とりあえず、暁と雷の仲直りをさせるために作戦会議。が、友達との喧嘩の経験のない俺になにか出来るはずもない。とりあえず、どうするべきか考えている。
「ねぇしれいかーん。どうすればいいのー」
ウザい。考えてんだから少し待ってろよ。これだから駆逐艦は嫌なんだよ。いや嫌いじゃないけどね。響とか大人しいし。
「もう謝ればいいだろ」
「それは嫌よ!だって暁は悪くないもん!」
「いやだってお前ぬいぐるみに穴開けちゃったんでしょ?」
「そ、それは…そうだけど…暁だって、ちゃんと謝ったのに……」
「あのな、喧嘩っていうの、特に子供の喧嘩っていうのは」
「一人前のレディとして扱ってよね!」
「じゃあ人の喧嘩でいいや。喧嘩ってのは起きちまったら原因なんて関係ない。ほとんど感情のぶつかり合いになるんだ。向こうが謝らない俺も謝らないってなる。例え自分に原因があったとしてもだ。だから喧嘩したらとにかく謝る。外人に下手に謝ったら面倒だが少なくとも日本ならこの方法は通用する」
「そうなの…?」
「だからとりあえず謝っとけ。ただし、過度に謝るな。土下座とかは逆にふざけてると思われる。ごめん、と頭を下げればいい。謝ったら負け、とか思ってる奴もいるそうだが逆だ。謝って穏便に済ませた方の勝ちだ」
「…でも、レディが謝るっていうのは」
「ばっかお前一人前のレディってのは謝ってなんぼなんだよ」
「……わかったわ!でも、もし許してもらえなかったら…」
「あー万が一の時は俺じゃ力になれないから加賀さんとかあの辺に聞きな」
で、暁出撃。よし、これで結果がどうなろうと俺の仕事は終了だな。さて、自室に戻って勇者を殲滅するか。コケ地獄の脅威を見せてやるぜ。
自室。号泣した暁とにこにこ笑顔の綾波、そしてなぜか加賀さんがいた。
「ゔあぁぁぁぁんっっ‼︎‼︎」
「で、なんでこーなるの?」
「自分の胸に聞いてみてはいかがですか〜?」
綾波が怖い…。
「あなた、暁ちゃんに適当なこと言ったみたいね」
「待て待て待て!俺は謝れって言っただけだよ!そもそもの話、わざとじゃないにしろぬいぐるみに穴開けたのが原因なんでしょ!?だったら…ていうかなんて謝ったんだよ!」
「『暁は一人前のレディだから謝ってあげるわ!ごめんね雷!』ですよ〜」
「おいバカツキ!そんな謝り方したらそりゃ溝深まるだろ!」
「ゔあぁぁぁぁんっっ‼︎‼︎」
「ダメだ聞いちゃいねぇ!」
すると、加賀さんが俺の頭を鷲掴みする。
「で、あなたは暁ちゃんになんて言ったの?」
「返答によってはその目玉くり抜きますからねぇ〜」
綾波がサラッと怖いこと言っていたがとりあえず説明。
「途中まではある意味正しいわね…」
「でもどうして余計なこと言ったんですか〜?」
「ぶっちゃけ、早く解放されたかった」
「加賀さ〜ん、スプーンありますか〜?司令官のお目目に美味しそうな白玉が…」
「待って!落ち着いて!ていうか本当に綾波!?なんか龍田みたいなこと言ってんだけど!」
「綾波。さすがにやめときなさい」
「は〜い」
危ない…加賀さんに助けられた。
「とにかく、なんとかしないとまた食堂が吹き飛ぶわ。私としてはそれは非常に困るの」
「あーそういえば加賀さんってたまにハングリースペース発動す…」
「綾波、スプーンあるかしら?」
「冗談です!ごめんなさい!」
とにかく、なんとかしないとマズイな。近いうちにΖザクの等身大作るのに食堂なんかに金使いたくない。
「まぁ俺に任せて」
次の日。100話超えてようやく出てきた教室。駆逐艦達の年齢は小学生くらいの子が多い。よって、この教室で大人の艦娘達が授業をやったりするのだ。で、先生役の艦娘が来る前の教室は騒がしい。が、今日は違った。暁と雷が喧嘩中だからだ。
いつもよりピリピリした雰囲気の中、まったく緊張感のない声と共にドアが開かれた。
「はい日直ごーれー」
提督が教師っぽい服を着て教室に入った。駆逐艦達、全員吹き出すが、提督にはそんなもの関係ない。
「き、きりーつ」
戸惑いながらも電は号令を掛ける。
「気を付けーれいなのです」
お願いしまーす、と声を掛けて駆逐艦達は座る。
「えーっと、この時間の加賀さんが腹痛でトイレから出られなくなったので…」
その瞬間、提督の頬を掠める矢。どこから飛んできたのかは分からない。
「じゃなくて、まぁもう面倒だわ。なんやかんやで俺が授業することになりました。騒がしくしたり砲撃した奴は追い出すのでそこんとこよろしく」
テキトーに挨拶して提督はどこから出したのかダンボールから本を出す。
「はい。今日はちょっと特別な教材使いまーす」
配ったのはハリーポッターとガンダムMS図鑑。なんで?と思う駆逐艦の子達もいたが、騒いだら追い出されるので誰も反応しない。
「うわっ間違えた。ごめんちょっと返してこれ」
ミスかよ!とも突っ込めない。
「うーわこれどうすんだよ…もういいやBlu-rayにしよ。ちょっと待ってて」
勝手に教室を出て行く提督。数分後、携帯を弄りながら戻ってきた。で、謝罪もせずにDVDをつける。テレビから流れてくるのはhedwing 's theme。
「いやハリーポッターですか!?」
抑えきれずに吹雪が突っ込む。
「お、知ってんのか。ってそりゃそうか」
まったく悪びれる様子もなく提督はビデオを流す。賢者の石だ。が、途中でビデオを止める。
「はい、お前らに見て欲しいのはこの部分だ」
止めたのはネビルがハリー達三人を止めるところ。
「このように、仲間ってのはお互いぶつかり合ったりするように出来てる。いや仲間って言うか、人ってのはこうやって必ず食い違って喧嘩するようになってんだ。十人十色って言うしな。それでもなんで仲間が必要か。それは一人じゃ出来ないことも仲間と手を組めば出来ることだってあるからだ」
黙って聞く駆逐艦。
「例えばお前これ知ってる奴もいると思うけど最初のなんとかって蔓のところ。これはあれ、ハーマイオニーがいなきゃ詰んでたな。で次の飛んでる鍵のところ、これはハリーじゃなきゃ出来なかった。次はチェス、これはロンじゃないと皆殺しにされてた。このように必ず誰かと一緒じゃないとなにもクリア出来ない場面が出てくる。別に喧嘩することは悪いわけじゃないけど、それで協力し合えないっていうなら、さっさと仲直りしちまいな。後悔してからじゃ、遅いから」
そう言うと、暁と雷はお互いをチラッと見る。それを確認してから提督は授業終わりーと言わんばかりに教室を出た。外に立ってるのは加賀さん。
「割と真面目なこと言えるのね」
「あんなもん綺麗事ですよ。小さい子はテキトーに言うだけで大抵は納得しますから」
「………」
「まぁ艦娘相手だから言えることですね。人間は違う、やろうと思えばなんでも一人で出来る」
「……そう」
「じゃ、俺は寝ますから。ぶっちゃけ俺らしくないこと言ったから恥ずかしくて自殺しそう」
「それもそうね。あなたらしくないどころかアイデンティティの崩壊ね」
「……それは言い過ぎじゃね?」
言いながら提督は自分の部屋へ戻った。
なんかバカバカしくなると思ったらヤケにまともになってしまったので次からはまたバカやります。