龍娘々伝   作:苦心惨憺

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第5話

 ピッコロ大魔王が倒された次の日の朝、牛魔王は目を覚ましていた。さすがは体力自慢の牛魔王である、まだ立ち上がることはできないが意識はしっかりしていた。

 

「すまねえだ。カノンちゃん、結局オラ何の役にも立てなかっただ」

 

 牛魔王は、事の顛末を聞きカノンに詫びる。

 

「そんな、お爺様はご立派でした。それに私はお爺様の孫です、お爺様の代わりに母様や皆様をお守りするのは当たり前です。」

 

「カ、カノンちゃん」

 

 牛魔王はカノンの言葉に感動し涙を流し抱きしめる。

 

「うお~~~ん!!カノンちゃんなんていい子なんだべ!!オラには勿体ない孫だべ!!」

 

「当たり前だ。おらの子供だべ。いい子に決まってる」

 

 チチは誇らしげに言う。牛魔王に抱きしめられたカノンは苦しそうに身じろぎする。

 

「お爺様、苦しいです」

 

「おお、すまんすまん」

 

 謝りながらも牛魔王は力を抜くが抱きしめるのをやめない。

 

「それにしてもピッコロ大魔王を倒したというその謎の少年とは何もんなんだべ」

 

 牛魔王は信じられなかった、何せ自分の師も歯が立たなかった相手だ。想像もできない。しかしチチには分かっていた。

 

「悟空さだ。悟空さに決まってるだ」

 

「!?」

 

 母の確信している顔。全く疑っていない言葉にカノンはまだ会ったことのない父を思う。そしてどうしようもない感情が湧き上がってくる。戦いたい。どうしようもなく。あのピッコロ大魔王を倒したという孫悟空と戦いたい!!!!

 

「母様!!お爺様!!私、父様に会いたいです!!!」

 

 急にそんなことを言い出したカノンに驚く二人。今まで父親の悟空の話をしてもそんなことを言わなかったカノン、おそらく悟空の修行を邪魔したくないという二人のことを慮って言わなかったのだろうとチチと牛魔王は思っていた。

 事実、カノンは二人の思う通りチチと牛魔王を困らせたくなかった。でも今は違う、どうしても会いたいという思いが口に出てしまった。

 

「そうだな、そろそろ会わせてもいいだな。おらも会いたいし」

 

「うむ、さすがにチチもいつまでも未婚のままでいるという訳にもいかないべ。え~と、悟空さが居るとすれば武天老師様のところがなぁ」

 

 チチと牛魔王がそういうがカノンの言う会いたいは、ただ会いたいではないのだ。

 

「あの違うんです。母様、お爺様。私は娘として会いたいのではなく、武闘家として会いたいのです。」

 

『へっ?』

 

 二人揃っておかしな声を上げてしまう。

 

「あ、あのカノンちゃん、武闘家として会うって悟空さと戦いたいってことか?」

 

「はい。私が父様の娘だとわかったら本気で戦ってくれないかもしれない。できれば、もっと力を付けてから会って戦いたい。いずれは娘であることを言いたいですが、今はまだ・・・」

 

 すまなそうにカノンは下を向く。母親のチチにしたらこのまま悟空に会えば、カノンのことがばれてしまう。ということは、チチが悟空に会えるのはまだ先になってしまう。

 

「わかっただ、カノンちゃん。やっぱり悟空さの娘だ、そういうところは父親そっくりだ。だから顔を上げるだ。」

 

 チチはカノンに優しく言い抱きしめる。

 

「じゃあ、うんと強くなって悟空さを驚かせないとな」

 

「はい!!母様!!お爺様、引き続き修行をお願いします。

 

 

 カノンはチチに笑顔を向け、牛魔王にお願いする。しかし牛魔王はそのお願いを聞いても難しい顔をするだけだった。

 

「あのお爺様?」

 

 返事がない牛魔王にカノンは困惑する。

 

「無理だ。カノンちゃんはこれ以上オラが教えても強くなれねえだ」

 

「そんな。おっとう!!カノンちゃんは、まだまだ強くなれるだ!!」

 

 カノンが武術をすることを認めたチチは、客観的に物事が見られていた。自分との戦い、昨日の化け物との戦い。確かに武術を習い始めてたった1年とは考えられない強さだ。実際は、前世の経験があるので1年ではないのだが。

 

「ちがうだ、チチ。確かにカノンちゃんはまだまだ強くなる。それこそオラの想像を超えて、今でさえオラの力を越えてるだ。そんなカノンちゃんに修行を付けるなんてとてもできないだ」

 

 自分を越えたことは嬉しいが、寂しさも感じる牛魔王だった。

 

「あ、あの。大丈夫です!!修行なら私一人でできますから!!」

 

 カノンは前世の記憶がある、前世でやった修行をすればいい。それで今の実力を急激に上げられるかはわからないが早く母が父に会える為にも頑張らなくてはならない。

 

「カノンちゃん・・・・!?そうだ!!カノンちゃん!!カリン、聖地カリンに行くだ!!そこならもっと強くなれるだ!!!」

 

「なんだ。おっとう、聖地カリンって?」

 

 聞いたことがない場所にチチが聞き返す。そして牛魔王は答える。

 聖地カリン、そこには遥か天空まで続く長い塔『カリン塔』があり、塔の頂上には仙人が住んでいる。さらに亀仙人が昔、その仙人に師事を受けたらしい。

 

「そこに行けば、もっと強くなれるのですね!!では、行ってきます!!!」

 

「ちょーと待つだ、カノンちゃん。一人で行くきけ?勿論、おらも行くべ」

 

 逸るカノンにチチも付いて行くという。そしてカノンを引っ張って歩いていく。

 

「あの、母様。どこに?」

 

「勿論、出発する準備だ。それに仙人様に教えてもらうだ。お洒落していかないとな」

 

 武術の修行を付けてもらいに行くのに、お洒落をしていくというチチに連れられ奥の部屋に消えていくカノンだった。

 

 

 

 

「さ、いくだ。カノンちゃん、忘れ物はないだか?ハンカチは?そうだ歯磨きセットいれたかなぁ」

 

 準備を終えたチチが自動車に乗りカノンに尋ねる。そのカノンはというと頭をシニヨンに纏められ、服装はワンピース、尻尾は服の中に入れられている。

 流石に大けがを負い松葉杖をついている牛魔王は付いて行くことができない。

 

「カノンちゃんもチチも気を付けるだぞ。それじゃあ、頼むだ」

 

「はい!!任せてください、牛魔王さま!!お嬢様方は私がしっかり目的地にお送りいたします!!!」

 

 運転手役になってくれた村人が気合十分に言う。自分たちを救ってくれたカノンは村人たちにとって英雄であり、その可愛さもあり人気は止まることがなかった。今も周りには大勢の、いや村中の人が見送りに来ている。

 

「頑張ってください!!カノン様~~~!!!」

 

 熱烈な見送りに汗を垂らしながら、手を振るカノン。

 

「きゃ~~~!!!カノン様!!可愛いいいいい!!!」「俺にも手を振ってくれ~~~カノン様~~~!!!」

 

 まるでアイドルだ。流石にこれでは切りがない。

 

「あ、あのもう出してください」

 

 村人の歓声を受けて出発するカノンたちだった。

 

 

 

 

「いや~~~流石、カノンちゃん。大人気だべ」

 

 先ほどの歓声を聞き嬉しそうにチチは言う。それに同意するようにうんうん頷きながら、運転をしている村人も同意する。

 

「それはそうですよ、奥様。カノン様は今や我々の英雄、いや天使です、いやいや大天使、いやいやいや」

 

 その二人の言葉を聞き流しながらカノンは思っていた。

 

(はあ・・ほんとは聖地カリンまで修行の為に走っていくつもりだったのになぁ・・・!?)

 

 考え事をしていたカノンは周りの風景がおかしいことに気づいた。今まで青空だったのに急に暗くなったのだ。

 

「あれ?また暗くなっただ?」

 

「え?よくあることなのですか?母様」

 

 チチ曰く、数年に一度こういう現象が起こるそうだ。カノンはこの世界特有のことと思い考えるのをやめ、聖地カリンに思いをはせた。

 

 聖地カリンに近づくにつれ、異様な長さの塔が見える。あれがカリン塔なのだろう。カリン塔の近くまで車で行き降りる。運転手は近くの村で待機すると言い去っていく。聖地だけあって車を置いておくのは、仙人も迷惑するだろうとの配慮だ。

 カリン塔の下にテントらしきものがあり、そしてそこから屈強な体の男とその息子と思わしき男の子が出てくる。

 

「あなた達は何者だ、ここは聖地。用がないのならば去れ。」

 

 ここ聖地に住む部族なのだろう。チチやカノンの前に立ちふさがる。

 

「おらたちは、カリン塔の仙人様に会いにきただ」

 

「なに?あなたが?」

 

 そう言い、チチを見る男、ボラ。まだ少女と思わしき彼女、隣にいるのは年の離れた妹だろう。若い頃、自分もカリン塔に挑んだボラにはとてもこの目の前の少女がカリン塔を登りきることができるとは思えなかった。

 

「いや、あなたではカリン塔を登りきるのは無理だ。いままで挑戦して頂上に到達できたのは二人だけだ」

 

 そう言い、諦めさせようと説得する。

 

「確かに心配だども。でも、おらは約束しちまっただ、約束は破っちゃなんねえ」

 

 チチはカノンに武術を続けることを認めた、子供とした約束だ。それを破ったら親として失格だと思っていた。

 その決意の目を見、ボラは説得するのを諦めた。

 

「わかった。もう何も言わない、だが塔を登りきる間もう一人の面倒は見させてくれ。仲良くできるな、ウパ」

 

「はい!!父上!!」

 

 ボラの息子、ウパがカノンの方を見ながら返事をする。

 

「ありがとう。そんなら行くべ。カノンちゃん!!」

 

 カノンは膝を縮ませ足に力を込め、答える。

 

「はい!!!行ってきます!!!母様!!!」

 

 大地を蹴り、遥か上空まで飛ぶ。

 

「え?え?」

 

 ボラとウパは空の彼方に消えていくカノンとチチを交互に見る。そんな二人に気が付かないチチは、もう見えなくなったカノンの無事を祈るのだった。

 

 塔を登り続けるカノン、流石にワンピースで登る訳には行かず、背負ってきたバックから白い胴着を出し、尻尾は帯の下に入れる。しかしもうかなり登ったはずなのに全然頂上が見えない。だがカノンの顔は笑顔だった。

 

(この先に、私をもっと強くしてくれる仙人様がいる!!!そしてそこで、うんと強くなればあのピッコロ大魔王を倒したという父様に、孫悟空と戦える!!!)

 

 悟空と戦うという一心でカノンはカリン塔を登り続ける。そして上り続けて4時間程、ついに頂上が見えてきた。

 

「はあ、はあ、あれが頂上。やった、、、です。」

 

 流石のカノンもなれない高高度の薄い空気の中を登るのは、体力をかなり消耗する。そしてついにカリン塔の頂上に手が付きそこにある宮殿に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 




相変わらず、話が進まない。




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