魔法少女まどか☆マギカ ~ミサトとユウコはマドカの敵~   作:Mr.モノクマ

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第7話 「保健室の思惑」

時、遡ること20日前・・・・

 

  9月3日 現在時刻:07時53分

鹿目まどかに保健室まで連れて行ってもらった当時、転校生の暁美ほむら。

まどかは親切にも場所のみならず、最後までついてきてくれた。

だが実際には、ほむらが先に行ってしまったのでまどかは後ろを歩いているだけだったのだが。

 

「・・・すみません」

 

保健室の扉を開けると白衣を着た女の先生がお茶を飲みながらくつろいでいた。

机の上には『漫画でわかる サルモレラ菌全書』という本が置いてあった。

 

「あっ、ごめんなさいねっ」

 

一瞬気づくのに遅れた保険医は、あわててお茶を飲み終えてほむらのほうを見る。

 

(サルモレラ菌・・・)

 

机の上に置いてある珍妙なタイトルの本に目を奪われる。

 

「それでどうしたの?」

「あ、ちょっと気分が悪くなってしまったんで」

 

片目を閉じて頭が痛いように抑える。

 

「無理しないで。じゃあここにあなたのクラスと出席番号を書いて」

 

目の前に保健室に訪れた入退出名が書いてある名簿を渡す。

やたら男子の名前でベッド使用者が多いのが気になる。

しかもその名前というのが同じような人が多く、それも昼休み後。

 

「ああ、これ?傑作でしょ。この男子絶対にずる休みよ」

 

ファイルを見て子供のように無邪気に笑う保険医。

 

「あの。私今日、この学校に転校してきたんで出席番号とかは」

「そうだったの。じゃああなたが暁美さん?」

 

転校してきたという情報だけで自分の名前がわかった。

 

「ええ。でもどうして私の名前が?」

「凄い美人の転校生が来たっていう噂があってね。ピーンてきたのよ」

 

「ありがとうございます」

「じゃあ今日は名前書かなくていいから」

 

すると手を引かれて奥のほうにあるベッドに案内される。

 

「はいどうぞ」

 

白いベッドの上に横になるほむら。

 

「じゃあ起きたら教えてね」

 

カーテンを閉めると光に反射して、保険医のシルエットの身が見える。

おそらくまたお茶を飲みながらあのサルモレラ菌の漫画を読んでいるのだろう。

 

(天井が白い。変わらない白さ・・・・)

 

真上に天井を見ながら不意にそう思った。

 

(今度こそ、今度こそ、絶対に目的を果たして見せる)

 

そのうるんだ瞳にはすべてが映っている。

嬉しかったことから、哀しかったこと、絶望的なことまですべて。

 

(わたしは諦めるわけにはいかない。

必ず救ってみせると約束したの、どんな犠牲を払ってでも必ず)

 

誰かがみんなが笑えるハッピーエンドなお話を作ろうと言っていた。

だがそんなことできるのは万に一つの可能性だ。

ハッピーエンドを迎えるには誰かの尊い犠牲が必要なのだ。

 

(しかし、本当に私にそれができるのだろうか?

今までもそうやって来たが駄目だった。

どうすれば・・・・)

 

その時ふと教室内で見たまどかの笑顔を思い出した。

 

(あの時はたしか卵の話をしていた。くだらない話だけど笑顔で楽しそうだった)

 

今の私に卵でなぜそこまで笑うことができるのかはおそらく絶対にわからないだろう。

 

(まどかの笑顔)

 

それを見るためだけに頑張ってきた。

 

(私がまどかに笑顔を作ることができるのだろうか?

まどかと楽しい思い出を作ることができるのだろうか?

まどかと安心で素晴しい学校生活を送ることができるのだろうか?)

 

朝日がさんさんと自分の顔に照り付ける。

 

(できる。目的を果たすことができればそれもすべてできる)

 

そうだ。私はこのために頑張ってきたんじゃないか。

今更どうこう言っても始まらない。

 

(そうよ。どんな犠牲を払ってでも私はまどかを守り抜く。

最初のうちはつらい思いをさせるけど・・・一番つらいのは・・・・)

 

一体誰なのだろうか?

重い運命を背負ってこの世界に生きている私なのだろうか?

それとも・・・・

 

(とりあえず今は寝ましょう。あとのことは後々考えるわ)

 

ほむらは静かに目を閉じて意識を眠りの世界にゆだねていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

  9月3日 現在時刻:08時50分

ほむらが保健室に来てから丁度一時間がたとうとしている。

チャイムも同時になって目も覚めた。

 

(8時50分。そろそろ全員が帰る頃ね)

 

ベッドから降りてカーテンを開けると先ほどの保険医はまたお茶を飲んでいた。

漫画の内容が変わっている。

今度は『漫画で分かる 職務規定違反をかいくぐる方法』だ。

 

(職務規定違反でも犯すつもりなのかしら)

 

そんなことを思っていると保険医がまた一瞬遅れてほむらのほうに気付く。

 

「暁美さん、起きたの?」

 

お茶を急いで飲み終えて、ほむらに向けてニコッと笑顔を向ける。

 

「はい。おかげさまで」

「じゃあ。そろそろ教室に戻っても大丈夫かしら」

 

「ええ。私はこれで失礼します。ありがとうございました」

 

ぺこっとお辞儀をして保健室の扉を開ける。

 

「あっ、そうだ暁美さん。私の名前は稲村円花(いなむらまどか)よ」

「まどか・・・」

 

「ええ。そういえばあなたのクラスにも鹿目まどかさんていう名前の人がいたわね」

「はい知っています」

 

「まどかって自分でいうのもなんだけどかわいい名前よね」

「確かに、私もそう思います」

 

するとほむらの顔がちょっとだけ赤くなった。

 

「フフフ、ほむらって名前も可愛いわよ」

「失礼します」

 

ほむらは振り返らずに静かに扉を閉めた。

教室に歩いていくとき、ほむらは保健室に入る前のまどかの慌てっぷりを思い出す。

 

(あの時のまどか・・・可愛かったわね)

 

ほむらの目には先ほど以上より一層の決意がわいた。

 

(まずはあれを止めないと)

 

 

 

 

 

 

 

 

だがほむらはその時まだ気づいていなかった。

これから訪れる出来事が彼女にとって悲劇となるか・・・・それとも喜劇となるか。

それは神のみぞ知る世界なり。




今回は1話の保健室で別れた後にほむらがどのような思惑でそこにいたかを100%オリジナルで書いてみました。
なんだかコメディー成分が少ない気もしますが、それもアリかなって思ったりしてみます。
ミサトとユウコの本格的な出番はいつになるのか・・・まあ飽きずに楽しみにしてください。

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