魔法少女まどか☆マギカ ~ミサトとユウコはマドカの敵~   作:Mr.モノクマ

22 / 27
第21話 「危険性」

  現在時刻:16時17分

余りにも衝撃的な内容の手紙、いや遺書とも取れる文章にあっけにとられる三人。

お互いに両想いで天へと召されたと思ったら、女の方は男に対してこれ以上ないまでの恨みを持って死んでいった。

もしかしたら男が自殺したのはこの手紙を見たからかもしれない。

今となっては真実は闇の中だが。

 

「恋愛が恐くなってきちゃったな」

 

見滝原森林の補正道を歩きながらまどかは手が震えている。

女の恨み、妬みがこの屋敷の本来なる呪いだと思った。

 

「全部が全部あんなんじゃないと思うけど」

 

あのような憎悪劇は本当に一握りの確率なので一般的に考えればまずない。

そもそも手紙の書き方からして何十年も前の話だろう。

 

「舞踏会なんて現代じゃあまり行われないからね。知っているのは鹿鳴館ぐらいかしら」

 

案外古いことをよく知っているようだが確かに日本の代表的なのといえばこれぐらいしかない。

 

「鹿鳴館ってなんですか?」

「えっ、さやかちゃん知らないの」

 

まどかはつい半年前の日本史の授業でやった分野を忘れているさやかにびっくりした。

さやかは定期試験が終わるとその範囲はすべて忘れてしまうのだ。

 

「まあまあ、さやかちゃんは今を生きる存在なのだ」

 

因みに鹿鳴館とは外国からの賓客や外交官を接待するために明治政府によって建てられた社交場である。

当時の日本人から見た欧米文化を極端に走っ政策を象徴する存在でもある。

主に舞踏会が盛んにおこなわれていたが、皇族や上流婦人の慈善バザーも重要な催しであった。

 

「そんな昔の奴がなんで?」

「分からないわ。もしかしたら私たちの知らないもっと広い存在なのかもしれないわね」

 

「まあ魔女と魔法少女がいる以上、信じるなといっても無理よね」

 

つい2.3日前なのに広く世界を知ったような気がするさやか。

まさか魔法少女がこの世に存在するなんて常識からは考えられない。

 

「もうすぐ出口だね」

 

森林を出ればあとは駅まですぐ近くだ。

 

「そういえばナイトメアがとっていったグリーフシードってなんですか?」

 

それに関してはまどかも気になっていたところだ。

ナイトメアはソウルジェムだけではなく、グリーフシードも狙っている。

 

「簡単に言うと、魔女の卵ね」

「た、卵?」

 

さやかは顔をひきつらせる。

卵だったら何とかしないと卵からかえった魔女が生まれてしまう。

 

「でも卵の状態なら安全よ。むしろ役に立つ貴重なもの」

 

マミは手の平から自分のソウルジェムを出す。

光り輝いていたがちょっと黒みが出ているような気もする。

 

「私のソウルジェムは昨夜よりちょっと濁っているでしょ」

「はい、確かに」

 

まどかは言われるまで気づかなかったが、あえて口には出さない。

 

「でもグリーフシードを使えば、ほら」

 

ソウルジェムにグリーフシードをかざすと黒い濁りが吸収されていく。

そして昨日と同じように光り輝く綺麗なものになる。

 

「これで消耗した私の魔力も元通りなの。因みにこのグリーフシードはこの前に倒した奴よ」

 

マミは一応、何かの時のためにスペックはいくつか常備している。

すると手に持ったグリーフシードを茂みのほうに投げる。

 

「良く気付いたわね」

 

そこにいたのは暁美ほむらだった。

手にはマミが投げたグリーフシードを持っている。

 

「ありがとう、それはあと一回ぐらい使えるはずよ」

「あいつ!」

 

ほむらは表情一つ変えず、まどかのほうをじっと見つめる。

 

「それとも人と分け合うんじゃ不服かしら?」

「あなたの獲物よ。それにさっきの魔女はナイトメアにとられたんじゃないの」

 

痛い所をついてくる。

一緒に倒したとはいえ、おいしい所をすべてあいつらに持って行かれた。

 

「それは言わない約束でしょ」

「そんな約束していないよ、さやかちゃん」

 

グリーフシードをマミに投げ返す。

 

「これはあなただけのものにすればいいわ」

「それがあなたの答えならば仕方がないわ」

 

手の平を見てみるとグリーフシードの先端のとがった部分が刺さっていた。

表情には出さないが結構辛そうだ。

 

「これって刺さると結構痛いのね」

「マミさん、血が出てる」

 

グリーフシードを投げ合うのは危険だと改めて感じた瞬間であった。

これからは手渡しで渡そう。

 

「私は帰るわ」

 

そのまま何も言わずに茂みの中に消えていく暁美ほむら。

 

「くぅ~!やっぱり感じ悪い奴だな」

 

さやかが悔しそうに地団太を踏む。

まどかも仲良くなろうと思ったが、お互いにそう思わない限りそれは無理な話だ。

 

「ナイトメアとも仲良くなれたらな」

 

 

 

 

 

 

  現在時刻:19時21分

「過去の恨みから生まれた魔女。そしてその卵となるグリーフシード」

 

見滝原市にあるナイトメアの住んでいるマンション。

隣には巴マミも住んでいる。

今はキューピが作り出した魔女結界の中で何やら大きな機械をいじっている。

 

「ずいぶんと興味深いデータが採集できましたよ」

 

異空間のようなキューピの魔女結界で大きなモニターを確認するユウコ。

いつもと違って眼鏡をかけていて、一風違った雰囲気を醸し出している。

 

「怨みの結晶となり実態を持たない魔女というのは研究価値がありますね」

「生命エネルギーをとられたのは不覚だったけど、それも結果オーライ」

 

ミサトは長い髪を縛ってポニーテール状にして、廃墟の魔女 チャリオットのグリーフシードを培養液につかしている。

 

「だけど面白いデータなの。怨みが魔女にどう変化するかが少しだけ分かったの」

 

培養液につかしたグリーフシードを取り出して二人分のソウルジェムにかざす。

 

「もういいの」

「必要なことはできたしな」

「ええ、でも分かったのは魔女の生命と誕生に関することで破壊力に関することは何も」

 

彼女たちに本当の目的。

それはまだ分からない。

しかしほっておいとくといずれとんでもないことになるだろう。

 

「グリーフシードも大切ですけれど、まずはソウルジェムです」

「ひとり驚異的なエネルギーをもつ魔法少女がいるみたいだけどそいつがだれか」

「暁美ほむらじゃないの。強そうなの」

 

「さあまだわかりません」

「とりあえずはソウルジェムを手に入れないと」

 

すると誰かのお腹がグゥーと鳴り響く。

魔女結界は静かなので三人に良く聞こえた。

 

「誰なの?」

 

キューピが周りを見渡してみると、ユウコは顔を真っ赤にしてうつむいている。

手ももじもじしていることからおそらく・・・

 

「夕飯つくりましょうか」

「「うん」」

 

魔女結界を出るとユウコが台所に行って遅い夕飯の準備をする。

 

「ユウコ、今日はいったい何?」

「もう今日が夏の最期の日になるでしょうし、冷やし中華を」

 

9月に入ると冷やし中華も数を少なくなってゆく。

いたるところで『冷やし中華終わりました』という哀しい看板を目にするのだ。

 

「いいんじゃない」

「ナノは冬でも冷やし中華でいいんだけどなの」

 

そして何分か経つとユウコがリビングに冷やし中華を持っていく。

 

「「「いただきます」」」

 

「巴マミって強いけれど、なんか油断しているところない?」

「どういうことですか?」

 

「初めてあいつのことを見た後いろいろ考察してみたんだ」

「意外と熱心なの」

 

「それで一日ぐらい考えた末にわかったんだよ、いやあくまで考えだけど」

「何がわかったんですか?」

 

「巴マミの弱点だよ」

「弱点!?」

 

冷やし中華を食べている箸の手が止まる。

 

「隣人でもあるし、もしかしたらと思うから、ちょっと耳貸して」

 

ミサトがキューピとユウコに耳打ちで自分の考えである巴マミの弱点を言った。

 

「確かにその可能性は否定できませんね」

「だろ。やっぱり私は考察と情報収集能力に長けているな」

 

嬉しそうに冷やし中華をほおばる。

 

「でもそれを確かめるすべは」

「それに関してはナノにいい考えがあるの」

 

キューピがニヤリと笑う。

この会話が近々、巴マミの運命を左右することはまだナイトメアも知らない。

 

「「「ごちそうさま」」」

 

こうしてナイトメアの夕食はいつも通りに過ぎていくのであった。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。