あの後、一晩中歩き回った挙句、スカイウォークで帰った。いや極限状態は人を強くするって本当なんだな。これで俺の技が増えた。釘パンチにスカイウォークかぁ………………俺って本当に人間かなぁ。
てなわけで俺は暇潰しに弓道場に向かった。そこではなにやら言い争いしている。どうやら中心にいるのは加賀さんと瑞鶴みたいだ。あー…またあの二人ね。とりあえず近くにいる赤城さんに聞く。
「なにしてんですかあれ?」
「瑞鶴さんが上手くいかないのを加賀さんが後ろから見てて、小声で『ダメね』って言ってたのが聞こえたらしくて」
アホかあいつら。加賀さんも素直になればいいのに。
「あーそういうノリね。任せてください」
それだけ言うと二人の所へ。
「あなたみたいな七面鳥が私より上手い?あなた大丈夫?正気?五航戦?」
「あなたこそ!旧型の癖に私より上手いと思ってるんですか!?」
「はぁ?なに、私と戦争したいの?」
「それはこっちの台詞ですよ!」
なにチック姉さんだお前ら…まぁなんでもいいや。
「おーい。お前ら五月蝿い」
「「あ、提督!」」
で、お互い顔を見合わせる。
「「チッ」」
なんだこいつら。ガキ過ぎだろ本当に正規空母か?
「えーっと、どうしたいわけお前ら」
「私がこの仏頂面より弓道が上手いと証明したいです!」
「私のが上よ七面鳥」
「まー落ち着いて下さい。ここはあれだ、弓道対決でよくないですか?」
「はぁ?」
「ほら、やっぱ証明したいならお互いの腕を見せ合うのが一番じゃね?」
と、いうわけで弓道対決開始。先手は瑞鶴になった。
「い、行くわよ!」
しゅとっと音を立てて矢を放つ。だが、的にすら当たらない。それが三回連続で失敗した時、俺は笑ってやった。大声で。それも腹立つ笑い方で。
「ぜ、全部当たってないじゃん!あひゃひゃひゃ!」
なんか袖ちゃんみたいな笑い方になったがこの際いいや。単細胞の瑞鶴は当然食ってかかる。
「う、うるさい!提督さんよりは上手いわよ!」
「そりゃ俺は経験者じゃないもん…お前…仮にも正規空母だろwww」
「う……っ!」
「五航戦www責めて的に当てろよ……」
「うぅ……」
瑞鶴は涙目になり、全員(一航戦と五航戦)が俺をゴミを見る目さて、そろそろか?加賀さんがこっちにツカツカと歩いてくる。で、ビンタ。
「一生懸命やってる子を笑うなんて最低です」
「…………」
すると、加賀さんはそっと泣いてる瑞鶴の肩に手を乗せて優しく言った。
「大丈夫よ。あのバカの言うことは放っておきなさい。私が見てあげるから見返してやりなさい。いいわね?」
「………はい」
うん。和解。あとは俺が退却するだけだな。しばらくは正規空母にも嫌われるだろうし、さっさと執務室に消えるか。
「ほらここをもっと張って。力入り過ぎよ」
「は、はい」
その頃弓道場。二人仲良く練習中。そんな様子を微笑みながら眺める翔鶴と赤城。
「なんだか私より姉妹やってるように見えますねー」
「そんなことないと思うけど…二人とも一生懸命ね」
「でも、提督大丈夫ですかね…あの二人くっ付けるためにあんなことして…」
「大丈夫よ。あの人、メンタルだけは変に強いから」
ニコニコ笑顔の赤城。それでも心配そうに提督の出て行った出口を見つめる翔鶴。
すると突然、
「や、やったぁっ!当たった!当たりましたよ加賀さん!」
「良かったわね」
ガバッと抱きつく瑞鶴とその頭を微笑みながら撫でる加賀。だが、その様子をにこにこしながら眺める赤城と翔鶴に気付いてすぐにお互い離れる。
「ま、まぁ今回の所は感謝してあげます!」
「今回ばかりは上達したって認めてあげるわ」
お互い顔を赤くしながらチラチラ見るも、そっぽを向く。
(そういえば提督さん、加賀さんに引っ叩かれてたなぁ…結果的に提督さんのお陰で加賀さんと仲良くなれたし…様子見に行ってあげよ)
(そういえばさっき提督を殴ってしまったわね…狙いが何か分かってたのにやり過ぎてしまったかもしれないわ…謝りに行かないと…)
「「ちょっと用があるので失礼します」」
そのまま二人で弓道場を後にした。
「「提督、少しお話が…」」
バタンッと二人で執務室へ。だが中では、
「や、あの…本当にこんなところ艦娘の誰かに見られたらアレなんすけど…」
「大丈夫ですよ。ほら動かないで下さい」
鳳翔さんに頬に湿布を貼ってもらってる提督の姿だった。
この後、めちゃくちゃ爆撃された。