「ゔえっくしっ!」
昨日、ブルーウォークで脱出の結果、風邪を引いた。今は自室である。
「まっっったく!勝手に出掛けるからですよ!これからはキチンと仕事してください!毎回毎回仕事もせずにいい加減にしてください!」
能代に怒られてる。
「あの…俺、風邪引いてるんだけど…」
「そんなこと能代には関係ありません!まったく……」
言いながら能代は俺の頭に冷えピタを貼ってくれる。
「あ、あの……能代さん?」
「なんですか?」
「えっと…看病してくれるの?」
「そ、そうですよ!悪いですか!?」
「や、悪くないですけど…」
「なら大人しくしててください」
言いながら何故か膝枕してくれる能代。まぁ、いいか……。俺はゆっくり寝てよう。と、思ったらガチャッと開かれる音。
「司令、あの……」
野分さんだ。入って来た時は若干顔を赤らめてしおらしかったのに、速攻で生ゴミを眺める目になった。
「何やってんですか司令」
「風邪引いたんだよ」
「それは知ってます。風邪引いたのになにやってるんですか?」
「これから寝るところ」
「その状態のことです」
「ひ、膝枕……」
すると、ひょこっとまた誰かが顔を出した。
「やっほー提督ー」
「おー舞風もきてたんだ」
「能代さんもヤッホー」
「こんにちは」
「能代さん」
やけに冷たい声を出すのは野分だ。
「そこ、代わってください」
「いや」
「司令は野分を助けるために風邪を引いてしまったんです。野分が看病するのが筋かと」
「それを言うなら世話係である能代がやるべきでは?」
な、なんだろう…二人の全身から《黒焰》的ななにかが出てる気がする…。
「代わりなさい」
「嫌」
「舞風、助けて」
「あー…あ、あたしには厳しいかなー…とにかく、用があったら呼んでねー」
「え、いや待ってお前逃げんの?」
「違うよー撤退、退避、逃亡だよ」
「ほとんど意味一緒だろうが!てか最後に逃亡って言っちゃってるし!」
そのまま舞風は「ワンツー」とか言いながら出て行った。そりゃねぇぜぇ次元〜。
で、そのまま睨み合う野分と能代。合わせて能代の脇。そういえば女の子って脇毛生えるのかな…それと俺の脇にはいつ脇毛生えるのかな…いや生えて欲しいわけじゃないけど。ちょっと聞いてみるか。
「なぁ二人とも」
「「はい?」」
「女の子って脇毛生えるの?」
砲撃された。
「まったく!もう少しデリカシーのある質問をしてください!」
「そうです。体のことは女の子に聞くべきではありませんよ」
二人に怒られてる。しかしアレだな。少し前の加賀さんとかには怒ったらほっとかれたのに、この二人はちゃんと残ってくれるんだな。
「で、野分さん?なんでいるのかしら?今日は能代がお世話をすると言ったはずよ?」
「それはこちらの台詞です。野分に何度同じことを言わせれば気が済むんですか?」
うーむ…いい加減うるさいぞ…。ここは俺が提督として仲裁に入ろう。
「まぁ待てお前ら…」
「「提督(司令)は黙っててください!」」
「は、はい!」
無理。仲裁とか無理。ていうかこの空気が無理。なんなのこいつら、マジで何しに来たの?そのままギャーギャー、いや割と静かな話し合いの結果、なぜか急に野分が出て行くことで決着が付いた。かの様に思われた。
で、能代に聞かれる。
「ふぅ…提督?何かして欲しいことはありますか?」
「えーっと、じゃあ…」
とりあえずPSP取って、と言おうと思ったところでガチャッと開かれるドア。
「司令。お食事を作ってきました」
「んなっ!」
反応したのは能代だった。
「ち、ちょっと!なに勝手なことを…!」
「サンキュー野分」
「て、提督!?」
や、実際お腹減ってたし。俺は野分が作って持ってきてくれたうどんをありがたく頂戴する。と、思ったらなぜか野分が箸でつまんでレンゲにうどんを器用に乗せていく。そして、プルプルと震えた手でそのレンゲを俺に向けてきた。
「あ、あーん…」
「」
「」
思わず黙ってしまった…えっと、なにしてんのこの人。
「し、司令!」
「あ、うん…」
なんだかよくわからない内にいただいてしまった。
「ど、どうですか?」
「なんだこれ!うめぇ!」
薄味とか関西風かよ!ていうかマジでうめぇ!天才か!
「ぐぬぬ…」
なんか唸り声が聞こえるけどまぁいいか。とにかく、俺はうどんを完食した。
「す、すごい食欲ですね司令。普通、風邪引いた時は食欲がないものだと…」
「バッカお前こんな美味い飯を食わないハゲがいるかよ。これはマジで美味かった。うん」
「あ、ありがとう、ございます…」
顔を赤くして俯く野分。え、なに余計なお世話だった?と、思ったらベシッと背中を叩かれた。見ると、能代が不機嫌そうな顔でそっぽを向いている。
「な、なんですか?」
「なんでもありませーん」
うわあ、めんどくせぇ。まぁなんでもいいか。
「じゃ、俺寝るから。でさ、能代」
「なんですか?」
何故か不機嫌な能代。が、構わず続けた。
「その…また、膝枕してもらっていい、ですか?」
「なっ!?」
なんで野分が反応すんだよ。俺だって勇気振り絞って言ってるんだからやめろよ。スッゲー恥ずかしいんだぞ。
「て、ていとく…?」
「や、その…さっき、柔らかかったから…思いの外気持ち良くて…ぶっちゃけ野分が来なかったら寝てた」
すると、能代はくすっと微笑んで「はいはい」と、お母さんみたいなこと言いながら俺の頭の下に正座して、太ももをぽんぽんと叩いた。
「どうぞ?」
「誰にも言うなよ…スッゲー恥ずかしいんだから。野分もな」
「……ふん」
え?それどっち?頼むから言わないでよ?特に妹には。