もし、俺が提督だったら   作:単品っすね

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加賀さんの章
提督


 

 

なんやかんやで、俺は提督になっちまった。小、中、高と友達がいなくて、なるようになれみたいな人生を送って、なるようになった結果が提督である。

まぁどうしてこうなったかなんてどうでもいい。周りにいる艦娘と呼ばれる女の子達を指揮しているが、俺の指揮は「中破したら撤退、破ったら即解体」だけで、あとは自己判断である。

で、今は執務室の書類を片付けている。フリをして書類の下にiPhoneを重ねてパズドラの最中。右から赤ソ○ア、ヘラウ○ズ、キングワ○りん、は○ひめ、ドラウ○ジョーカー、赤○ソニア。おい、最後隠れてねぇぞ。

そこで、ドアノブのがチャッという音がする。その瞬間、俺は服のポケットに携帯を隠して机の上に置いてあるシャーペンを手にした。この間、約0.5秒。

 

「失礼します」

 

入ってきたのは一航船加賀さんだ。この人、超恐い。マジで恐怖の象徴。その後ろに続くのが榛名、比叡、北上、クロボン…じゃねぇや。木曾、瑞鳳だ。

 

「第一艦隊、帰還しましたが…ちゃんと仕事してました?」

 

「あ、はい。うん…してた」

 

「では今日やった分を見せて下さい」

 

言われて、机の上にある書類の束を指差す。ちなみに、最初の一枚以外は全部昨日やった書類である。つまり、半日掛けて一枚しか書けてない。神よ…何故俺にこんな下らないことを思わせた…。

一枚一枚確認する加賀の横から、ぬっと書類を覗く北上。他の四人は雑談タイムになる。俺はといえば仮に小細工がばれたとしても、声が掛けにくいように残った書類をマジメに書く。

 

「あれー?提督これ昨日のじゃーん」

 

バッカ北上、余計なこと言うなよマジで。てか楽しんでるだろお前。そもそもこの加賀さんが一々、書類を確認するというシステムがおかしい。どんだけ信用ないんだよ俺。

 

「確かに、これ昨日のですね。提督、これどういうことかしら?」

 

「………」

 

黙々と書類を片付けて聞こえないフリ。これでワンチャン抜けるか…?

 

「……聞いてるの?」

 

こわい!こわいよ加賀さん!後ろに吹雪が見える!雪女だったの!?あ、吹雪って駆逐艦の方じゃなくて天候の方ね。

 

「…や、やろうと思ったんだけど、ゴルドラの時間になっちゃって……」

 

「私、言ったわよね?次、仕事もしないでゲームしてたら携帯没収って」

 

「……すいませんっした」

 

そこで、スッと手を出して来る加賀さん。握手を求めているのかと思ったが違った。

 

「携帯、出しなさい」

 

「…すいませんっした。あの、もうしないんで許して下さい」

 

「それ、前も言ってたわよね?」

 

「や、今度はマジですから」

 

「……はぁ。仕方ないわね。次はありませんから」

 

「……うぃっす」

 

ふっ、チョロい。さて、仕事仕事っと。とりあえず多少はやっとかないとクビんなるな。シャーペンを手に持って机に向かった俺にまた声が掛かる。

 

「提督、私達にまだ指示出てないけれど」

 

「あっ、えっと…アレで。もう出撃とかないんで、自由にしててください。はい、じゃあ解散」

 

それだけ言うと、六人は執務室を出て行った。さて、パズドラでもやるか。

先の俺の台詞見てて分かったかもしんないけど、俺はコミュ症である。

 

 

 

 

執務室を出て、六人の艦娘達はこんな会話をしていた。

 

「なーんか、やっぱ提督って全然私達と会話しようとしないよね」

 

軽空母、瑞鳳がゲンナリしたように言う。

 

「そーだよねー。なんか距離開けられてるっていうかさー」

 

「なんでだろうな。もうちょっと俺達から近付いてみた方がいいのかもな」

 

それに同意したように北上と木曾も言う。確かに、この鎮守府の提督とまともに会話したことがあるのは加賀くらいだ。しかも、その会話の内容もさっきのような内容だけである。

 

「駆逐艦の子達が話し掛けても素っ気ないですからね。ちゃんと応答するものの」

 

「金剛お姉様のスキンシップに対しても苦笑いでスルーしますかね」

 

「今度、デートにでも誘ってみようかなぁ」

 

「やめとけ北上姉、断られるのがオチだ」

 

「ていうか、提督ってなにが好きなのかな」

 

「それならこの前、ガンプラが執務室に飾ってあるのを榛名が見かけました」

 

「てことは、提督はガンダムが好きなんだよね?」

 

と、いつの間にか提督攻略会議が繰り広げられていた。すると、なにかに気付いたように榛名が言った。

 

「加賀さんは?」

 

『へ?』

 

全員の声がハモる。すると、去ったはずの執務室から「マジで携帯没収はやめてください!」「自業自得です」なんて声が聞こえた。それを聞いて全員が呆れたように苦笑いした。


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