夜中の3時頃。ヲ級に叩き起こされた。
「……トク。テートク」
「……なに」
ふざけんなよお前。早寝遅起きは俺の日課だってのによ。俺に恨みでもあんの?
「オシッコ……」
「は?」
よく見ると目が潤んでる。え、これヤバイ奴じゃ…。ヲ級を抱えて私室のドアを蹴り飛ばし、走ってトイレへ向かった。あぁ…執務室のドアもまだ直ってないのに…。
なんとか男子トイレ(俺しか使ってねぇから個室しかない)に間に合い、便器にヲ級を乗せた。そして、天使の微笑み。女の子がトイレの後にそんなスッキリした表情見せるのはよくないと思うぞ。帰りは歩いて戻る。
「だから寝る前にトイレ行っとけって言ったろ?」
「ゴメンナサイ……」
まぁいいか…。私室に入り、ヲ級を横に寝かせて俺も布団に入る。なんで夜中にこんな疲れなきゃいけねんだ…。気が付けば隣からすぅすぅと寝息が聞こえる。もう寝たのかよ…早くね?さて、俺も寝……
ぎぃぃぃ………
………なんの音?確か執務室も私室もドア吹き飛んでたよな…。
バタンッ!
「…………」
や、別に怖く無いからね?幽霊とかそういうのは中三の時に克服したからね?ただちょっと驚いてるっていうか、この手の怪奇現象的ななにかに触れるのは始めてっていうかね?ていうかシーズン違うでしょう。今もう冬になりかけてるんだよ?てめぇは黙って冬眠してろってんだバカヤロー。
ぎぃぃぃ………
「……………」
や、別に怖くないからね?ただちょっといい加減この手の悪戯にイラっときただけだから。どうせ多摩やら球磨のイタズラだろ?お兄さん分かってるからさっさと出ておいで?今なら怒らないから。
バタンッ
「…………」
おい、いい加減にしろよマジで。怖くねぇっつってんだろうが。幽霊なんてこの世にゃいねぇんだよ。そういう風になってんだよ世の中。てかお化けなんていたらもう深海棲艦どころじゃないだろ。そっちを除霊すべきだろ除去すべきだろ駆除すべきだろ。
別に正体が分からないからって怖いわけじゃないけど一応、様子見に行っとこうかなー…。
「……誰だ?」
チラッと見ると、髪の長い女の子が前髪の隙間から俺を射殺すようにこっちを見てい…、
「…………オマエハ、ダレダ?」
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁっっ‼︎‼︎誰だてめぇゴラァァァッッ‼︎‼︎‼︎」
「なーんちゃって、実はこの北上さ…」
「死ねやゴラァァァァッッ‼︎‼︎‼︎」
「え?ちょっ!提督落ち着いt…」
問答無用で右ストレート。だが、かわされた。
「マズイわよ!とめないと!」
「私の北上さんによくも…」
なんて声がした。その聞き覚えのある声でなんとか我に帰る。
「な、なに?大井に、夕張?」
「だから落ち着いてって!私だよ!北上様!」
お化けの正体は北上だった。え、なにこれいじめ?ポカンとしてると、ラフな声で北上が言った。
「いやぁ、提督って普段静かだけどお化けとか苦手なのか試したくなってね」
「私がいい感じの効果音を作って脅かしてみたんです」
「北上さんのメイクは私がやりました」
なるほどな…。
「お前ら……」
「ごめんごめん。でも提督だって私のこと殴りかけたんだからチャラってことで」
この野郎…マジで怖、いや怖くはなかったな。少し驚いただけだなうん。
「でもwて、い、と、く……『死ねやゴラァァァァッッ‼︎‼︎』って……www」
「確かに、ヒビりすぎかも…」
笑う北上と夕張、それを苦笑いで見ている大井。うるせぇな…仕方ねぇだろ。別に怖くはないけどね?
「こら、いつまで起きてるんですか?」
声が掛かった。寝巻きの赤城さんが立っている。俺の絶叫に起こされたのか、ヤケに眠そうだ。
「す、すいません…」
「見つかっちったー。さーせん」
「ごめんなさーい」
大井、北上、夕張と謝る。
「明日もいつも通りの時間に起床ですからね。早く寝なさい」
言われて三人はそれぞれの部屋に戻る。ていうか北上のメイクにヒビらないとか赤城さんすげぇな。あと大井、メイク上手過ぎ。
「ほら、提督も」
「うぃっす…」
そうして部屋に戻ろうとした時だ。
『オマエハ、ダレダ?』
ふと、その一節が後ろから聞こえた気がして振り返る。だが、赤城さんしかいない。
「………」
「? どうしました?」
「……や、なんでもない」
そう言って部屋に戻ろうとすると、また声が聞こえた気がした。
「……提督?」
「な、なんだよ!全然ビビってねぇよ!」
「いやなにも言ってませんけど…」
「………」
いやいやいや、19にもなってお化けが怖くて眠れないとかあり得ないからね?別にビビってなんかねぇし?むしろちょっとオラ、ワクワクすっぞ!
「あの、大丈夫ですか?」
「えっ!?なにがっ!?ぜんぞんヴィビってなんかないせけどぉっ!?」
「いや、あの…」
「いいから寝ましょう!全然怖くなんかないし!あー、ね、眠ぃ〜!欠伸が…ふあぁぁぁっ!」
「いやそんな気合入れて欠伸しなくていいですから…」
「うん!寝ます!おやすみなさい!」
無理矢理体を引きずって私室へ戻る。そのままヲ級の横で横になった。いやいやいやいや、全然ビビってねぇよ?むしろちょっとオラ、ワクワクすっぞ!……あれ?二回目?いやでもちょっと後ろに気配が…。
いやいやいやいや、全然ビビってねぇよ?お化けなんてこの世にいないし仮にいたとしても人間に触れることは出来なわぁい。よって俺は無事!………でも、確か乗り移って来るとか…。
いやいやいやいや、それは俺の心の持ちようだよな!例えかくれんぼの最中に帰られても自殺しなかった俺の鋼の精神なら乗っ取られることはない!はい、引き分け!むしろ俺がお化けを乗っ取ります!はい大勝利!敗北を知りたい!………でも…………。
この無限ループで朝まで眠れなかった。
それから三時間後の朝6:00、ほとんど一睡も出来ずに朝になった。おいふざけんなよマジで。神様俺に恨みでもあんのかよ超眠ぃーよ。べ、別にビビって眠れなかったわけじゃないけど、むしろアレだ。お化けに会える興奮から眠れなかったうん。
「提督ー?入りますよー?」
「誰だっ!」
「誰って、大井ですけど…」
「あ、あぁ、入って下さい…」
ガチャッと半分まで直ったドアが開く。大井が入ってきた。
「今日の秘書艦になりました。よろしくお願いしますね」
「お、おう…よろしく……」
「大丈夫ですか?なんか顔色が…」
「や、平気だから。俺ちょっと朝飯食って来る…」
言いながらiPhoneと財布をポケットに突っ込む。その俺の腕がガッと掴まれた。
「なんだよ…」
「朝飯ってどちらへ?」
「……コンビニ」
「私もご一緒します。加賀さんに提督は朝飯と共にサボる、と教えられたので」
加賀さんの触手がここまで伸びていたか…嫌だなぁ……。
「好きにしてくれ…」
そのまま出発進行。あぁ、眠ぃ…不眠症になる…。
「提督?」
「な、なんでそう…」
「大丈夫ですか?なんかフラフラしてますが…」
「だ、大丈夫だから!別に昨日から眠れないわけじゃないから!」
「…ならいいんですけど。辛かったら言ってくださいね?」
おぉ、大井優しい。今までサイコガンダムMk-レズだと思ってたが割といい子なんだな。
「提督が倒れると北上さんが悲しみますから」
「安心した。やっぱお前、全然優しくねぇわ」
「……どういう意味ですか?」
「ナンデモナイデス」
とりあえず謝るとため息をつく大井。アレだ。大井は劣化加賀さんかもしれない。表情はよく変わるが、後ろに吹雪(天候)が見える辺りが似ている。
で、セブンに到着。とりあえずオニギリ四つ(内二つはヲ級の分)と午後の紅茶とコンポタを手に取る。あとは揚げ鶏を買った。大井にコンポタをヒョイっと投げる。
「提督?なんの真似ですか?」
なんの真似って…俺と大井って敵同士だったっけ?
「いや寒いしわざわざ着いて来てもらったからそれくらいはね」
言うと、少し驚いたような表情を見せたが、すぐに普段の顔に戻る。
「ポイズンとか仕込んでないですよね?」
「お前、俺のことなんだと思ってるわけ?まぁ最近寒くなってきたし、北上と大井は改二でお腹出るし、それで風邪引かないようにして」
「あ、ありがとうございます」
照れたように言う大井。その後に手を温めるようにコンポタを両手で持った後、頬に当てる。こうして見ると大井も可愛いんだけどなぁ…。
「な、なに見てるんですか?」
「や、なんでもない。ただちょっと仕草が可愛いなぁって」
「なっ……!魚雷撃ちますね?」
「なんでだよ!可愛いのは仕草であって大井じゃないから!」
「それはそれで傷付きます!」
あーあ…不機嫌になっちまった。まぁいいや、さっさと帰ろう。でも顔を真っ赤にして怒らんでもいいだろうに…。
すいません、昨日は忙しくて投下出来なかったです。