加賀さんが参ったように言う。
「どうする?手分けする?」
「そうすると川内姉さん寝ちゃいますよね?」
「ね、寝ないわよ!」
「艦載機も飛ばしてるのに見つからないなんて…」
「瑞鶴、あなたそんなことしてたの?」
「やばっ…じ、冗談だよ翔鶴姉!あは、あはは…」
「皐月ちゃんの居場所ならあたし分かるかもぉ〜」
「本当に?」
榛名が聞くと頷く文月。
「うん。皐月ちゃん工廠裏の小さな穴の中にいるかも…この前見つけて自慢してたから」
「じゃ、文月ちゃんは榛名と翔鶴さんとそこに行きましょう。加賀さんは瑞鶴さんを連れて提督の好きそうな場所に行ってもらえますか?川内さん達と金剛お姉様は島風ちゃんをお願いします」
「「了解」」
その頃、提督組。偶然にも三人は一緒に居合わせた。
「さて、ここからどうするか…」
提督が切り出す。
「私は見つかっても平気だもーん」
「それでも仮にここにいる三人以外は鬼になっているとして敵は七人、高速戦艦や改二軽巡もいるんだ。速さで振り切れるほど甘くないよ」
「むぅ……」
「それなら僕、いい隠れ場所知ってるよ!工廠裏に小さな穴があるんだ!行こうよ!」
「うん!」
「待って!皐月、その話誰かに話したことあるか?」
「え?む、睦月型は全員知ってると思うけど…」
「ならやめた方がいい。むこうに文月がいたら一発アウトだし、出口が一箇所しかないところに隠れると入り口塞がれて終わりだよ」
「じゃあどうすんのさ」
皐月に聞かれ、島風もそーだそーだと言わんばかりに頷く。
「そもそも、鬼ごっこに逃げる側が勝てる要素はない。強いて言うなら時間切れだが、そんなもの生憎決めてなかった。ならどうするか、鬼を封印してやればいい」
「どうやって?」
「任せろ」
賢い子供はやっていいことの良し悪しが付かない。だから怖いのだ。