「提督さーん!」
勢いよくバタンッと開かれるドア。俺は急いで3DSを隠した。
「し、七面鳥か……どうした?」
「七面鳥ですって!?冗談じゃないわ!」
「いや冗談だから。で、なに?」
「遊んでー!」
「やだ。帰れ。翔鶴姉」
「最後の何!?いいから遊んでよー!」
「ちょっと待ってろ」
俺は携帯を取り出した。
「もしもし翔鶴さんですか?おたくの妹さんが煩い上に五月蠅い上にウザいので引き取ってもらえますか?」
「ち、ちょっと提督さん!」
が、五分もしないうちにやってくる翔鶴。
「すみません提督」
「本当ですよ。毎日毎日飽きもせずに頭撫でてってくるんですよ?」
その瞬間、ピクッと僅かに反応する翔鶴さん。
「それで?撫でてあげたんですか?」
「あ?まぁそうっすね。うるせーから撫でます」
「そうですか。それでは……」
言いながら俺の膝の上に座る翔鶴さん。
「………なにしてんの」
「撫でてください」
「ち、ちょっと!翔鶴姉!」
「あら、何かしら瑞鶴?」
「な、何してるの!?ズル……じゃなくて提督さんが重たいって……!」
「いや、翔鶴さんは軽いよ。ていうか基本的に俺が重いと感じる物なんてないから」
「だそうよ瑞鶴?それにあなたばかりいつも撫でられてるのにズルいはないんじゃないかしら?」
「んぐっ…!」
「では、お願いします」
「や、待って。なんで俺が撫でる前提になってんの?」
「瑞鶴が良くて私はダメなのですか?」
「いやそうじゃなくて、瑞鶴はガキだけども翔鶴さんは大人じゃないですか」
「ちょっと提督さん!それはどういう……」
「私はあまりに気にしません」
「俺が気にするんですよ!」
すると、急に頬を膨らませてそっぽを向く翔鶴さん。
「つーん」
「な、なんですか」
「撫でてくれないと拗ねちゃいますよ」
「いや好きにしろとしか」
「そうですか。では拗ねます」
何をする気だ?と、思ったら急に俺の胸に頭を置く翔鶴さん。
「あの、翔鶴さ……」
「拗ねてるんです。話し掛けないで下さい」
と、思ったら耳に息を吹き掛けてきた。
「ひうっ!」
ゾゾゾッときて身体の力が一瞬抜けた。
「あら、提督ったら耳が弱いんですね」
「いや、あの……」
「拗ねてるんです。話し掛けないで下さい」
こ、この人は……!と、思ったら瑞鶴が突っ込んで来た。
「ち、ちょっと!何してるの提督さん!」
「お、俺かよ!?」
「人の姉に手を出さないで!」
「出されてんのこっちだから!てか翔鶴さんごめんなさい!撫でますから勘弁して……」
「分かりました♪」
この野郎……。で、いざ頭を撫でる。髪がサラサラだなぁ……って、イカンイカン。
「ふわあぁぁ……これは、瑞鶴が毎日来るのも分かりますねぇ〜……」
「はいはい……」
すると、バタンッとドアが開いた。
「失礼します提督。本日の出撃ですが……」
「「「あっ」」」
加賀さんだった。世界が止まった。