もし、俺が提督だったら   作:単品っすね

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焼肉

 

 

 

要約すると、俺の罰は弓道場の掃除だった。ていうか、提督が艦娘に罰喰らうってどういうことなの?まぁ俺が悪いんだけど。

しかも、見張り役に一航戦、二航戦、鳳翔さんの黄金の壁に囲まれ、休みなしで働かされた。ここはブラック鎮守府だったのか…。で、ようやく終わり、へろへろになって執務室へ。

 

「お疲れ……」

 

その瞬間、横に飛んで来る艦載機。

 

「え……?」

 

「テートク……」

 

見ると、涙目のヲ級がこっちを睨んでいた。大井もカスは死ねという目でこっちを見ている。北上はソファーで爆睡。

 

「どうした、ヲ級…」

 

「ヲ級ちゃんは一人で寂しかったんですよ提督」

 

「………」

 

で、足にしがみ付いて来る。あーあ…泣いちゃったよ。まぁ深海棲艦だし自分以外は別の生物だから不安にもなるか。

 

「悪かったな…」

 

とりあえず頭を撫でてやった。すると、そこから登ってきて頭の上にちょこんと乗るヲ級。

 

「モウハナレナイ」

 

「はいはい…」

 

すると、今度は大井だ。俺の胸ぐらを掴む。

 

「それで提督?北上さんと二人きりでとこに行ってたんですか?」

 

にこにこ笑顔だが、それが逆に怖い。や、ホントに怖い。思わず土下座しそうになるが、そしたらヲ級ごと床に叩きつけてしまうのでなんとか堪えた。

 

「…すいませんでした」

 

「行くなら私も連れてってくれればいいのに……」

 

「え?」

 

「な、なんでもありません!とにかく、さっさと仕事やっちゃいますよ!ほとんど私と北上さんがやったんですから!」

 

「そこで寝てるけど…あいつもやったの?」

 

「書類を五枚ほどやってもらいました」

 

「少なっ」

 

「なんもやってない人の台詞ですか?」

 

「ごめんなさい…」

 

はぁ……まぁいいか。どうせ大した仕事も残ってないだろうし。

 

「そういえば昼飯食ってないんだけど」

 

「抜いてください。誰がここまで仕事減らしたと思ってんですか」

 

ですよねー。知ってました。

 

 

 

 

 

 

そのまま仕事は進み、夜の七時。

 

「おわったー!」

 

「オワッター!」

 

「はい、お疲れ様です」

 

にっこり微笑む大井。やっぱこの子いい子なんだなぁ。レズだけど。

 

「では、食堂に行きましょう。晩御飯まだですよね?」

 

「えー、外で良くね?」

 

多少なりとも艦娘と話せるようになったと言ってもあの空気は耐えられない。周りはみんな仲良いのと話してるのに俺だけ一人なんだぜ?

 

「ダメです。そもそも、外食ばかりでは体に良くありませんよ?」

 

「まぁ確かに成人病とか怖いけどさ、大井は北上と食うんだから関係ないだろ?」

 

すると、深くため息をつく大井。なんだよ……。

 

「いいから行きましょう?」

 

大井は北上を起こすと、俺の手を引いて食堂へ向かった。

 

 

 

 

 

食堂。今日の飯は焼肉だった。一つの席に六人ほどで座って、そこでそれぞれ食いたい肉を焼くスタイル。ちなみにうちの艦隊は97人。俺の知らないうちに焼肉の機材が16個はあるってことになるんだがどういうわけなんだろうか…。

 

「司令官!一緒に食べよう!」

 

一番乗りに皐月が片腕に抱き着いてくる。それに反応して「ずるい!」「私も食べたいわ!」「なのです!」「提督の隣に座るのは私デース!」などと声が上がる。

 

「あの、やっぱ俺部屋で…」

 

『ダメッ!』

 

ですよねー知ってました。で、30分掛けてジャンケン大会が始まり、結果は俺、大井、長門、陸奥、曙、天龍となった。最後まで「提督は私と食べるネーっ!」とか聞こえたが、うん、まぁ幻聴だろ。ちなみにヲ級は最上の所。

 

「まったく、クソ提督!」

 

「ふむ、焼肉とは楽しみだ!」

 

「あらあら〜」

 

「よっしゃぁっ!食うぜ!」

 

まぁみんな楽しそうでなにより。

 

「あんた!なんで私の隣に座ってんのよ!」

 

「や、俺が先に座ったらお前が隣に来たんだろ?」

 

「はぁ?ウザいなぁ…」

 

お前のがウゼェよ…てかどんだけ俺嫌われてんだ。俺がなにしたってんだよ。なにしもしてないからかな?

 

「おい提督!いいからさっさと食おうぜ!」

 

「え?あー…じゃあみんな自分で好きなように食べてくれ」

 

「違うわよ。天ちゃんが言いたいのはいただきますをやれってことでしょ?」

 

「陸奥!天ちゃんって言うんじゃねぇ!」

 

天ちゃんか…みんなあだ名を付けるのが上手いなぁ…ちなみに俺が考えたのはリヴァイアサン。ホッブズかよ。

 

「じゃ、いただきまーす」

 

それに合わせて、他の机の艦娘も「いただきまーす!」と復唱する。

 

「やっほーう!食うぜ!超食うぜ!」

 

「天龍さん!それまだ生よ!」

 

「そんなもん関係ねぇ!」

 

あぁ、大井は大井で大変そうだなぁ…。

 

「提督〜はい、あーん?」

 

「や、あの陸奥さん!自分のペースで食べたいので結構です!」

 

「そ、そうよ!そのクソ提督を甘やかすと碌なことがないわ!」

 

そんな曙の制止も無視してグイグイと肉を押し付けて来る陸奥。あの、胸が当たってるんですが…。

 

「当ててるのよ?あらあら〜?」

 

「陸奥、提督を余りからかうな」

 

おお、流石姉。妹が痴女になり掛けた時は止めるもんなんだな。

 

「提督はこのあと私と手合わせするのだ。余り疲れさせるな」

 

違った。「俺がそいつをやるから手を出すな」スタイルだった。なにこの姉妹。

 

「クソ提督!口より手を動かしなさいよ!」

 

「いや食事中は平行して行うべきだろ」

 

「屁理屈言うな!」

 

あぁ…疲れる席だ…。なんでこいつらこんなに元気なんですか…。すると、陸奥が立ち上がり、曙に耳打ちした。それをきくと、顔を赤面する曙。

 

「な、なにを…私がそんなことこのクソ提督に…!」

 

「じゃあどうなっても知ーらぬいっと」

 

「お呼びでしょうか」

 

「あ、あぁうん…なんでもない」

 

なんだよしーらぬいって。ヴェールヌイみたいだ可愛いな。と、思ったら肉を持って口元まで運んで来る曙。

 

「く、クソ提督。あーん…」

 

「………は?」

 

顔を真っ赤にしてプルプル震える曙。や、嫌なら無理しない方が…。

 

「あー!曙がとうとうご主人様にデレてる!」

 

突然、漣が立ち上がり、それを気に周りも「おぉー!曙ちゃん成長してる!」「またライバル出現ですね」なんて声をあげる。それを聞いて曙はしまった!といった顔になる。

 

「あの、曙?」

 

「は、早く食べなさいよバカー!」

 

その箸が目に向かって直進。

 

「うぉっはぁっ!め、目に肉がァっ!」

 

「あっ」

 

「て、提督大丈夫ですか!?」

 

「あらら〜…」

 

な、なんてことしやがる…今までどんなモンスターでも目で物を食べるやつはいなかったろ。目から鯨を出す奴はいたけど。そのまま俺は長門に背負われて医務室へはこばれた。

 

 

 

 

 

 

 

「だから、目に肉が突き刺さって無傷とは提督の体はどうなっているんですか?」

 

執務室、一応ソファーで横になってる俺に大井が言った。一応、膝枕されているのだが、もう翔鶴の時に馴れた。

 

「無傷じゃねぇよ。涙がまだ止まらねぇんだから…」

 

「だからそれだけで済んでるのがおかしいんですって…」

 

そこでノック。陸奥と曙が入ってきた。

 

「提督、いますか?」

 

「い、いるけど?」

 

で、俺の前に立つ。

 

「その、ごめんなさい。ク…提督」

 

「私からも謝るわ。私がやったげれば?って唆したんだから」

 

「や、別に大丈夫だから。無傷だから」

 

そうは言う物の完全にショボくれてる曙。仕方ねぇなぁ…。曙の頭を撫でてやる。

 

「ちょっ…」

 

「大丈夫だから。お前は飯食っといで」

 

「でも…」

 

「平気だから。ほら、早くしないと赤城辺りに肉全部食われちゃうぞ?」

 

そう言うと、若干ホッとした表情になり「仕方ないわね」と、陸奥と食堂に戻って行った。

 

「大井もいいですよ戻って」

 

「提督は戻らないのですか?」

 

「食欲ないからな」

 

それだけ言うと、出口に向かう大井。

 

『オマエハ、ダレダ?』

 

「うぉあっ!?」

 

そんな声が聞こえた気がして振り返る。だが、後ろには壁があるだけだ。

 

「………」

 

「どうしました提督?」

 

言われて振り返ると大井が怪訝な顔をしている。

 

「や、なんでもない…」

 

「そう言えば今朝も様子がおかしかったですよね?」

 

ゲッ忘れてた。

 

「どうかしたんですか?」

 

「な、なんでもないから…」

 

「言ってください」

 

「そーだよー」

 

いつの間にか大井の後ろに北上が立っている。

 

「言っちゃいなよ提督。誰にも言わないからさ〜」

 

「……笑わない?」

 

「笑いません」

 

仕方ないか……。

 

「昨日、驚かされてから…ちょっと頭から離れなくなってて…夜もあんまり寝れなかったり、する…」

 

言うと、二人は「は?」って顔をする。

 

「や、別に怖かったわけじゃないからね?ちょっと驚いただけで…」

 

すると、二人の肩が震える。ちょっ…笑うなって言ったじゃないですか…。と、思ったら北上がガバッと飛びついて来る。

 

「もぉ〜!可愛いなぁうちの提督はぁ!」

 

「ちょっ!やめろって北上!」

 

「ほれほれ〜怖かったならお姉さんが慰めてあげよーう」

 

言いながら頭を超撫でて来る。ヤバイって!大井に殺される!と、思ったら大井も頭を撫でてた。

 

「まったく提督は怖かったならハッキリ言ってくれればよかったんですよぉ!ほらほら大丈夫ですかぁ?」

 

「ちょっ!ごめんなさい!なんでか分からんけどごめんなさい!」

 

「よし分かった!今日はこの北上様と大井っちが一緒に寝てあげよう!」

 

「は、はぁ!?」

 

「わかったらさっさとお風呂入って歯磨きしてきな〜」

 

「や、やだよ!」

 

「断るんならまた脅かしてあげてもいいんですよ?」

 

コイツら……仕方ないか。ヲ級の世話は最上に任せよう。

 

「よ、よろしくお願いします…」

 

「うっはー!」

 

その一言でまた飛び付いて来る。あーあ…これからどうなるんだ俺。

 

 

 

 

 

 

 

言われた通り、風呂と歯磨きを済ませて北上の部屋に向かった。一応言っとくけど、球磨型は熊、猫、クロボンとハイパーズに部屋が別れてる。

で、消灯時間までゲームやって、寝ることになった。のだが、

 

「なんでお前ら俺を間に挟むんだよ…」

 

「あ、襲いとかそういのはないからね」

 

「誰が襲うかよ。俺はスパイとして入って敵の情報を全部バラした上で、敵には嘘の情報を流して内部的に壊滅させる方が好きだ」

 

「や、あのそっちの襲うじゃなくて…もういいや」

 

そのまま目を閉じる。開いてると二人の服の隙間から谷間やなにやらが見えてヤバイ。と、思ったら北上が俺の片腕に抱きついて来る。

 

「ちょっ!北上さん!?」

 

「ほれほれ〜今夜は寝かさないぞ?」

 

「お、大井助けて!」

 

「私も!」

 

「な、なんでだよぉっ!」

 

で、二人がほれほれとからかってくる。あぁ…ホントに寝れなさそう…。

 

 

 

 


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