もし、俺が提督だったら   作:単品っすね

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解体されたら記憶飛ぶとかあったっけ?あっても知らない。




仲直り3

 

 

 

その夜。鳳翔さんが夜中にやって来た。やっば…すごい緊張する。なに言われるんだ…まさか金属バット持って夜中に袋叩きに……、

 

「提督、私を解体してください」

 

違った。って、今なんて言った?

 

「は?」

 

「先ほど言った彼と結婚します」

 

なるほど、そういうことか。てなわけで、鳳翔さんを解体し、見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後の夜、加賀さんが俺の部屋に来る。

 

「ちょっと、最近鳳翔さんの姿を見ないのだけれど…」

 

「あぁ、解体しましたから」

 

「………は?」

 

胸倉掴まれて壁に叩きつけられた。

 

「どういうこと?」

 

「せ、せせせせ説明しますから待って待って怒らないで!ごめんなさい!」

 

説明した。

追い出された。

探しに行けって言われた。

えぇ…解体しておいて連れ戻すとか恥ずかしいじゃん…。ていうかもう結婚してんだろうに…。その中に「女は返してもらうぜ」とか昼ドラかよ。

とりあえず目立ってもあれなので歩いてそこら中を歩き回る。耳にイヤホンぶち込んで、鼻歌なんてうたいながら。

しかしあれだよな。「愛してるそう伝えたのは飼い慣らすための餌ですか」とかマジでえげつない。誰だよこの歌考えたの。こんなことあるんなら本当に愛なんて必要ない。

なんて考えながら歩いてると、川を見かけた。へぇ、こんなところに川なんてあったんだ。なんとなく土手を歩く。こうして歩くのもなんか夜の散歩みたいでいいなぁ。

が、そんな呑気なこと考えてるのも束の間だった。橋の下に人の足みたいなのが見えた。

さっさっさっ、殺人事件やぁぁぁっっ‼︎‼︎急いで駆け寄って見てみると、どこかで見た顔どころか知り合いだった。急いで背負って鎮守府に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

目を覚ますと、加賀さん達艦娘のほとんど全員がいた。私(鳳翔)は確か……、

 

「鳳翔さん!」

 

「大丈夫ですか!?」

 

皆さんが声を掛けてくる。ようやく最近の出来事を思い出した。すると、自然と零れる涙。

 

「鳳翔さん…」

 

「加賀さん、あれを」

 

榛名ちゃんに言われて加賀さんは医務室の外からなにかを運んできた。提督だった。

 

「提督……」

 

「これがあなたを追い出したというので連れ戻させました。ほら、なにか言うことは?」

 

最後の部分は提督に言ったみたいだ。それだけ言うと加賀さんは艦娘のみんなを連れて出て行く。

 

「あの…すいやせんした…」

 

言いたいことは色々あったけど、なんか目に覇気がない。いや何時ものことだけど、多分すでに周りの子達に精神的に袋叩きにされたのだろう。なら私はまだなにも言わなくていいかな。

 

「いえ…」

 

「それで、どうして橋の下で寝ていたんですか?」

 

提督に聞かれると、また零れる涙。

 

「………だったんです」

 

「え?」

 

「結婚詐欺だったんです……」

 

ここ数日の間にあったことを話した。

 

「お陰で…戦争が終わった後に、提督と一緒に…お店を出そうと思って貯めていたお金が…一銭も残らず盗られてしまいました……」

 

言うと、提督は不思議そうな顔をする。

 

「あの…俺料理とか出来ないんですけど…いや高校時代とかに家庭科の授業あったけど、ほら、ハブられてたから…」

 

「すいません…私、また迷惑かけてしまったみたいで…明日の朝には出て行きますから……」

 

「……どうするつもりですか?お金、一銭もないんですよね」

 

「解体された以上はここにいるわけにはいきません。大丈夫です、なんとかやって行きますから」

 

「…………」

 

すると、提督は立ち上がり出て行った。その間に私は出て行く準備でもしますか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の朝。私が出て行こうと立ち上がった時だ。医務室の前に加賀さんがいた。

 

「加賀さん……」

 

「出て行く前に、提督が執務室に来い、だそうよ」

 

「分かりました……」

 

なにを言われるのだろうか。ひょっとすると引き止めてくれるのかも、なんてことも思ってみたり。で、執務室に入ると、提督はWiiスポーツをやっていた。

 

「っらぁっ!」

 

「ちょっ…兄ちゃん強い!……って、来たよ」

 

「え?お、おう…」

 

妹さんと対戦していたようだ。意外と仲良いのですね……。

 

「あー鳳翔さん…えっと、これ」

 

提督がゲームを中断してなんか紙を持ってこっちに来た。

 

「えーっと…本日より貴艦は…あーやっぱめんどくせぇや。早い話が、建造したらまた鳳翔さんが出ちゃったからってことで、鳳翔さんはここの艦娘になります」

 

「え……?」

 

「どーせなんとかするって言ってもどうすればいいか分からずに困ってたんですよね?」

 

妹さんが付け加えてくれる。

 

「だからアホ兄貴は鳳翔さんをまた入れてくれるって言ったんです。もちろん、断ることも出来ますよ」

 

妹さんが言うと提督は机の引き出しの中から通帳をたくさん出した。

 

「昨日、たまたま夜歩いてたら通帳が降ってきたんで、お金の心配はいりません。嫌だったらこれ持って行けばいいし、ここに残ってくれるならこの建造の書類は上層部へ送ります。あ、艤装はの方あれ…妖精さんのみらくる☆ぱわーでなんとかなりますよ」

 

わざわざ通帳を取り返してきてくれたんですね…方法はあえて考えないことにした。

また自然に落ちてくる涙。嬉しくて涙が止まらず、思わず提督に抱き付いてしまった。

 

「ちょっ!鳳翔さん!?」

 

「あ、ありがとうございます、てぇとくぅ……」

 

「あの…鼻水が、服に着くから……」

 

だが私は離さなかった。しばらくそのまま抱き着きっぱなしになった。

 

 

 

 

 

 

 

余談だが、数日後に宇宙で詐欺会社のビルが発見されたそうだ。中には人も数人発見されている。提督の仕業ではないと願うばかりだ。

 

 

 


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