やんでれってなんですか?
目が覚めると、俺は椅子に繋がれていた。鎖で。え、なにこれ……と、思った矢先、ペタペタとサンダルの音が聞こえた。
「起きましたか?提督」
「ほ、鳳翔さん?」
ニッコリ微笑む鳳翔さん。その笑顔がやけに怖かった。
数分前。
「もう、提督ったらまたこんなに散らかして……」
最近は鳳翔が部屋の掃除をしてくれている。提督はいいと言ったのだが、鳳翔は無理矢理にでもやっている。もちろん、狙いはなんか新婚さんっぽいからだ。
「あら?」
たまたま鳳翔が手に取ったのは未来日記の漫画。
「初めて見るまんがですね。新しく買ったのでしょうか……」
「あれ?鳳翔さん。どうしたんですか?」
振り返ると夕張が立っている。
「あら、夕張ちゃん。私は提督のお部屋のお掃除ですが…」
「あー!未来日記じゃん!提督買ったんだそれ!」
「知ってるのですか?」
「はい!もしかして、鳳翔さんそれ読むんですか?」
「え?いや…そういうわけじゃ……」
「読まない方がいいと思いますよ。ちょっとヒロインのヤンデレっぷりが……」
「安心してください。私はあにめやまんがは興味ありませんから」
「それなら、まぁ……あ、それより提督に貸した3DSP返して欲しいんだけど」
「あぁ、これですか?」
「そうそれ。これ作るの苦労したんだよ。完全に立体的に再現させたんだから……おかげでネクプラとか凄いことになったけど……」
とかブツブツ言いながら出て行った。
「…………やんでれとはなんでしょうか…」
鳳翔はなんとなく未来日記一巻を開いた。
「……こ、この由乃という子は凄まじいですね……ここまでアピール出来るなんて……これが、やんでれでしょうか……」
全巻読破した。
「………試してみる価値はありますね」
遊戯室。そこで鳳翔はパソコンの前に座っていた。ヤンデレについて調べようとしていた。が、そのまま動かない。使い方が分からないのだ。
「これは困りましたね……」
「どうかしました?」
声が掛かり、振り返ると漣と潮が立っていた。
「いえ、少し調べ物をしようと思ったのですが……このぱーそなるこんぴゅーたーが動かなくて……」
「動かないも何も、まず電源が入ってませんよ?」
「えっ」
漣の一言。
「あの…も、もしかして、使い方が…その、分からないんで、しょうか……?」
潮が恐る恐る聞くと、恥ずかしそうに顔を赤らめながらコクっと頷く鳳翔。
「なら漣が教えますよ!まずはこのボタンで電源を入れて……」
「は、はい」
そして、インターネットを起動。
「ローマ字は…この表見て打ってください」
親切に教える漣だったが、段々と表情が曇る。慣れない手つきで打ち込まれていく文字のせいだ。
y…や…やn…やんd…やんで…やんでr…やんでろ……やんで…やんでr…やんでれ………、
「あの、鳳翔さん?」
「どうしました漣ちゃん?」
「い、いやその……」
「鳳翔さん、やんでれってなんですか?」
純粋な目で聞く潮。
「やんでれっていうのは……」
「で、では漣達はこれで!潮いくよ!」
「え?で、でも……」
「いいから!」
そのまま漣は走って潮を連れて出て行った。
(ご主人様、漣は心から応援するとともに、ご冥福をお祈りいたします)