それは、唐突に起こったことだった。
廊下を歩いていた。そして、周りに誰もいないことを確認。
「とぉうっ!(裏声)」
急に手を上に上げてジャンプ。
「へぇんしんっ!タァーイムッ!」
で、グローブ、マスクと装着(する振り)。
「ドウダイ女史、カッコ良イダロウ!6thガ千ノ視覚ヲ持ツ者ナラバ、私ハ千倍ノ聴覚ヲ持ツ者!死ネ!死ネ!邪悪ノ教団、打チ滅ボセェ〜」
ふぅ、これ無償にやりたくなるんだよな。で、やったあとに後悔する。
「青葉!見ちゃいました!」
「へ?」
声のする方を見ると、カメラを構えてる青葉の姿。死ネ!
「てめっ!待ちやがれぇっ!」
「いーやーでーすーっ!」
クッソ!逃げ足だけは早ぇ!そして、青葉の曲がった方向へ曲がった時だ。ドッシーン☆と誰かと衝突。
「ったぁっ!」
「痛っ!」
そのまま二人して仰向けに倒れた。
多分、10秒後くらいだろう。その誰かより、俺が先に目を覚ました。目の前には誰かが倒れている。
「わ、悪い!大丈夫か!?」
俺が声を掛けたのは提督だった。やっべ!つい俺を倒しちまった!榛名に怒られちまう!
…………あれ?おかしくね?俺を倒しちまったってなんだよ。目を擦ってもう一度倒れてる奴を見る。
「………」
いやいやいやいや、ありえないからね?だってありえないもの。ないわ…流石にないよ。多分そっくりさんだろ。だってあり得ないもの。だってありえないでしょ?そんなこと現実にあるわけないもの。だからありえないって。
「………………」
いやいやいやいや、だからあり得ないって。もう分かった。夢を見てるのは分かったからさっさと覚めろお願い。
「………………………」
いやいやいやいやっ!ありえねぇって言ってんだろうがぁっ!
俺は俺の胸ぐらを掴んだ。
「てめぇ!誰だこのやろー!ぶっ殺す!五回殺す!」
「ふぇ…?ご、ごめんなさい!また誰かとぶつかっちゃっ…」
すると俺は目をパチクリさせた。や、俺じゃないよ?俺が見てる俺だから。
「わた、し……?」
「は?」
「なんで、私が、目の前に…?ていうか、提督の声?」
そういえば今気付いた。俺声高くね?あれ?てか服がいつもの私服じゃなくて?てかこれ、
服、阿武隈か由良じゃね?
うちの艦隊に鬼怒いないし…なんでいないんだろ…あのアホ提督から根こそぎ奪ったのに…。
「えっと…」
「えっと、君は阿武隈か?」
「え?あ、はい…」
「そーかそーか阿武隈かぁ。あっはっはっはっ…く、クロスソウルゥゥゥゥッッッ‼︎‼︎‼︎⁉︎」
「ちょっ!提督落ち着いて!」
「落ち着けねぇよ!いくら驚いても驚きたりねぇよ!なんでだよぉっ!俺がなんかしましたか神様ァッ!」
「おや、なにを叫んでるんだ阿武隈」
バッと振り返ると日向。
「君は私と出撃だろう。ほら行くぞ」
「ちょっと待ってヒナタ!」
「ヒュウガだ!貴様、提督みたいな間違えするな!行くぞ!」
「ちょっ!待ってマジで!」
そのまま俺は阿武隈のまま引きずられた。
てなわけで出撃。おいマジかよ。これってさ、
「俺が、ガンダムだぁぁぁっっ‼︎‼︎」
「なに言ってんだ阿武隈。いいから行くぞ」
木曾、日向、比叡、加賀さん、俺、雪風の艦隊。なにこの艦隊…。でもこれで深海棲艦と戦えるんだよな。やっべ、ちょっと楽しみ。そのまましばらく進むこと数分。敵艦隊発見!
「皆さん、艦載機を飛ばします」
と、加賀さんを無視して俺は木曾の剣を奪って特攻した。
「借りるぞ」
「あっ、おい!」
すると、飛んでくる艦載機。攻撃をかわして艦載機を全部機銃やら剣やらで堕とす(※阿武隈です)。そのまま敵艦隊を肉眼で発見。
「エクシア、紛争を確認。根絶する」
そのまま主砲を構える。
「弾幕を張る!」
主砲を放つ。それをかわす駆逐艦ナントカ級。そのかわした所に剣で斬り掛かった。まさに一刀両断。俺の頭の中ではバクチダンサーが流れてます。あれ?ガンダムなのに?
「ああああっ!」
とても阿武隈とは思えない掛け声とともに敵の駆逐艦の二体目を撃破。そして、主砲的なににかを構える軽巡ナントカ級の主砲をすべて斬り裂いた。そして、ゼロ距離で自分の主砲をぶち込む。
なんて戦ってると、後ろから残りの俺の艦隊が来る。全員ぽかんとしていた。
「あ、あれ阿武隈だよな?」
どんなコメントをされてるか分からないがこれ艦娘おもしれぇな。深海棲艦と戦うってこんな感じなんだ。
そして、木曾剣を投げ付けて敵の空母と戦艦をぶっ刺す。動きが鈍くなった所を主砲を5発ぶち込んだ。はい全滅。
「俺が、俺達が、ガンダムだっ!」
で、第一艦隊の元へ戻った。
「やっべ!艦娘楽しいなこれ!」
「…………」
全員ぽかんとしてる。そして俺も思った。今の俺、阿武隈ジャン……。やっべ…どう誤魔化そう…。
「や、今のは、その…」
「お前!あんなに強かったのか!?見直したぜ阿武隈ぁっ!」
「へ?」
木曾が目を輝かせて言う。
「ていうか剣使えたんだな!今度俺とタイマン張ろうぜ!」
「かっこよかったです阿武隈さん!雪風、コーフンしちゃいました!」
と、はしゃぐ二人。いや比叡もはしゃいでるから三人か。だが、日向と加賀さんは俺をジト目で見る。
「よっしゃ!みんなさっさと行こうぜ!」
元気良い木曾の号令で進撃。あー楽しかった。
その頃、私(阿武隈)。どうすればいいのか分からず、ただ廊下でぼんやりしてると、
「提督!またこんなところでサボって!」
あーまた提督怒られてるんだ…あれ?提督って今私じゃない?少し遅れ気味に振り返ると榛名さんが立っていた。
「ほら仕事!じゃないと終わりませんよ!」
「ま、待って榛名さん!」
「なにか?」
ジロリと睨まれ、つい萎縮してしまう。小声で「なんでもないです…」と呟くとついて行った。
執務室、アホみたいに仕事が山積み。提督いつもこんなことしてたんだ…。って、なんで私がやらなきゃいけないの!?
「ではなにかご用でしたらお呼びください」
「ま、待って榛名さ…」
だが、扉は閉ざされる。はーあ…やるしかないのかなぁ…。で、30分後くらい。榛名さんが戻ってきた。
「ちゃんとやってますかー?」
「あっ榛名さん!ほらやりましたよ私!」
「私…?」
「って、そうだった!実は私提督じゃ…」
「って、全然違いますよ!なんで書類に絵日記書いてるんですか!?」
「へ?」
「ホントにふざけるのも大概にしてください!そんなんだから加賀さんと喧嘩したのもう忘れたんですか!?」
「う…」
「そもそも!前々から計画性が足らないからこんなにたくさんまとめてやることになるといつもいつも…」
「うぅ…」
「やり直しです!今日は終わるまでここから出ないで…って、提督?」
「うぐっ…ひぐ…」
ひどい…分からないなりに努力したのに…。
「ちょっ…泣かないで下さいよ!どうしたんですか今日は…提督?」
「ふえぇぇぇぇん………」