魔法少女まどか☆マギカ ~ミサトとユウコはマドカの敵~   作:Mr.モノクマ

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第19話 「THE HOUSE」

  現在時刻:15時27分

ポツポツと降ってきた雨はものすごい本降りなり、雷も鳴り響いている。

半開きの扉から中をのぞいてみる。

大きなチャイムを押すスイッチもあったが固くて押すことができなかった。

 

「すみません・・・誰かいますか?」

 

中を少しだけ覗いてみるが当然のごとく返事などない。

外は廃墟のようだったが中は散らかったり、クモの巣こそ張っているが、瓦礫やガラスの破片が至る所に落ちているわけではなかった。

 

「誰かいますか?」

「いたら返事してください」

「やめてよさやかちゃん。ほんとに返事が来たらどうするの」

 

大きな雷が近くに落ちた。

そして、半開きの扉もパタンと閉じる。

 

「えっ?今勝手に扉が」

「風じゃないの」

「ええ、ちゃんと開くから大丈夫みたい」

 

マミが扉の開け閉めをして確認する。

 

「明かりはなくても一応前は見えるんだ」

 

電気は通っていなかったがまだ昼間なのでなんとなく明るさはある。

 

「結構広い1階だよね」

 

天井には壊れかけのシャンデリア、目の前には2階へ向かう階段がある。

それより気になるのは部屋の数だ。

 

「扉が一つ、二つ、三つ・・・1階に6つも部屋があるよ」

「なんでこんないっぱいあるんだろう?」

「とりあえずは誰もいないみたいね」

 

彼女たちは気付かなかったが天井から、小さなカメラが姿をジッと捉えていた。

その監視カメラは談話室に設置された、大きなモニターの一つに映されている。

 

 

  場所:2F 談話室

「だれもいない・・・そう、おまえたちが来るまではね」

 

ナイトメアの三人はソファーに座りながらマミ達のことを見ている。

 

「結構痛かったですね」

「ホント。床の板が腐ってるんだよ」

「研究アジトにするなら床の板を変えなおさないとだめなの」

 

ミサトは腰元にユウコが落ちてきたので腰を抑えている。

ユウコも短い時間に3階から1階に一気に落ちた。

 

「しかも2回目に落ちたのがゴミの上だったとは」

 

ゴミの上に落ちたのがよっぽどショックだったのがテンションはかなり低い。

 

「ゴミといっても全部草とか腐葉土とかだから平気じゃないの?」

「そういう問題じゃないんですよ」

 

腐葉土はその名の通り腐敗しているので色は黒っぽい。

しかし、不快感を持つようなにおいは無く、山林に入ったときと同じような香りがする。

だがそれと同時にカブトムシようなにおいもするので女の子にはきつい。

 

「まずはこの廃墟をどうにかしないと」

「でもあんまり無駄な出費はできませんよ」

「無駄な出費より、まずはあいつらが問題なの」

 

キューピが1階で立っているまどかたちを指さし、考え込む。

他の二人も厄介ごとといわんばかりにしかめっ面をする。

 

「確かに、午前中やっとの思いで人里離れた場所に研究アジトに打って付けの場所を見つけたと思いましたら」

「そして通信できるようにセットしたばかりなの」

「あいつらが来てこれですべてが水の泡」

 

実はさやかがこの廃墟の話を出す前にその場所に事前に行ったのだ。

そして監視カメラやモニターなどいろいろ設置してまた見滝原市に戻った。

喫茶店で廃墟の話を聞いたときはまさかとは思ったが・・・

 

「こんな偶然ってあるんですね」

「こうなったらここであの巴マミを仕留めてやる」

 

三人は小さく笑い合った。

 

「でも今日いったんここから追い出すのが先手と言う事で」

 

  場所:1F エントランス

一通りすべての部屋を見てみたが何か目新しいものはなかった。

書斎室や食事室、最後の扉には延々と続く長廊下などいろいろあった。

 

「あの長廊下になる所よね」

「さすがの私もあれはいきたくないな、だって先なかったですよ」

 

さやかも奥のほうが闇で覆われている最後の扉だけは気が進まないみたいだ。

もっともまどかの場合は最初から扉を開けなかった。

 

「ちょっとまどかぁ」

「だって、だって、怖いんだもん」

 

目をウルウルさせているまどか。

 

「まったくまどかはもう困っちゃうな」

「とにかく今日は雨がやむまでいさせてもらってやんだら帰りましょう」

 

だが外の雨は止むどころか強くなる一方であった。

風も出てきたのかいきなり窓が開く。

 

「やばいっ!雨水が入ってくる」

 

急いで閉めたがまた開きそうだったので下に落ちている棒で押さえる。

だけどなぜか自然の力というより、人為的な力で窓が開こうとする。

 

「なんかこの屋敷変な感じがする」

「変な感じって何かわかる?」

 

「あまり分かりませんが・・・なんていうか誰かに見られているような」

「変なこと言うの止めてよ、さやかちゃん」

 

マミに寄り添って体の震えを抑える。

 

「鹿目さん大丈夫。それに今のは風が吹き込んだせいよ」

「風だといいですよね・・・あっ!」

 

何か気づいたようなそぶりを見せるとどんどん顔が青くなってゆくさやか。

 

「どうしたの美樹さん?」

「う、う、後ろ・・・・・」

 

マミが後ろを向くと階段を上って2階の扉がゆっくりと開こうとしていた。

ギイィィィィィという不気味な音とともに。

 

「なんで扉が勝手に?」

「あれはポルターガイスト現象だ!」

 

さやかが叫ぶと半分ほど開いた扉から何かが猛スピードで飛んでくる。

間一髪で避けることができた。

 

「あっぶない。今の何?」

「さやかちゃんもう帰ろうよ」

 

扉の所に行って開けようとドアノブを掴むが開かない。

鍵穴のところに氷のような先のとがったものが刺さりこんでいた。

 

「まさかこれのせいで」

「開かなくなっちゃった」

「どうしよう」

 

まどかが慌てるとマミがお姉さんらしく抑える。

 

「3階まであることだから、一つ一つ探していけば外に出られるかもしれないから行きましょう」

「あの氷どこかで」

 

頭に引っかかるところがあったがまずは外にだ脱出しないといけない。

 

  場所:2F 談話室

「入口塞いじゃった」

 

廃墟から追い出すために出した氷が間違ってここに閉じ込めることになってしまった。

ミサトは自分でミスを犯してしまったことを後悔する。

 

「入口塞いじゃった以上どうしましょうか」

「このままだといずれこの談話室に来るの」

 

「それは困りましたね、ハァ」

「じゃあちょっとナノが様子を見に行ってくるの」

 

そういい談話室の扉を開けてこっそりとまどかたちの様子を見に行くキューピ。

 

「すまねぇ」

 

失敗を犯してしまったことを申し訳なさそうにしているミサト。

 

「いいですよ、ゴッホ、ゴッホ!」

 

埃が舞っているのかユウコも咳き込む。

 

  場所:1F 娯楽室

ココにはおそらく前の住人の趣味であろうさまざまな娯楽施設があった。

ビリヤードやらピアノやらいろいろあったがすべて壊れて使い物にならない。

足元の柱がひび割れていつ崩れてもおかしくない状態であった。

 

「ここまで面白いものがそろっているのに何で廃墟になったんだろう?」

 

素朴な疑問だったが何も答えることができなかった。

 

「恐らく何かあったんだと思うよ」

 

2年前の殺人事件が原因なのか、それとも別の何かがあるのか。

その時、まどかは本棚においてある一冊の赤い本に目をやる。

 

「なんだろうあれ?」

 

手にとって中を開いてみるが何も書いていなかった。

少しペラペラとページを捲っていると、とあるページに何かが書いてあった。

 

「日記?」

 

そこには大変達筆な字でこう書かれてあった。

 

『  ~親愛なる者へ~

 7の月 その日私は見滝原市にある豪邸で舞踏会を開催した

 今まで携わってきたものへの感謝と恋人との婚約を報告するためだ

 タロットも“X”つまり“運命の輪”を示している

 舞踏会も優雅に進み私は恋人を探しに行った

 オルゴール音が綺麗に鳴り響いている

 だがどこを探してもいなかった

 そして見つけた時 安らかに眠って 冷たくなっていた

 

 

 なぜだ なぜだ なぜだ なぜだ なぜだ なぜだ なぜだ なぜだ なぜだ

 

 

 時刻は12時よりさらに1時間の13時をアナログ時計はさした

 私は抱きしめて泣き叫んだ

 自殺なんかするわけがない 

 そうだ誰に殺されたんだ

 タロットは二枚あった 

 もう一枚は死を意味する“XIII”の“死神”

 私は持っていた隠しナイフで恋人の心臓を突き刺す

 

 

 もうこれ以上語ることはないだろう

 これは魔女の呪いだ

 私の命も魔女にささげることにしよう       』

 

それ以上どこのページを探してもそれ以上は書いてなかった。

 

「どうしたの?」

「これ」

 

まどかが渡してきた本をさやかとマミは読む。

二人も今のまどかと同じ気持ちになっただろう。

どんな気持ちか・・・それは分からない・・・だがそんな気持ちだった。

 

「取り敢えずここから出ましょうか」

 

その時、娯楽室の扉が開いて誰かが入ってきた。

 

「ここにもあいつらはいないの」

 

「あっ!お前は!」

「ナイトメアの!」

「キューピ!」

 

「や、やばいのっ!逃げるの」

 

扉を開けたのはキューピでマミは捕まえようとする。

 

「ちょっと待ちなさい」

「待てと言われて待つ奴はいないの」

 

娯楽室からエントランスに逃げたはずだったがもう少しのところで逃げられてしまった。

だがこれでわかった。

ナイトメアがいて、あの手紙を見つけた以上この廃墟には何かがある。


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