執務室。鳳翔さんが待っていた。
「鳳翔さん…」
「つーん……」
この人も口でつーんとか言うんだな。
「その…すいませんでした…や、ちょっと…謝罪の王様見過ぎてて…」
「……反省してますか?」
「そりゃあもう…」
「…次はありませんからね」
ふぅ、これにて一件落着。あー良かった。
「失礼しまーす!」
んだよ誰だよいい感じに終わりそうな時にこの野郎と思ったら青葉だった。OK、泣かす。
「鳳翔さんに聞きたいことが……って司令官なんですか…痛い痛い痛い!なんでいきなりアイアンクロー!?」
「こら提督。離しなさい」
怒られたので離す。小学校かここ。
「それで鳳翔さん!実は一昨日、鳳翔さんがプロポーズされてるのを見てしまったんですが!」
その一言に俺と鳳翔さんは盛大に吹き出す。なに?プロポーズ?どういう意味?Do you me?
「あ、青葉さん!なぜそれを!?」
かぁーっと赤くなる頬を隠さずに青葉の胸ぐらを掴む鳳翔さん。青葉が青い顔になっていた。青葉だけに。……新たなトラウマが生まれてしまった。
「ていうか鳳翔さん、彼氏いたんですか?」
「て、提督!?違いますからね!?こ、ここ恋人なんて…私には……」
言うと青葉を離して全力で否定する鳳翔さん。じゃあなんで告白されたんだよ…予行演習なの?そんな顔で見ないでよ。
「じゃあなんでプロポーズなんてされたんですかぁ〜?」
にやにやしながら青葉が聞いた瞬間、壁にめり込む青葉。二階級特進させといてやろう。
「実は…前にスーパーに買い物に行った時に声をかけられて、それ以来一方的に付きまとわれてたんですよ」
ややうんざり気味に語る。あー分かるわー。俺も好きな女の子に一生懸命アプローチしてなんでか「二度と話しかけないで」って言われたなぁ…あれ以来、人に話しかけることが自殺するのと同じくらい緊張するようになってしまった。
まぁここは振られた経験がバカみたいに重い俺が一つ、上司としてアドバイスしてやろう。
「結婚した方がいいんじゃないですか?」
「……………………え?」
よく聞こえなかった、とでも言い出すかのような顔で聞いてくる。
「いいですか鳳翔さん。世の中、異性は星の数ほどいます。その中の自分が好きになった奴と結ばれる確率など天文学的数値に近い。だから結婚出来るタイミングで結婚しておいた方がいいですよ」
鳳翔さんは今だ唖然としている。俺は続けた。
「それにこの戦争はいつ終わるか分からないし、もしかしたら途中で戦死するかもしれない。だったら戦場から離れた方が安全だし、戦争が終わってから安定した生活が出来る保証はない。だからここは…」
そこで、パァンッ!と音がした。ビンタされた。見ると鳳翔さんは泣いていた。
「…………ほんと、ばか」
それだけ言って出て行ってしまった。え、また……?