もし、俺が提督だったら   作:単品っすね

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遊園地

 

 

 

夢を見てるのは分かってる。操車場で上条と俺と一方通行は睨み合う。一方通行の足元には御坂美琴のクローンが倒れていた。

 

「オラよ」

 

一方通行が御坂妹を蹴り飛ばす。それを飛び込んでキャッチする上条。

 

「上条、やるぞ」

 

「あぁ、分かってる」

 

御坂妹を後ろに置くと二人で走り込んだ。だが、

 

「遅ェ。そンなンじゃ百年遅ェ」

 

目の前に石が飛び込んできた。俺はギリギリ横にかわすが、上条には直撃。クッソ…流石学園都市第一位だ。俺の左手の幻想殺しを使おうにも近付けねぇ…。だが、ここで折れるわけにはいかない。一万人近い人間の命が掛かってんだ。

 

「うおおおおおっっ!!」

 

なんとか、風紀委員で習った格闘技を利用して飛んでくる石やら鉄骨やらを確実にかわしながら接近。

 

「やるなァ」

 

「ッだらぁっ!」

 

自分でもよく分からない叫びと共に拳を繰り出す。が、自分の真下から石が顎に命中した。

 

「グェッ…ッ!」

 

そのまま空に舞い上がる。勝ち誇った顔をしている一方通行だが、お前は分かっていない。もう一人いることを忘れたか?

 

「ナニッ!?」

 

「歯ぁ食い縛れ三下!」

 

上条の拳が一方通行の顔面に突き刺さる。そのままフルボッコにする上条。俺も援護しねぇと。そのまま俺の左手の拳が一方通行の腹を抉るように殴った。

 

「テメェらなンなンだよォッ!あンなのただのクローンだろォがァッ!」

 

「クローンだって精一杯生きてんだぞ!」

 

と上条が言い、俺も続いた。

 

「実験、それもレベル6なんかの為に殺されていいわけね」

 

「提督ー!」

 

ぐぼほぉっ!っと俺の腹の上になにかが落ちて来た。見事に溝に入って咳き込む。マズイ!一方通行の反撃が…と、思ったら目の前にいるのは一方通行ではなく鈴谷だった。

 

「おはよ。てーとく」

 

「そげぶは?」

 

「は?」

 

「や、なんでもない」

 

んだよまたこのパターンかよ。責めてセロリ倒すまでやらせてくれてもいいんじゃねぇの?

 

「それよりほら!今日の秘書艦はこの鈴谷さんだぞぉ〜。なにか言うことは?」

 

「チェンジ」

 

「ちょっ…!それどういう意味だし!」

 

スコンッと俺のおでこに手刀が来る。そんなことするからチェンジなんですよ…。

 

「ほらほら起きて起きて!朝ご飯、この鈴谷さんが作ってあげたんだよ?」

 

「…お前料理出来たんだ」

 

「だからどういう意味!?」

 

ポカポカと叩いて来る鈴谷を実に面倒臭く流して、立ち上がった。

 

「とりあえず着替えるから」

 

「はいはーい」

 

言うと素直に出て行く鈴谷。着替えてその後に俺も部屋を出る。コタツの上には本当に朝食が並んでいた。

 

「ほら食べて食べて」

 

「へぇへぇ。いただきます」

 

あむっとハンバーグを一口。ていうか朝からハンバーグとか重すぎるだろ…。

 

「どう?美味しい?」

 

「まぁインスタントのハンバーグよりは美味いな」

 

「褒め方が微妙過ぎる!」

 

や、元々ハンバーグとかそこまで好きじゃないんですよね…肉とか鶏一択だし。

 

「まぁアレだ。普通に美味いんじゃねぇの?あと俺はハンバーグにソースもケチャップも掛けないから」

 

「えー…味しなくない?」

 

「余計なもんがつくくらいなら味なんていらん。あーでもサラダだけはソース掛ける」

 

そんな感じで朝飯を食い終わった。

 

「さぁて!仕事とっととやっちゃおー!」

 

あの、やる気満々なとこ悪いんだけどさ…。

 

「今日はその…有休取ったからオフなんだよね…」

 

吹雪と白雪を遊園地に連れて行く約束しちゃってさ。

 

「えぇ…じゃあ鈴谷さんは…」

 

「まぁ、そのなんだ…ドンマイ!」

 

あーあ…あからさまにガッカリしてるよ…。なんでガッカリしてんの?

 

「扶桑さんじゃないけど、不幸だ…」

 

「別にいーだろー。てかなんで俺の秘書なんてやりたがるのかねぇ」

 

「そりゃあ、もちろん提督が好きだからでしょ?」

 

「は?」

 

「え?」

 

今なんつったこの子?聞き間違いか?てか自分で言っといて顔赤くすんなよ。

 

「ご、ごめーん!鈴谷用事思い出しちゃった!またね!」

 

そのままどっかに逃げるように走り去って行った。どういことなんだ…。まぁいいや。明日、また秘書艦になるよう加賀さんに言っとくか。

で、鎮守府の前に出ると、吹雪と白雪が待っていた。

 

「あれ?鈴谷さんいないんですか?」

 

「え?なんで?」

 

「今日の秘書艦でしたから、てっきり一緒に来るものかと…」

 

なんだ、いて良かったんだ。

 

「誘った方がいいの?」

 

「そりゃあ、秘書艦って決まった時、すごく喜んでましたし…」

 

ふーん…仕方ないか。

 

「ちょっと待ってて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私(鈴谷)は部屋に転がってた。ついうっかり口が滑っちゃった…てか滑るどころか横転して大事故になったよ…。だから雪道走る時はチェーン付けろって言ってたのに…。あぁー!明日からどんな顔して提督に会えばいいかわからないしー!ベッドで足をバタバタさせてたらノックが聞こえた。

 

「す、鈴谷さん。いますか?」

 

「て、提督!?ど、どどどどーしたの?」

 

「なに、ドードリオ?トライアタックでもすんの?」

 

「言ってないから!な、何か用?」

 

「あーえーっと、吹雪と白雪が一緒に遊園地行こーって言うんだけど、どーする?」

 

「それって、提督も一緒?」

 

「そりゃねぇ」

 

「行く!待ってて!」

 

やった!よし、今すぐ準備しないと!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

車に乗り込み、後ろに吹雪ちゃんと白雪ちゃんが座って私は提督の隣の助手席に座った。いざ、出発!

 

「いやー提督も最近は随分と私達と仲良くしてくれるじゃん」

 

「そうか?」

 

「うん。最初の頃なんて会話してる所見たことないもん」

 

「そりゃ話し掛けなかったからな。そういう勇気なかったし」

 

「え、なんで?」

 

「中二の頃だったかな…馴れ馴れしく女子に話し掛けたら『なんなの?』って真顔で言われて以来、絶対に自分から話しかけなくなったな…」

 

「そ、そう…なんかごめんね…」

 

「いや、もう慣れた。まぁ艦娘は比較的には話し掛けやすいな。まぁ去年の11月から急に話しかけてくるようになってビビったけど。陽炎と不知火がきっかけだったか…」

 

「あー…」

 

艦娘全員で攻略しようとしてたとは言えない…。

 

「今だに食堂だけは行けないけど」

 

「えーなんで?」

 

「や、高校時代にさ。一人で食堂で飯食ってたんだけど…周りからの『あいつ、友達いないんじゃね?』的な視線が身体中に突き刺さってさ…」

 

「ひ、一人で食べなきゃいいじゃん!こ、今度から鈴谷も一緒にいてあげるから!」

 

「………」

 

「それに、鎮守府のみんなは提督と御飯食べたがってるよ!だからおいでよ!」

 

「……うん」

 

うちの提督の過去はあまり詮索しない方がいいかもしれないなー…。気が付けば遊園地に到着していた。

 

「わぁー!初めて遊園地きました!」

 

「やりました!」

 

と、はしゃぐ吹雪ちゃんと白雪ちゃん。その後ろを歩く私と提督。なんか、こうしてると夫婦みたいだなぁ…って、なにバカなこと考えてるの私!?

 

「なぁ、なんかこうしてるとさぁ…」

 

えっ!?提督も同じこと考えてた!?

 

「俺が誘拐したみたいに思われそうで早急に帰宅したいんですが…」

 

あぁ…そうだよね。流石提督だなぁ…としか言いようがない台詞だった。まぁ確かに提督が言うのも一理あるっていえばあるかもしれない。私は小さく深呼吸すると、提督の腕に飛び付いた。

 

「す、鈴谷さん!?」

 

「ほら、こうすれば少なくとも誘拐には見えないんじゃない?」

 

「顔赤くするくらいならするなよ…」

 

「う、うるさい!いいからなんか乗ろうよ!」

 

「司令官!あれ乗りたいです!」

 

吹雪ちゃんが指差す先はジェットコースター。

 

「おっ!いいねぇー!行こうよ提督!」

 

「俺は遠慮しとく。三人で乗ってきな」

 

「……怖いの?」

 

「は、はぁ!?ぜ、ぜんぞん怖くなんきゃ…怖くなんかねねねねぇよ!」

 

噛みまくりだった。

 

「へぇ〜提督ってこういうのも怖いんだぁ〜」

 

「だから怖くないけど気持ち悪くなるじゃん。だから乗らないだけ」

 

「司令官!一緒に乗りましょうよ!」

 

「そうですよー!」

 

吹雪ちゃんと白雪ちゃんに腕を引っ張られ、仕方なく提督は列に並んだ。私の隣には提督、その後ろに吹雪ちゃんと白雪ちゃんが乗っている。

 

「あの…提督、手握り過ぎ…痛いんだけど…」

 

「わ、悪い…」

 

「あの…本当に大丈夫だから。死なないから…」

 

「……………」

 

ダメだ。全く聞いてないこの人。と、思ったらジェットコースターが動き出す。ホントに大丈夫かなこの人。

 

 

 

 


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