魔法少女まどか☆マギカ ~ミサトとユウコはマドカの敵~ 作:Mr.モノクマ
第2話 「リアルな夢」
「どうしてそんなことするの?」
私は得体のしれない恐怖におびえながら目の前に人物に質問をする。
シルエットでうまく姿は見えないが女性が二人に1メートルぐらいのウサギのような猫のような。
一人はロングヘアー、もう一人はショートヘアーまたはセミロングと見える。
「何だかんだと聞かれたら」
「答えてあげるが世の情け」
「魔女の破壊を防ぐため」
「世界の秩序を守るため」
「愛と真実の正義を貫く」
「クールでナイトな魔法少女」
「ミサト!」
「ユウコ!」
「銀河を駆けるナイトメアの二人には」
「ブラックホール絶望の未来が待ってます」
「そうなの!」
ナイトメア、ミサトとユウコと名乗る二人の人物は、訳のわからない口上をタイミングよくいう。
口上を名乗る意味はまったく分からないが、それでも恐怖はぬぐえない。
「私たちは貴女たちを殺そうとするつもりは全くない」
「そうです。ただ貴女にお願いがあるだけ」
お願いとはいったい何なのだろうか。
「そうなの。でもこの二人の言うことはそこまで真剣に聞かなくていいの。ナノの話を聞くの」
語尾に「~なの」とつける黒ウサギのような生き物はズンと前に出る。
ロングヘアーの女の人が頭から黒ウサギをつかみ取る。
「うるさいな!キューピーは余計なことを言わなくていいの」
この黒ウサギはキューピーというのだろう。
「ミサトじゃ信用できないの。だからナノが手助けしてあげるの」
「だ・か・ら!あんたが一番信用できないって、ちょっと黙っていろ」
次の瞬間、キューピーの体は一瞬にして氷の塊に変化する。
キューピーをもう一人のセミロングの女の人に渡すミサト。
「いつでもいいから適当に溶かしておいて」
「もう、ミサトは勝手なんですから」
敬語口調のセミロングの女は氷の塊になったキューピーをこれまた一瞬で元に戻す。
「酷いの!ユウコはあいつをやっつけるの」
「分かったから。もう少し黙ってましょうね」
ユウコは優しく、怒っているキューピーを抱きかかえてなだめる。
「じゃあこれからあなたの運命を決めるうさん臭い生き物に会わせるわ」
すると後ろからまた何かが現れた。
白い生き物だった。無表情だが外見は非常に可愛い。
「胡散臭くて悪かったね。でも君たちのほうが胡散臭いよ」
「あなたは!」
彼女は知っていた。
「QBがなんでこんなところに」
QB(キュゥべえ)と名乗るその生き物は、ニコッと笑顔になり言った。
「ぼくと契約して魔法少女になってよ!」
ピピピピピピピピピピピピピピ・・・・・・・・・
目覚まし時計の音とともに、私は目を覚ました。
「夢オチ?」
さっきまでの夢が頭におぼえているほど、リアルだった夢の出来事。
私は洗面所で学校のためにつけていくリボンを真剣に選んでいた。
「リボン・・・うーん、どっちにしよう?」
「こっちがいい」
悩んでいると唐突にピンクのリボンのほうに指が差し出される。
目線の先にはスーツ姿に身を包んだショートヘアーの女性がたっていた。
「それでいいかな」
彼女の名前は、鹿目詢子。
やり手のキャリアウーマンで、本人の見立てでは社長の座も充分に狙えるらしい。
主婦ではないので家事は夫に任せている。
「派手じゃないかな」
「それぐらいが丁度いいよ。これでまどかもモテモテだ」
中学2年で恋心にも敏感な少女を冷やかす母親に顔を真っ赤にするまどか。
その後、リビングルームで朝のテレビ番組『めざめろテレビ』を見ながら朝食をとる。
「今日の占いは何かな」
「まどかはその年でまだ占いなんか見てるのか」
「い、いいでしょっ!」
またも顔を真っ赤にするまどかを楽しむ母親とそれをにこやかに見つめる父親。
いつもの楽しい家族の朝食風景だった。
「あれっ?まどか、今日は早めに学校いかなくちゃダメなんじゃなかったっけ?」
まどかの父である、鹿目知久が思い出したように言った。
するとまどかも思い出したらしく大急ぎでパンを平らげる。
「そうだ!忘れてた。今日は早いからってさやかちゃんと仁美ちゃんも言ってたんだ」
俊足のスピードで通学用の手提げバッグを持ち学校に向かう。
「行ってきます!」
「行ってらっしゃい・・・・」
知久が呆然とした顔でいい、詢子は大笑いをしている。
「まったくまどかは何考えているんだか。おっと占い結果は・・・」
まどかの誕生日は10月3日生まれで天秤座だ。
「あらら、今日の結果は最下位だ。見なくてよかったな」
見事に最下位になってしまったまどかの占い結果。
その場にいても、それを見ていたらすごくガッカリしていただろうから良かったのかもしれない。
『今日の最下位は天秤座のあなた。いつもと180度変わってしまう日常になってしまうでしょう。転校生には気お付けて。ラッキーカラーは黒』
いつもと180度変わってしまう日常。それは今にわかるだろう。
ただそれは彼女のみならず他に人にも影響する恐ろしくもバカバカしいものだった。
今からちょうど3時間前の午前4時。
二人の少女と一人の魔女が、この見滝原市に到着した。
だが服はボロボロで一見すれば、変質者と思われるかもしれないがこの時間なので人は全くいない。
その上暗いので遠くから見れば、姿かたちは見えづらい。
「やっと着きましたね。見滝原市」
「着きましたねじゃない。春日部からどうして三日もかかるんだ?」
ついて喜びを表現しているユウコとは裏腹にミサトはものすごく不機嫌そうだった。
「不機嫌そうにしているけどミサトが悪いの」
「ちょっと、キューピー」
「なんですって!」
しゃがんでキューピーの口を抑えるユウコとギロリと睨み付けるミサト。
「モゴモゴ・・・プハッ!だってミサトが全く違うところ行ったのが悪いんじゃないの」
「はぁ!?私のせいだっていうの」
「だってそうとしか考えられないの。ユウコもそう思うなの」
「えっ?私は・・・そうかなって」
「全部私のせいじゃないでしょ。違った方向を教えなかったあんたらにも責任はあるんじゃないか」
「それは言いがかりなの!自分の責任を他人に押し付けているだけなの」
「ここでやるっての!今すぐあなたを粉々にしてもいいんだからね」
「ストップ!ストーップ!喧嘩はいいですから」
二人の仲裁に入ったのはユウコだった。
「ほら、仲直りして」
「分かったよ」
「分かったなの」
渋々だがミサトはしゃがんでキューピーのちっちゃな手を握る。
ウサギと猫を掛け合わせたような体に毛皮で包まれたちっちゃな肉球のような手。
「ところでついに見滝原市に来たけど」
ミサトが真面目な顔で切り出す。
「私達ってここに来たことあったっけ?」
「えっ?5年前に一度だけ」
そうここに来るのは数年ぶりだった。
あの時は何とも思わなかったがいまこうしてみると非常に懐かしい。
「あれから数年の間に私たち結構なところに行ったよね」
「そしてついにここに戻ってきました」
「でももしここに情報が洩れてたら」
「大丈夫でしょ。それにどうせ今週中には顔合わせするんだし」
「それはそうと、私気になってることがあるんです」
暗くてわからないが一瞬だけ光の加減でユウコの顔が思いつめたような顔に見える。
「まだアレはあるのでしょうか?」
「ないとは言えないだろ、おそらくあそこに行けばまだあるはずだ」
「でもまずはそのことは忘れるべきなの」
あの町を見た瞬間に思い出す。あの苦渋の運命。
だけどそんなことは関係ない。
今は目の前の目的を遂行するのみ。
「「「ソウルジェムを必ず手に入れるわよ!!!」」」
「でもまずは住むところを見つけませんとね」
ずっこけるミサトとキューピ。
せっかくやる気になったのに場違いなことを言うからだ。
「分かったわよ。まずはそれからだね」