修羅に生きる   作:てんぞー

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鼠のお使い

 ―――動く。

 

 体を滑らせるように後ろへと動かすのと同時に巨大な斧が目の前に落ちる。大地を割って亀裂を生み出す斬撃を繰り出す大斧を回避するが、その緩やかすぎる動きは眠気を誘ってくるものであった。両目を閉ざした状態で戦ったとしても、確実に回避することができる。それが自身と相手の間に存在する絶対的な技量の差であり、永遠に埋める事の出来ない差。目の前にいる斧を握った、異常発達した猿の様なモンスター、≪アックスレイダー≫は一撃を回避されたせいか怒りを露わにする。しかし既に動きの四割を見切り終わったことから経験を組み合わせ、絶対にどんな動きも回避できるように完成させてしまっている。

 

 もう、勝負にはならない状況になっている。

 

 それでも勝負を終わらせずに戦い続けているには理由がある。

 

「おい、まだかよ? あんましいたぶる趣味も遊ぶ趣味もないんだが」

 

「もうちょっと待つネ。情報が正しければまだ隠している≪ソードスキル≫がある筈ヨ」

 

 ≪アックスレイダー≫に背中を向けて視線を奥の方から指令を出す人物へと向ける。茶のぼろいローブに姿を隠した女、それが木造の砦の様なマップの入り口部分から覗き込むように視線を向けている。その視線は此方を通り越し、背後で斧を構える≪アックスレイダー≫へと向けられている。斧を振るってくる気配を感じ軽く跳躍すれば足元で旋風を感じ、そこから横へと体をズラせば斧が横へと落ちてくる。そのままバックステップ、相手へと近づけば繰り出されそうだったパンチを無力化する。

 

 そのまま突き出された腕を握り、

 

 そして肩を支点に相手の体を持ち上げて、落とす。

 

 つまりは綺麗な一本背負いを≪アックスレイダー≫の体へと叩き込むことに成功する。その姿を見てマントの女―――情報屋のアルゴは頷く。

 

「適度に弱らせて今度は瀕死時のパターンを見てみるか。殺さないように注意してネ」

 

「あいよ」

 

 立ち上がろうとする≪アックスレイダー≫の頭を踏み、大地へと顔面を叩きつけながら剣を背中に突き刺す。それで頭上のHPバーが二割減るのを確認し、今度は首に刃を突き刺す。大きく三割ほどHPが減るのを確認しつつ、突き刺した刃を捻って傷口を抉り、

 

 ちょうど体力が残り一割になったところで解放してバックステップを取る。解放された≪アックスレイダー≫が飛び上るように立ち、そして斧を両手で握って天に向かって吠える。その間に剣を左腰の鞘の中へと戻し、そして首に巻いているマフラーを取って両手で端と端を握る。吠え終わった≪アックスレイダー≫が血走った目を此方へと向けてくるが、それには欠片も恐怖を感じられない―――本能的に、直感的にこいつでは絶対に脅威にならないと理解してしまっているからだ。

 

 だがそれを相手が理解する訳もなく、ステータス上は完全に凌駕している筋力を以って斧を振り回してくる。その速度は以前よりもはるかに加速しており、そしてブレる事のない弧線を描いている。それを見切りながら回避すると遥かに早い速度で硬直を抜き去り、乱切りを放ってくる。それを浅く、短いスライドダッシュの様な動作で右へ左へと素早く回避し、全ての斬撃を体に触れないように回避する。

 

「ふむ。瀕死に入ると≪闘争本能≫スキルと≪狂戦士≫スキルが発動する様だネ。防御を無視して攻撃速度の上昇がかかってるヨ。これは知らずに盾で受けようものなら即死できるネ。うん、こいつにもう用はないヨ。倒しちゃってドーゾ」

 

「その言葉を待っていた」

 

 乱切りをくぐるように回避しながらスライディングで足元へ滑り込む。すれ違いざまに素早くマフラーを両足に巻き付ける様に結ぶ。素早く反対側へと抜けると此方を追いかけるために相手が振り向くが、マフラーに引っかかり相手の体が倒れ始める。その動きに合わせ、倒れる相手の体に飛びかかる。

 

「≪エグザクトオンスロート≫―――≪ファントムブレイク≫」

 

 ≪武器防御≫スキルの中に存在する≪バトルスキル≫を素早く呟いて発動させる。前者は打撃攻撃にスタン効果の付与、そして後者は攻撃成功時に相手スキルの封印効果。どちらも≪武器防御≫スキルとしては高ランクのスキルではあるが、≪武器防御≫スキルの修練は非常に簡単であり、相手の攻撃を受け流す、もしくは切り払えれば熟練度が溜まる。故に一度に多数回攻撃の出来るモンスターを五体、六体程集めればかなり早く熟練度を溜められる。

 

 それを利用して発生するのは≪アックスレイダー≫の完全封印。

 

 背中に飛びかかるのと同時に左手の掌を首に叩き込み、スタン効果とスキル封印効果を発生させる。相手の動きが止まり、そして倒れている最中に首を絞める様に腕を回し、左腰に手を伸ばす。そのまま左腰から刃を半分だけ抜き、≪アニールブレード≫の刃を≪アックスレイダー≫の首に当てる。

 

「首を落とす」

 

 そのまま、刃を下に動けずに≪アックスレイダー≫が地面に倒れる。スタンとスキル封印効果で一切動く事もできず、自重と地面に挟まれる形で刃が首に勢いよく食い込み、そして首が文字通り落ちる。地面に首が落ちて転がるのを確認し、≪アックスレイダー≫の首のない体から離れる。自分で実験し、そしてアルゴから聞いて確信した話ではあるが、

 

 こういう部位欠損のダメージに関してはほぼリアルに処理されている。

 

 首を落とせば即死級のダメージが発生する、腕を落とせば再生はせず、それが使えなくなる。前提として切り落とせるぐらいの威力と勢いや技量が必要とされるが、効率的に戦うには相手を解体するのも一手ではあるのだ―――解ったところで全ての敵が頭のあるタイプじゃなかったり、アンデッド型は首を斬り落としても死ななかったりするらしいのだが。

 

 首のない死体を踏み潰して破壊し、横に出現するリザルトウィンドウを覗き込む。それを可視化モードにし、小走りでやって来たアルゴに見せる。メモを取り出してそれにドロップ内容をアルゴが書きこんでいる間に下に落ちたマフラーを回収し、それを首に巻きなおす。あんまり疲労が溜まってないな、と小さく呟きながらインベントリを開き、そしてドロップ品である両手斧を取り出す。

 

「ふむ……やっぱり斧は重いな。使えなくはないけど素早く動けなくなるから選択肢が減るんだよなぁー。まぁ、この世界だとSTR補正で素早く振り回せるようになるんだっけな。まぁ、俺には無用のもんだわ。約束通り千コルで譲る」

 

「ありがたいネ。なんだかんだで君が蹂躙したソレはこの砦のネームドボスだからね、迷宮区のボスよりも弱いと言っても数人で戦う事が前提で、情報を調べるのも一苦労なんだヨ」

 

「ベータテストと現行バージョンでのボスモンスターの挙動やデータの違いの収集か、いやはや、こんな地味な作業を真面目にやる奴がいるとはね。決して馬鹿にしている訳じゃないんだ。素直に感服しているだけだよ。真面目にこうやって調べようとする人間は一体どれだけいるんだろうな」

 

「お世辞を言っても一コルも負けないヨ」

 

「やっぱりかぁー」

 

 両手斧をアルゴに引き渡し、引き換えに千コルを入手する。これで少しずつだが、装備の強化や新調の為の資金が溜まってくる。とはいえ、現在はまだ一層の攻略が完了していない―――手に入れられる武器で一番良いものである≪アニールブレード≫は既に手元にある為、これ以上武器を整えるという事もできない。出来るのは精々お金を溜めて、腕の良い鍛冶師を探し、その人物に装備の強化を頼む事か、作成してもらうぐらいだ。

 

 しかしアルゴの話によれば、現段階で作成できる装備では特に良い物はないらしく、このまま進むことがオススメされている。

 

「さて、雑魚を殲滅してもらってるんだ、湧きなおす前に帰るヨ」

 

「別に帰りも皆殺しでいいんだけどな、眠気覚ましになるし感覚的には今のも道中のも全く変わりはしないからな、道中のを十体ぐらい集めて戦った方がまだ楽しめる」

 

「そんな事が言えるのはおそらく君ぐらいだろうネ。雇い主としては頼もしいことこの上ないヨ」

 

 アルゴのその言葉に苦笑し、煙草を咥えて火をつける。文字通り、街から砦までの道のり、その道中に存在するモンスターは全て殲滅してきた。湧きなおしがあるとしても、それには少々の時間を必要とするだろうから、早いうちに移動をしておけば湧きなおす前に帰ることができる。

 

「まぁ、まだ練習中だけどスカウトやレンジャーの真似事は出来る。一応カモフラージュ用の道具や消臭スプレーとか常備してるし、ステルスで帰りたいなら別段難しい事じゃないんだよな。ただ現在の敵の強さだと殲滅した方が早くて得だし」

 

「まあ、一理あるかもしれないけどオイラが君程強くはないって事を忘れないでヨ」

 

「解ってるさボス」

 

 軽口を叩きあいながら無人の砦を邪魔される事無く歩く。それでも決して慢心する事無く警戒をするのは、もはやこの世界に順応してしまったゆえのクセなのだろう。

 

 

                           ◆

 

 

 ―――デスゲームが開始してから二週間が経過した。

 

 多くのプレイヤーが未だに混乱の中で微睡んでいる中で、一部のプレイヤー達は漸く動き出すことを決めていた。既に一週間目に動き出していたベータプレイヤーとは違い、この動き出したプレイヤーの大半は初参加のプレイヤー―――つまりは元一般人の人間となる。二週間も待っても一切の救助はない。その事にようやく気付き始めたプレイヤー達が動き始める。そうなると停滞していたアインクラッドの経済も少しずつだが活性化し始める。

 

 ≪フレンジーボア≫を狩って入手した素材やコルを商人プレイヤーや職人プレイヤーへ還元し、

 

 それが装備やアイテムとして市場に並び、

 

 プレイヤー達が強化されて行く。

 

 そうやって少しずつだがデスゲームとなったSAOの世界に、アインクラッドに活気が満ちて行く。おそらく動き出しているのは全体の一割以下だろう。その数だっておそらく二千にも届かないだろうが、それでも動き出したという事実が重要だった。誰かが活動を開始すれば、需要が生まれる。そしてその需要を満たすための産業が生まれ、全体の活性化が始まる。まだまだ、全体が活動し始めるまでは多くの時間が必要となるのだろうが、それでも需要がある所には、

 

 供給する人間がいる。

 

 アルゴは供給する側の人間だ。

 

 ベータ時代から存在する情報屋というロールをするプレイヤー。トレードマークは顔のネズミの様なヒゲであり、それゆえに≪鼠≫なんて通り名で呼ばれていたりもする。しかしそんな悪いイメージを思い浮かべそうな通り名とは裏腹に、アルゴの情報屋としての能力は非常に高い事が、この二週間の付き合いでよく理解できた。まず第一に仕入れた情報は自分自身が確認しない限りは決して確定の情報とは扱わず、裏を取らない限りは商売には使用しない。

 

 モンスターのデータ等に関しても自身でフィールドワークを行って調べてたり、足を使って調査している。そんな事もあってアルゴの情報屋としての信頼と信用は高い―――少なくともベータ時代ではそれなりに有名な情報屋として名を通していたらしい。ベータに参加していなかった自分には解らない話だが、キリトもベータ時代に知り合い、そしてその時は既にコンタクト方法というものが確立されていたらしい―――中々にプロフェッショナルを感じる。

 

 しかし、アルゴの情報屋としての需要は今、爆発的に上がっているといっても良い。

 

 なぜなら、

 

 ―――SAOにはWIKIがない。

 

 誰でも自由に記入し、そして編集する事の出来るWIKIがSAOの中からでは決してアクセスできない。その為モンスターのデータやドロップ、フィールドの情報は何時でもどこでもアクセスできるというわけではない。自分で覚えるか、他人から聞くしかない。故にベータと現在の情報、データをメモとして保存し、持ち歩いているアルゴは今の状況だと”歩くWIKI”として認識しても良い。情報は金銭にも勝る最強の武器だ。

 

 敵の情報を知っているのと知らないのでは生存率が全く違う。敵がどんな攻撃をするか、それを知っているだけでとれる対処法が変わってくるし、来るものが解っていれば回避する事もできる。欲しいものがあればやみくもに探す必要はなく、なにを倒せばいいのかが解る。

 

 情報の所持は極限までの無駄を削減する、重要なリソースであり、デスゲームとなった今だからこそ一番必要される事だ。

 

 キリトを通して、アルゴと接触する事には成功した。

 

 しかし、単刀直入に言えば―――≪贖罪クエスト≫は低層には存在しなかった。

 

 確かに、存在はするがそれは五層からであり、しかもやり直すことはできない一回限りのクエスト。そして一層の攻略が終わっていない現在、≪贖罪クエスト≫を受けてオレンジからグリーンへとカーソルを動かす事は不可能だった。正直な話、落胆はしたが、そこに後悔は一切なかった。敵は敵であり、殺すべきタイミングで殺さなかった場合は後に禍根を残す場合がある。

 

 だからコペルという少年の名前は一生忘れず覚えておくとし、殺した事に後悔を抱く事は永遠にありえない。

 

 アルゴからクエストが現状では挑戦することができないとなると正直な話、ボス攻略があるとしてそれに挑戦するパーティーに参加できるかどうかが怪しくなってくる。理由はどうあれ、オレンジ色のカーソルはアインクラッドにおける犯罪者の証だ。どんな犯罪かは確認する事は出来ずとも、犯罪者というレッテルは常に暗いイメージを生み出し続ける毒だ。これをどうにかしない限り、

 

 まともにアインクラッドで活動する事は難しいだろう。

 

 ―――故に、そこで取引を行った。

 

 

                           ◆

 

 

「やっぱり旬の情報は良く売れるネ」

 

 場所ははじまりの街近くの村、フェルネ。そこに存在する宿屋の二階、個室でアルゴはソファに座り、目の前まで引っ張ったテーブルの上に広げるメモを一枚一枚確認し、情報の整理を行っている。その様子を入口近くの壁に寄りかかりながら眺める。距離的にはメモの内容が見えない様にしているのは勿論、見てしまった場合に罰金と称してアルゴが持っているコルを全て奪って行くからに決まっている。

 

「そりゃあ良かった。俺も働いたかいがあるってもんよ」

 

 現在の自分の立場をシンプルに表現すると―――それはアルゴの用心棒というポジションに収まる。

 

 ≪贖罪クエスト≫は存在しないが、それでもその代わりに使えるものはある。

 

 ―――プレイヤー間の評価だ。

 

 たとえプレイヤーがオレンジ色のカーソルを頭上に浮かべていたとしても、それがプレイヤーの評価と決してイコールではないのだ。

 

 たとえばそこに善良なプレイヤーがいたとする。多くの人を助け、そして多くの人に慕われる、そんなプレイヤーがいたとする。そんな人物がやむを得ず犯罪を犯し、グリーンからオレンジプレイヤーへとその立場を変化させる。その場合周りの評価はどう変わるだろうか? そう大きくは変わらないだろう。善い事の為に犯罪を起こしたのだ、変わる訳がない。

 

 アルゴと共に活動する事でやっているのはそういう認識と評価を生む事だ。

 

 アルゴの用心棒、そして部下として働く対価として、それとなく怪しすぎないようにアルゴに話や噂をプレイヤーに流してもらっているのだ―――オレンジになるしかなかったプレイヤーの事を。それとなく噂風に流し、あとはそれに続く様に善行を積み重ね、注目を軽くだが集める。そうすれば仕方なくオレンジになったプレイヤーイコール自分、という図式が完成される。

 

 一種の評判調査だ。卑怯かもしれないが、世の中やったもんがちだ。

 

「しかし評判操作か、そんな事をやろうとするやつがいるなんて考えもしなかったヨ」

 

「割と使える手段だと俺は思うけどな。逆に情報屋って立場をしてるなら噂の発信点にもなれるんだから、それを利用して相場の操作も大きすぎない範囲ではできるんじゃないか? 結構いい感じに稼げると思うけど」

 

「確かに考えは間違っていないけどポリシーに反するネ。君の件も存外優秀な事とキー坊からの頼みという事だからやってあげている事ネ」

 

 どうやらキリトは存外モテるようだ。煙草の煙を吐きだしながら肩を揺らすと、さて、とアルゴが言葉を漏らす。

 

「やっぱり現行のバージョンに移行する事によって色々とモンスターの動きやデータに変化が出てきているネ。全体的にモーションやAIに追加行動が見られている感じだけど……これ、あんまり良い状況ではない感じだネ」

 

「見てから回避余裕なんだが」

 

「すべての人間が君の様な怪物ではないんだヨ。正直今日のボスエネミーも数人で削って倒すのが正攻法なのに、なんで一人で倒せているのかなぁ……いや、プレイヤーが五万人もいれば化け物が百人ぐらい生まれてもおかしくはないかナ」

 

「化け物とは失礼な、こう見えても立派な人間だぞ」

 

「そういう問題じゃない」

 

 そう言ってアルゴは溜息を吐いてからまぁいい、と言葉を置く。

 

「プレイヤーの情報とかを売ったりするならまだ商売を続けられるけど、現状大体の大物のデータを調べ終わったりしたからネ。そろそろ調べる所も変える必要がありそうだネ。というわけで、正直に答えて欲しい質問があるんだけどいいカ?」

 

 アルゴがメモをしまいながらそう言ってくる。ので視線をアルゴの方へと向けなおし、腕を組んだまま頷き、先を促す。

 

「―――オイラを守れながら戦える限界のラインはどれぐらいになる?」

 

 アルゴの質問の意図を即座に理解し、それを考慮しながら答えを作る。

 

「そうだな、大前提として相手が俺の筋力と速力を上回っていることだな。その上で数が最低十五体いる事だな。これで狭い部屋だったら流石に詰みで死ぬ。経験と今の俺とアルゴの実力を計算すれば十四体までだったらHPをドットで残して殺しきれる。ポーションを飲みながら戦って良いなら五十体までなら同条件で処理できるぜ。流石にそれを超えると集中力どっかでミスって落ちるな。まあ、戦いは数だよ数! 百の雑兵で一の英雄は殺せるんだよ!」

 

「あぁ、うん。なるほど、心配する必要は皆無と」

 

「あくまでも絡め手なしの場合の話な。悪いけどスカウトやレンジャー系列能力は勉強中だしな、状況によっちゃ分断される可能性もある。だからやっぱり前に出ている間にもう一人、後ろを任せられるやつが欲しいぜ―――迷宮区行くなら」

 

 アインクラッドの中央に存在する塔の様な迷路、迷宮区。それのみが次の層へと通じる道であり、その階層で一番強いモンスターが出現するエリアにもなっている。いわばソードアート・オンラインというゲーム、世界における”最前線”と言える場所になっている。乗り込むにあたって必要なのはレベルだけではなくプレイヤースキル、罠への知識や耐性、道具、等と突破の難関になっている。

 

 そのうえで、迷宮区の一番奥に存在するボスを倒さない限り、次の層へ到達する事は出来ない。

 

「今のデータを確認する限り、多くのモンスターが細かい調整を受けている様だけど―――迷宮区のモンスターもまず間違いなくそういう改変、調整を受けている可能性もあるから改めて調べてくる必要があるのサ」

 

「まあ、ボスがそういうなら下っ端としちゃあ文句はないさ。ただ行くならあと一人護衛を増やすことだけを留意しておいてくれ。実力があったとしても何が起きるかは解らないんだ。”数に勝る暴力はない”ってのは間違いない真実だし」

 

「妙なところで慎重だナ」

 

「確殺とマンチ精神かなぁ、ここらへんは」

 

 その言葉にネタが通じたのか、アルゴがソファの上から苦笑して来る。やはり年齢が近いと話が通じるな、そんな事を思いながら、窓の外へと視線を向ける。

 

 ―――そこには未だ誰も触れる事無く、荒らされる事無く、聳え続ける迷宮の塔の姿が見えていた。




 この人、ソードスキルを使わないからどの武器を握って使っても良いんだよね。そしてシステムっぽい報告

・派生武器が追加されました(両手斧カテゴリー:鎌等)
・≪隠蔽≫や≪索敵≫に上位スキル、派生エクストラスキルが追加されました
・ユニークスキルはもっと早い段階で”色々”と出現するようです

 というわけで、また次回でレッツ放火

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