あれから一週間、俺の姿が戻ることはなかった。鎮守府内で加賀さんや榛名が念仏を唱え始めたらしいので、捜索が始まっているのだ。そんな中、俺は多摩の膝の上でたい焼きの皮を貰いながらごろごろ言っていた。ちなみに妹は球磨の膝の上。
「なう」
「ん?どうかしたかにゃ?提督」
ちなみに球磨型にはバレてる。ていうか全員が全員見抜きやがった。こいつらどうなってんだよ。本当に動物園なの?
「でもどーするにゃ提督?みんな提督がいないからいかれ狂ってるにゃ」
「なー(訳:そんなこと言ったって仕方ねぇだろ。俺だって戻りたいけど戻れねぇし)」
「特に金剛型はヤバイにゃ。全員が全員、深海棲艦を素手でボコボコにしてるにゃ」
「なー(訳:え、なにそれ怖い。あいつら本当にヒト?)」
「提督の言えた台詞じゃないにゃ」
ていうかこいつらなんで俺と会話出来てるの?
「呑気なこと言ってる場合じゃねぇ!」
バンッ!と立ち上がったのは木曾だ。
「もう一週間だぞ一週間!この鎮守府の切り札が2人もいなくなってんだぞ⁉︎」
「みー(訳:まぁ落ち着きなよ木曾。あたし達切り札ってほどじゃないし、二号ちゃんもいるじゃん)」
「そうだクマ。木曾は一々騒ぎ過ぎクマ」
妹と球磨が言う。
「そうじゃなくて!その他にも色々問題が……っ!」
そこでガチャッと開く扉。猫を抱えた北上と大井だった。
「やっほーみんなー。なんか猫拾ったよー」
「みー♪(訳:お兄ちゃん、お姉ちゃん!あたしも猫になっちった)」
「」
「」
え、マジで?これはヤバくね?
「にゃあ(訳:え?マジで?それはちょっ…ヤバくね?)」
「お、おいどうすんだよ!提督全滅したぞこれ!」
「なーう(訳:だ、大丈夫だよ。深海棲艦だってここに攻めてきてるわけじゃないし……ほら、うちの鎮守府ガンダムの等身大あるし……)」
なんて言ってると、放送が聞こえた。
『鎮守府内に深海棲艦侵入!直ちに迎撃に出て下さい!繰り返します!迎撃してください!』
『………………』
俺たちは言葉を失った。
鎮守府廊下。そこにヲ級とレ級が歩いている。そこに俺は出会した。
「フーッ!(訳:出やがったな!)」
「ナンダ、外ノロボットハハリボテダシ、中ニハ猫ナンテイルノカ」
「私達ハ何二ビビッテタンダ」
や、ヤバイヤバイヤバイ!こんな奴らに今勝てるわけねー!俺が焦ってる間に、殴りかかってくるレ級。
「死ネェーーーーッッ‼︎‼︎」
「にゃぎゃあーーーッッ‼︎‼︎(訳:いやなんでだぁーー!)」
ズガンと音がした。だが、俺は気が付けば二本足で立ち、両手でそのパンチをガードしていた。
「ナニッ⁉︎」
「にゃふぅ〜(訳:てんめぇ〜、あんま舐めてんじゃねぇぞ……お前の目の前にいる猫はなぁ……!)」
で、相手のパンチを押し返して俺は飛んだ。
「なーうっ‼︎(訳:世界で一番強ぇ、猫だコラァァァッ‼︎)」
そのまま俺は右手に窒素を集めながら壁を蹴ってレ級に接近する。
「なうっ!(訳:超窒素パンチ!)」
で、レ級とヲ級をまとめてぶっ飛ばした。そのまま空中で回転しながら着地。
「にゃーご(訳:ふう、あー疲れ……)」
「どういうこと?」
声がして振り返ると、加賀さんが立っていた。げっ。今の戦闘見られたのか?
「あんなの、提督にしか出来ない技よね……」
や、やばいやばい!なんとかして誤魔化さないと!とりあえず俺はその辺で寝転んでゴロゴロ言ってみた。だが、ボンっと音がして俺は元に戻る。
「あっ」
「」
世界が、静止した。
「つまり、なんやかんなで猫になってたというわけね」
「そ、そうです……」
妹と一緒に正座させられてる。不思議と二号ちゃんだけ怒られてないし。
「まぁそれは不可抗力ってことでしかたないわね。今回のことは怒りません」
おぉ!加賀さんに許された!これはもう世界に許されたのと同じ………、
「ただ、あなた達、よく私のこと引っ掻きに来たわよね?」
ギクッと俺と妹の肩が震え上がる。
「つまり、私をからかっていたということでいいのかしら?」
ゴゴゴゴッとジャンプのような音がした。世界で一番恐ろしい、もはや霧氷情の加賀さんだ。
「覚悟は出来てるのかしら?」
俺と妹は一週間、加賀さんのありとあらゆる雑用で許された。