ジップロックの中に携帯を入れて、俺は風呂でパズドラをやっていた。風呂沸かしてねぇのになんで湯船にお湯溜まってんだとかそういう事言うなよ。もちろん、俺の風呂なだけあって風呂場は汚い。入浴剤の中にMSのオモチャが入ってるやつをコンプリートしたため、ジムやらズゴックやらが溢れかえってる。
「し、失礼します……」
ギイィィィッというボス部屋のような音と共に入ってきたのはタオル一枚の榛名だった。
「あら、何してんの?」
「は、榛名は大丈夫です!」
「うん。大丈夫じゃないよね。悪いこと言わないから病院行って来なさい」
「な、なんでですか!」
いや分かれよ……あきらかにトチ狂った奴の行動だぞ。と、思った矢先、また同じようなドアの開く音がした。
「やっぱりそういうことね榛名」
「ゲッ。加賀さん」
「加賀さん違うからね?これは榛名が勝手に入ってきてだな……ってなんでタオル一枚?」
「分かっています。で、提督。どちらに背中を流して欲しいですか?」
は?なにその選択。
「あの、おっしゃる意味が分からないのですが……」
「あら、こんな簡単な問いも分からないの?私と榛名があなたの背中を流すと言っているの」
「や、俺もう流したし」
排水口にはおそらく黄色いペンキが垂れ流れていることだろう。
「ていうかむしろ榛名が今黄ばんでるんだからそっちを流してやれよ」
「いいから流されなさい」
何言ってんだこの人。
「そんなこと言われても……俺はどっちでもいいし…てかどうでもいいし……」
「いいから選んでください。榛名は提督を信じています」
「おい、それどういう意味だ。まったく意味分からんぞ」
だが、言っても聞くはずもなく、二人は無言の圧力を俺に掛けてくる。
「……………」
これは、あれだな。俺はどこから取り出したのか知らないが、音叉音角を取り出し、チリーンと鳴らした。で、響鬼になる。二人が唖然としてる中、俺は窓から脱走した。
今はとりあえず、マッハ20で部屋のパンツとズボンとTシャツだけ取って着替えて出て行った。で、廊下を歩いてると、すれ違った奴と肩と肩がぶつかった。
「あっ悪い」
「いやあたしこ……」
摩耶だった。その瞬間、お互いにメンチを切り合う。
「てめっ痛かったんですけど?肩外れかけてんですけど?」
「はぁ?お前がぶつかってきたんだろうがコラ」
「てめっ仮にも俺の部下だろうが。だったら避けるなりなんなりしやがれこら」
「上司だったら部下に気を使うくらいしてみやがれ。そんなんだから舐められるんだろコラ」
「なめられてんのはテメェだろ。天龍の次に駆逐艦に可愛がられてるの気付いてねぇのか?」
「可愛がられてるのとなめられてんのぁ、別だろうが。その違いもわからねぇとか、小学生からやり直せ。ついでにトラウマ掘り返して恥ずかしい思いしやがれ」
「ガキに可愛がられてる時点で周りから見たらなめられてんだろうが。その程度の判断もできねぇのかテメェは……」
と、そこまで言ったところで、俺はピタッと止まる。
「? どうした?」
俺は無言で手を胸前まで挙げた。手錠が着いている。そして、連鎖的に摩耶の手も上がる。
「なんだこれ?」
「おい、なんの真似だ」
「こっちが聞きたいくらいなんだが……」
すると、摩耶と一緒にいたのか鳥海がニコニコして立っている。
「お前か。何してんの。てか何してくれてんのお前?」
「おい鳥海。なんの真似だ。早くこれ外せ」
だが、ニコニコしたままなにも言わない。そのまま立ち去った。
「おい鳥海!待てコラ!」
「何のつもりだよおい!」
「あたしが怒ると面倒なのは知ってるよな!?鳥海!」
「鳥海さん!?戻ってくるんだよね!?バードスィー!?」
「鳥海!?てめぶっ殺すぞ!?後でブチ殺すぞ鳥海!?」
「ちょおぉぉかいさぁぁぁん!分かった!新しい眼鏡を買おう!高いの買ってやる!ほいでおしゃれなの!鳥海ぃぃぃっっ‼︎‼︎」
だが、戻って来なく、俺と摩耶はその場で取り残された。