と、いうわけで蒼龍とお出掛け。
「どこ行きます?」
「任せる」
「こういう時は男性がエスコートしてくれるものですよ」
「面倒、パス」
言うと呆れ顔になる蒼龍。そんなこと言われたって面倒なもんは面倒なんだよ。そもそも、今回は金がないからどこにも行けない。
「じゃ、私の洋服選びに付き合ってください」
「荷物持ちだろ?パス」
「ち、違いますよ!提督に選んでもらいたいんです!」
「ふーん…まぁ俺じゃ役に立つか分からんが手伝うよ。大抵のものは似合うって言ってやるから」
「それ服屋の店員並に役に立たってないですよ…」
服屋に出発した。
「提督、これどうですか?」
「んーあーアレだ。うん、めちゃんこ似合ってます」
「さっきからそればっかじゃないですか…」
だから最初に言ったろ?基本的には褒めることしかしないって。
「つっても元がいいからなぁ。なに着ても似合うっていうか…」
「へ?今なんて?」
「や、なんも言ってないけど?」
あっぶねぇ!ついラノベ主人公みたいにサラッと褒めるとこだったぜ…あんなこと現実で言ったらドン引きどころか社会的に抹殺されるっつの…。蒼龍は顔を赤くしながら俯いてるけど聞こえてないよね?
「じ、じゃあじゃあ、提督が選んでよ!特に似合うやつ」
「えー…じゃああのワンピースとか?海賊王になれそうじゃね?」
「えぇ…まぁいっか着てみますね」
テキトーに選んだとは言えない。蒼龍はそれを手に取って試着室へ。まぁ、あれだ。似合うといいね。試着室の前でパズドラやりながら待つ。だが、途中で後ろからドンッと押された。
「うおっ」
「あっすいません」
本来ならこの程度、倒れることもなかった。だが、蒼龍の下駄?を踏んでしまい、バランスを崩した。結果、蒼龍の試着室へ倒れ込んだ。見上げると、若干、青みの掛かった下着姿の蒼龍。俺の姿を確認するなり、顔をみるみる赤くした。蒼龍なのに。そして、口が悲鳴の形に変わると共に足を後ろに大きく引いた。軸足は俺の顔の横に置かれている。マジでラノベの主人公か俺は。
顔を真っ赤にしてプンプン怒りながら俺の前を歩く蒼龍。その後を気まずげな表情…てか実際気まずい。そんな感じで歩いている。
「そ、蒼龍さん…」
「つーん」
そのつーんってなんなの?虫除けスプレーでも直で嗅いだの?
しかし、気まずい…いや今回は事故だろ。なんて口が滑っても言えない。怒ってる奴にどんな正論をぶつけても無駄だ。だから、黙ってるかひたすら謝るか向こうの言うことを肯定してればいい。そうやって俺は怒られた時、すごしてきた。だが、今回は向こうがなにも言ってこない。これはどうすればいいか分からん…。
「そ、蒼龍さん…いや蒼龍様…」
「…………」
「いや、蒼龍女帝?」
「ふざけてるの?」
「や、ごめんなさい!」
くっ!ついボケに逃げてしまう…。耐性がないことにはとことん弱いのが俺だ。
「その、蒼龍…すいませんした…」
今思うと蒼龍ってリオレウス亜種みてぇだな…っていかんいかんいかん!謝らないと!
「や、わざとじゃないんですよ…でもその…や、とにかくごめんなさいでした」
「反省してますか?」
「や、そりゃもう。むしろ反省しかしてないです…」
「じゃ、特別に許してあげます。その代わり、今度はお金ある時にまた二人でデートして下さいね」
「了解です!……え?」
「帰りますよ」
なにを要求されんだ…ドギマギしながらも鎮守府に戻った。
このあと、一航戦と五航戦にめちゃくちゃ爆撃された。
執務室。仕事はもうほとんど終わっていたようで、今はのんびりしている。はずだった。
「そうだ提督さん!また頭撫でてよ!」
「えぇー…あれ手ェ疲れるんだけど…」
反論はしてみるものの、勝手に俺の膝に頭を置く瑞鶴。言われるがまま撫でてやった。にこにことご機嫌な瑞鶴。お前はさっきそれで他人に見られて顔真っ赤にして爆撃して来ただろ。学習しろバカ。
「提督さん手ぇ止まってるー」
面倒だなマジで。翔鶴となこれ毎日やってあげてんのかな。可哀想に…。
「じゃ、そろそろ飯にしよう。腹減った」
「もちろん、食堂だよね?」
「なわけないでしょ。あんな精神破壊場に誰が行くか。外に食いに行くんだよ」
「え?ふ、ふたりで?」
「ごめん…一人で行くわ…」
「ち、違うよ!提督さんのトラウマ的な意味じゃないから!」
「だといいんだけどね…」
危なかった…ついうっかりトラウマ掘り返す所だった…。で、出発。しようと思ったのだが、「私服に着替えて来る!」とかなんとかで外で待ってる。
「お待たせー!」
やっときたか。
「さて、行くぞ」
「あの…どうかな」
「なにがだよ。主語術語目的語使って話せっつーの」
「はぁ…なんでもない」
なんなんだよ…。で、二人でサイゼに行った。もちろん、男を見せて奢りである。
食べ終わって外に出ると雪が積もっていた。あれ?なんでこうなってるの?
「わぁ!すごーい!なんかロマンチックじゃない?」
「雪が降ってるとロマンチックなのかよ。北海道行ってこいよ」
「うわーつまんなー」
うるせ、そもそも俺は雪が嫌いなんだよ。高1の時、雪食べて腹壊してから嫌いなんだよ。なんてしみじみ思い出してたら、顔面に冷たい何かが直撃した。
「いえーい!提督さん死亡!」
「なに?私と戦争したいの?」
「五航戦の力、見せてあげるわ!」
よろしい、戦争だ。
「悪かったって…やり過ぎたってば…」
「提督さんのバカァ…ぐすっ」
ついテンションが上がってフルボッコにしてしまった…今は私室で慰めてる。だって艦載機に雪玉持たせて爆撃してくんだぜ?そりゃ、やり過ぎるっつの…。
「次は絶対にボコボコにしてやるんだからぁ…」
あ、次があるんだ…その時はやられてあげよう。高二の時に雪合戦という名のイジメを受けてたからやられる振りは上手いんだな俺は。
「ほら、お風呂入って来い。風邪引くぞ」
艦娘って風邪引くのかな…。どっちでもいいけど。
「…………に」
「は?」
「一緒にって言ったの!」
「な、なにを、ですか…?」
「お風呂!」
「ほ、本気で言ってんの?」
「じゃないと翔鶴姉に言いつけるから」
仕方ない…。
「俺先に入ってるからパジャマとか持ってきな」
「うん…」
翔鶴妹とまで一緒に入ることになるとは…まぁ妹は体型駆逐艦と変わらないし、問題ないでしょ。
てなわけでさっさと頭と体を流して湯船に浸かる。
「あぁ〜…」
そんな声が漏れた。まぁ外寒いし今日は疲れたしで中々にしんどかったからなぁ…お疲れ、俺。今度、缶コーヒー買ってやるからな…。なんて考えてると、ギィィッと風呂場のドアが開く。
「お、お待たせ…」
髪を降ろした瑞鶴。タオルで前を隠し、少し照れたように顔を赤くして目を背けていた。いや照れるなら一緒になんて言うなよ…。
「せ、背中流したげよっか?」
「いや俺もう洗ったし。さっさとお前も洗っちまえよ」
「じ、じゃあさ…私のを、流してよ…」
「はいよ」
「ちょっ、軽っ!す、少しは躊躇いなさいよ!」
そんなこと言われてもな…。
「だってお前、中破した時と格好変わんないじゃん。だから、なんつーの。馴れた?」
「あ、アレ私だって恥ずかしいんだからね!?ていうか馴れたってどういう意味よ!」
「ほら、例えばどんなに俺の姉がかわいくても全裸見て欲情とかしないじゃん?それと同じ感じかな」
「もう、いいわよ…いいから背中流して…」
そんなガッカリすんなよ…意外とそういう中は大切だと思うよ俺。まぁ瑞鶴の場合は姉っていうより妹かな。明らかに俺より歳上だけど。