もし、俺が提督だったら   作:単品っすね

41 / 156

若干、シリアス入ります





昔の話

 

 

これは、俺が提督になって三ヶ月くらいの話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は海岸沿いを歩いていた。パズドラやりながら、ふと海を見る。うーわ…正規空母だ。うちに正規空母いねぇんだよなぁ…。あの青いの何て言うんだっけ、グフ?違うよね。なんて考えながら眺めてる。よく見ると大破しているようで大分疲弊しているように見えた。

お疲れさん…そんな思ってもないこと思いながら再びパズドラに戻る。が、海の方から音がする。駆逐ロ級二人に軽巡ホ級二人。いや人じゃないけど。

決して倒せない相手ではないが、空母は確か中破か大破してたら艦載機飛ばせないんだよな。俺は近くにあったボートを借りてその戦場に突っ込んだ。で、その青い空母を担いでボートに乗せた。

 

「あなた、は…?」

 

「………っ!」

 

そのまま自分の鎮守府に向かう。だが、後ろから追い掛けて来た。

 

「後ろから来てます」

 

「………っ!」

 

そのまま撃ってくる軽巡。仕方ない、フロンタルになるか。軍から支給されてる拳銃を抜いて振り返り、その雷撃を撃ち落とした。

 

「あなたは……っ!」

 

言えない…ルパンに憧れて練習してたとは言えない。

 

「ちょっ!前!前!」

 

「へ?」

 

目の前には、あ…確か遠征に出した天龍、だっけ?

 

「ああああっ!」

 

「ぎゃあぁぁぁぁっっ‼︎‼︎‼︎」

 

「いやぁぁぁぁぁっっ‼︎‼︎‼︎」

 

事故った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「私、毎回言ってますよね?なんで仕事もせずにほっつき歩いてるんですか?」

 

「はい、すいません…」

 

「そうだぜこのクソ提督!お前のおかげで俺は遠征で大破したんだ!」

 

俺は千歳と天龍に怒られていた。正座で。

 

「あの、ここは…?」

 

「あ、目を覚ましたました?」

 

隣でさっきまで気絶していた正規空母が目を覚ます。俺が拾ってきた奴だ。

 

「あの…ここは…」

 

「私はここの鎮守府の千歳です」

 

「天龍だ。ふふふ、怖いか?」

 

「正規空母、加賀です」

 

グフじゃないんだ…。

 

「ほら提督、挨拶してください」

 

「え?あー…て、提督です…」

 

「あなたは…さっき助けてくれた…」

 

「あ、すいません…」

 

「なんで謝るんですか」

 

おい、それをコミュ症に聞くな。反射的に謝っちまうんだよ。

 

「それで、加賀さん?あなたは別の鎮守府ですよね?」

 

千歳が声を掛ける。

 

「えぇ」

 

「今日はここに泊まって、明日送りましょうか?」

 

「いえ、任務の途中ですから…」

 

「でもよぉ、そんな傷じゃ帰れねぇんじゃねぇか?とりあえずその鎮守府に連絡付けて今日は…」

 

「だ、ダメです!そんなことしたら…」

 

「……?」

 

天龍の言葉を遮る加賀さん。訳ありか…。

 

「なんか、あるのか?」

 

「い、いえ…とにかく、帰らせてもらいます」

 

フラフラした足取りで執務室を出ようとする加賀さん。だが、それを千歳が止めた。

 

「ダメですよ。歩くのもやっとじゃないですか。とにかく、今日は泊まって行きなさい。あなたの鎮守府には連絡しておくわ。提督が」

 

「えっ」

 

なんで俺?と、思ったが言えない空気だった。そこまで言われると反論出来なかったのか、加賀さんは承諾した。

 

「では提督?今日は一日加賀さんと一緒にいてあげてくださいね?」

 

「え?」

 

やべぇ、さっきから「え」しか言ってない気がする。

 

「色々あって不安でしょうから」

 

うーわ…マジかよ…。とりあえずその鎮守府に連絡しないと…そんでもって初対面の人と一緒…あ、これ死ぬわ。なんて俺の気も知らずに千歳と天龍は出て行ってしまった。

 

「…………」

 

「…………」

 

「あ、あの…」

 

声を掛けると、ビクッとする加賀さん。え、なに俺マズイことした?そんなに驚かれるとショックなんだけど…。

 

「その…鎮守府の連絡先教えてくれると…」

 

「あ、すいません。番号は…」

 

てなわけでなんとか連絡を付けて、向こうから迎えに来ることになった。

 

「………」

 

「………」

 

再び無言。いい加減気まずいんだけど…てか加賀さんもコミュ症なのかな…。仲間が出来て嬉しいナ!じゃ、仕事するか。や、別に加賀さんの鎮守府の人が割とお偉いさんだったからって今の内にポイント稼いどこうなんて思ってないからね?

と、思ったら俺の方を加賀さんが目を丸くして見ている。なんだよ、と視線で問うと、答えてくれた。

 

「いえ、提督が執務をするものなんですね。この鎮守府では」

 

「え?うんまぁね?」

 

言えない…普段はサボってゲームしてるなんて言えない…。

 

「私のところは提督はなにもしません…いつも口だけ偉そうにして仕事はしないしセクハラしてくるし…」

 

そこで、ハッとした顔になる。

 

「すいません…忘れてください…」

 

…なるほどね。用はブラック鎮守府って奴か…まぁそういうところあるらしいな。こういう時、なにか言葉を掛けてやれればいいんだが、なにを言えばいいのか分からない。

 

「うん。まぁ…大変ですね…」

 

「………あなたは、違うのですか?」

 

「へ?や、なにが?」

 

「ここの鎮守府の提督は、そういうことしないのですか?」

 

「え?あー…まぁ、しません、けど…」

 

「………」

 

そんなに驚くことか?

 

「俺ってそんなにダメ人間に見えるかな…」

 

「いえ、そういうことではなくてですね…どこの鎮守府も同じだと思ってましたから…」

 

「それはないですよ。人間なんて人それぞれなんすから」

 

「そう、ですか…」

 

「なら、今日はうちの鎮守府見学してて下さい。小さいけど、まぁ加賀さんの鎮守府よりはマシだと思いますから」

 

言うと、加賀さんは無言で出て行ってしまった。やべっ、今の俺、会話出来てた。コミュ症克服出来たのかな。

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。