もし、俺が提督だったら   作:単品っすね

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番外編4

 

 

 

 

文化祭当日。今更だが俺は文化祭実行委員顧問でもある。もちろん、加賀先生の強制だ。おかげでクラスの方にも部活の方にも顔を出せなくなってしまっている。まぁそんな文化祭も今日明日で終わりだ。ちなみにスペシャル出演の方は教師が出るのは許されないようなので俺は演劇には出ない。助かった。

 

「午前中は私と一緒に見回りよ」

 

とか言いながらさりげに手を繋いで来る加賀先生。ち、ちょっと!あなた本編と全然キャラ違うじゃないですか!

 

「あなた、ほっとくとどっかに逃げるでしょ?」

 

訂正。やっぱり変わってない。

 

「とりあえず、見回りってなにすりゃいいんですか?」

 

「問題行動を起こしてる生徒がいたら注意するだけよ。あ、あのたこ焼き美味しそう…」

 

と、たこ焼きの列に並ぶ加賀先生。おい、この人生徒より楽しんじゃってるよ。大丈夫なの?しかし、流石高校の文化祭なだけあって一般客も来てるんだな。これなら剣道部も繁盛するんじゃないか。なにするか知らないけど。

 

「そういえば弓道部はなにかしてるんですか?で店とか」

 

「来年の新入生集めとして部活見学をやってるわ」

 

たこ焼きを買うと、そこら変に生徒会が設置したベンチに腰を掛ける。

 

「食べる?」

 

「たこ焼きっすか?」

 

「それ以外になにかあるのかしら」

 

「あ、じゃあいただきます…」

 

加賀先生の手から爪楊枝をもらうと、たこ焼きにぶっ刺して口に運ぶ。あー学生のクオリティにしちゃ美味いな。

 

「ありがとうございま…どうかしました?」

 

「あなた…その爪楊枝…」

 

「え、なに…」

 

毒でも仕込んでたのかな…暗殺者かっつの。加賀先生に爪楊枝を返すと、顔を赤くしながらその爪楊枝を凝視する。で、にへらっと笑った。

 

「どうかしました?」

 

「な、なんでもないわ!」

 

なんなんだ…。加賀先生の謎の反応を見てると、前から声をかけられた。

 

「あら?デートですか提督先生?」

 

見ると、えーっと…名前なんだっけな…確か武士の下っ端みたいな名前の…。

 

「足軽先生?」

 

「足柄よ!……ったく、私は妹と一緒だってのに…リア充教師が…」

 

なんか怖いんですがこの人…確かに隣には羽黒先生がオドオドしてる。

 

「違うわ。見回りよ。たまたま美味しそうなたこ焼き見つけたから買っただけ」

 

「でも加賀先生。最近あなた提督先生のこと…」

 

そう言いかけた足柄先生の口を掴む加賀先生。なんだこの人…今早過ぎて見えなかったぞ…。

 

「ご、ごめんなさい!冗談よ!」

 

「次はないわ…」

 

こ、怖ぇー…マジで逆らわないようにしよう…。そのまま二人はどっか行き、俺と加賀先生は見回りに戻る。外の次は校内へ。なぜか加賀先生はたこ焼きに続いて焼きそば、お好み焼きとガンガン食べ物を買う。よく入るな…。

 

「あれ?先生じゃん。ちぃーっす!」

 

聞き覚えのある声がして振り返ると鈴谷と熊野が二人で焼き鳥を咥えて寄ってきた。

 

「あなた達、食べ歩きはよしなさい」

 

それをあなたが言いますか加賀先生…。

 

「ごめんなさーい。で、二人でなにしてんのー?」

 

「見回りだ。社会人ってのは祭りだろうとなんだろうと働かされるんだよ…」

 

「それをこれから社会人になろうとする学生に言いますか…」

 

熊野に思いっきり呆れられた。だが、そんなこと言われても困る。社会が悪い。俺は悪くない。もう一度言う、社会が悪い。

 

「てなわけで先生。なんか奢ってー!」

 

「鈴谷さん。教師にそういうことは…」

 

「いいよ。今度スタバでガムシロップ奢ってやる」

 

「奢る気0じゃーん…」

 

ヤケにゲンナリさせてしまった…。と、そこで声がした。てか声し過ぎでしょ…てか声がするってなによ…。

 

「おい、肩とれたんだけど…慰謝料出せやコラ」

 

聞くからに頭の悪い声。仕方ない…あまり暴力は好きじゃないんだが…。

 

「加賀先生。ちょっと行ってきます」

 

「待ちなさい。一人で行く気?」

 

「大丈夫ですよ。早くしないとあの子達が狩られちゃう」

 

三人を置いて声のする方へ。廊下の一番端っこ。そこで不良がカチューシャをした女の子と三つ編みっぽい髪型の女の子を三人くらいで囲んでいた。

 

「肩吹っ飛んだって言ってんだろコラ!」

 

「し、白露姉さんはわざとぶつかったわけじゃないんだ!」

 

「はぁ?わざとだろうがわざとじゃあるまいがぶつかったことには変わりねぇだろ!」

 

「自動車事故だって運転手が悪になっちまうんだぞコラ!そのおかげで…俺の親父はぁ…親父は…」

 

お、重たい…あの不良の過去が重たい…ホントに当たり屋は死滅すればいいと思う。っと、言ってる場合じゃないなこれ。カチューシャの子なんて今にも泣きそうだし。

 

「俺、参上!」

 

気軽に声を掛けると、五人は振り返った。で、ゴミを見る目を向けて来る。おい、助けられてる奴もそんな目するか普通。

 

「えっと…まぁアレだ。うちの生徒がぶつかったことは謝るからさっさと消えてくんない?」

 

「全然謝る態度じゃねぇ!」

 

「ていうか、お前教師か?」

 

「ぼ、僕も知らないんだけど…」

 

おい、お前せっかく助けに入ってやったのにそりゃねぇだろ。まぁいいや。

 

「いいからそういう絡み面倒だから。てかはずかしくないの?年下の女の子脅して金取るとか」

 

「うるせぇ!関係ねぇだろ!」

 

「や、だから教師だから関係ないで終わらせられないんだって。てか関係なかったら絡まないでしょ普通」

 

「もういい!面倒だお前!死ねぇっ!」

 

と、殴りかかってきた。それをかわして、容赦無く顔面に拳を叩き込む。はい、ワンパン。

 

「なっ!こいつ…!」

 

「ちょっと、倒してもいい?答えは聞いてない!」

 

「倒してから言うな!」

 

「覚えてやがれ!」

 

「2年B組の担任。提督だ。覚えときな」

 

キラッとドヤ顔。今の俺、輝いてる。

 

「大丈夫か?」

 

「あ、ありがとうございます…」

 

三つ編みの方が答える。カチューシャの方は…まだ泣き止みそうにないな。その辺の自販機でスプライトを二本買うと、二人に渡した。

 

「まぁあれだ。次はもっと早く来てやるから。元気出せ」

 

それだけ言って加賀先生の元へ戻っていく。

 

「お待たせしましたー…って、なに?」

 

三人に少年の目で見られている。

 

「すっごーい!先生やるじゃん!」

 

「つ、強いんでのね。提督先生は…」

 

「まぁな。小学三年の時から仮面ライダーを目指して格闘技やってたからな」

 

「動機が微妙過ぎる…」

 

「それよりも、あの不良達は平気なんですか?なんか仕返ししてやるって目してましたけど」

 

「あんな人の殴り方も知らない奴らが仕返しに来たって俺は問題ねぇよ」

 

なんて話してると、後ろからゲシッと蹴られた。加賀先生だ。

 

「そろそろ見回りに戻りますよ」

 

「は、はい…てかなんで蹴るの…」

 

聞いてもぷいっとそっぽを向いてしまった。鈴谷と熊野はそんな加賀先生を見てにやにやしていたが、俺にはさっぱり分からなかった。

 

 

 


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