魔法少女まどか☆マギカ ~ミサトとユウコはマドカの敵~ 作:Mr.モノクマ
9月23日 現在時刻:7時53分
まどか&さやか&仁美の3人は力の限りに走りぬいた。
だが所詮は中学2年生の女の子の体力などたかが知れている。
途中でばてながらも一生懸命走ったが、結果的にも3分間の遅刻をしてしまった。
「先生もう来てるかな」
「来てるだろうね」
「私たちは新学期早々に怒られるのでしょうか?」
入ってくるなり先生が自分たちのことを怒り、生徒全員に醜態をさらしてしまうという悲劇を想像する3人。
新学期早々遅刻とは本当についていない。
(もしかしてあの時見れなかった占い、私最下位だったのかも)
実際まどかの順位は天秤座で最下位だった。
「じゃあ覚悟を決めて入ろうか」
さやかが大きく深呼吸をして教室の扉を開けるとそこには・・・・!!!!
「先生がいない」
ホームルームで来ているはずの早乙女先生がまだ教室に来ていなかったのだ。
先生が来ていないのでクラスの人たちは思いもいに話したり本を読んだりしている。
助かったとほっと一息つくまどか&さやか&仁美。
「もしかして朝礼の準備とかで、遅れているのかもね」
まどかがさやかに言うと逆に全身の力が抜けていくように床に座り込む。
ここまで一生懸命に走ってきたのに。
こんなことならばもう少しゆっくり歩いていけばよかった。
(ウドンコの件もあるし、今日はなんだかついてないな。もしかして『朝ザブッ!』の占い結果見てないけれど最下位だったのかも)
さやかは毎朝タモリが司会を務めている『朝ザブッ!』という情報番組を見ているのだ。
7時ピッタリに朝の占いが始まるのだが、今日はそれを見ていない。
「あなたはそこにいつまで座り込んでいるの?」
後ろを向くと一人の少女が涼しげな表情で立っていた。
「転校生!?」
そこに立っていたのはさやか達と同じクラスの暁美ほむらであった。
「ほむらちゃん、“おやほう”」
「それを言うなら“おはよう”よ。鹿目さん」
「あっ」
ただいまとおかえり、エスカレーターとエレベーターそんな間違いならまだある。
でもおはようをおやほうと言い間違えるなんて。
恥ずかしくてまどかもさやかと同じように床に座り込んでしまう。
「そんなところに座っていると汚いわ」
「そ、そうだね」
暁美ほむらは新学期序盤にこの学校にやってきた転校生である。
とてもクールな子で、あまり口数は多い方ではない。
でも運動神経は抜群で、ありえないほど頭もいい。
「そんな彼女には誰にも言えない秘密があり・・・」
「さやかちゃん。一人で何言ってるの?」
「なんちゃってナレーションの美樹さやかちゃんでした」
「愚かね」
「なんだとーっ!」
「まあまあ、お二人とも。暁美さん、教室の扉から出てきたと言う事は何か用があったのでは」
地べたに座り込みながら怒っているさやかと軽くあしらっているほむらの間に仲介する仁美。
「さっき先生から連絡があって、朝礼は中止みたいよ」
その言葉を聞いたクラス全員から歓声が巻き起こる。
そりゃつまらない朝礼を聞かなくて済むのだからうれしさも倍増だろう。
「やったー!」
とその時、教室の扉が開いて早乙女先生がやってきた。
「美樹さん?こんなところに座って何をやっているんですか?」
早乙女先生の頭に?マークが浮かんだのが分かり、さやかも顔を真っ赤にしている。
朝っぱらから地べたに座り込んでいる姿を教師に目撃されたのだから無理はない。
「いや、ちょっと貧血で。アハハ・・・」
「大丈夫ですか?保健室行きます」
「大丈夫ですよ。私毎朝貧血で倒れているので」
毎朝貧血で倒れてなどしたらそれこそ一大事、保健室どころの騒ぎではない。
席に戻る時、さやかが自分のほうを向いてペロッと舌を出す。
(もう、さやかちゃんたら)
「ではこれからホームルームをはじめますがまずは皆さんにお知らせを」
なんだろうと教室はざわつく。
「まず一つ目は皆さんの知っている通り朝礼が急遽中止になりました」
めんどくさい校長の長話が中止になったときクラス中が再び歓喜の嵐に包まれる。
あるものは握手を交わし、あるものは抱き合い、あるものは涙まで流していた。
そこまでしてほどこの見滝原中学校の朝礼はつまらないのだ。
「よかったね!さやかちゃん」
「ああ、あたしはうれしいぞ。もしかしたらあの占いは1位だったのかも」
「占いって?」
「いやこっちのことだ。それにしてもよかったな」
さやかは始業式の校長の話を思い出す。
正味30分近く続いた長話。
しかもそのほとんどが歴史上の人物をモチーフにしたマイナーでつまらない話だった。
「これを聞かなくていいと思うと本当にうれしいぞ、さやかちゃん万歳!」
「いや、さやかちゃんが中止にしたわけじゃないでしょ」
苦笑いのまどかだったが今頭の中お花畑のさやかになにを言っても無駄だ。
「本当に愚かね」
ボソッと言ったほむらのことばもいまのさやかには耳に入らなかった。
「次に二つ目のお知らせ・・・・・・」
今度はなんだろうと少しばかり生徒の話し声が聞こえる。
また朗報だったがいいが全てが全てそういうわけにいかないものだ。
「これは非常に大切なお話です。みなさん、心して聞くように」
早乙女先生の顔が真面目になり空気が重苦しいものに変わる。
バンッ!!
教壇を思いっきり叩く。
「いいですか女子の皆さん!
卵の焼き加減にケチをつけるような男とは決して交際してはいけません!
目玉焼きは半熟に決まっています!
いえ、中には固めのほうがいいという人もいるでしょう!
ですが自分の好みを強要してなおかつすべての卵を固めにしてしまうだなんて!
そんな男はロクなもんじゃありませんよ!
そして男子はくれぐれもそういう大人にならないように注意してください!」
目が血走っていた。
生徒たちは黙っていたが、何があったのかは一発でわかった。
「先生が言いたい2つ目の大事なお知らせはそれです・・・」
グス、グス、と涙をすすっている。
「あちゃー、今回の相手もダメだったのか」
「だね・・・」
「今回は3か月だったね」
「アハハ、さやかちゃんよく覚えてるね」
3か月前はあんなに嬉しそうだったのに、これで何回目だろう。
「あーあと、実力試験が近いです。これが3つ目のお知らせ」
いつの間にかケロッとしてニコニコ笑顔に戻っている。
熱しやすく冷めやすいというのはまさにこの事。
(一番最初に言う事だろーーーー!!!)
全員が心の中で総ツッコミした。
この時から彼女たちのおかしな日常は、さらなるおかしく奇妙で理不尽で不条理な日常へと変化していくのであった・・・