魔法少女まどか☆マギカ ~ミサトとユウコはマドカの敵~   作:Mr.モノクマ

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第24話 「巴マミの最期」

  現在時刻:16時32分

お菓子の魔女シャルロッテが作り出した結界内のどこか。

カチッと、鍵が開けられるような音を立てて、ほむらの拘束が解かれた。

地面に両足で着地したほむらは、消えていくリボンを見つめる。

 

「まさか・・・巴マミ・・・」

 

もしかしたら、嫌な予感がほむらの頭によぎる。

早歩きでマミのところに急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どういうこと?」

 

衝撃的な光景に思わず目を閉じてしまったまどかとさやか。

恐る恐る目を開けてみるとそこには信じられない光景が広がっていた。

 

「な、ナイトメア?」

 

口元から炎が燃え広がり、苦しみもがいているシャルロッテ本体。

そして地面には魔法少女の姿から元に戻り腰を抜かしているマミの姿と、それを御姫様抱っこしているミサトの姿がそこにあった。

 

「いったい何が起こったの?」

 

 

 

  過去時刻:16時31分37秒

マミがシャルロッテに殺されそうとしたその時、風のような速さでマミの目の前に現れた1人の影。

まどかもこれまでにないくらい大きな声で死が迫ろうとしているマミを呼ぶ。

 

「ここで死なせるわけにはいかないんですよ」

 

そこに現れたのはナイトメアのユウコであった。

 

「あれはナイトメアのユウコ?」

「どうしてこんなところに」

 

ユウコが大きな口を開けているシャルロッテに手をかざすと、口の中が大炎上する。

まるで山火事のごとくものすごい勢いだ。

 

「気を付けてくださいね、巴さん。ちょっと暑いですから」

 

だがそんな注意などもう遅し、マミは炎の暑さと目の前の恐怖で動けなくなってしまった。

魔女はその炎に悲鳴を上げ、体をよじらせながら暴れる。

 

「まったく、こんなところで気絶するなんて信じられないの」

「まだまだアマちゃんだってことだよ」

 

まどかの真上からミサトとキューピが飛び降りる。

そしてミサトは気絶したマミに駆け寄って、暴れる魔女のスキを狙いヒョイっと持ち上げる。

この場合、御姫様抱っこしか方法がなかったが仕方がない。

 

「ユウコは援護をよろしく、あたしはこいつを安全なところへ」

「分かりました、キューピは魔女の分析をよろしく」

「分かったの。本体分離の法則、確りと見届けさせてもらったの」

 

ミサトはパッと消えると、パッとまどかたちの前に現れる。

 

「よ、よかった・・・」

「生きてた、マミさん生きてた」

 

動揺してその場から泣き出してしまうまどかとさやか。

マミは目を閉じてその場から動かない。

 

「あーあ、おい大丈夫か?ショック死してないか?」

 

抱きかかえたまま呼びかけるがマミは呼びかけに応じない。

 

「大丈夫、気絶しているだけだ。ミサト、マミを助けてくれてありがとう」

 

キュゥべえが冷静にマミの容態を見て言った。

あくまでそうだがキュゥべえも本当はすごく安心していた。

 

「ありがとう、ナイト・・・ミサトさん」

「魔女を追い払って、尚且つマミさんを助けてくれるだなんて」

 

まどかはナイトメアと出会って初めて、ミサトのことを“さん”づけで呼んだ。

さやかも自分の目の涙を吹いて、ナイトメアに感謝する。

 

「今までただのドジ集団と思っていたのに、すごい魔法少女だったんだ」

「ドジ集団ってなんだよ」

 

変な名乗りを上げて、しかもやけに明るい歌まで発売している。

謎が多いとともにそれは尊敬の値になるものだった。

 

「あっ、ユウコさんは?」

 

見るとシャルロッテが口の中の炎を完全に消した状態であった。

それと同時に怒りの声が結界いっぱいに響き渡る。

 

「あそこだ」

 

手の平から今度は炎ではなく、マグマを出してシャルロッテにむけて不敵に笑みを浮かべる。

マグマが瞬く間にシャルロッテの周りを取り囲む。

 

「さて、やりますか」

 

マグマのかさがどんどん増えてゆき、滝のごとくシャルロッテを襲う。

ものすごい悲鳴とともにマグマの波がユウコの足元に流れる。

 

「ご安心を。私はまったくもって熱くはありません」

 

目の前のシャルロッテはいなくなっていた。

消滅したとユウコは思ったが、グリーフシードは見つからない。

 

(成長促進光線銃を使ったのでグリーフシードはないのでしょうかね)

 

そのまま結界が壊れるのを待っていると悲鳴とも取れる声が聞こえる。

声の先はまどかたちでユウコを見ながら後ろ指を指している。

 

「気を付けて、後ろ後ろ後ろ!!!!!」

 

振り向くとそこにはマグマで焼けただれたシャルロッテが最後の一息と大口を開けている。

あの滝の中をギリギリで逃げのびたのだ。

真っ赤なマグマの滝だったので逃げたことにまったくもって気づかなかったのだ。

 

(油断しましたね・・・)

 

そう思った時にはユウコの頭はシャルロッテによってパクっと食われてしまった。

頭部の無くなったユウコの体が、そのままバタッと倒れた。

 

 

 

 

 

 

 

「ユウコさ~~~~~~~~~~~ん!!!」

 

 

 

 

 

 

二人がミサトのほうを見るとマミがドーナツの上に横たわっていたがその姿はなかった。

キューピの姿も見当たらない。

ユウコの首からはドロドロと赤い液体が少しずつ流れている。

 

「ユウコさんまで」

「二人とも!今すぐ僕と契約を!まどか!さやか!願い事を決めるんだ、早く!」

 

キュゥべえが緊急事態といつもより大きな声で叫ぶ。

すると・・・

 

「その必要はないわ」

 

いやその場にいる全員の耳元に、1人の少女の声が聞こえた。

 

「ほむらちゃん!」

 

さやかとまどか同時に声を上げた。

目の前の柱の上ににいつの間にかほむらが白と黒の服装で無表情で立っていた。

 

「こいつを仕留めるのは、私」

 

魔女はほむらに向けて喰らいつこうと襲い掛かるが、ほむらは魔女が接近してくる瞬間に別の柱へ移動していた。

これはナイトメアの使う瞬間移動とはちょっと違っていた。

再び喰らいつこうとするが、またほむらは別の柱へ瞬時に移動する。

何度も何度もそれを繰り返しているうちに、口の中から爆発が起こる。

 

「えっ?どういう」

 

二人は肩を取り合い、どういう状況下を理解できなかった。

 

「盾から何か出してる?」

 

盾から何かを取り出してそれを魔女にほうりなげて別の柱に移動しているのだ。

やがて次々と爆発が起きて、魔女は脱皮をするが、爆発は収まらない。

最終的に体の内側から大爆発し、完全に消滅した。

 

「目に焼き付けておきなさい。魔法少女になるって、そういうことよ」

 

魔女結界が崩壊する瞬間にまどかは見た。

 

(死体が消えてる?)

 

そこにあるはずのユウコの死体がそこにはなかったのを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  現在時刻:16時35分

結界が崩れると、元通りの見滝原国際病院の駐輪場に戻る。

それと同時に小さなグリーフシードが地面に落ちている。

 

「くぅっ!」

 

ほむらがそれを取ろう静かに歩き出した。

その姿を見て、さやかが我に返り立ち上がり、睨み付ける。

 

「ちょっとまてよ!」

 

足を止めて、キュゥべえを連れて行ったあの時のように冷たい視線をさやかへ送った。

そして走ってほむらよりも先にグリーフシードをとる。

 

「返しなさい、美樹さやか」

「嫌だ!これは、これは・・・マミさ・・いや、ナイトメアのものだ!」

 

ナイトメアのユウコが命がけでマミを助けてくれた。

その結果として、頭を・・・

 

「これは渡すわけにはいかない」

 

ほむらがさやかに近寄ると震えている手から強引にグリーフシードを奪い取る。

 

「あなたは勘違いをしているようね。これは魔法少女のためのもの、貴女に触る資格なんてない」

 

威圧感になにも言えずに、ただ涙だけを流している。

ほむらは振りかえろうともせずに立ち去ろうとしたその時!

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんたも間違っている」

「それは私たちのグリーフシードですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「その声はもしかして!」

 

さやかが声の方向、上を向いた!

 

ミサト「もしかして、と聞かれたら」

ユウコ「答えてあげるが世の情け」

ミサト「魔女の破壊を防ぐため」

ユウコ「世界の秩序を守るため」

ミサト「愛と真実の正義を貫く」

ユウコ「クールでシリアスな魔法少女」

ミサト「ミサト!」

ユウコ「ユウコ!」

ミサト「銀河を駆けるナイトメアの二人には」

ユウコ「ブラックホール絶望の未来が待っています」

キューピ「そうなの!」

 

駐輪場の屋根の上から飛び降りたのは、ナイトメアの三人だった。

そこには死んだはずのユウコもいた。

ユウコはほむらの前に行き手を差し出す。

 

「そのグリーフシードを渡してくれませんか?」

「私が嫌だといったら?」

 

「ここであなたと私たちが殺しあうなんてそんな野暮なことしたくはありませんよね」

「あなた達の目的は?」

 

「それを教えるわけにはいきません」

「分かったわ、これはあなた達にあげる」

 

ほむらがグリーフシードをユウコの手の上に置く。

 

「ありがとうございます、このままあなたは帰るんですか?」

「そのつもりよ」

 

「巴さんたちはこの後ケーキを食べるみたいですが?」

 

帰ろうとするほむらの足が一瞬止まるが、すぐにまた歩き出す。

 

「・・・・・・」

「おや?」

 

そしてまた止まる。

ほむらはそのまま黙って動かない。

そして。

 

「どうでもいいわ」

「クールですね、ま、あまり干渉はしませんが・・・・しかし」

「顔から後ろめたさがにじみ出てるの」

 

「黙りなさい」

 

ほむらはそのまま歩いて行って、姿を消す。

マミもここでようやく目を覚ます。

 

「あ、いやぁぁああああ!私死んじゃったの?」

 

流石のマミも取り乱す。

それもそうだ、つい数分前に死線を見たのだから。

 

「あとで話します。でも言えるのはナイトメアが助けてくれたんですよ」

「えっ?ナイトメアが」

 

マミは信じられなかった、敵だった彼女たちが助けてくれただなんて。

 

「信じられないかもしれないけどほんとなんです」

「でも、どうしてユウコは?さっき死んだ・・・」

 

「失礼な、ちゃんと生きていますよ」

 

「じゃあどうやって?」

 

ユウコは説明した、なぜ彼女が生きているのかを。

ユウコの魔法はそう、炎を自由自在に操る『炎魔法』である。

それはただの火レベルから、マグマに至るまでレベルを調整できる。

炎魔法の特徴の一つとして魔力を大量に使う事で火やマグマと一体化することもできる。

シャルロッテに頭を食べられる直前に、ユウコは頭の部分をマグマと化した。

つまりシャルロッテはマグマの塊を食べたにすぎないのであった。

 

「そういうことだったのか」

「そういうことです」

 

「巴マミ、おまえは油断の傾向がある。このままでは今度は死ぬぞ」

 

油断が原因で、今回の魔女に殺されかけたマミに対して、ミサトが強い口調で言った。

 

「あ、あの・・・今からお礼に」

 

ケーキでもといったが、三人は首を横に振った。

 

「お礼だ?そんなものいらねえよ」

「ええ。あなたも今回は命が助かっただけ、次は殺される覚悟でないと」

「本当に死んでしまうの」

 

三人はほむらと同じ方向へと珍しく歩いて立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナイトメアは本当はいいやつなのだろうか、それともこれも・・・

そして私たちは分かっていなかった。

奇跡を望む意味も・・・・・

 

 

 

その恐ろしい代償も・・・・・


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