と、いうわけで第一艦隊帰投。俺の素晴らしい活躍によって新海域を解放した。
「じゃ、俺部屋に戻ってるわ」
それだけ言ってとたたっと執務室へ向かう。が、その俺の首根っこを加賀さんが掴んだ。
「待ちなさい。提督への報告がまだよ」
「え?あーそだったな」
「っていうか、あなたどうしたの?いつもと様子がおかしいように見えるけれど」
「え?あー…」
今更入れ替わってますなんて言えねぇよなぁ…。
「そ、そんなことないですよ加賀さん」
「ならいいのだけれど」
「そ、それより早く提督に報告しようよ!」
ふぅ、阿武隈の振りも疲れるな。まぁそんなこんなで執務室へ。が、誰もいない。
「あら、またサボりか?」
はぁ…と呆れたように言う日向。なら俺もちょうどいいや。
「いないんなら仕方ねぇよな。俺はゲーム…じゃねぇや、私は遊びに行ってきますね」
「待ちなさい!あなた、本当に阿武隈?」
げっ、ばれてる?いや誤魔化さないと。
「や、やだなー加賀さん。そんなわけないでしょ?」
「…………」
「は、はは…さらば!」
しゅばっ!と、音がしそうなほどダッシュ。危ない危ない。流石にバレたら狩られるかもしれない。しかし阿武隈あいつ俺の仕事やっといてくれりゃいいのによ…。
なんて考えながら長良型の部屋へ。
「あら、阿武隈お帰り」
えっと…五十鈴だったか?
「おう…じゃなくて、た、ただいま?」
「……どうかしたの?」
「な、なんでもないなんでもない!」
くっ…つい素が出てしまう。
「それより、今日は長良型のみんなでお風呂に入る約束でしょ?行きましょ」
「えっ」
「ほら早く」
「ちょーっ!待て待て!たんま!流石にマズイ!俺が騙してるみたいになる!」
「はぁ?『俺?』」
「じゃなくて私!」
「なに、ボーイッシュキャラでも目指してんの?いいからきなさい」
「待って!マジで!分かった!お…私が悪かった!」
すると、ガチャッとドアが開かれる。
「あれー?まだこんなところにいたの?…と、阿武隈お疲れ」
長良に名取まできやがった…うちの艦隊に鬼怒はいなかったな…あとは由良か。
「ほら阿武隈行くよ」
「いーやーだー!」
だが、流石に軽巡三人相手は辛い。結局、入浴。うー…自分が見られてるわけじゃないのに恥ずかしい…。と、思いながらドアを開けた。そこには、
「ほら阿武隈ちゃん。大丈夫ですよ。ここには榛名と阿武隈ちゃんしかいないし、別に誰も変な目で見ないですよ」
「うーでも…お股の感覚が…気持ち悪い…」
榛名と俺が入浴中だった。で、全員目が合う。おわた…。
執務室。俺と俺(阿武隈)は正座させられてる。で、俺達の目の前で顔を真っ赤にして仁王立ちしてるのは長良と五十鈴で、ソファーに座って同じく顔を真っ赤にして俯いて「見られた…お嫁に行けない…」と連呼してる名取を慰めてるのは榛名。由良は終始苦笑いしていた。
「あ、あんたらねぇ!どうしてもっと早く言わないの!?あんたらのせいで…い、五十鈴の体…て、提督なんかに…」
「そうだよ司令官!阿武隈ちゃんもなんで早く言わないの!?」
「その…あの後榛名さんに連行されたり、提督は出撃になったりで、タイミングなくて…」
ボソボソ呟く俺(阿武隈)。おい、俺の姿でなよなよすんな。キモいぞ。
「とにかく!さっさと元に戻る方法を探すのよ!じゃないと困るわ!」
五十鈴がビシィッ!と音がしそうなほど指を差す。
「えー別にこのまんまでもよくねー?風呂さえ気を付ければ困ることないし」
「そ、の、お、ふ、ろ、で!さっき問題が起きたんでしょーが!」
五十鈴が俺の頬をグィーッと引っ張る。
「そうだよ提督!それにこれからお風呂入る時あたしの裸見ることになるんだよ!?」
「別にもう慣れたし。まだスポブラしてるような奴の裸見たところで…」
頬引っ張りに俺(阿武隈)も参加。あの、痛いんですが…。
なんてやってると、「とにかく」と榛名が立ち上がった。それを機に、二人は俺の頬から手を離す。
「早く戻ってもらわないと仕事にも支障が出ます」
「なんで?俺が艦娘やった時は無類の強さを誇ったぜ?」
「艦娘の仕事がよくても提督としての仕事もありますよ?」
あーなるほどな。
「なに、そいつそんなに使えないの?」
「そ、それは…まぁ、その……し、仕方ありませんよ!慣れてないんですし!」
ショボンとする俺(阿武隈)。だから俺の姿でそういうのやめろっての。
まぁそんなこんなで元に戻れ!の会が始まったのだが、まるで人を人と呼ばない、てかお前らのストレス発散じゃね?的な実験だった。もっかい衝突してみたり、俺達が一緒の時を爆撃してきたりとロクなもんじゃない。しかも、結局元に戻らなかった。
「はぁ…」
「とにかく、また明日考えましょう」
てなわけで、俺は私室。俺(阿武隈)は長良型の部屋へ戻った。
次の日、起きたら元に戻ってたが、体ではなく中身が移動したため、俺が俺に抱き着いて寝てた五十鈴にボコボコにされたのは言うまでもない。
「あー…ひどい目にあった…」
やや、ていうかかなりゲンナリしながら私室のソファーで寝てた。
「でも良かったじゃん。元に戻れて」
「まぁ、な」
秘書艦の白露がケラケラ笑ながら言った。
「五十鈴の野郎…本気で殴りやがって…由良と長良がいなかったら殺されてたかもな…」
「大丈夫!私が一番に助けるあげるから!」
「そうかい」
楽しそうに微笑む白露を見てて思った。そういえばけい○ん!のりっちゃんはカチューシャ取るとかなり可愛いな…もしかしたら……、
「白露、ちょっといいか?」
「んー?なにー?」
パタパタと走ってくる白露。その白露に手を伸ばす。犯罪者みたいだな…。
「ほいっと」
「!?」
カチューシャを取った。その瞬間、俺に稲妻が走る。なのです!か、可愛いな確かに…。だが白露は、
「や、やめてー!見ないでー!」
「は?」
「か、カチューシャ返して!」
「え?お、おう…」
返すと、後ろを向いてすぐにスチャッと装着。そして、俺をジト目で睨んだ。
「……なに」
「バカアホ最低」
「悪口が小学生並のボキャブラリーだな。まぁ、ごめん」
「………や」
「へ?」
「許さない!あ、あんな恥ずかしい姿見るなんて…!」
「いや恥ずかしいって…普通に可愛かったと思…や、なんでもない」
っぶねぇ。またラノベ主人公みたいなこと口走るとこだった。白露は…顔をまた真っ赤にしてる。
「か、可愛いって…もうホントにやだ!アホ提督!」
「おまっ言い過ぎじゃ…」
「秘書艦降ります!じゃあね!」
「ま、待て待て!悪かったって!分かった、なんでも一つだけ言うこと聞いてやるから!」
「なんでも…?」
「で、出来る範囲で…」
「………ート」
「は?」
「デートって言ったの!」
「………………は?」