龍娘々伝   作:苦心惨憺

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さてこの回では数合わせ、いやカズーセ様の活躍が見れます!


第13話

 ついに準決勝に駒を進めることができたカノン。まだ試合の余韻が治まらない武舞台を後にする。

 

(次の試合は父様と戦える!ついにここまで来た!)

 

 前に悟空の姿が見える。分かる、カノンが悟空と戦いたいように悟空もカノンを求めていることが。目の前まで近づき、目線を合わせる。

 

「と、悟空さん、予選前に言ったように貴方と戦う為にここまで勝ち上がってきました。次の試合、私が持っている全ての力で貴方に勝ってみせます!」

 

「そうはさせねえ。勝つのはオラだ!」

 

 二人は口元をニヤリとさせ火花を散らす。そこに両者を遮るように男が割って入ってくる。

 

「おいおい。お前の次の相手は俺様、カズーセ様だぜ。そのセリフは俺様に勝ってから言うんだな」

 

 悟空の胸に人差し指を突き付けカズーセはその長い髪をたなびかせる。着ていたシャツを脱ぎ、しなやかな力強い体を見せつける。

 

「見ろ!この俺様の美しい肉体を!この世で最も美しく、そして強い俺様を相手にできるんだ。お前は幸運だぞ!」

 

 グイグイ出てくるカズーセに流石の悟空も後ずさる。クリリン、ヤムチャはダメージが酷い天津飯を支えながら思った。こいつバカだと。

 

「え~長らくお待たせいたしました。舞台整理も終わりましたので、次の試合を始めたいと思います!」

 

 一回戦からカノンがかなり荒らしてしまった武舞台を係員総出で直し終え、ついに悟空の試合が始まる。

 

「それでは!第二試合!孫悟空選手とカズーセ選手、登場してください!!」

 

「安心しろ。すぐには終わらせたりしない。俺様の美しさを会場中に見せつけなければならないのでな」

 

「あ、ああ」

 

 その数秒後、悟空の勝ちが宣言される。

 

『アホだな』

 

 クリリンたちだけでなくピッコロさえ意見が一致した瞬間だった。

 

 

 

 

 

(さてと、気を取り直してここからの試合は見逃せませんね)

 

 カノンの中で先ほどの試合はなかったことにし第3、4試合に集中する。どの試合もハイレベルの素晴らしい戦いだったが予想した通りピッコロ、シェンが勝ち上がってきた。だが負けたクリリン、ヤムチャの技は素晴らしく特にクリリンの『追跡エネルギー弾』、ヤムチャの『操気弾』これらの技は良く練られた技で大変勉強になった。しかし一番気になっているのは

 

「天津飯さん、あの空を飛ぶ技はいったい?」

 

「ああ、『舞空術』のことか」

 

『舞空術』全身の気をコントロールし放出することによって飛行することが可能になる技。気の放出量によって空を急加速で飛び、空中戦もよりスムーズに行えるらしい。カノンはゾクリとする。

 

(空中で戦いをする?ということは360度戦闘が可能になり、それだけ戦略の幅が広がる!凄い!凄すぎる~!)

 

 戦闘狂のカノンは戦いの新しい可能性に顔を赤くし身悶えする。周りで見ている者は「なにやってんだ?こいつ」という顔で見てくるが、そんなことは関係ないというばかりに興奮する。

 

(これは是非とも天下一武道会が終われば練習しなければなりません!そうだ!天津飯さんもクリリンさんも使えるなら教えてもらうのもいいかも?)

 

 ニヨニヨしているカノンについに待ちに待った時が訪れる。

 

「それでは!準決勝初めの試合を始めたいと思います!!」

 

 審判の声が聞こえ悟空とカノンは隣に並び立つ。ドキンドキンとやけに大きく自分の鼓動が聞こえる、体の底から早く暴れたい暴れたいと疼く。くくっと意識していないのに口から笑いが漏れる。

 

「おめえ、ホントに戦うのが好きなんだな?オラと一緒だ」

 

 はっと気づき悟空を見るカノン。カノンと悟空は確かに血のつながりがある、だがカノンが生まれてから今まで会ったこともない二人、ましてカノンには前世の記憶がある。どうしてこんなに似ているのか?それは【戦う本能】だ。悟空とカノン、二人の魂に刻まれた絆だった。

 

 

「悟空さん、今私はこの世界に生まれて本当によかったと思います。親愛しているお爺様、母様、そして・・・」(尊敬する貴方、父様に会えて)

 

「ははっ大袈裟な奴だなあ!」

 

 クシャっと頭を撫でられる。さっきとは違う高揚感に包まれる。カノンは思う。

 

(固い手。分かる、幾人もの強敵を打倒してきた手だ。これが孫悟空の手、父様の手・・・今なら出せる!前世を含め過去最高の力が!!)

 

 目の奥がギラリと煌めく。それを見て悟空も高揚感に包ませていく。

 

(まいったな。何でかわからねえ、わからねえけど!オラ、カノンと思いっきり戦ってみてえ!!)

 

「それではカノン選手!孫悟空選手!登場してくださーーーい!!!」

 

 わーー、と盛り上がる観客の声援を受け武舞台に降り立つ両者。

 

「カノン選手は1回戦で死闘の末、天津飯選手に勝利しました!!一方悟空選手は2回戦を一瞬で決めました!!この試合果たしてどうなるのでしょうか!!!」

 

 観客席では悟空を見守る亀仙人たちが応援している。何せ、自分たちの知り合いは悟空を除きみんな一回戦負けをしてしまったのだ。

 

「どうなるの?この試合?」

 

「ご、悟空だよ!悟空に決まってる!!」

 

「ま、順当にいきゃあそうだけどよ」

 

 ブルマ、ウーロンそしてランチはそう言うが一抹の不安は拭えない。

 

「亀仙人様、悟空さんは勝てますよね!」

 

 プーアルが亀仙人に聞くが亀仙人は難しそうに顔を歪める。

 

「むう~。それはわしにもわからん。何せ今残っておる4人は世界で最も強い者たちじゃろう。その力はわしの想像を超えておる。その中においてあのカノンという娘は随分、異質じゃの。あの年でこの強さ。しかもまだまだ力を隠しておるようじゃしの」

 

 カノンがまだ強さを隠していることに驚く4人。亀仙人は目の前でこれから起きる試合に集中する。

 

「さて、どうなるか?」

 

 

 

 

 

 屋根の上で見ているピッコロもこの戦いに集中する。

 

「この試合で、孫悟空の本当の力が見られる。そしてあの小娘の力も・・・」

 

 

 

 

 目の前で対峙するカノンと悟空を緊張の面持ちで見るクリリン、ヤムチャ、天津飯。

 

「悟空が勝ちますよね、ね!」

 

「あ、ああ。いくら強いとはいえ悟空が勝つさ」

 

「いや、わからんぞ」

 

 天津飯の言葉に振り返える。

 

「実際に戦った俺だからわかる。カノンの強さはあんなものじゃない。もっともっと凄いはずだ」

 

 

 

 

 

 武舞台に立つ二人の静かな気迫がぶつかり合うにつれて会場中が何時しか静寂に包まれる。審判はゴクリと唾を飲み込む。

 

「そ、それでは!はじめてくださーーーーーい!!!」

 

 始まりの宣言がされても二人はすぐに動かなかった。カノンに隙はなく、またそれは悟空も同じだ。焦れた審判が戦いを促すが動かない。しかしその時ふっとカノンが力を抜く。

 急に構えを解き隙ができたが逆に攻撃ができなくなる悟空。

 

「悟空さん。行きますよ!」

 

 カノンは腰を落とし、前方に開いた手を両手首に合わせ、その手を腰に持っていく。

 

「え!?まさか!!」

 

 驚く悟空達を無視し気を集中する、凝縮した光が輝きだし前方にいる悟空に放出する。

 

『かめはめ波ーーーーー!!!』

 

 驚いた悟空だが、大した威力のかめはめ波ではないと見抜き片手を上げ受け止めようとする。が、カノンはかめはめ波をコントロールし悟空の足元に落とす。

 ドガーーンと凄まじい轟音がし武舞台が土煙に覆われる。

 

「なんでカノンがかめはめ波を!」

 

クリリンが驚くがさらに驚くべきこと起こる

 

「しっ!何か聞こえないか?」

 

  ガッ!  ゴガ!  ズガガ!!  ドガ!!!

 

 聞こえる、確かに聞こえる。この土煙の中、天津飯の目でさえ見ることができない場所で戦いの音が。

 

 

 カノンと悟空は互いが目を閉じ、しかし迷うことなく標的を感じ取り攻防が続いていた。

 

(カノン!まさかオラが神様の修行で苦労して身に付けた技術を習得しているなんて、はっはーーーーー!!全くすげえやつだーーーーーー!!!)

 

 感じる、悟空の右足が胴を狙っているのを、それを避け反撃とばかりにローキックを放つしかし躱され右の拳が空気を切り裂き飛んでくる、左の掌で反らし懐に入る、そこに膝が割り込み右に避け脇腹に拳を叩き込む、だが掌で受け止められる。そんな攻防が延々続いてゆく。

 

(凄い!凄い!!凄い!!!すごーーーーーーい!!!!まだ!!まだまだ!!!まだまだまだーーーー!!!!)

 

 その攻防が続くたび、カノンと悟空のテンションは鰻登りに上昇する。

 

『はあああああああああああああ!!!!!!?』

 

 武舞台中央で一際凄まじいぶつかり合いをし、武舞台を覆っていた土煙が二人を中心に吹き飛ぶ。そして右腕と右腕をぶつけ合い、力比べになる。二人を覆うように気のオーラが登り今度は土煙の代わりに紫電が武舞台を覆う。

 

 バチィィィィ!!!

 

近くで見ていたクリリンたちは、気の余波を食らい後ずさる。

 

「な、なんだよこれは!こんなことが!!」

 

「凄すぎる!あいつらなんて試合しやがる!!」

 

「か、勝てないわけだ!レベルが違いすぎる!!」

 

 カノンと悟空の戦いはますますヒートアップしていく。力比べをしていた武舞台から一瞬で消え去る。

 

「き、消えた!」

 

 亀仙人には全く見えなかったが、また音だけが聞こえる。今度は地上ではない。

 

「上じゃああああーーーー!!!」

 

 その声で一斉に上空を見る観客達。確かに見える、はるか上空で二人がぶつかり合う閃光が。

 

上空に上がりながら拳、蹴り、肘、膝、体のありとあらゆる一種の凶器をぶつけ合う。やがて二人はジャンプの到達点に登り今度は頭から落ちそれでも攻撃の手は緩めない。

 地上が近くに見えてきたそのとき、悟空はカノンの攻撃を躱し弾丸となり急速に落下する。それを追うカノン。地上にいち早く降りた悟空は腕から着地しカノンが落ちてくる落下点に向けて構える。

 

「しまっ!」

 

「だあ!!」

 

 凄まじい衝撃波がカノンを襲い、態勢を立て直すこともできず場外に吹っ飛ぶ。そんな中、カノンの頭にあったのはもうこの試合が終わってしまうのかという残念な気持ち。こんな簡単な攻撃を許してしまった自分への怒り。そして・・・

 

(あったじゃないか!!この危機を逃れることができる答えが!!!)

 

 困難を乗り越えようとする、くじけない心が!!

 

 カノンは刹那の時間思い出していた、餃子、天津飯、クリリン、そしてピッコロが使っていた技を。全身の気をコントロールし放出する。

 

「浮けええええーーーー!!」

 

 場外に落ちる寸前カノンの体が止まる。慣れない舞空術で体が勢いよく武舞台に突っ込み、今度は前方に気を放出しブレーキをかけ膝立ちになり石畳に降りる。驚いている悟空を見ながら立ち上がり両腕の拳をぶつける。

 

「さあ!!第二ラウンド開始です!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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